お楽しみください。
「七夕なんだよ!」
7人になったAqoursの部室。
いつもの千歌のいきなりの発言で部室がしーん、となる。
「今日はもう6月最終週だから来週にはもう七夕ね」
梨子がカレンダーを見ながら言う。
「そうなんだよ!というわけで、Aqoursは七夕祭りでライブをします!」
「待て待て。申請は?」
「もうやったよ」
「速っ!」
こういう時の千歌の行動力には驚かされる。
「善子ちゃんもAqoursに入って6人になったでしょ?1年生をいきなりPVでお披露目もいいけど、まずは地元で予行練習しようかなって」
なるほどね。たしかに悪くない。
「ライブ・・・。確かにいいかも」
曜も賛成のようだ。
「でも、曲は?」
梨子の質問に千歌は胸を張って1枚の紙をだす。
「書いてきたよ!」
梨子は詩の書かれた紙を受け取り、読み進めていく。
「いいんじゃないかしら?少しだけど曲のイメージも湧いたわ」
「流石梨子ちゃん!カズくんと1年生もいい?」
「俺は全然いいよ」
「私たちも大丈夫です!」
ルビィの言葉に善子と花丸ちゃんも頷く。
「よーし!そうと決まったら早速行動だよ!梨子ちゃんとカズくんは作曲をお願いしてもいい?」
「ええ。任せて!」
梨子と一緒に頷く。
「じゃあ、曜ちゃんは衣装お願い。ルビィちゃんと善子ちゃんも手伝ってあげて」
「分かったわ」
「頑張ります!」
ルビィは元々裁縫が好きでこういうのは得意だ。善子も配信用の衣装は自分で作っているらしく、衣装係にもってこいだ。
「あの、マルは?」
おどおどと手をあげる花丸ちゃん。
「大丈夫。ちゃんと考えてるよ。花丸ちゃんは私と一緒に歌詞の見直しをやろっか」
「はいずら!」
なんだかんだ、1年生が入って千歌はリーダーらしいことをしっかりやっている。
こうして時間は少ないが、七夕祭りに向けてAqoursはスタートした。
七夕の祭りの前夜。
今日が七夕の日で明日祭りだ。七夕が休日じゃないのが少し残念だ。
曲も歌詞も振り付けも衣装も完璧に出来上がり、本番を待つだけとなった。
下校中にスマホがメッセージを受信した。差出人は果南ちゃんだ。
『今夜、うちに来れる?星を見ようよ』
珍しいなぁ。あ、返信。
『行くよ』
と、簡単に返事をした。
すると、バスのアナウンスがあわしまマリンパークと告げる。停車ボタンを押し、千歌たちに適当に説明し、さよならを伝える。
果南ちゃんちの前に着くと果南ちゃんはいつものダイビングスーツで店の手伝いをやっていた。
「え?もう来たの?まだ明るいし、1度家に帰ってからで良かったのに」
「あ」
全く、果南ちゃんの言う通りだ。
「その、早く星が見たかった、というか、我慢出来なかったというか」
誤魔化し誤魔化しでしどろもどろする。
「ふふっ。まあいいや。夕飯食べなよ」
「うん。ありがとう」
その後は果南ちゃんとそのお父さん、お母さんと話しながら夕飯を食べ、お風呂まで借りた。果南ちゃんのお母さんにはだいぶ冷やかされたけど・・・。
そんなこんなで夜だ。
「淡島神社まで登るよ」
果南ちゃんの後ろをとことこついて行き、片道20分ほどかけて淡島神社に到着した。そして、そこには既に先客がいた。明るい金髪。鞠莉ちゃんだ。
「来ると思った。シャイニー、果南、和哉」
「鞠莉・・・」
「果南、そう構えないで。私も星を見に来ただけよ」
「ふーん」
なんだ、この空気。正直、めちゃくちゃ居心地悪いんだけど・・・。
すると、鞠莉ちゃんが空を指さす。
「見て。綺麗」
言われて俺も果南ちゃんも空を指さす。
「本当だ。綺麗だ」
「うん。確かにね」
小並感な感想しか出てこない。
実際とても綺麗で、内浦の夜空を星が埋め尽くしている。
「ねえ、ダイヤも呼んじゃう?」
「遅いんだから来れないでしょ?」
「それもそっか。でも、このこと話したら3人だけでずるいわ!なんていいそうよね」
「確かにね」
果南ちゃんと鞠莉ちゃんはお互いに笑い合う。その間に俺はスマホを操作し、ダイヤちゃんにコールする。
「あ、ダイヤちゃん?」
「ちょ、カズ!?」
人差し指を立て、しーっ、とジェスチャーをして果南ちゃんを静かにさせる。
『どうしたの?』
ダイヤちゃんが反応するとスピーカーモードにし、2人にも聞こえるようにする。
「今さ、果南ちゃんと鞠莉ちゃんと俺の3人で星を見てるんだ。ダイヤちゃんも来る?」
『そうなのですか!?なぜわたくしだけ呼ばないのですの!?』
「だから今誘ってるの。どう?」
『行きます!場所は?』
「淡島神社」
『分かりましたわ。すぐに向かいます』
ブチッ、と音を立て、通話が終了する。
3人で顔を見合わせ、笑い出す。
「本当にくるのね!本当、ダイヤってば!」
「まさか行くって言うなんて!」
3人で笑いあって、話をしているとダイヤちゃんがやって来た。
30分もしないうちに来るとか、やべぇ・・・。
「なぜ、わたくしを誘いませんでしたの!?ずるいですわ!」
これまた予想どうりの発言をするダイヤちゃん。
そんな彼女を見てまた俺達は笑い出す。
「全く貴女方は・・・。しかし、本当に綺麗ですわ」
呆れたダイヤちゃんは俺たちみたいに夜空を見上げる。
「あら、ダイヤ。口調戻ってるわよ?」
「こんな所で演技をしても疲れるだけですわ」
「それもそっか」
それから1時間ほど話しながら星を見て、時間もいい頃合になってきたので解散することになった。
淡島神社を降り、階段を降りきり、俺は立ち止まり、3人に声をかける。
「明日の祭りで、Aqoursがライブをやるんだ。千歌と曜も、それにルビィも」
「知ってるわ。私が許可したもの」
鞠莉ちゃんはドヤ顔で胸を張る。
「うん。鞠莉ちゃんには助けてもらってばかりで頭が上がらないよ」
「それで?」
果南ちゃんが不機嫌そうに言う。ダイヤちゃんも同じ表情だ。
「2人に見て欲しいんだ。今のAqoursを」
2人の反応を伺う。
「ま、考えとくよ」
「最近は活動も頑張っている事ですし、見に行くだけなら」
「本当に!」
「行くとは言ってない」
「それでもだよ!やった!じゃあ、明日待ってるから!」
「ちょっと!」
果南ちゃんの言葉を聞かずに走って帰路につく。
「船、出してもらわないと帰れないよ!」
「あ」
七夕祭り、Aqoursのライブ直前。
ステージの前には大勢の観客がいる。
「わー。集まったねー」
舞台袖から千歌がチラッ、と観客を見る。
「そうだよ。みんなAqoursを見に来たんだ」
鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、それに果南ちゃんもいる。
良かった、見に来てくれたんだ。
「よーし、やるぞ!」
千歌が声を上げるとみんなの顔が真剣になる。
「行こう!Aqours!」
『サーンシャイーン!』
舞台に出ていく6人。
拍手で迎えられ、横一列に並ぶと千歌が一歩前に出る。
「私たちは浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursです!この日のために曲を作ってきました!聞いてください!」
『届かない星だとしても』
俺はきっとここに3人が入るのは届かない事じゃない、きっと叶うと七夕に願いを込めた。
皆さんは短冊にお祈りをしましたか?
その願いが叶うといいですね。