梨子の勧誘に失敗した千歌。
しかし、それでめげる彼女ではない。
彼女の進撃は止まらない!
「誰か止めてくれ!!」
「お断りするわ!」
「こっちも!?」
「やっぱり」
千歌に連れられ、俺たちは生徒会室に来ていた。
生徒会長のダイヤちゃんに部の申請書を提出したところ、開口一番で怒鳴られてしまった。
「部の申請には5人必要と言ったはずよ。・・・それ以前に作曲はどうなったの?」
「うっ・・・。それは・・・」
ダイヤちゃんの質問に千歌は顔を歪ませる。
どうやら以前にも提出していたようで、ダイヤちゃんに作曲をどうするのかと、聞かれていたようだ。
「多分、いずれ!きっと!!可能性は無限大!!!」
謎の動きをしながら千歌はなんとか取り繕う。
しかし、ダイヤちゃんは無表情で千歌を見る。
「そもそも、なんで貴方までいるの?」
次にダイヤちゃんは俺を睨む。
そんなに睨まなくたっていいじゃないか・・・。
「なりゆき?千歌たちの手伝いやることになったんだ」
「そう。また、ね」
「うん、また」
ダイヤちゃんはどこか嬉しそうな声で呟く。
隣で千歌が何やら唸っている。
だが、すぐに何か思いついたような表情をする。しかし、その表情も少し不安気だ。
「うぅ・・・。で、でも最初は3人しか居なくて大変だったんですよね、ユーズも」
そうそう、大変だったんだよ。μ'sも・・・。
ん?今千歌の奴、ユーズと言った?
ユーズ。
確かに千歌はユーズと言った。
そのせいでダイヤちゃんのこめかみがピクッ、と動く。
「知りませんか?第2回ラブライブ優勝の音ノ木坂学院スクールアイドルユーズ!」
得意気に話す千歌に対し、曜はダイヤちゃんの異変に気づいたようだ。
ダイヤちゃんと千歌の2人を交互に見て慌てている。
・・・かく言う俺も頭を抱えるしか無いわけで・・・。
タンタンタンタンタン。
ダイヤちゃんが机を指先で何度も叩く。
・・・骨は拾うから。
「それはもしかして、μ'sのことを言っているのではないのよね?」
ダイヤちゃんはゆっくり立ち上がり、生徒会室から良く見える海の方を見る。
その声はとても。それはとてもご立腹のようで。
そこでようやく千歌も気づいた。
自分のやらかしに。
「もしかしてあれ、μ'sって読む・・・」
ダイヤちゃんは肩を震わせながら勢いよく振り向く。
「お黙らっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
ダイヤちゃんは怒鳴り声をあげた。
・・・・・・終わった・・・。
「云うに事欠いて名前を間違えるですって!あぁん!?」
「ちょっ、ダイヤちゃん、落ち着いて・・・」
俺の言葉を無視してダイヤちゃんは千歌に詰め寄る。
千歌のやつは完全に地雷を踏み抜いたのだ。
それはもう見事に。
1発で戦争が起きるレベルの。
「μ'sはスクールアイドルたちにとっての伝説、聖域、聖典、宇宙にも等き生命の源ですわよ!その名前を間違えるとは!片腹痛いですわ」
完全に沸点に達してしまったダイヤちゃんは口調も変わり、μ'sがどういう存在かを千歌に教えつける。
「ち、近くないですか?」
機材の目の前まで追い込まれた千歌は割と余裕そうに言葉を返す。
「今のは千歌と近いを」
「そんな場合じゃないよ」
「だよね・・・」
くだらないダジャレを言っていると隣の曜にジト目で睨まれる。
「ふん!そんな浅い知識だとたまたま見つけたから軽い気持ちで真似してみよう、と思ったのですね?」
千歌から離れたダイヤちゃんは彼女を一瞥する。
「そ、そんなこと・・・!」
千歌もその言葉にむっ、と来たのか、声を強めて否定する。
「ならば、μ'sが最初に9人で歌った曲。答えられますか?」
突然始まるクイズ。
ダイヤちゃんは千歌を試しているようだ。
だが、まあ。これは知ってて当然だ。
「え、えっと・・・」
言い淀んでしまう千歌。
嘘だろ!?
ニワカってレベルじゃないよ!?
するとダイヤちゃんは再び千歌に詰め寄った。
「ぶー!ですわ!」
本当に終わった・・・。
主にダイヤちゃんが・・・。
俺は天井を仰ぎ、額を抑えるしかなかった。
「『僕らのLIVE 君とのLIFE』通称ぼららら。次、第2回ラブライブ予選でμ'sがA-RISEと共にステージに選んだ場所は?」
ダイヤちゃんの次に繰り出した問題の答え。これは有名だ。
こんなぶっ飛んだこと、後にも先にもこれしかない。
「ステージ?」
・・・まあ、千歌は知らないよね・・・。
「ぶっぶー、ですわ!」
背を向け、腰を振りながらリズミカルに効果音を口にするダイヤちゃん。
・・・楽しそうで何よりです。はい。
「秋葉原UTX屋上。あの伝説とも呼ばれるA-RISEとの予選ですわ。次、ラブライブ第2回大会決勝。μ'sがアンコールで歌った曲は」
「知ってる!」
千歌はダイヤちゃんが問題を言い切る前に手を挙げ、答えを言う。
「『僕らは今の中で』!」
しかし。
「ですが」
クイズお約束の問題は最後まで聞きましょう、という奴が発動した。
しかし、このダイヤちゃん。自分の知識自慢したすぎでしょ。
溜まってたのかな。
「曲の冒頭スキップしている4名は誰?」
出た!
ダイヤちゃんの誇るμ'sクイズの最高レベルの問題!
まあ、俺は分かるけど。
「えぇー!」
もちろん、千歌が答えられる筈もなく。
再び詰め寄ったダイヤちゃんが叫ぶ。
「ぶっぶっぶー!ですわ!」
その拍子に千歌はよろめき、後ろの機材に触れてしまった。
「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫!こんなの基本中の基本ですわよ!」
「す、すごい・・・。もしかして生徒会長、μ'sのファン?」
「当たり前ですわ!わたくしを誰だと」
「ダイヤちゃん・・・」
「んんっ!」
もう見ていられなくなった俺はダイヤちゃんの名前を呼び、今の状況を思い出させる。
「一般教養よ!一般教養!」
「「へー?」」
意地の悪そうなイタズラな笑みを浮かべる千歌と曜。
ここまでやってしまうと今更否定しても意味は無い。
「うっ・・・。第一!和哉さん!貴方がいながらなんという始末なの!」
「えぇ!?俺のせい?」
突然怒りの矛先が俺に向き、驚く。
「連帯責任よ!」
「俺は関係ないでしょ!?」
「と、とにかく!スクールアイドル部は認めないわ!」
「「えぇー!!??」」
スクールアイドル部の設立にはまだまだ時間がかかりそうだ。
教室に戻り、自分の席に座ると同時に俺は深いため息とともに、突っ伏す。
「大丈夫?大変だったみたいだけど・・・」
前の席に座る梨子がこちらを向き、心配そうに尋ねる。
正直、この教室で会話をしたことがなかったため、少しどぎまぎしてしまう。
「あ、あー。うん、結構やばかった」
主にダイヤちゃんが。
「みたいね。聞こえてきた限りだと」
「え?ここまで聞こえてたの?」
「聞こえてたと言うよりは・・・」
梨子はスピーカーを指差し、苦笑いをする。
「放送されてたわ」
「は?」
梨子の言っている事がまるで分からない。
どういう事だろう。
「突然放送で生徒会長さんのぶっぶっぶー!の声が聞こえてきて、μ'sの名前を呼んだり、和哉くんの名前を呼んだり。みんなポカン、としてたわ」
「まじか・・・」
どうやら千歌が触った機材は放送用の機械だったようだ。
まあ、自業自得だよ。ダイヤちゃん・・・。
俺は再び深いため息をつく。
すると。
「カズくーん、どうしよー・・・」
項垂れた千歌と困ったように笑う曜がやってきた。
「どうもこうもないでしょ」
「だよねー・・・。よし、こうなったらライブでダイヤさんをぎゃふん!とぉ」
「曲はどうするの?」
「そこなんだよぉ・・・」
元気になったと思ったらまた項垂れる千歌。
曜もなかなか酷なことを押し付ける。
「そこで!」
千歌はまたバカみたいに明るい声で大声をあげる。
「桜内さんの力が必要なんだよ!」
・・・結局はそこなんだ・・・。
「何度も言ってるでしょ。やらない」
「そこをなんとか!今ならお礼にカズくんあげちゃうから!」
「おい」
梨子はため息をつくと千歌の方へ体を向ける。
「確かに魅力的だけど、私にそんな暇はないの」
「え、ちょっと待って。どういう」
曜が今言った梨子の言葉を聞こうとした瞬間、担任の中根先生がやって来る。
俺も問いただしたいのだが。
「ほら、朝礼よ。戻らないと」
先生を見た千歌と曜は大人しく席に帰って行った。
「ねえ、梨子」
「何?」
「魅力的って・・・?」
「うーん」
梨子は顎に指を当て、少し考える。
「内緒♡」
「えー・・・」
俺、飼われたり、何かの実験に使われるの?
それともからかわれてるだけ?
「あ、それとこれ。私の連絡先」
梨子が差し出したのはメモ紙の切れ端。
そこには綺麗な文字で電話番号とメールアドレスが書かれていた。
「また連絡できなくなるのは嫌だから」
「・・・うん。分かったよ」
梨子はそう言うと黒板の方を向いた。
俺はメモ紙をしまい、今度は間違えない、後悔しない、と静かに心に決めた。
やっぱり上手く行かないスクールアイドル活動。
流石の千歌も少しは堪えたようだ。
これから千歌たちはどうする?
「まずはそのニワカ知識をどうにかすることよ」
あ、ダイヤさん。
こんにちは
「ご機嫌よう。貴方からも何か言うべきよ」
私は語るだけの立場なので。
それより、その口調話しにくくないですか?
「・・・今はこれでいいのよ」
そうですか。
考えてるんですね。
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新庄雄太郎様、☆8評価ありがとうございます!
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