FGOのapoイベでまさかの聖杯大戦ならぬ採集大戦が開幕し第二部大活躍のアヴィ先生が物凄いスピードで溶けていく様を見て苦笑いしました。
此が魔神柱を潰した欲にまみれたマスター達の力か.....(震え声)
それでは本編どうぞ。
~安珍が去って三時間後のとある屋敷~
「.......」
とある貴族が住む屋敷の部屋、そこに一人の少女が無気力な顔で空を眺めていた。沢山涙いていたのか顔が腫れ手にはくしゃくしゃになった多くの手紙があった。
「安珍様...どうして、どうして私の告白を断ったのですか。」
手紙を握り締めがら一人の少女清姫は呟く。彼女は昨夜、一人の僧侶にして愛する男『安珍』に対して夜這いという名の愛の告白をしたのだが玉砕、返事をはぐらかされてこの屋敷から逃げるように出てしまったのだ。
「何がいけなかったのですか....!!」
ポツリポツリと涙を流し悔しそうに顔を歪める。平安時代は女性の結婚出来る年齢は13歳と早く夜這いもごく当たり前プロポーズの一種として認められていた時代だった。
しかし、安珍はそういった常識はあんまりなく粗暴でありながら良くも悪くも紳士的な部分がありソレが食い違って失敗に終わってしまったのだ。
「私は安珍様に嫌われてしまった。いっそ死ぬしか....」
彼女の考えは早計だと思われるが夜這いされた安珍は意識が飛んでいたとはいえ拒絶するかのように彼女を押し退け両手両足にきつく縛り付けられた縄を己が筋肉で破りバク転をしてそのその反動を利用して跳び壁に貼り付く忍者のように逆蝉ドンをやったのだ。
その後、安珍は意識が戻り自分がしたことを全力で謝っていたのだが告白云々については僅かに顔が苦笑いになりはぐらかし任務が終わったら言うと逃げるように屋敷を出てしまった。
嫌われていると考えてられても可笑しくない。
「せめて安珍様を支えたかった......」
安珍は自分を軽視しずぎている。それは、彼の相棒で思いを寄せている式神にして清姫の義理の姉的存在『加賀小雪』も危惧している要素だ。
彼の過去は壮絶極まりないものだ。幼くして両親を亡くし貴族に身体目当てで襲われそうになり、住職に保護された後もまるで死に場所を求めるかのように血反吐を吐きながら鍛練を積み重ね、死人が出て当たり前の任務を受け重症を受けようが心が擦りきれようがそれを魔術や包帯などで上手く隠しごく普通に振る舞う彼を見て辛かったのだ。しかもそれを手練れた相手でも看破するのが難しいのだから尚更たちが悪い。
そんな彼の支えになりたかった。しかし昨日でその夢が潰えた。どうしたら良いか分からなくなるがある答えに辿り着く。しかしその答えは到底追い付けない夢でもあった。
「力があれば、私にも安珍様を守れる力があれば安珍様が自分に嘘をつかず平穏に暮らせる筈。」
「私は力が欲しい!安珍様のような力が欲しい!!」
そう、叫んだ途端自分に異変が起こる。次第に水色の髪から母親のような美しい白髪へと変わり始めたのだ。
「髪がお母様のようになって!...力が、力が溢れてくる!」
髪の色が変わっている事に清姫は一種の恐怖を覚えるが身体の中から今までなかった力が溢れだしその喜びが勝ったのか恐怖が薄れていく。
「...!!そう力があれば安珍様を一生守れる邪魔な虫達を焼き殺せる!!例え安珍様が嘘をついて拒絶しようがそれを力で捩じ伏せて阻止する事も出来る!
あぁ!此が力!愛を守れる力!ふふふっ小雪姉様が何で戦うことが好きなのか少しだけ分かった気がしました♪」
嬉しさの余り襖を強く開け裸足で子供のようにくるくると回りはしゃぐ。普通なら誰かが止めに来るのだが彼女が発する妖気に当てられて両親含めてこの屋敷にいる全員が気絶してしまっているのだ。
そんな事を気に止めず幸せで満たされているのか恍惚とし、13歳にしては妖艶で狂気に満ちた笑顔で笑い続ける。
「あぁ!この溢れる力!私が求めていた力です!ふふふっ、何でこんなにも簡単な答えがあったのに知らなかったのでしょうか私は、さぁ安珍様が無理をして傷付く前に見つけないと....」
「あぁ!安珍様!今新たな力を手に入れた清姫が参ります!!待ってください今から貴方を....貴方を!」
その笑みを止めず彼女は裸足で地面を強く蹴り跳躍する。姿は少女だが纏う気配は狂気染みたものを漂わせる狂人のソレだ。僅かに残る彼の魔力の残滓と
この行為は異常だが今の彼女は恋に焦がれた一人の少女、この行為は彼女にとっては恋する乙女にとっては当たり前の行動にすぎないのだ。
そして、口を歪ませ彼女は呟いた。
~日高川の道明寺周辺で死闘を繰り広げる数時間前、紀伊国牟婁郡の何処かの山~
ザアァァァァ....
「......。」
暗闇の中、月が照らし蛍が飛び灯りを灯す渓流。そこに一人の僧侶『安珍』は川に顔をつけていた。十人中十人が何やってんだ?と変な目で見られる行為だが今の彼にとってこの方法しかないと思いっきり川の水に顔を入れかれこれ5分は経過していた。
「.......!!」
顔をつけたまま完全に動かない為、溺れ死んでいると思われたが突然水中で目を見開きそのまま水飛沫を上げながら顔を上げる。
「.......すぅぅぅ、ふぅぅぅぅ.....。」
目をゆっくりと開けそのまま深呼吸をする。何時もは、表情筋が死にかけた無気力そのものな顔なのだが、今はとても落ち込んで悩んでいる顔をしていた。
(....さて、取り敢えず明鏡止水を保てる位には落ち着いた。しかし、夕方頃に滝行をして精神統一したが昨夜の出来事を思い出した瞬間、こうも此処まで取り乱すとは俺が思っている以上に後悔...しているのか?)
腕は僅かに震え水面に映る顔は今まで見たことのない怯えた表情をしている自分に思わず自傷気味の苦笑いをする。
彼は昨夜、妹のように可愛がっていた貴族の娘『清姫』に夜這いをされるという名の愛の告白をはぐらかした上で任務があるから其が終わったら返答すると言い逃げるように屋敷を出てしまったのだ。
(あぁくそ、前世の俺の記憶と常識を呪いたい。平安時代にとっては13歳の結婚も夜這いも当たり前じゃないか。)
この時代は平安時代『前世の彼』が生きていた時代とは違い命は簡単に散り、生きていく上で必要な常識や価値観が全く違う。
しかし、彼自身前世で培った知識や記憶のお陰で今の自分が存在し自我を保っている。しかしそれが仇となり、清姫の人生最大の告白を台無しにしてしまった、その事でかなり落ち込んでいるのだ。
(.....ウダウダ引き摺っても仕方ない、一旦切り替えて任務に切り替えよう。)
任務に集中する為に気持ちを切り替え森のなかに飛び込む。忍者のような移動をしていると懐から僅かな振動を感じる。安珍は懐から名前が書かれた人型のお札を取り出し耳に翳す。すると、少し年老いた男の声が聞こえてきた。
『おお、安珍殿か。今結界を発動する準備が整った所なのだが安珍殿は目的地に向かっている最中ですかな?』
「あぁ、そろそろ目的地近辺に辿り着く。しかしすまない住職、体調が万全なら討伐対象をそのまま滅することが出来た筈なのだが。」
『そんな無茶をしなくて良い安珍様!!むしろ平気なのか?今回の相手は複数人が結界を発動して捕らえても直ぐに破壊するほどの怪力と腕を切り落とそうが蜥蜴の尻尾の如く直ぐに生えてくる再生力、馬でも追い付けない程に素早く手練れの我々が何度も苦汁を味わった強敵ですぞ?』
「大丈夫だ、その怪力を生み出す両腕を再生できないように焼き斬り次いでに足の機動力を削げば問題ない。後は簀巻きにして道明寺まで引き摺って強力な退魔用の結界に入れて弱った所を全員で叩けば完全に滅せる。......どうかしたか?」
『....規格外と前々から聞いていたが本当に一人で....あの熊二頭分の巨体の妖怪を道明寺まで引き摺ってくるのか?一里(3.9km)の距離はあるぞ?』
「....?狂暴で巨大な熊を仕留めた時、担ぎながら普通に走れたしそれ位なら引き摺りながら余裕で辿り着くぞ?あっそろそろ危険な所まで来た。道明寺まで近付くまで暫く連絡を切るぞ。」
『......ハァ。了解した後武運を。』ボシュッ
(何故溜め息を吐く?そんなに可笑しいか?それにしてもこの札便利だな。その代わり使い捨てで魔術の心得がないと紙屑同然だけど。)
遠くにいる道明寺の住職からの連絡事項を札を通して
聞き終わり連絡を切り耳から離すと一気に燃え塵になる。
敵の索敵範囲ギリギリまで来ると白銘と雲斬りを両手に持ち彼だけが使える起源魔術の一つ
(.....何だこの妙な静けさは?それに妙に焼き臭い。確か今回の妖怪は炎の妖術を使うと聞いていたが暴れたのか?...毬尾兄弟と大鷹がいれば詳しい索敵が出来るのだがまだ戦場に出るほど癒えてないからな、マジで恐ろしいなコトリバコ。仕方ないバレるのを覚悟して索敵魔術使うか。)
男は白銘を槍の姿に戻し刃を地面に突き立て目を瞑り索敵魔法を発動し、1km先で生体反応を見つけるがそれは彼にとって困惑するものだった。
(ハイッ!?何で彼女が此処にいる!?)
安珍は困惑の表情をしながらその場で一気に走る。邪魔する樹々を殴り折り一直線で辿り着くと其処には此処にいる筈もない少女が燃えて絶命している妖怪をただひたすら見ていた。安珍が近くにいることに気付くと後ろを振り向き笑顔になる。
しかし、彼女の髪と瞳は母親と同じ白髪の赤い瞳をしていた事に気付き安珍は動きを止めてしまう。
「清姫!?何故此処にっ.....てその髪!?」
「あぁ安珍様、わたくし貴方様の返答を待つのが我慢出来なくて、その...裸足で家を飛び出して誰も気付かれずにこっそり蛇のように貴方に着いてきました。安珍様はお疲れのようでしたのでわたくし先にこの場所に出向いてこの
「ちょっと何言ってるか分からない。何処でこの情報を聞いた?」
「はい!近くにいた蛇を使って安珍様が道明寺にいる一町(1km)先の寺に忍び込ませわたくしは茂みの中で聞きました!」
「えぇ.....」
「それと...安珍様。」
「?」
「わたしとけっこんするかどうかきまりましたか?」
彼女は頬を赤らめこう答えるが安珍は思考が混乱している為理解が追い付いていない。
当たり前だろう。妹的存在が裸足で家を飛び出して本人に気付かない程の
混乱するのも無理もないが安珍はそれを察せれないように感情を抑え自然体のまま臨戦態勢に移る。
彼女はまだそれに気付いていないのか笑顔で喋っているが本題に入った途端、少女とは思えない恐ろしいオーラを出しながら安珍に対し返答を待つ、安珍はその恐ろしさに内心ゾッとしながらも咳をして誤魔化し彼女に対してその答えを言う。
「あぁ...その昨夜の事は本当にすまなかった。妹のような存在だった君と....結婚すると聞いてちょっとだけ気が動転してたんだ。君にとっては人生最大の告白だってのに台無しにしてしまったとこを今でも後悔しているんだ。だからこんな場所で言うのもあれだからけっ..」
「結婚ですね!安珍様!」
「まだ話している途中......」
「子供はっ…子供は何人欲しいですか安珍様!!私は三人欲しです!女の子がふたり、男の子がひとりです!名前は安珍様が決めて下さい。わたし、あんまりそういったものは得意じゃないのです。えへへ、どっちに似てると思いますか?わたしと安珍様の子供だったら、きっと男の子でも女の子でも愛らしい筈です!それで庭付きの白い屋敷に住んで、 大きな犬を飼うの。犬の名前くらいはわたくしにに決めさせて下さい。安珍様は犬派?猫派? わたしは断然犬派ですが、あ、でも、安珍様が猫の方が好きだっていうんなら、勿論猫を飼うことにしましょう。わたし、犬派は犬派だけれど動物ならなんでも好きですから。だけど一番好きなのは、勿論安珍様ですよ。安珍様が私のことを一番好きなように。そうだ、安珍様はどんな食べ物が好きなのですか?どうしてそんなことを聞くのかって思うかもしれないと思いますが、やだ明日から私がずっと安珍様に料理を作ることになるんだから、ていうか明日から一生安珍様の口に入るものは全部わたしが作るのですから。やっぱり好みは把握しておきたのです。好き嫌いはよくないけれど、でも喜んでほしいって気持ちも本当ですから。最初くらいは安珍様の好きな料理で揃えたいって思うのです。お礼なんていいのです。彼女が彼氏の料理を作るなんて当たり前のことなのですから。でもひとつだけお願いしても良いですか?私、はしたないですが「あーん」ってするの、昔から憧れでした。だから安珍様、明日のお昼には「あーん」ってさせてくださいね?照れて逃げないですよね?そんなことをされたら私あの夜の事を思い出して傷つきます。きっと立ち直れないで泣きわめきます。傷付いた心を癒すため安珍様を殺してしまうかも...。なーんて。それでね安珍様.....」
(あっ愛が重たい.....)
まさか前世で人気を誇っていたあの独特の言い回しが得意な小説家が担当した原作の漫画で作り上げた伝説に等しい怪文に似た台詞を聞くことになるは...
安珍は未だに饒舌で話している彼女を止めたいが、こうなったのは自分が原因、何も言えずただひたすら『うんっ!そうだなっ!』と苦笑いしながら答えるしかない。
彼女の安珍に対する愛の語りが12分経過した頃、彼女は突然ある異常ともいえる発言をする。
「.....あぁ、でもまた新婚生活の中で拒絶されて逃げられたら困りますし今から手足を引きちぎりましょうか?」
「(....雲息が怪しくなったな。)清姫...じゃなかったきよひー、流石にそれをしなくても俺は逃げないですよ?」
「そ れ が 嘘 か も 知 れ な い で は あ り ま せ ん か?」
「!?」
安珍が清姫の過激な発言をしたことに気付き何時でも彼女を抑えれるように体勢を整えながらその問いを否定するが、突然彼女の顔が無表情になりそれを安珍に向ける。その顔は彼にとっては恐ろしいもので一歩後ろに下がってしまう。それを見た清姫は沸々と妖気を溢れだしながら静かに無表情から笑顔になり安珍に向けて語りだす。
「ほら?今逃げたじゃないですか?」
「あー、これは驚いて一歩後ろに下がってしまっただけだ。別に逃げたわ.....」
「嘘 で す よ ね? 私安珍様をあの雌狐よりも一番安珍様が大好きでずっと見てきてきましたから分かります。後ろに下がったとき安珍様の頬が僅かにひきつっていましたよ?」
「ッ!?」スッ
「ほら!今頬を触ったって事は驚いたのではなく私を恐れたということですね!!」
「これは...違うんだ、違う筈だ。」
「そんなに愛でたい位に狼狽えなくても良いですよ安珍様♪まぁ恐がられたのはもう気にしませんが、嘘をつかれたのはいただけませんね。私、嘘はキライですから♪」
「あぁそうだ、舌を引きちぎって喋れなくすれば安珍様は嘘をつけなくなる、それは私の全力の愛に対して嘘偽りのない正直な問いを出してくれるのではないでしょうか?そう思いますよね安珍様?」
「その愛の形は間違っている。それは一方的なものであって歪んでいるものだ。」
「でも、安珍様は「愛」について全く知りませんよね?憶測で愛を語らないで下さい。」
「憶測ではないのだが....(俺だって何度か女性と付き合ったことはある、前世で尚且つキスの先までいった事はなかったけど)。」
安珍は目を反らす。女性と付き合っていた事はあってもそれは前世の彼だった頃、この世界に来てから女性との付き合いは全く恐ろしいほどにない。
そして、昨夜のことも思い出し彼女に対して反論はするものの強く反論出来ずにいる。そんな彼を余所に清姫は両手で自分の頬を触り火照った表情をしていた。
「あぁ、弱々しい安珍様がこんなにも愛らしいなんて女性としての本能が疼きます!これはマモラナイト。」
「まっ守る?俺を...守るのか?」
「そう!今度は私が安珍様を一生守る番です!!
だから、安珍様は童のように母にすがる赤子のようにわたしだけを見て守られていれば良い。安珍様がわたしを救ったあの日のように、ワタシガアンチンサマヲマモラナイト。」
「(妖気が....上がった!?しかも、近付けねぇ!!)くっきよひー!その力を抑えろ!お前が人でなくなってしまうぞ!!」
その発言と共に清姫は急激に妖気を炎のように解放し姿を変え始める。それを阻止しようと必死に安珍は近付くがその妖気から生じる風圧は凄まじく、まだ傷が癒えてない彼では立つのがやっとの状態だ。それでも彼はめげずに一歩ずつ彼女に向けて歩き呼び掛ける。
しかし時は残酷なもの、次第に少女は異形の女性へと変化していきながら彼に対して怒りの言葉をぶつける。
『何でこんなにも傷付いている安珍様を守る為にこの力を手に入れたのにそれを手放せと言うのですか!?
やっぱり安珍様は嘘つきだ!自分の身体が深く傷付こうがそれを軽傷だと嘘をつく!!友は大事だと誰隔てもなく接しながらも安珍様は本当の自分をさらけ出そうとはしない!!』
(なっ!?妖気が爆発的に増幅した!?)
『心が押し潰されて壊れそうになっても安珍様がそれを悟られないように平然と振る舞うから誰れもがそれを気付かず安珍様を救おうともしない!!その誰か一人が気付いて救おうとしてもそれが例え背中を預ける相棒だろうが私だろうが安珍様はそれを拒絶する!!』
『私は安珍様と何度か会っていく内にそれに気付いて安珍様と会う度に嬉しい反面辛かった!!その脱力ながらも和ませる顔の裏では悲痛の叫びをしていると思うと胸が張り裂けそうだった!!』
『もう!嫌なの!!安珍様が嘘をつくことも!!安珍様が身も心も壊れて擦りきれていく様を見ていくのも!!』
『だから....ダカラァ!!』
「くぅ!?うぉぉおお!!!」
『ダカラ安珍様、
その悲痛な叫びともに衝撃波と纏っていた妖気の炎が弾けとび辺り一面を火の海にしながら姿を現す。
上半身は妖艶な服がはだけた女性だがそれ以外の部分は妖怪と言われても可笑しくない姿だ。下半身は牛丸々一匹余裕で飲み込めるほどに巨大な白蛇の尻尾、肌や髪も死人のように白く目は血涙を流したかのように赤く光り口もまた鋭く舌も蛇のように長く、額には鬼のような二つの黒い角、爪は人の肌を簡単に切り裂く程に鋭くなり血を吸ったかのように赤黒く変色している。
安珍は後ろに吹き飛ばされながらも迫り来る妖気の炎を拳で弾き飛ばしながら地面に着地し彼女を見るがその顔はあまりにも悲痛で後悔にまみれた悲しい表情だった。
(俺は!!......俺は!!)
「うおぉぉぉぉぉ!!此方だ清姫!!」
『逃ガシマセン安珍様アァァァァァァァ!!』
「(速い!!それでも!!)グッ!!ガァァァァァア!!」
悔しさの余り拳を強く握りグローブが強く擦れる音がなり感情に任せて武器を取り獣のように逃げる振りをしてある場所に移動するために誘導させる。逃げる安珍を追うかのように蛇の尻尾を唸らせ木々を薙ぎ倒しながら清姫は急速に接近する。
かなり距離を離していたが一気に距離を縮まれるが安珍は闘気を脚部に集中させ一気に駆ける。動く度に足の筋肉や魔術回路が悲鳴を上げるがそれを無視しひたすらある場所に向けて移動していた。
(彼女の言った通りだ俺は嘘つき者、『安珍』という『破ァ』と拳であらゆる魑魅魍魎を倒す僧侶という役を殻にして本当の自分はこの世界に来てから壊れていたにも関わらず壊れてない振りを演じてたに過ぎない。)
(それを演じていく内に誰かに救われるのが怖くなった。慕いしい友であろうと人であろうと、そして本当は心の底から愛していた
(本当は怖かった。『愛』が。『愛』とは心をさらけだすの物、本当は心が壊れた自分を見られるのが怖くて怖くてそれが嫌で『愛』という感情を真っ先に壊すことで忘却の彼方に棄てた。その今までのツケが一気に回るとは、本当に....本当に俺最低な男だ。自分のエゴで最も大切な存在を傷付けた、自分を恐れず一人の女性として接してきた人物にだ。なら、自分はその罪滅ぼしをしなければならない。例えそれが.....!!)
「俺の....俺の命が失われる事になっても!!」
自分の命を捨てる覚悟で地を駆け出した。目指すは道明寺、此が日高川で清姫と死闘を繰り広げられる数時間前の出来事、そして今始まった戦いが後に形を変えながら世に語り継がれる『安珍・清姫伝説』が始まるまでの八日前の出来事である。