それ逝けあんちんマン!   作:アビャア

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新年明けましておめでとう(今更感)。

1ヶ月以上遅れてマジですみません。正月休みの間に六割出来ていたのですが、仕事初めで忙しい部署に移動して書く暇もなく気づけば2月になっていました。
社会って大変だぁ.....。



そう言えば今年のバレンタインイベントはフルボイスですねちなみに自分は去年の12月頃にゲットしたアビゲイルと刑部姫のチョコ礼装を貰う予定です。








五の歩み さらば仏蘭西

SSS/月GRID日『フランス修復完了』

天気:ファッキンホット

 

ジャンヌ・ダルクオルタ含む敵勢力をカルデアのマスター達と協力し討伐、特異点の歪みとして使用されていた聖杯を回収したことによりフランスに平和が戻り無事、カルデア側は第一特異点の人理修復に成功し、俺は次の特異点ではぐれサーヴァントとして召喚された。

 

やっぱり、花のゲス魔術師が言ってた通り、俺が行かなければならない三つの特異点のうち、一つを解決したことで次の特異点に飛ばされる仕様なのは分かっていたのだがカルデアに召喚されたかったなぁ。

 

 

フランスで我が愛しき妻『お清』こときよひーと1000年以上振りの再会が出来たから余計にそう思えてしまう。

 

 

きよひーの姿は向こうは安珍清姫伝説時の13歳だったが、俺を抱き締める力と愛は相当のもので、その懐かしさに戦場の中で思わず一筋の涙が出てしまった。

 

あんまりというか殆ど感情が出せない俺がこんなに感情を剥き出しになるのは理由がある。

 

英霊という性質上、俺達が出会える確率は天文学レベルの低さ。仮に出会えても聖杯戦争の開催地では、戦局によっては敵対し戦うという両者にとっては地獄ともいえる状態での再会だって有り得るのだ。

 

しかし、重要な戦場の真っ只中だったとはいえ清姫と再会出来たことはまさに奇跡だ。

カルデアの双子マスターこと藤丸姉弟には頭が上がらないレベルである。

 

取り敢えず、感動の再会をした後どうなったか今から前編、中編、後編に分けて此処に書き記しておこう。

俺もこの辺りはちゃんと記しておかないといけないし。

 

 

にしても日差しが強いし蒸し暑いし、いかにも無人島って感じで波も荒いと来た。これどうすれば良いのだろう.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『前編』

 

 

敵の軍勢が襲い掛かるなか、再会に噛み締めながらも、そのきっかけを作ってくれた二人のマスターに恩を返すため、俺達はラファールに跨がり敵の大群に突撃し凪ぎ払いながら敵城へ進軍を始める。

 

きよひーが俺と来世でまた巡り出逢えたという興奮で張り切り過ぎて炎の蛇二匹を巧みに操り敵を殲滅し俺は手綱を強く持ちながら馬を操ることに専念していたが、きよひーが操る炎はとても荒々しくそれて情熱的だった。

 

 

本人曰く『此は私から溢れだした安珍様への愛の形です!』っと言っていた.....愛の力って怖いなぁ。

 

彼女の愛の力は凄まじく、敵城に乗り込む際、敵側のジル・ドレェが施した強力な魔術結界が刻まれた城壁に対して、きよひーの宝具である『転身火生三昧』で自らを大蛇に変貌させて突撃し粉砕するゴリ押しプレイを見て生前、満身創痍で大蛇に挑んだあの夜を思い出し身震いをしてしまった程の迫力があった。

 

 

 

城壁を粉砕しそのまま内部に突入すると、マイクを模した槍とスキルの恩恵か不明だが竜の尻尾と翼、角が生えたドラゴン娘系アイドル(自称)のランサーの『エリザベート・バートリー』と旗を巧みに操り敵を倒すジャンヌ、そして数多くの宝具でサポートに回るアストルフォが此方を見て驚いていた。

 

 

 

 

数秒位の沈黙はあった気がするが、バートリー嬢はド派手な演出なのに俺の無表情でシュール過ぎる顔に対し困惑しながらも的確なツッコミをし、それに対してきよひーが対応するというまるで喧嘩?のような漫才が繰り広げられた。

 

話の内容から察するにきよひーとバートリー嬢は仲が良いと見た。きよひーって社交性が高いけど時代が時代だったから腹を割って話せる友達少なかったからなぁ。

きよひーに新しい友?が出来て俺としては嬉しい限りだ。

ただ、血の跡やこびりついた肉片、漂う血生臭い城内を見て『センスが有るわねここの城主。』と言った時は姿や性格、声や名前が違うけど、カーミラと同一人物なんだなぁと思うと同時に『しかし何故アイドル?』という謎が生まれた。

 

そこはカルデアに召喚された時にバートリー嬢と出会った時に聞いてみるか。

 

 

話が脱線してしまったのでバートリー嬢がツッコミを入れている所まで話を戻す。

 

その時、ジャンヌはまた再開出来たことに目元が潤みアストルフォに至っては泣いて喜んでいた。

 

そして、カルデアのマスターである藤丸姉弟とシールダーのデミ鯖(略称)のマシュとエミヤ、クーフーリン、アルトリア(リリィ)は、フランス兵の服を着て馬に跨がる俺に困惑しながらも驚き俺と再会出来たことに喜んでいた。

 

流石にファブニール単騎という状況で生き延びれたことに他の面々、特に常識人枠であるロマニとエミヤは驚きを隠せずにいたが、きよひーが『愛の力が成せる』という力説で二人を無理矢理納得させていた。

 

ゴリ押しなのにこの説得感は何だろうか?

 

 

 

マシュとアルとジャンヌの純粋組とアストルフォは納得し、藤丸姉弟困惑して唸りながらも『愛って凄いなぁ』と感心しかけバートリー嬢が鋭いツッコミをするという混沌状態が生まれていた。

ちなみにエミヤとクーさんは思い当たる節があるのか遠い目をする。

 

クーさんって史実だと女性関係が凄いらしいのは知っているけど、エミヤってもしかして女性関係が凄かったのか?それについて追及したかったが、戦場だったし俺も女性のあれこれで言える立場ではなかったので聞かなかった。

 

こうして俺ときよひーは敵の本拠地でカルデア組と合流し敵大将がいる場所へと城内を進んだ訳だが、ラファールとは此処で別れた。

流石に狭い城内で騎馬戦をするのは分が悪いし、ラファール自身限界が近付いていた。

老体なのに自らの命を削るレベルテンション上がり、まるで初めての草原を駆ける若々しい子馬の如く全力疾走したせいか息バテが酷い状態。

 

興奮したこともあって少々手間どったか、何とか了承し自分に生成すると、魔力や生気全てを俺に供給し消滅した。

突然の事に俺も驚いたが、流れてくる魔力から最期に戦場を駆ける事が出来たことに対する感謝の念を感じ取り俺はラファールに敬意を持って取り入れ壊れかけていた霊基を修復した。

完全に修復された訳ではないが念話が使用可能になり、英霊相手でも遅れを取らないレベルまでには回復した。

 

ラファールがこの世界から去る時、俺達に対して力強い眼で見つめると鼓舞するかのように前足を上げながら、力強い雄叫びを上げ蒼い炎に包まれこの世界を去った後、俺達はこの思いを無駄にしないと決意を抱いて進んだ。

 

 

 

 

『中編』

 

 

 

俺は再びカルデアのマスター達の配下に加わり総大将がいる場所へ敵を蹴散らしていくのだが、城の内部はワイバーンやジルが召喚した海魔とシャドウサーヴァントという厄介な存在が蠢いていた。

 

シャドウサーヴァントは、召喚者の実力不足や召喚陣の不備で召喚された残留霊基で構成された存在。

宝軍の真名も発動出来ず、スペックも英霊が低く聖杯戦争だと負け確な存在なのだがここは特異点で合戦状態、戦いは数だよ兄貴!というのが世の中の理。

邪ンヌが聖杯を用いてシャドウサーヴァントを大量召喚しジルが指揮すれば、英霊だって苦戦を強いられてしまうのだ。

 

そしてジルの宝具である魔導書は海魔といった水魔系の類いの召喚等を記した本。

その本の題名は知らないが、何者かがこの本のベースとなった原典を翻訳、複製しジルに渡した本なのは確かだ。俺も書き手が違うが、こういった邪神染みた複製品の本を見たことあるし間違いないだろう。

 

複製品だから性能は低いと思ったら大火傷。その本の内容は、外なる神々の神秘や魔術を記している。魔術回路がくそ雑魚な素人でも精神と正気を犠牲にすればその真価を発揮出来る代物だからとてもヤバい。

しかもこの本自体に魔力炉が内蔵されていて、海魔を大量召喚しても術者の負担が軽微というトンデモ仕様というオマケ付きだ。

その代わり本を手放したり、魔導書に送る魔術供給を一度絶つと、それに伴って召喚された海魔達も消滅してしまう弱点があるのだが、当の本人が未だに現れないから眼前にいる敵を凪ぎ払うしか方法しかなかった。

 

敵を凪ぎ払い続けカルデアの案内で突き進んだ結果、邪ンヌがいる玉座の扉まで来たのだが此方側は体力や魔力を半分程に消耗してしう。

そんな状態を待ってましたと言わんばかりに狂人のジル・ド・レェが拍手をしながらニッコリと笑いまるで海中から上がるかのようにぬったりと現れた。

 

彼は現れるとジャンヌとアルを見て両目をこれでもかと見開きながら彼女達を讃えジャンヌの質問に答えていくうちに彼女を処刑したフランスに怒りを露にして叫んだ瞬間、俺は直ぐ様ドロップキックをしてジルを吹き飛ばし距離を離した。

 

流石に外道だと思うがここは戦場。『やぁやぁ我こそそは●●』といった前口上を待つ時間が惜しい程に戦況が緊迫しているし、これ以上無駄な体力を減らす訳もいかなかった。

 

 

 

それにジルは狂っていても軍師としての頭は冴えている。もしも邪ンヌと彼のペアで戦った場合、聖杯の力も相まって負ける確立も高い。

それなら片方がジルを抑えつつ、もう片方が邪ンヌを倒すしか方法しかなくこうした行為に至った訳だ。

 

突然の俺の行動に、きよひーとエミヤ以外の驚く面々に対し俺は邪ンヌと決着を付けてこいとサムズアップして促すと、カルデア組とジャンヌは感謝の言葉を送り扉を開いて中に入ろうとするが、そうはさせまいと遠くから無数の触手が襲い掛かる。

 

しかしその攻撃は炎を纏った俺の薙刀で焼き斬られ、バートリー嬢の槍とヒポグリフに乗ったアストルフォの騎乗槍で弾かれ、きよひーが操る炎によって黒焦げにして相手の攻撃を防いだ。

 

迫り来る触手全てを対処し終わると、邪ンヌがいるであろう扉が閉まる。のを確認すると俺は薙刀を廻しながら、このメンバーにここに残った理由を取り敢えず聞いてみた。

 

バートリー嬢は『観客は多い方が良い。』と舌舐めずりをしながら大量の敵を見つめ、アストルフォは『流石に友を二度見捨てるのは勘弁』とニシシッと笑うと手綱を引き、きよひーは『最後まで安珍様と添い遂げると』左腕にぴったり両手を絡ませて頬を赤らめながら頬にキスをする。

 

 

そして、アストルフォに俺が残った理由を聞かれたので『俺は化物退治専門だから。』と下半身が7.5m級の巨大海魔に下半身を埋め込む形で繋がったジル・ドレェを指を指すと三人は納得したかのような顔で笑うとそれぞれの武器を構え再び臨戦状態に移る。

 

 

ちなみにバートリー嬢は顔を真っ赤にしてかなり初な反応を見せ、アストルフォは両手で隠していると見せ掛けてちゃんと見るスタイルだった。

アストルフォはともかく、ちと過激な感性の持ち主でたるバートリー嬢がこういうのに対して耐性が無いのは以外だった。

 

 

そんな和気あいあいな俺達とは違い、鬼の形相で俺を見ながらかつて冬木の第四次聖杯戦争の際に邪魔をされた挙げ句、第四次においてマスターを残し最初の脱落者となった屈辱。

このフランスの地でも邪魔をしまくりながら『自分の主』である邪ンヌに対しての様々な不敬をしたことによる怒りが爆発したのか、ジルは俺に向けて狂気と憎悪の言葉を撒き散らし大量の海魔と複数のシャドウサーヴァントを引き連れ襲い掛かる。

 

 

 

こうして最後の戦いが始まった訳だが、なんというかバイオハザードのラスボス戦のような熾烈な戦いだった。

海魔は死体を残すとその血肉を用いて増殖されるし、硫酸より強烈な酸を吐いてくる。

巨大海魔もジルの制御で大木のような触手を鞭のように動かして潰そうとしたり、壁や天井を壊しその瓦礫を弾丸のように飛ばしたりするから大変だった。

逆にそれを利用してシャドウサーヴァントや雑兵を盾にしながら敵の数を削ったがとてもしんどい。

 

 

しかもジル本人に攻撃しても融合している海魔の触手で防がれ、それを切り落としても高い自己修復能力で直ぐ様新しい触手を生やしたり傷口を塞いだりとても厄介。

 

ジルばっかり気にしているとシャドウサーヴァント及び海魔の奇襲を喰らいそうになる。俺とアストルフォを戦場馴れしているから何とか凌げるが、バートリー嬢ときよひーも戦いは馴れていても、こういった乱戦は慣れてないこともあってか、体力が削られていた。

 

それ故に俺は三人に向けてジルに気付かれないよう念話である提案をした。

二人は凄い嫌な顔をしたがバートリー嬢は『アンタっ天才!?その発想は無かったわ!!』念話で凄い絶賛された。

.....俺も正直言って使いたくない魔術の一つだが、ジルと融合している巨大海魔をどうにかするにはこれしかなかった。

 

まず最初に俺は俺の起源『変換・放出』を利用し魔力や気を魅了や殺気に変換して相手の注意を引く魔術『来いよベネット(殺気挑発)』を発動させ海魔やシャドウサーヴァントの敵意を此方に向けさせながらもジルに煽りまくり相手の注意を引かせる。

本来の性能は出せないが知能が低い敵相手なら術に嵌める事が出来る。ジルにもこの魔術を使いたかったが、精神汚染という魅惑や精神干渉の類いを阻止するスキルがある。

だから何だ?なら彼を嘲笑い蔑み彼を激昂させその怒りを俺に仕向ければ良い。

 

先ずは魅惑を海魔達が引っ掛かる程度にし、挑発と嘲笑いを織り混ぜた不愉快な殺気を重点的にしてジルに向けて発動。

精神干渉は当然阻止されるが、不愉快な感情が相手を包み込む。そして術者である俺に顔を向いた瞬間、ニヤリと嫌な笑みを浮かべ『作り』安部一族と酒呑童子のから学んだ煽り(煽り)を使い愉悦に語る。

 

実際の所は感情がほぼ死んでいるから演じてるに過ぎず表情筋がマジで痛かった。

 

ちなみにその内容は日記に書けないレベル。

テレビの世論の討論番組でピー音連発でどんな会話をしているか分からない状態で想像したら分かりやすいだろう。

優しく表現するなら『猟奇的ショタロリ魚顔のお前には真の聖処女であるジャンヌを語るにはおごかましい。』やら『お前はもう誰からも"赦されない"。』等の煽り。 流石にジャンヌについての彼是は言わなかったが、もし彼女がこの場にいたのなら全力ビンタされて嫌われているだろう。

 

俺の口から淡々と放たれる悪意ある言葉の暴力にジルは唇から血を出し目が充血して血涙を流す程に激昂し、俺に対して全勢力を集中させる。

 

対する俺は、白銘の持ち手を短槍の長さにして息を整え身体全体の力を抜きリラックス状態にさせ心を無にし棒立ちになる。

敵の攻撃が来るまで微動だにせず、俺の身体に当たる寸前で、目を開き全方位からくる猛攻を水のように滑らかにいなし始めた。

 

迫り来る多くの敵の攻撃を回避しその攻撃を近くにいる敵に喰らわせたり、敵の攻撃の勢いを利用した柔術や短槍の突きといったカウンター用いて倒したりと防御に徹しながら数を少しずつ減らしながら敵を分散させないように固めていく。

 

戦は未経験だが、前世において人外入り乱れた乱戦や一対複数の戦闘は腐る程に経験しているのだ。例え自分の力が不完全でも相手を倒せる術は身体に刻まれている。

そして、独学だが明鏡止水の境地に至っている身。如何なる状況でも一瞬で心を無にして身体を中国武舞のように動かすのも雑作もない。

 

 

未だに殺されない俺にジルは苛立ちを覚え金切り声を上げるがその瞬間、俺とジル及び敵達を囲む形で巨大なアンプが付いた城壁(絶望のライブ会場)が出現する。

そして、俺達の後ろで小規模とはいえそれなりの大きさがあるチェイテ城(メインステージ)の上に(マイク)を持ったバートリー嬢が羽根を広げて現れた。

 

ジルはハッと我に帰り彼女の宝具発動を阻止するために行動を移そうするが、俺は短槍状態の白銘をジルに向けて投擲する。ジルは触手で投擲された白銘を弾くが、その瞬間にアストルフォがヒポグリフの空間跳躍を用いて接近し『恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)』を発動。衝撃波と耳を塞ぎたくなるような強烈な音で動きを巨大海魔ごとジルの動きを阻害する。

敵兵はアストルフォに攻撃しようと動こうとするが、きよひーの転身火生三昧と俺の柔術と拳が相手を屠りまくっていてそれどころではなかった。

 

 

ジルは耳で抑えながら動きが鈍くなっている隙に、空中で独自の軌道で手元に戻ってきた白銘を手に取りそのまま跳躍、大蛇になったきよひーの上に乗り天井を破壊し外に出る。

 

一方のバートリー嬢はアストルフォの魔笛をものともせずむしろテンション上げ上げになり、史上最高の歌声(音痴を越えたナニカ)を披露する宝具『鮮血魔嬢(バートリーエルジェーベト)包囲ver.』を発動し全力で歌い上げた。

ちなみにアストルフォは巻き添えを喰らわないように耳を塞ぎなからヒポグリフと共に空間跳躍を使い破壊された天井から外に出て脱出をしている。

 

城壁に備え付けられたアンプから放たれる竜の咆哮。本来なら前方に向けて放たれる対軍宝具なのだが、今回は相手を囲む形で展開されている。

 

360度全方位から放たれる『歌』によって次々と敵が倒されていき遂には、残存していたシャドウサーヴァントは全滅し海魔も生まれたら直ぐに死ぬという状況が生まれる。中央にいたジルは触手や防御結界を用いて防ぎ威力を軽減していたが、耳から血が出ていた上に奇声を上げていたが彼女の歌声でかき消されてしまう。

 

 

 

彼と繋がっている巨大海魔ご身体や触手を激しく動かして悶えていたが、肝心の魔導書は力強く手に持ったままだった。

 

 

俺は此処からでも聞こえる彼女の歌声に苦笑いしながらも、上半身裸になり白銘を元のサイズに戻してからきよひーの力を借りて左腕に持ち自分の宝具の詠唱をする。

その瞬間、左腕に刻まれた歌舞伎模様の刻印が再び紅く燃え出し白銘ごと蒼く燃え出す。

左腕から肉が焦げる嫌な匂いと激痛が走るが、それを無視してジル目掛けて左腕を引き落ちる。

きよひーも咆哮を上げると自らの身体を蒼い焔に変貌させて落ちそのまま俺を喰った瞬間、焔になった大蛇はみるみるうちに龍の姿に変貌し巨大海魔に襲い掛かる。

 

俺は宝具を放てるまで回復しているが、その威力は本来のものに比べると弱く巨大海魔の触手を数本屠るレベル。

なら、俺の宝具を発動した際、左腕に封じた『呪い』を解放し転身火生三昧で大蛇になった清姫が俺ごと喰らえば良い。

元々、左腕に封じた『呪い』は清姫が生前、大蛇に化けた『呪い』が内包されている。それを取り込めば、清姫が生前のように暴走するリスクがあるがそれは俺が制御コアとして全力で押さえ清姫の宝具の強化を図ったのだ。

 

俺ときよひーの愛の合体宝具『転身火翔三昧』の誕生である。

 

 

ちなみに俺達の宝具が放たれる数秒前、アストルフォはヒポグリフの空間跳躍を使ってバートリー嬢に接近し回収し安全圏まで離脱している。

 

ジルは抵抗しようと触手を使って攻撃するが、バートリー嬢とアストルフォが放った宝具のダメージが蓄積された影響か巨大海魔の動きが鈍く、次々と触手が意図も簡単に焼き払われていき、最後にはその龍に全体を締め付けられジルごと焼かれてしまう。

 

ジルは本を抱き抱え巨大海魔から切り離し脱出するが、俺はその瞬間にその龍の焔の中から現れて白銘を突き出してジルの腹を左腕ごと貫いて彼の本である魔導書を突きそのまま焼き払った。

 

その影響で巨大海魔及び生き延びた海魔は自壊。ジルは腹を貫かれ自らの身体を焼かれても尚、フランスを憎みジャンヌ・ダルクが受けた屈辱と悲しみを、そしてそんなフランスを赦したジャンヌに対する怒りを俺に向けて語る。俺はそれを最後まで聞き終えると、蒼く燃えている左腕の出力を上げてジルを燃やし灰にした。

 

 

ジル・ド・レェがフランスを憎む理由は嫌でも分かる。俺もきよひーや加賀。娘である白百合がそんな酷い目にあったのなら復讐で己が身を燃やし当事者達に地獄という地獄を見せて屠り続けていただろう。

 

それ故に止めるしかない。

 

彼はジャンヌ・ダルクを『愛した故郷』すら滅ぼそうとしたのだから。

 

復讐や怒りの先に有るのは途方にもない空虚だ。俺の生前、安部一族の3つの難題の一つ法螺村の事件を解決した時に遡る。

 

この村の畜生外道な行いに、心身共にまだ未熟だった若い頃の俺は我を忘れ怒りに身を任せたまま敵を皆殺しという形で蹂躙し気絶した。

 

その後、加賀の家で目が覚め事件を解決するまでの経緯を聞いたのだが、俺の心の中では僧侶という身でありながら一時的とはいえ修羅に落ちたとてつもない後悔と虚無という感情が渦巻いていた。

アニメやマンガ、小説といった作品でよく復讐の果てには虚無しかないと描かれていたが、それ以上の感情を味わった。

当時、俺の感情が死んでいるにも関わらずにだ。

 

 

俺がいつも感じている心の空白とは全く違う心に穴が空いたような感覚。やりようがない復讐心と憤り、命を奪うという罪を忘れ、己の怒りを鎮めるというエゴで悪人とはいえ多くの命を無慈悲に奪ったことに苛まれていた。

 

その時は、事件の際に目覚めた二つの力と自分に課せられた使命を果たす為に紛らわしていたが、大江山の鬼娘達との初遭遇まで引き摺っていたのだ。

 

それ故に今回の騒動を引き起こした張本人である彼を止めなければならなかった。

 

仮にこのフランスを滅ぼしたとしよう。彼は喜びに満ち溢れるだろうが、後々自分がした事に後悔するだろ。

 

フランスを滅ぼすということは彼女が産まれた地、彼が彼女と出会い部下となり多くの仲間と共に駆け抜けた青春とも言えるべき日々を壊すことになる。

例え狂人でもジャンヌに対する敬愛を忘れない彼にとっては英霊の座に刻まれるレベルで絶望し哀しみ、本当の意味で彼の心は壊れ、自分すらも"赦されなく"なる。

 

 

フランスが滅びるということは人理の定礎の崩壊。

それによって人類の歴史は焼却され、人類が刻んだ多くの軌跡が無かったことになるのだから。

 

最初は、狂気に満ちた顔で呪詛の如く話していたが、俺の焔に宿る『破アッ!』の力によって浄化されていったのか狂人になる前の顔に戻っていき自らが行おうとしていた行為に涙を流しながら後悔しそれを止めてくれたカルデアのマスターを含む俺達に感謝をしていた。

 

 

その後に俺が止めを指したのだが、俺はジル・ド・レェの側面しか見てないのに外道だと決めつけた己の浅はかさ、そんな彼の『愛』を利用した黒幕に対する怒りが渦巻き無意識に拳から血が出る程に力を入れ過ぎていた。

きよひーが俺の背中に優しく抱き付いてくれなかったらそのまま拳が砕け散っていただろう。

 

 

 

 

 

『後編』

 

 

ジルを倒した俺達は今現在、総大将である邪ンヌと戦っているジャンヌとカルデア組を助太刀する為に扉を開けて玉座に急行した訳だが既に邪ンヌが姿がなく決着が付いていた。

 

 

ジャンヌの前で浮かんでいた聖杯をマシュの大盾に収納していたが、盾としての性能も良いし、召喚陣として機能したりとマシュの大盾って本当に便利だな。

 

 

俺達はフランスを救ったことに喜んだ訳だが。ジャンヌがジルはどうなったのか聞いてきて、彼が何を思い何を嘆いていたか伝えると彼女は彼の名前を呟くと何か思う所があったのか大切な人を失ったかのような何か悲しげな顔をしていた。

 

....確かに自分が信頼を寄せていた人物が自分の死が原因で悪に堕ちるのは辛いよな。

 

しかし、それ以上に思い詰めていてエミヤからコッソリと聞いたのだが、やはりというかフランスの蹂躙していた竜の魔女『ジャンヌ・ダルク・オルタ』はジル・ド・レェが聖杯を用いて作りだした架空の存在だった。

 

ジャンヌが酷い仕打ちに対して憎悪や無念、後悔など負の感情は存在しないに等しい。

それ故に彼は聖杯で彼女を作り出したのだが、その時に彼の『そうであってほしいと願った彼女の姿』を聖杯が汲み取ったのか、フランスを憎むジャンヌ・オルタが爆誕した訳だ。

 

それについては邪ンヌ自身も気付いていた。

何でも今まで出逢う度にやっていたジャンヌの問答。そして、俺が奥の手を使ってファブニールと戦う前に俺が言い放った煽り文句で自分の正体が何なのか気付いたということだ。

 

自分の正体を知った所で『それがどうした?』と呆れた顔でジャンヌに言い放った訳だが。

 

『例えジルに作られた存在だろうが、存在しない偽りの聖女だろうが関係ない。

私は今、此処に生きていてる!!私に渦巻く憎悪の感情は本物!私は私の魂に従うだけよ!!』

 

と啖呵を切り、此方もシャドウサーヴァントやワイバーンを召喚し激闘を繰り広げたとの事だ。確かにあの部屋を見ると柱や天井、床さえもかなりボロボロだったな。

 

 

フランスの命運を賭けた最終決戦の決め手はジャンヌ同士の宝具の唾競り合い。お互い防御系なのだが、邪ンヌの『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』は敵の攻撃を何倍に膨れ上げさせて物理攻撃として返す技。邪ンヌは宝具発動時に全ワイバーンとシャドウサーヴァントに指示をして自分に向けて総攻撃をさせる。

それによって強大な攻撃となり自分の味方を巻き込んでカルデア組に襲い掛かる。

 

ジャンヌとマシュも宝具を発動しそれを防ぐが、聖杯による強化、味方が死ぬごとに威力上昇。そして邪ンヌのフランスに対する憎悪によって物理攻撃から極上のドラゴンブレスに変貌し追い込んでいく。藤丸兄妹が令呪による宝具強化でも防げるかどうか怪しい程だった。

エミヤも『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を使っていたが受け止めた瞬間に七枚中四枚の花弁が散る程のレベルだ。一枚が古の城壁と同等の頑丈さを誇る宝具が一気に散る所からして彼女の攻撃はファブニールのブレスと同等だったかもしれない。

 

しかし、マシュのマスターである先輩達を護りたいという気持ちとジャンヌの自分の愛したフランスを護るという気持ちがその攻撃を上回り相殺し、衝撃によって土煙が舞い上がる。

 

その土煙を利用して隠れたジャンヌは腰に着けた護身用の剣を抜刀し急接近し土煙と衝撃で身動きが出来ない邪ンヌに奇襲する。

当然、邪ンヌは応戦するがジャンヌの気迫に圧されてしまい、最後には剣を弾かれて腹を突き刺された。

 

邪ンヌは血反吐を吐きながらジャンヌを突飛ばし腹を押さえながら後ろに下がると、身体中から霊基が漏れだすのを見て、何か晴れたような表情で彼女達を見つめ消滅したらしい。

 

 

どうやら邪ンヌは最後に己自身を獲たようだ。彼女は聖杯によって作られた英霊の座も存在しない架空の存在。

もう出会えないのだが彼女のことだ。自分の運命は自分で決めるその気迫があるのなら何処かでひょっこりと現れるだろう。

 

 

フランスを救ったことは嬉しいが此は別れという意味でもある。

彼等には悪いがきよひーとの千年以上振りの再会。最後位二人っきりでもバチは当たらないだろう。

 

俺はマスター達やアストルフォ達にその旨を伝えた後、清姫と出逢えたこと、愉快な旅が出来たと伝えきよひーと一緒に去ろうとすると藤丸兄妹は『『此方こそ有り難う!』』と息の合った台詞と手を振り笑顔で此方を見送る。

 

他の英霊達からも見送られ、俺達は城にある屋根に移動して二人きりになったのだが無茶が祟ったのだろう。俺の身体に限界が来てしまい倒れそうになる。

そんな俺をきよひーが支えるとそのまま俺の頭を両膝に乗せて膝枕の状態にすると優しく俺の頭を撫でながら、綺麗な青空と草原を見てお互い語り始めた。

 

消滅する時間の関係上、フランスに召喚されて起きた出来事しか話せなかった訳だが、短いながらもとても充実した時間でもあった。

『あなたは何時も無茶し過ぎです。』きよひーから頬をつねられてしまったが、それすらも懐かしく感じ自然とクシャッとした不器用過ぎる笑みを浮かべて楽しかった。

しかし、お互いの霊基の漏れが激しくなっていくにつれて別れが時が近いと感じるようになる。

 

 

俺は最後の力を振り絞り身体を起こし、きよひーに身体を向け人差し指を向ける。

きよひーも俺の人差し指と顔を見てクスッと笑うと意地悪な事を言いながらも人差し指を俺の指に絡める。

そして、指切りげんまんをしてある約束をするとお互いに笑いながら消滅した。

 

 

ちなみに嘘ついたら針千保飲むではなく『鐘の中に閉じ込めて焼く。』である。

 

 

 

此は約束を護らないといけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月●日『無人島なう』

天気:ガッデムホット

 

 

 

日記を書いたら朝日が出て来た。

 

 

 

さて昨日、特異点に来た訳だがまさか無人島で召喚されるとは思わなかった。

ヤシの木、砂浜、森林といったザッ無人島って感じだ。

 

違う点があるなら、巨大な狂暴ヤドカリ、ワイバーン等の魔獣。フランスの上空にもあった巨大な黒い熱源体。不規則な動きをする波と所々にある島といった所だろうか。

 

この特異点がどの時代なのかハッキリとわかんねぇ...。

 

分かったことは海に関連する特異点だけだ。

 

この島を出ようにもちゃんとしたイカダを作らないといけないし、出来たとしてもこの荒れ狂う海原を渡れるかといったら微妙な所。

船が通り過ぎる時間を待つのもその時間が勿体ないし八方塞がりな状況である。

 

キャスターなら渡れる手段があるのだが.....

 

 

何故に『セイバー』!?しかも、『鐘丸討魔伝』の鐘丸(in安珍)としての召喚だし!?

 

 

それのせいか、ランサーの時よりも『破ぁっ!』の威力が心なしか下がっているしどうしたら良いんだこれ!!

 

 

 

.....よし、落ち着け俺。クールになるんだ俺。取り敢えず、イカダの材料を探すがてら島を再び探索しよう。何かあるかも知れない。

 

 

 

んっ?今、ガサッて森の茂みから音が聞こえて....

 

 

 

 

 

 

....えっ?何?あのもふもふとした茶色い狐の尾?

 

 

何か嫌な感じがするのだが.......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued.

 

 

 

 










次回も遅くなるかも知れないですが、きよひーの幕章を挟んでオケアノス編に突入する予定です。
インフルや寒波とかで体調不良にならないように気を付けて下さいね!

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