とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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早く出来たので投稿、と


番外・世界の甲板から~5億の男~

「ぶわっはっはっはっは! まさか空を飛んで逃げるとは! ルフィと言い、最近の海賊は空飛ぶ船がトレンドなのか?」

「笑うなガープ! ああ……胃が痛い」

 

 海軍本部で胃を押さえるセンゴク。先日行われた『ジョン・スター・D・ジョット討伐作戦』の失敗の後始末によって、苦労が絶えない。

 五老星からのネチネチとした嫌味に耐え、何とか倒れずに済んでいるが……正直限界だった。帰っておかき食べたいと五分ごとに呟いていた姿は、ガープと肩を並べた英雄の一人とは思えないほど弱り切っていた。

 

「くそ、次々と問題を起こしおって……!」

「奴の息子だからなぁ」

「貴様の孫のことも言っているのだ!」

 

 最近の海軍は様々な対応に追われている。それも、世界中で問題を起こす海賊のせいだ。

 麦わらのルフィは七武海を二人倒し、エニエスロビーでは大暴れ。隠者はビッグマムとカイドウの戦争を誘発させて消耗させると、本人はそのまま赤髪の元へトンズラ。黒ひげは火拳のエースを捕らえて七武海に加入。星屑のジョットは大将と何度も戦って逃げ切り、非公式だが革命軍と共に一つの国を落とした。

 どうしろと言うのだ。白ひげとの戦争を起こす前に危険分子を排除しようとすれば、逆にこちらの戦力を削るだけ削って逃げられる始末。

 メディアはもはや星屑のジョジョの次の活躍に夢中になり、情報規制を行うも意味がない。すぐにでも彼の出生が明らかになるだろう。

 

 そして、さらなる追撃をしようにも時間は無い。全海兵にしばらくの間星屑のジョジョに接触する事を禁止し、これ以上の戦力を失わないようにした。そうしなければ、今すぐにでもシャボンディ諸島に向かう者が居るからだ。冥王レイリーの影がちらつくあの島に不用意に戦力を送り込めば、どうなるか分かったものではない。

 

「で、どうすんじゃ?」

「――星屑のジョジョは、白ひげの後に処理しよう」

「まぁ……妥当じゃろうな。伝説を相手に、他の奴らに構ってられんわい」

 

 見て見ぬふり。後回し。色々あるが、センゴクは顔に濃い疲労の色を浮かべながら次の仕事に取り掛かった。

 

 

 ――彼が、再び胃を押さえるまで……後数日。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「シャンクスさん、お久しぶりです!」

「お前、いろいろとやらかしておいて、何普通に挨拶しに来ているんだ……」

 

 偉大なる航路(グランドライン)後半の『新世界』。

 現在此処は、海軍が手を引くほどに荒れていた。

 ビッグマムとカイドウは怒り狂い、白ひげはエース奪還に動き、そして赤髪は被害が拡大しないように牽制中。

 このような事態を起こした男、隠者……ジョットの父にシャンクスの顔は引きつっていた。

 

「いや~。片や美味そうな菓子。片や美味そうな酒を持っていたんでね。それに、あいつらの警戒網をくぐり抜けて此処に来るには、潰し合わせませんと」

「相変わらず性格が悪いな。大将をジョットにぶつけたのもお前の仕業だろう?」

 

 ジョットの父は、カイドウの元からくすねてきた酒を飲みながら軽快に話す。

 

「アイツに足りないのは実戦経験でしてね。覇気だけならそこらの奴に負けません。ただ、それだけじゃあいざって時にやられますから」

「だが、アイツはアンタの息子だ。その意味を知らない訳じゃ無いだろう」

 

 他にもビッグマムの所から盗んだ話すケーキ。ガープが持っていた煎餅。他にも様々な盗品をその場に出してシャンクスに振る舞いながら、ジョットの父は語る。

 

「早いか遅いかの話ですぜ? それに読み通りセンゴクの野郎が情報操作して、こっちの海にバレないようにしていた。おかげで良い修行になっただろうよ」

「……」

「不満、ですか?」

「アイツは、俺の友だからな。だから、要らない重荷を背負わせる事が――我慢ならん」

「――それはお節介って話だ。赤髪の小僧」

 

 ジョットの父の雰囲気が変わる。

 そこには、海賊王のクルーに憧れを持つ飲んだくれの男は無く、長い時を生きた賢者の姿があった。

 

「アイツは、ジョン・スターの血を持つ人間だ。Dの意志も受け継いでいる。世界と戦うにはまだまだ足りねえよ。同情するくらいなら、殺してやれ――それが、アイツへの救いって奴だ」

「……」

「――おっと。すんません。興奮しやした。どうも久しぶりに運動した所為で血が騒ぐ」

「……いや、気にしないで良い。ただ、心配だっただけさ」

「そうですか」

「ああ。……ところで、これは?」

「ああ。これですか?」

 

 シャンクスが目を付けたその先には、一つの酒瓶があった。かなり上等でジョットの父も飲むのを楽しみにしているのだろう。見るからに美味しそうなそれに興味を持ったシャンクスが尋ねてみた。すると……。

 

「天竜人は生かしておく価値はねえが、流石は世界貴族って呼ばれるだけはある。四皇の酒よりも美味い」

「……お前、こっちの海にどうやって来たんだ?」

「おつるちゃんがシャボンディ諸島に居たんで、上から来ました」

「……」

 

 ――ここで、彼が犯した罪を話そう。

 ビッグマムの縄張りに侵入し、甘いお菓子を盗むこと――52回。

 カイドウの酒を盗むこと――32回。

 白ひげの船から宴会用の酒を盗むこと――21回。

 海軍本部、並びに支部の基地に侵入し、食事をすること――合わせて423回。

 聖地マリージョアに侵入し、酒を盗むこと――10回。

 

 他にも様々な盗みを働いているが、総じて彼は相手が気づく前にその場を去る。

 常に陰に潜み、やりたい放題する彼は隠者と名付けられ、世界中の猛者から嫌われていた。

 そんな彼に唯一勝てた者は――この世にはもう居ない。

 

「美味いなー。やっぱそこらの物とは格が違う」

「……味音痴が何を言っているんだか」

「酷いですぜ、シャンクスさん」

 

 シャンクスは、そっと一人ため息を吐いた。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

 星屑のジョジョの懸賞金が5億に上がり、そしてシャボンディ諸島に着いた事は……彼らの耳にも届いていた。

 今回は、そんな彼らの反応を見てみよう。

 

 

――カポネ“ギャング”ベッジの場合。

 

「ほう。随分と持ち上げられているではないか、この男」

 

 部下から渡された新聞を見ながら、ベッジは笑みを浮かべた。

 最初は、ただ単に逃げ足が速いだけかと思っていた。しかし、実際はここまで大将を退けて航海を続けるだけの強さがある。

 超新星と言われている自分たちよりも頭一つ抜けているのも、分かるというもの。

 そう評価するベッジに、部下たちはごくりと生唾を飲んだ。頭目が一目置く存在に畏怖と戦慄を覚えたのだ。

 

「一度、会って話がしてみたいものだ」

 

 こいつとなら、組んでも良いかもしれない。

 新世界での戦いを思い浮かべて、ベッジは浮かべた笑みを深めた。

 

 

 ――“大喰らい”ジュエリー・ボニーの場合。

 

「厄介な奴がこの島にやって来たねぇ」

 

 ピザを食べながら、新聞に載っている星屑のジョジョを睨み付けるボニー。

 大将を何度も退けた実績から、この島でやってはいけない暗黙のルールを破りそうだと思ったのだ。

 そのルールとは、天竜人に手を出すこと。この男なら、海軍大将なんて知らないと言わんばかりにやらかす可能性が大いにある。

 

「ちっ。気に食わないねぇ」

 

 ピザを呑み込んで、ボニーは眉間に皺を作った。

 賢くない男は、嫌いだった。

 

 

 ――“魔術師”バジル・ホーキンスの場合。

 

「占うまでもないな」

 

 ある場所へ向けて歩いていく星屑のジョジョの背中を見ながら、彼は思わず呟いた。

 見ただけで分かった。あの男は、この島で必ず騒動を起こす。そして、自分たちはそれに巻き込まれるだろう、と。

 それを聞いたクルー達が、すぐにでも出港しようと言う。巻き添えで全滅はごめんだからだ。

 しかし、ホーキンスは無用だと言った。何故なら、自分たちに死相が出ていないからだ。

 だが――。

 

「やはり、か」

 

 ホーキンスは、星が描かれたタロットカードを見ながら呟いた。

 

「この島で、奴に敵うルーキーは居ない……」

 

 もし、彼らが名を上げようと挑めば――結果は勝率ゼロ。結果に従ってホーキンスは星屑のジョジョに手を出さない。

 彼に勝つ未来が見えるその日まで。

 

 

 ――“海鳴り”スクラッチメン・アプーの場合。

 

「うっはー。こいつはやべえな……」

 

 アプーは額に流れた汗を、己の長い腕で拭った。

 5億の男の実力はどんなものか?

 ちょっとした好奇心からちょっかいを出そうとしたところ……。

 

「こっから何メートルあると思ってんだ? コエーコエー」

 

 彼が現在居るのは、とある建物の屋上。星屑のジョジョとは随分距離が離れている。しかし、いざ能力を使おうとした瞬間、直接心臓を握りしめられたような錯覚を覚えた。よく見れば、こちらを睨み付けて威圧していた。傍にいたクルーが気絶していた事から何かしたのだろう。自分に意識があったのは、警告するため。

 容易に触れてはいけない。そう思わせるヤバさがあった。

 

「大将退けたのも伊達じゃないってか」

 

 アプーは、気絶した部下を叩き起こしてその場を後にした。

 

 

 ――“赤旗”X・ドレークの場合。

 

「……覇王色の覇気。この時点で扱えるのか」

 

 アプーに警告をし、クルーを連れて歩き出した星屑のジョジョを見ながらドレークは戦慄した。元海軍少将だった彼は覇気の事を知っている。中将以上が普通に使っているそれが、習得するのにどれだけ時間がかかり、そして難しいかも。

 それを普通に使っている星屑のジョジョの異常さを、恐らく超新星の中で最も理解しているだろう。

 

「しかし……」

 

 気になるのは、その力をどう手に入れたのかだ。

 海軍で鍛えたのなら噂で聞くはず。新世界出身ならば、此処に居るのはおかしい。

 自然発生か、もしくは師匠が怪物か。

 戦闘になった時の事を想像し、ドレークは首を振った。

 今は情報が少ない。しばらく傍観しよう、と。

 

 

 ――“死の外科医”トラファルガー・ローの場合。

 

「星屑屋……アンタ、何人殺した?」

 

 前を通りかかった星屑のジョジョに向かって、ローは声をかけた。

 前々から興味はあった。ある目的の為に海賊をしている彼は、星屑のジョジョの力ならあるいは……と考えていた。

 ジョットが歩みを止めて、ローの前で止まる。

 不吉な表情で見上げるローと上から威圧感たっぷりに見下ろすジョット。二人の間の空気が重くなり、両海賊団のクルーたちの頬に一筋の汗が流れる。

 

「興味深い奴を連れているな」

 

 しかし、ジョットはそれだけを言うと歩き出した。

 ローは呆気に取られて間抜けな表情を浮かべる。興味深い? 誰の事だ?

 そう考え、後ろを振り返り――すぐに分かった。

 

「どうした、キャプテン?」

「……」

 

 自分の目は曇っていたのだろうか。

 女に頭を叩かれ、副船長らしき男と話しているジョットの背中を見ながらそう思った。

 

 

 

 ――“怪僧”ウルージの場合。

 

「あれは、心網(マントラ)。青海人が何故……?」

 

 賞金稼ぎを一蹴りし、『シャッキー’sぼったくりBAR』と書かれた建物に入っていく星屑のジョジョ一行を見送りながら、ウルージは先ほどの戦闘を思い出していた。

 彼の体から浮かび上がった魔人。繰り出されるラッシュは目に見えず、本体の拳は地面を――正確にはマングローブだが――揺らすほどの一撃。それを見て逃げ出した賞金稼ぎを軟弱者となじるには、あまりにもレベルが違いすぎる。

 少なくとも、何も対策をせずに彼の前に出たくはない。

 

「しかし……」

 

 だが、それ以上に気になる人間がいた。

 太陽の日差しを受けてキラキラと光る金色の長髪。色気を醸し出す美しい白肌。そして、男なら誰もが触れたいと思うほどの艶めかしい女体。

 

「……」

 

 僧を名乗りながらも、この男……大の女好きである。

 大男が頬を染める姿は、少しばかり不気味だった。

 

 

 ――キッド海賊団の場合。

 

「あのくそ野郎が!」

「落ち着け、キッド」

 

 とある酒場で荒々しくナイフを突き立てるキッド。刃の先には、星屑のジョジョの手配書があり、かなりズタズタにされている。新聞は既にボロボロに引き裂かれて捨てられた。そんな船長を宥めるのは、キッドと同じく億越えのルーキー。“殺戮武人”キラー。仮面の穴からため息が漏れ出て、それをキッドが睨み付ける。

 

「テメエは覚えていねえのか! こいつに無様にも生かされた事を!」

「忘れる訳がないだろう」

 

 彼らは、不本意ながら星屑のジョジョに救われた過去を持つ。と言っても、本人からすれば結果的にそうなっただけで、助ける気はさらさら無かったが。

 

「くそ、気に食わねえ……!」

 

 キッドは、海賊でありながら人を救う星屑のジョジョが気に入らなかった。

 自分とは正反対の人間で、しかし度胸も力も名声も……キッドよりもあった。

 全てが気に入らなかった。気に入らないのに……助けられた。

 これほど屈辱的な事はない。何時かお礼参りしてやろうと思い、他の有象無象に目が行かなくなるくらいには……キッドは星屑のジョジョに固執していた。

 

「だがキッド。此処で手を出せばあの日と同じ目にあうぞ」

「分かっている! アイツをぶっ潰すのは――新世界でだ!」

 

 執念の炎を燃やして、キッドは再びナイフを振り下ろした。

 

 

 

 そして――数日後。

 

 

 ――麦わらの一味の場合。

 

 

「あれが、シャボンディ諸島だ!!」

 

 ついにこの島に、12人の超新星が集結した。

 




次回、麦わらの一味を主軸に書きます







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