「――うん、俺俺。って、何だよ皆、俺、葵・トーリはここにいるぜ?」
彼は笑みを崩すことなく、異様な状況の全てをスルーして葵・トーリは皆の前に来た。凄まじいスルースキルと感心する。尊敬はしないけど。
「しっかし皆、こんなとこで奇遇だな。やっぱ皆も並んだのかよ!?」
そう言ってトーリが掲げて見せたもう一つの紙袋に、オリオトライが首を傾げた。
彼女が一瞬でトーリの背後に回る・・・前に、
「センセー、俺次の授業サボりまーす」
と、自己申告をしてから走ってその場から立ち去る。
「ゆっちゃん・・・」
「ユーリ・・・」
二人の魔女の視線に気づかないふりをして。
「しっかし、トーリもまさかアイツにコクるとはなぁ」
皆がいる場所から少し離れたところで走ってた足を止めて、歩きながらそう考える。もちろん、後ろから聞こえる打撃音や壁にぶつかる音は全力で無視しながら。
「トーリも逃げないって決めたのに、俺はなーにやってんだか」
だけど、いまさら二人になんて話すかなんて決まってないし、そんな覚悟も決まってない。
自分のヘタレさに改めてへこまされ、何となくポケットに手を突っ込んだ・・・ところで違和感を感じ、辺りを見回した。が、何もない。
「え?ちょっ、ま・・」
焦って体中のポッケと言うポッケを調べるが、出てくるのはエロゲーのアンケート紙ぐらいであった
「さ、さささささ、財布がねぇぇェェェェ!!」
と叫びながら急いで財布の行方を考える。実際彼が心配してるのは財布の中に入っている金で無く、財布そのものだ。金はエロゲーやらを買ってもう殆ど残ってない。だが、財布ごと盗まれるのはまずい。ってかかなり困る。
「センセーのいた場所にはない。だけどエロゲーを買った時には間違いなくあった。なら・・・あそこしかないか」
財布を最後に出した場所を思いだしその場所がある商店街に、ダルそうな足取りで向かう。
「向かうはパンを買う時に財布を出した軽食屋、【青雷亭】だ!」
基本的に、オルトライの授業は必罰主義だ。まず、
1 授業する。
2 回答者に質問する。
3 答えられなかったら授業点数は引かれずに厳罰が下る。通称【処刑】
3 答えられたら、申告していた厳罰に応じた授業点数が得られる。
何故そんな話をしているかと言うと、
『脱ーーげ! 脱ーーげ!』
トーリが全裸ネタを始めたからだ。
こうなったのは数分前。
授業をさぼったユーリにオリオトライが質問したのが始まり。当然いないユーリにこたえられるはずもなく、意気揚々とユーリの自己申告厳罰を確認したら、
『とりあえずトーリが脱ぐ』
と書いてあり、トーリが乗りだし前の脱げコールに戻るという訳だ。
破砕音とともにトーリが隣のクラスにぶっ飛ばされている中、二人の魔女は悩んでいた。
「ゆっちゃん、今日も来なかったね」
「そうねマルゴット。総長と一緒だったから、少なくとも教導院を辞めるつもりはないと思うけど」
マルゴットとナルゼはお互い見つめあうと、溜め息を付いていた。
「でもあの時以来ナイちゃんたち殆ど喋れてないし、ゆっちゃんが空を飛べなくなったって話も聞くし、心配だよ」
「全くのガセと言い切れないのが悔しいわね。まるで私たちとユーリが無関係みたいで」
この二人もユーリが二人の事を考えているのと同じで、二人もユーリの事を考えていた。
「じゃあガッちゃん。この授業が終わったらゆっちゃんの所に行っちゃおうか?」
「良いわね。そろそろ私もじれったくなって来たところだったから丁度いいわ。いる場所は多分あそこでしょうから」
二人は放課後の予定を決め、おたがい顔を見合わせクスッと笑うと、東を連れてきた麻呂弄りに加わるのだった。