とある海賊の奇妙な冒険記   作:カンさん

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主人公日記 八ページ目

 #月*日

 

 オレの懸賞金が二億に上がると同時に、新聞ではオレ達の事が好き勝手書かれていた。鉱山を()()()()壊したやら、世界政府に対して敵対の意志があるとか無いとか……。

 全く、自分たちに都合良く書きやがって。おかげでオレたちはイカれた海賊として見られてやがる。海賊だから、今更って感じだが。

 

 ああ、そうそう。

 今回の事件で懸賞金が二億に上がったオレだが、この船から新たに懸賞金を懸けられた奴が何人か出た。

 

 鬼人のギン。懸賞金6000万ベリー。一人でCP9の一人を倒した事と政府が開発したというパシフィスタの足止めをしていた事から、その戦闘能力の高さを危険視されたのだろう。オレと負けず劣らず厳つい顔で写っていた。

 で、もう一人はメアリーなんだが……片手を顔にかざしてポーズを取っていた。本人は呻き声を発しながら、スパンダムがどうのこうのと恨み声を上げていた。戦闘中はノリノリだったのに、どうしたのだろうか邪眼のメアリー様は。ちなみに懸賞金は5000万ベリーだ。

 

 他にも300万や200万とクルーたちにも懸賞金が懸けられていた。パシフィスタのレーザーで吹き飛ばされて瀕死だったとは思えない程、喜び騒いでいる。また傷口開いてぶっ倒れないで欲しいのだが……。

 

 

 追記:あのアホ共、案の定傷口開いてぶっ倒れやがった。オレの能力は万能じゃねえんだぞ全く。

 

 

 #月$日

 

 メアリーから聞いて初めて知ったが、CP9が使っていた妙な技は六式っつー超人技らしい。海軍の将校たちも使っているのだとか。

 で、ギンはそれを有用だと思ったのか、戦闘での経験を元に自分のモノにしようとしていた。我流かつ一度の戦闘でしか見ていなかったからか苦労しているが、オレが見る限り五回は地面を蹴っていたので、すぐに会得できるだろう。

 それに触発されたという訳ではないが、オレもCP9の技の一つを再現してみた。オーラを使ったから別のモノになり、メアリーに『スター・フィンガー』と名付けられた。アイツ、邪眼のメアリーを恥ずかしがっている割に、こういう事好きだよな……。ギンのにも付けようとしていたが逃げられていた。相変わらず騒がしい奴らだ。

 

 

 #月=日

 

 辿り着いた島で、えらい大物の海賊と出会った。

 名を火拳のエース。白ひげ海賊団の二番隊隊長で新世界の海賊。

 何でも、黒ひげという海賊を追っているらしい。……ちなみに、オレのクルーの後ろ姿が丸っ切り同じで飛び蹴りをかましたのだとか。それを見て仲間を傷つけられたとプッツンしたオレとエースが戦闘になり、近くの海軍を呼び寄せて返り討ちにしている内に誤解が解けた、というのが先ほどの顛末。謝罪を受け入れて今は宴会中。

 

 エースに白ひげの傘下に誘われたが断っておいた。オレは海賊王になる男だ。誰かの下につくつもりは無い。そう返すと弟を思い出すと言っていた。誰の事かと聞くと、麦わらの事だと答えられた。

 

 ……しかし、一つだけ気になることがある。

 皆が寝静まった夜。メアリーとエースが何か話していた。船を降りる云々ではなかったため、盗み聞きはしなかったが……。

 

 メアリー、お前何でエースに謝っていたんだ?

 

 

 #月+日

 

 エースは黒ひげを探しに船を降りて行った。去り際に妹を大切にしてやれと言われた、下の兄弟を持つ者同士で何か感じるものがあるのだろう。テメエもなと返すと不敵な笑みを浮かべて、何時か戦って負かして白ひげの名を背負わせてやると言われた。

 

 ――上等だ。オレは誰にも負けねえぞエース?

 

 ちなみに、センチメンタルになっていたメアリーはクルーたちから激しい追及を受けている。エースに惚れたんですか!? と涙ながらに縋りつくのは見ていて情けない。ギンも泣かないまでも「マジなんですか?」と真面目に聞いてくる始末。

 

 エース、オレたちを白ひげのトコに置いたら……コレらも付いてくるんだけど。

 良いのか?

 

 

 #月&日

 

 同行者ができた。魚人のハチ、人魚のケイミ―とヒトデのパッパグだ。

 出会いは、オレ達の船を襲って来た海獣を殴り倒した所、ケイミ―とパッパグが吐き出されたことだ。ボーっとしているからか、良くあるらしい。

 その後、ケイミ―を探しに来たハチと出会いお礼にタコ焼きを食わせて貰った。秘伝のタレを使っているらしく凄く美味かった。意気投合したオレたちはしばらく一緒に航海する事にし、次の島に向かって進んでいる。

 

 

 #月%日

 

 クルーたちはケイミーにメロメロだった。流石は夢を求めて海に出た男達。何時か魚人島に行きたいと叫んでいた。

 そして、ちょうどケイミ―たちは魚人島出身なようで、色々と話を聞いた。その島に行くための手段、シャボンディ諸島、コーティングなど。磁気を帯びていない島だからログポースでは辿り着けないらしく、周辺の海図を渡してくれた。至れり尽くせりだな。

 

 

 #月:日

 

 メアリーが新聞を見てホッとしていた。覗いてみると、ある国の内乱が治まったらしい。アラバスタ王国って言うらしいが……相変わらずこいつはオレ達の知らない事を知っているんだな。今更だから聞かねえが。

 

 それと麦わらの懸賞金が一億に上がっていた。クルーからは海賊狩りのゾロという名の剣士が6000万に。どっちも強そうだ。

 

 ギンも恩人かつライバルの躍進に笑みを浮かべていた。

 

 

 #月>日

 

 一つ判明した事実がある。それは、ハチがかつて東の海でベルメールさんたちを苦しめた魚人海賊団の一員だったこと。

 それを知ったのは偶然だった。手配書を見たあいつが驚き、話を聞いて、ベルメールさんの話を……足が動かないあの人を思い出し――オレは、殴っちゃあいけない拳を必死に抑え込んでいた。

 最初は驚いていたハチも、クルーたちも、オレとメアリーから聞かされた話を聞いて黙り込んだ。

 

 ハチは、オレに謝った。そして後悔していた。ナミたちに酷いことをしたと。許されることではないと。断罪されても仕方のないことだと。罰なら甘んじて受けると。

 ケイミーとパッパグは泣いていた。どうか、話を聞いてあげてと。クルーたちは黙っていた。船長のオレに従うと。ギンは言った。いつもの自分を思い出してくれと。メアリーは言った。ハチをどうこうするのなら、アーロンが何故東の海に来てああいう事をしたのか。知る必要がある。

 

 それを聞いてオレは、ハチから話を聞いた。

 タイヨウの海賊団。フィッシャー・タイガーの死。魚人と人間の確執。アーロンの怒り。そして、あのコノミ諸島で起きた悲劇。

 

 全てを聞いたオレは――ハチにまず謝罪した。いきなり、友達に殺気をぶつけてすまない、と。すると戸惑っていたので包み隠さずオレの気持ちを伝えた。未熟な自分への戒めとして此処にも書いておく。

 

 ハチに対して怒ったのはベルメールさんたちに酷いことをしたから。だが、それは八つ当たりでしかなかった。オレは、恩人たちが本当に苦しい時に助ける事ができず、それが悔しいと思い――何もできなかった自分が情けなかった。オレにハチに怒りを向ける資格が無かった。だから謝った。まるで己の失態を取り返すかのようなあの行為に。

 だけど、それと同時にして欲しい事がある。傷つけたベルメールさんやノジコ、ナミ。そしてコノミ諸島の皆。彼らに何時かしっかりと謝って欲しい、と。その時は友として一緒に頭を下げるから、どうか。

 ハチは、人を愛することができる優しい奴だ。そんな奴だからオレは友だと思い、そして後悔しているのなら、するべきことをして欲しい。そして、魚人と人間、その他種族関係なく世界中の皆に美味しいタコ焼きを作ってやれ。

 

 以上の事をオレはハチに言った。オレの気持ちはこうだったと思う。

 ハチも泣きながら約束してくれたし、何時か東の海に行くと言っていた。麦わらたちに会ったら謝りたいとも言っていた。オレはそれを黙って聞いていた。

 

 ここで終わったら良かったんだが、感動したクルーたちが泣き叫びながら宴を始めた。今日の事は忘れないと叫び、やれフィッシャー・タイガー大好きだ! やれハチ頑張れ! 手伝うよ! 後オレの事を褒めちぎる奴は酒飲んで寝て貰った。恥ずかしいんだよ……!

 しかし手遅れだったようで、ケイミーとパッパグに泣かれながらハチを殺さなくてありがとうと言われた。普段どう見ているのかが窺える……。

 ギンはギンで泣きながら黙々と飯食って「アンタについて来て良かった」と言われた。一番困る態度で何もできなかったぜ……。

 

 そんな風に疲れているとメアリーにこう尋ねられた。

 

『なんで数日間しか世話になっていないのにそこまで入れ込むの?』と。

 それに対してオレはこう答えた。

 『数日間も世話になったんだ。当たり前だろ』って。するとマザコンと言われた。それに対して抗議するも、アイツも女だからか()()()の話題では敵わなかった。

 

 

 #月」日

 

 今日、世界政府から妙な手紙が届いた。

 それは、王下七武海への勧誘。

 七武海の一人、クロコダイルがアラバスタの件で海軍に捕らえられて称号剥奪となり、その空いた席を埋めるためにオレの元に白羽の矢が立った、と。

 七武海に必要なのは言ってしまえば強さと悪名だと言っていた。それをオレは満たしているから、アンタの所に話が来たんだとクルーたちが興奮した様子で言っていた。

 

 興味無いので破って捨てた。

 

 すると全員から驚きの声を上げられて、メアリーにはすげえ怒られた。

 今の時期に入ったら、救える人が居るのに、と。

 そうは言ってもオレは海賊だ。自由にやるのに七武海は必要無いしむしろ邪魔だ。そう言うと皆納得し、メアリーは落ち込んだ。そんなにショックだったのかね?

 

 あとケイミーたちに二億なの!? と驚かれ、今更かよ!? と逆にこちらが驚き返した。ジョジョっちんって強いんだねーとケイミーには呑気にそう言われて、パッパグは流石同じスターだ! とフルネームを名乗って以来妙な親近感を覚えられ、ハチにはすげえなジョジョと感心された。

 

 そういえば、ハチは王下七武海の一人、海峡のジンベエと知り合いだったので、どんな奴なのかを聞いてみた。すると、とても強く義理堅い人だと。仲間の為に自分に命を張れるとも言っていた。

 一度、会ってみたいものだ。

 


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