極東三人目の翼   作:アイプチ

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どうも初めまして、アイプチと申します。一応この小説はアットノベルズにもアイブラという名で投稿してるので、パクリとかではないです。

しかしネタはあるのに指が動かねえ・・・


一枚目

 この日、疑いようも無く晴天。

 大空という海原を行く航空都市、準バハムート級航空艦『武蔵』は、いつもと変わらない日常を送っていた。

 

「はーい!三年梅組集合ー!」

 

 そんな声が、『武蔵』中央後艦〝奥多摩〟から聞こえてきた。

 ここ〝奥多摩〟には学生達の学舎、武蔵アリアダスト教導院がある。

 その教導院の前の橋の上。一人の女性がクラスの生徒を前にしてにこやかに立っていた。

 だが、その笑顔とは裏腹に背には不釣合いなほどの長剣が存在していた。

 

「これから体育の授業を始めます――――先生これから〝品川〟の先にあるヤクザの事務所に殴りこみに行くから。それについてくること。そっから先は実技ね」

 

 遅れたら教室掃除でもしてもらおうかな、というが。生徒の大半は戸惑いから来る怪訝な表情になっていたり、顔が引きつっている者もいた。

 当然だろう。平和な体育の授業なのに、何故か授業内容がカチコミなのだから。

 返事は、と聞くと全員「Jud.」と返ってきた。

 とここで、一人の少年が手を上げた。腕には『会計 シロジロ・ベルトーニ』とある。

 

「教師オリオトライ。体育とヤクザと、どのような関係が?――――――金ですか?」

 

 その言葉に、隣にいた少女が補足をする。

 その腕には『会計補佐 ハイディ・オーゲザヴァラー』とあった。

 

「ほらシロ君。先生この間地上げにあってビール飲んで壁ぶち抜いて教員科にマジ叱られたから」

 

「中盤以降は全部自分のせいだと思うのだが。報復ですか?」

 

「あはははー。報復じゃないわよ。ただ腹立ったんで仕返しに行くだけ」

 

「同じだよ!!」

 

 生徒全員が突っ込むが、オリオトライと呼ばれた先生は全く気にしていない。

 

「さてと。それじゃあ誰か休んでる人いる?ミリアムは仕方ないとして。あと、東が今日の昼に戻ってくるとして。他は?」

 

 と聞くと、一人手を上げる少女。

 黒い三角帽に背には六枚の翼。腕には『第三特務 マルゴット・ナイト』とある。

 

「ナイちゃん見るに、セージュンとソーチョーがいないかな。あ、あとゆっちゃん」

 

 その声に答えるように隣にいた黒髪で背には同じく六枚の羽を持つ少女。

 腕には『第四特務 マルガ・ナルゼ』とある。

 

「正純は今日は午後から酒井学長と三河に降りるから自由出席のはず。総長、トーリについては知らないわ。あとユーリに関しても同じく」

 

「んじゃあトーリとユーリについて知ってるのは?」

 

 すると、今度は後ろのほうにいる少女が答えた。

 

「フフフ、皆うちの愚弟のトーリについて知りたい?知りたいわよね?だって武蔵の総長兼生徒会長の動向だものね――――――でも教えないわ!」

 

 テンションを振り切らすように答えるのは、ゆるいウェーブの掛かった茶色の髪を飾り布で所々結び、豊満な胸を腕で支えている少

 女。葵・喜美だ。

 

「だってこのベルフローレ・葵が朝八時に起きたらもういなくなっていたんだもの」

 

「お前テンション高いのに起きるの遅ぇよ!!」

 

 全員から言われるが、当の本人は何事も無く、訳の分からない自信に満ち溢れていた。

 すると、ナイトが喜美に聞く。

 

「あのー、喜美ちゃん。また芸名変えたの?」

 

「ええそうよマルゴット。だから私のことはベルフローレ・葵と呼びなさい!いい!?」

 

 すると喜美はナイトのところまで行き、ナイトの肩をがくがく揺らしながら言う。

 

「こ、この間はジョゼフィーヌじゃなかったかな?」

 

「あれは三軒隣の中村さんが飼い犬に同じ名前をつけたからナシよ!いい!?」

 

「んじゃ。ユーリはさぼりとして、トーリは無断欠席っと。しかしまあ、武蔵の総長兼生徒会長が立派に私事で遅刻とは。こりゃいかんねぇ」

 

 オリオトライがそういうと、今度は眼鏡を掛けた少年が呟く。

 腕章には、『書記 トゥーサン・ネシンバラ』とあった。

 

「もう160年もずっとそうだものね。こっちはあっちこっち移動しっぱなしで権力骨抜きで。各国の学生の上限年齢は無制限なのに、武蔵じゃ18を超えたらもう政治も軍事も出来ないんだから」

 

 そう諦め口調に、しかしその言葉の裏にはどこか力が満ちて、話す。

 

 この世界には『校則法』というものがある。

 簡単に言えば、軍事・政治は学生任せ、というものだ。

 そのため、教導院といえば事実上の国家である。

 教導院には、軍事担当の総長連合と政治担当の生徒会がある。

 総長連合は、総長を筆頭に副長と第一から第六の特務があり、それぞれが役割を担っている。

 生徒会は、生徒会長を筆頭に副生徒会長・書記・会計とある。

 

 そしてその下に委員会や部活などがあるのだが、これらはあまり干渉してこない。

 各国の教導院の上限年齢は無制限、つまり年老いていようが学生であれば政治・軍事を行える。

 が、武蔵は違う。上限年齢が18と決められている。

 これにより、各国よりも不利な立場にあるのだ。

 ネシンバラの言葉を注意するように、今度はやや太めの少年が言う。

 

「小生思いますに、あまりそういうことを言っていると危険ではないかと」

 

「心配ないよ。連中、僕らの言葉を拾ってる暇はないだろうから。何しろもうすぐ三河圏内だからね」

 

「あらま。大人ぶっちゃって」

 

 彼らの発言に苦笑しながら言うオリオトライ。

 

「でもま。君ら、学生最後の年だけどこれからしたいこと、やりたいこと。分かってる?」

 

 そういって腰を落とし、戦闘体勢に入る。

 その瞬間、特務を含めた戦闘系技能を持つ全員が雰囲気を変えた。

 それを見てオリオトライは内心、嬉しく思う。

 

「いいねぇ。戦闘系技能を持ってるんなら、今ので来ないとね。それじゃ、〝品川〟に着くまでに先生に攻撃当てられたら」

 

 と、オリオトライがここで片手を目の前に広げる。

 

「出席点五点プラス。分かる?五回サボれるの」

 

 教師の発言じゃねえ、と誰しも思うが、思うだけである。

 誰でも、授業というものはサボりたいものである。

 すると、点蔵が手を上げる。

 

「先生!攻撃を『通す』ではなく『当てる』でいいので御座るな?」

 

「戦闘系は細かいわねぇ。それでいいわよ。手段も問わないわ」

 

 すると、点蔵は急に両手で何も無い虚空を揉み始めた。

 

「では、先生の体のパーツでどこか触ったりすると減点されるところあり申すか?」

 

「またはボーナスポイント出るようなところとか?」

 

「あっはっは――――授業始まる前に死にたいんはアンタら二人か」

 

 と、オリオトライは背の長剣を点蔵とウルキアガに向ける。その動作に点蔵、ウルキアガは体をびくっとさせて硬直させていた。

 

 そんな会話をしていると、それじゃ、とオリオトライは言って、橋から飛び降りた。

 

 傍から見ればただの投身自殺にしか見えないが、戦闘能力はおそらく武蔵の中でもトップクラスの人間。くるりと一回転をし、着地した。

 

「ほら。遅いわよ!」

 

「くっ!追え!!」

 

 ウルキアガが一喝するがごとく言うと、全員が走り出した。

 

 オリオトライは〝後悔通り〟と呼ばれる通りを走っていた。

 ふと、目の端で一つの墓碑を捉える。

 

『1638年 ホライゾン・Aの冥福を祈って 武蔵住民一同』

 

 オリオトライはそれを見て少しだけ微笑む。

 

「(ホライゾン、か。きっとあの子達にとって、全ての始まりになる名前でしょうね)」

 

 さて、と地面を一回蹴り、宙へと飛ぶ。

 そろそろ先頭集団が来る頃だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、最終的に全員が〝品川〟に到着するころには息も切れ切れだった。

 対してオリオトライは息切れはおろか汗すらかいていない。

 

「こーら。遅れてやってきて勝手に寝ない!無傷なのは・・・鈴だけかな?」

 

「は、はい。あ、いえ、わ、わたしは、ただ、ペル、ソナ君に、運んもらって、いた、いただけですのでな、なにもし、してい、ません、し」

 

 確認する声に反応したのは、上半身裸で筋骨隆々の大柄な青年、ペルソナ君を仰いでいる少女、向井・鈴だった。

 オリオトライはそれでいいのよ、と頷く。

 

「そういうのがチームワークなんだから。生存一名。救助者も上手くフォローできていたみたいね」

 

 

 と、オリオトライの背後で扉の開く音がした。

 

「何だテメェら!ウチの前で遠足かぁ!?」

 

 そう怒鳴り声を上げるのは、赤い肌に四本の腕に角。

 魔人族だ。

 

「あーらら。魔人族も地に落ちたわねえ。って、今は空にいるのか」

 

「あン!?」

 

 魔人族が威嚇するように声を上げながら進む。

 オリオトライもまた、全く怯むことなく長剣を携えて進む。

 

「夜警団から言われてるのよ。シメてくれって。個人的には、先日の〝高尾〟の地上げ覚えてる?」

 

「あァ?んなのいつものことで覚えてねえな!」

 

「――理由分からずぶっ飛ばされるほうも大変よねぇ」

 

「っ、このアマ!」

 

 脳の血管が切れるのを感じた魔人族はそのままオリオトライに向かっていった。

 オリオトライは特に慌てた様子もなく、生徒達に講義を始める。

 

「じゃあまず先生が見本を見せます。いい?生物には頭蓋があり、脳があるの。頭を強く打てば―――」

 

 と、向かってくる魔人族の角を長剣で正確に打った。

 すると、魔人族はフラつき、あらぬ方向に転ぶ。

 

「あっ・・・・!?」

 

「脳震盪を起こすの。でも魔人族なんかは回復早いから、そんなときは素早く対角線上を、打つ!」

 

 ガンッ、と嫌な音が響き魔人族は地に沈んだ。

 

「はい。これが魔人族の倒し方。じゃあ次は実践ね。誰かやってみてー」

 

「出来るかあんなことー!」

 

 まるで「ちょっとそれ取って」みたいな気軽さでいうオリオトライ。

 生徒達は渾身の力でツッコミを入れる。

 

 と、そんな時、

 

「――あれ? おいおいおいの皆、何やってんの?」

 

 少年の声に皆が振り向く。そして彼は小さく溜め息をついた。

 

「おいおい、何って授業に決まってんだろ」

 

 そこにいたのは茶髪に、笑ったような目の、鎖付きの長ラン型制服を着崩した少年と、銀髪に髪と同じ銀色の四枚の羽を背中に生やした目つきがかなり悪い半袖型制服を着崩した少年の二人。二人とも、左の小脇には紙袋を二つ抱えて、パンを食いながら歩いてきた。

 

「トーリ不可能男(インポッシブル)葵」

 

 少年の名を誰かが言った。

 

「あー、ゆっちゃんだ!おーい」

 

 もう一人の名も誰か・・・マルゴットが呼んだ。

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