とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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包囲網突破

「いい加減にしろ!! あの海賊共!!」

「ひぃ!?」

 

 センゴクの怒鳴り声が部屋中に響き渡り、報告しに来た海兵は委縮して目に涙を浮かべる。“仏のセンゴク”とは何だったのか、と思う程に彼の顔は酷く歪んでいる。それだけ麦わらのルフィと星屑のジョジョがやらかした事は大きい。

 

(くそ、やはり騒動を起こしたか……!)

 

 ……正直、予想しなかったと言えば嘘になる。海賊の手によって世界貴族が命を落としたとなれば、流石の海軍本部も立場が危なくなる。その最悪の事態を防ぐため、ベガパンクに依頼して特製シャボン玉を作らせた。しかし、結果はご覧の通りだ。ロズワード聖とシャルリア宮は人質となり――実際は気絶しているのを放置しているだけだが――チャルロス聖は島の反対側まで吹き飛ばされ意識不明の重体。

 片方だけでも厄介なのに、揃うと相乗効果で目も当てられない事態になった。

 白ひげとの戦争を控えている今、戦力を消耗させる訳には行かない。

 しかし、世界貴族に手を出された以上、大将を派遣しなければならない。

 大将二人に食い下がる海賊――星屑のジョジョが居るシャボンディ諸島に。

 

「怖いねェ~。世界貴族に手を出す無鉄砲さ」

 

 湯飲みに入った茶を飲みながらそう呟くのは海軍本部大将、黄猿。先日まで四皇への牽制として新世界に居たのだが……どうやら、休む暇なく次の仕事に取り掛かる必要がありそうだ。

 黄猿は、星屑のジョジョの手配書を見ながら目を細める。

 三人居る大将の中で唯一彼と相見えていない。故に、ジョットの正確な強さは知らず……しかし、彼が他の超新星と格が違うのは理解していた。

 中将以下の戦力では、鎧袖一触の元葬り去られるだろう。それは先日の戦闘で明らかになっている。被害を受けたのは何も大将だけでは無いのだ。

 他の二人が傷を負っている以上、出動できるのは黄猿しか居ないのだが……。

 

「こうなった以上わっしが行かんといけませんが……星屑のジョジョはどうするので?」

「……!」

 

 言外に、自分一人でジョットを相手取ると不味いのでは? と黄猿はセンゴクに視線を送る。ルーキー相手に情けないと言うには、ジョットに流れる血と今まで築き上げられた悪名が邪魔をした。

 世界貴族の要請を受けて海軍の面子を守るか。

 後の戦争の為に、戦力を温存するか。

 センゴクは、苦虫を噛み潰したような表情で決断した。

 

「……星屑のジョジョは、戦争の後に必ず捕まえる……!」

「じゃあ……そういう事で?」

「ああ……だがっ! 他のルーキー共……特に麦わらのルフィは必ず捕らえろ!」

 

 主犯格であるルフィを差し出せば、世界貴族の抗議も少しは和らぐだろう。

 正義を掲げる海軍としてはあまりにも情けない話だが……。

 最悪、ジョットの真名を公表して黙らせる必要がある。その時に起きる混乱を想像し、センゴクは胃を抑えた。

 

「では、吉報をお待ちください」

「ああ、頼んだぞ!」

 

 センゴクの指示に黄猿は頷くと、湯飲みを机の上に置いて出口に向かう。

 しかし……。

 

「おやァ……?」

「……貴様は」

 

 シャボンディ諸島に向かおうとした黄猿を阻むように現れた一人の男に、センゴクと黄猿は表情を変えた。

 

 ――しばらくして、幾つかの軍艦がシャボンディ諸島へと出発した。

 強張った表情を浮かべた海兵達と、大将を乗せて……。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

(――おいおい。強いとは分かっていたが、なんつースピードのラッシュだ)

 

 ジョットのラッシュを目にしたゾロは戦慄していた。紫色の魔人のようなモノが出てきたかと思えば、()()()()()()()速いスピードでチャルロス聖に無数の拳を浴びせていた。傍目から見て辛うじて何をしているのかが分かったが……向けられたチャルロス聖は何をされたのか分からず、そのまま気絶しただろう。もし自分に向けられたら……そう考えてゾロはゾッとした。

 

 そして、同じ光景を見て口を開く者が居た。

 キッドだ。

 

「はっ! また人助けか? ジョジョ」

「……なんだ、テメェか」

 

 青雉の一件以来、久方ぶりに顔を合わせた二人は――互いに相手を睨み付けていた。

 強さも信念も認め合っているが、やはり目の前の相手が気に食わないのだろう。チャルロス聖のリタイアで霧散した緊迫した空気が、再び重くなるのをその場に居た誰もが感じ取っていた。

 

 ――そこに、一つの覇気がジョットに叩き付けられた。まるで、無用な戦いはするなと言わんばかりに。

 それによって、ジョットは……いや、ジョット、キッド、ロー、ルフィ、ウソップの五人はステージへと視線を向けた。すると、舞台の袖から二人の男が出てきた。

 

「おいおい! 既に首輪も手錠も外されているじゃないか! 何が起きているんだ!?」

「私の言った通りだろう? 既に事は終わっている、と」

 

 鍵を持ったフランキーは、戦闘が終わり、そしてメアリーの能力によって首輪を外されたケイミーと売られる寸前だった奴隷未満の者たちを見て、混乱を露わにする。

 その後からは途中フランキーと合流したレイリーが、酒を飲みながら現れる。それを見たハチが戸惑いの言葉を発した。

 

「にゅ~……レ、レイリー?」

 

 ――レイリーだと?

 耳にした大物の名に、キッドとローの頬に冷や汗が垂れる。海賊王の右腕が何故此処に?

 

「ハチ、久しぶりだな! ……む、どうしたんだその傷は」

「天竜人に撃たれたんです。それを彼らが……」

 

 二人のキャプテンが戦慄している中、メアリーから事の顛末を聞いたレイリーの視線はルフィへと向く。

 

「――君が……いや、君たちが私の友人を助けてくれたのか。ありがとう、モンキー・D・ルフィくん」

「ん? おっさん、おれの事知っているのか?」

「ああ。君のことは――いや、その話は後でしよう」

「?」

 

 レイリーの言葉に首を傾げていると、焦燥し切ったウソップがルフィへと叫んだ。

 

「お、おいルフィやべぇぞ! この島にやべえのが来てる!! 多分大将って奴だ! それに……何だこれ? 妙な奴もいっぱい来てる!」

 

 ウソップの言葉を受けて、麦わらの一味の表情が変わる。今までの冒険で、ウソップの勘は大勢の敵や強敵の気配を感じ取っては一味に警告をしてきた。そして実際に彼の言った事は当たり、何度も助けられて来た。

 

『犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい! 直「大将」が到着する! 早々に降伏する事を勧める! ――どうなっても知らんぞルーキー共!!』

 

 まるでウソップの言葉を裏付けるように、外から海軍の怒声が拡声器越しに響いた。

 ローとキッドのウソップへの警戒度が上がり、レイリーは感心したような表情を浮かべ、メアリーは「あーあ」と同情の視線を向けた。本人はその事を知らない。

 レイリーは視線をジョットへと向けた。

 

「ジョットくん。申し訳ないが表の敵は任せても良いかね? 海軍に正体がバレてしまったら住みづらくなる」

「……はぁ。やれやれ、人使いの荒いじいさんだ」

 

 ため息を吐いたジョットは表に出ようと歩みを進め……。

 

「はっ。テメェの世話になるかよ、ジョジョ!」

「……ユースタス」

「何だったらそこで休んでろ。オレが全て蹴散らしてやる」

「――あ?」

 

 ピキリ、と青筋を立てたジョットに、メアリーはため息を吐いた。

 

「もののついでだ。お前ら助けてやるよ」

「――なんだとっ!」

「――っ!」

 

 そして、メアリーと同じように麦わらの一味とハートの海賊団もため息を吐いた。

 この場に、「助けてやる」と言われて黙っている船長は――居ない。

 誰かが言った。なんて短気な奴らだ、と。それに反論する声は出なかった。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「あーあ……ジョジョも単純だなーもう」

 

 四人のキャプテンが言い争いながら表に出るのを見送りながら、メアリーはそっと呟いた。ジョットが覇王色の覇気を使えば直ぐに終わる。レイリーもそう思って彼に頼んだのだが……聞こえてきた言葉から察するに、使わないだろう。効率よりも、ライバルへの意地を取ったようだ。

 

「巨人くん。申し訳ないけど、彼らの保護を頼んでも良いかな?」

「ああ、任せろ。アンタたちには恩がある! 麦わらの仲間たちもありがとう! アンタたちが暴れなかったら、オレ達は奴隷になっていた!」

「ありがとう!」

「ありがとうございます!」

「この恩は一生忘れません!」

「おう! 気にすんな!」

「お前が言うのかよ!」

 

 奴隷にされかけた者たちが礼を言う中、海賊たちは自分たちの船長に続くべく歩を進める。

 そんななか、メアリーはフランキーに背負われたケイミーの元に向かった。

 

「大変な目に遭ったね、ケイミー」

「メアっちん! さっきはありがとう!」

「ん? お前ら、知り合いなのか?」

 

 親しげに話す二人に、フランキーが眉を顰めて尋ねた。

 それにケイミーとメアリーは頷く。

 

「うん! 友達だよ!」

「ハチ達と航海した事があってね。……あなたが“サイボーグ”フランキー?」

「おう! その通り! このオレ様が麦わらの一味の船大工にして、スーパーな漢! フランキー様だ! サイン要るか?」

「うん、是非」

「要るのかよ!?」

 

 前を歩いていたパッパグが振り向いて突っ込みを入れた。

 何処から出したのか、色紙にサインを書いて貰ったメアリーは満足そうな顔をしている。それを見たある男が反応した。

 サンジである。

 彼はシュバッとメアリーの傍に降り立つと、決め顔で彼女に近づいた。

 

「麗しのレディ。そんな変態よりも、この黒足のサンジのサインをどうか受け取って貰えませんか? ――というか君のサインが欲しいな~~~~~!!」

「おいおい照れるじゃねーか」

 

 サンジが目をハートにし、変態と言われたフランキーが嬉しそうにする中、他の者たちは呆れた視線を向けていた。海軍に囲まれても尚、平常心で居られるのは流石と言うべきか……。

 そんな中、サンジに言い寄られたメアリーが俯いて体をプルプルと震わせていた。それにレディを泣かせたのか!? とサンジが慌てふためく。

 

「ど、どうしたんだい! えっと、メアリーちゃん!? 俺、何か気に障ることでも……」

「えっぐ、ぐず……ち、違うの……! お、女の子扱いしてくれたの久しぶりだったから嬉しくて……!」

「……はい?」

 

 メアリーは言った。能力の扱いが上手くなる度に、強くなる度に、懸賞金が上がる度に、クルー達からの扱いが女の子から副船長へと変わった事に。

 そして、敵からは邪眼のメアリーと恐れられた事に。

 ジョットとギンは元々女の子扱いしていない事に。

 だからだろう。成長と共に消失したと思われた、女の子として見られる事がこんなにも嬉しく思えるのは。

 

「あ、ありがとうございます……!」

「メ、メアリーちゃん……!」

 

 ――サンジは思った。必ずかの邪悪な星屑のジョジョを討ち倒し、目の前のレディの笑顔を取り戻すと。

 

「アホらしい……」

 

 それにゾロは呆れ切った声で呟き……。

 何人かはその言葉に頷いた。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

 人質の解放と降伏を訴えかけて数分後。ヒューマンショップ正面入り口が俄かに騒がしくなった。言い争う声がし、それが徐々に近付いて来ている。

 

「――出て来たぞ! 構えろ!」

 

 号令と共に、海兵達は銃を構える。しかし、顔に浮かんだ緊張は隠し切れず、前代未聞の巨悪事件を犯した海賊への畏怖が浮かび上がっていた。

 やがて、その姿を露わにした四人の面影に海兵達に動揺が走った。

 

「あれは……全員船長(キャプテン)だ!」

「先陣切って出て来やがった!」

 

 錚々たる面々に海軍達はゴクリと生唾を飲んだ。

 世間を騒がし、新聞で何度も取り上げられた超新星。その内の四人が一堂に会する光景は圧巻の一言。

 

「お前ら、下がってて良いぞ!」

 

 ――懸賞金3億ベリー。麦わらのルフィ。

 

「お前ら全員下がっていろって言ったんだ!」

 

 ――懸賞金3億1500万ベリー。ユースタス“キャプテン”キッド。

 

「おれに命令するな……貴様から消してやろうか? ユースタス屋」

 

 ――懸賞金2億ベリー。死の外科医トラファルガー・ロー。

 

「舐められたまま引き下がれるかよ」

 

 ――懸賞金5億ベリー。星屑のジョジョ。

 

 億越えの賞金首が張り合って海軍の目前に躍り出た。

 その堂々たる佇まいに、指揮を執る准将が指示を下した。

 

「迫撃砲、撃てェ!」

 

 超新星達に向けられた四つの迫撃砲が火を吹いた。

 しかし、彼らは数々の困難を潜り抜けて偉大なる航路(グランドライン)前半の海を制した猛者達。この程度の砲撃など脅威足り得ない。

 

「“ゴムゴムの〜……風船!”」

 

 思いっきり体を膨張させるルフィ。膨らんだ彼のゴムの体は迫撃砲の砲弾を受け止めて勢いを殺すと、ゴムの元に戻る性質を利用して跳ね返した。海兵達は戻ってきた砲弾で吹き飛ばされていく。

 

「“反発(リペル)”」

 

 片腕を突き出してキッドが呟くと、砲弾は彼の手に触れる前に制止し、まるで逆再生したかのように砲弾を放った迫撃砲に戻って行く。反発した砲弾は迫撃砲に直撃し、構えていた海兵達を巻き込んで爆発させた。

 

「“ROOM(ルーム)”」

 

 ローと海兵を囲うように不透明な(サークル)が生まれた。取り込まれた海兵が戸惑う中、ローは担いでいた妖刀を振るう。すると、(サークル)の中に居た海兵の首と体が分断された。

 

「“シャンブルズ”」

 

 そして次の瞬間、ローに放たれた砲弾と海兵の首の居場所が一瞬で入れ替わり……着弾。訳が分からず悲鳴を上げる海兵の生首を手の中で弄びながら、ローは不敵な笑みを浮かべる。

 

「オーラビジョン――スタープラチナ!」

 

 オーラを具現化し現れたジョットの半身は、放たれた砲弾をまるで柔らかいボールを受け止めるかのように優しくキャッチした。そしてそのまま片手で持つと、その場で激しく回転する、体を軸に何度も何度も回り続けて――。

 

「オラァ!!」

 

 次の瞬間、放たれた豪速球は迫撃砲を貫通し地面を抉り続け……遥か後方で爆発した。

 

「は、迫撃砲が効かない!」

「気を付けろ! 全員能力者だ!」

 

 早速それぞれの能力を行使し、海軍の攻撃を物ともしない超新星たち。ルーキーとは思えないほどの精強さに海兵たちの間で動揺が走る。

 

「お前ら、変な能力だな~」

「お前に言われたかねえよ」

 

 今までも何度か能力者を見て来たルフィだが、それでも彼らの能力は珍しく感じるらしく感嘆の声を上げた。しかし、キッドにとってはルフィこそが一番妙な能力だと思っているらしく、言葉少なく返した。

 

「助けてー! どうなっているんだこれー!?」

「しかし数が多いな……星屑屋。アンタがさっきしたアレ……使うつもりは無いのか?」

「使っても良いが……ユースタスに絡まれるのはゴメンだ。それに、顔に使うなって書いてあるぜ」

「は……違いない」

 

 船長として、同盟を組んでいない海賊の力を借りて生き延びるつもりは無いのだろう。最も早く確実にこの場を切り抜ける方法を問いながらも、ローはジョットの覇気の力に頼る気はさらさら無かった。

 ジョットも、今の体の状態で彼らと戦う気はないのか、積極的に使う気はないようだ。――それに、駆け付けて来るであろう大将との戦いの前に、覇気の無駄遣いをするつもりは無かった。

 

「さて――」

 

 ローが動いた。

 手に持っていた海兵の生首を敵に向かって投げつける。

 

「ぎゃああああ!?」

「ぎゃああああ!? お前何で生きているんだよ!」

「分からねえよ! というか体が熱い!」

「感覚あるの!?」

「あそこでお前の体が燃えているぞ!」

「アッチの体が熱いー!」

 

 動揺している間にローはROOM(ルーム)を展開した。彼が食べた悪魔の実はオペオペの実。彼の手術室(サークル)に居る患者(てき)は、抵抗する事ができず強制的に外科手術を受ける事になる。

 ローは、先程よりも多くROOM(ルーム)内に入った海兵たちの体を、一瞬でバラバラに切断した。そして、そのまま支配下に置いた海兵たちの腕や足、胴体を操り出鱈目に組み立てた。

 

「うおおお!? なんじゃこりゃあ!?」

「お前、それ俺の胴体だ!」

「おれの腕返してー!」

「足六本もいらねえよー!」

 

「やれやれ。恐ろしい能力だな」

 

 それを傍から見ながら、ジョットも動く。

 オーラの可視化を行い、地面を見る。彼が探しているのは力の溜まり場。何処にどの程度のオーラを流し込めば良いのか分かれば、彼は鉄の要塞や鉱山でも破壊できる。

 

「そこか……」

 

 見つけた場所に向かって、ジョットは赤いオーラを纏った拳を叩き付けた。すると、地面の下を流れていたオーラが外界からの影響で暴走し、ジョットの誘導でそのまま海兵たちの足元に流れていき……。

 

「ん? なんか、地面が熱いぞ?」

「湯気が出ていないか、ここ?」

 

 そしてそのまま――触れれば火傷するほど熱いシャボン玉が海兵たちを襲った。

 

『ぎゃああああ!?』

「メアリーなら“シャボンランチャー”と名付けそうだな」

 

 のたうち回る海兵を見ながら呑気に呟いていたジョットの視界に、二つのオーラの昂ぶりが入る。

 そちらを見ると、キッドとルフィが大技を繰り出そうとしていた。片や磁力で数多の武器を集めて巨大な腕を形成し、片や膨大な量の空気を骨に送り込み巨人族の腕へと変化させていた。

 

「くそ! くそ! くそおおお! 一人だけでも厄介なのに四人も……!」

「こんなの、どう対処すれば良いんだ!」

 

 海軍が混乱する中、二人の海賊は笑みを浮かべて……腕を振り下ろした。

 

「喰らいやがれ!」

「“ゴムゴムの~……巨人の銃(ギガント・ピストル)!!”」

 

 地面が揺れ動くほどの二つの巨大な拳は、海軍の陣形を完全に崩壊させた。

 海兵たちは軒並み吹き飛ばされ、武器は瓦礫となって積み重なっている。

 振動を建物の中から感じ取っていた海賊たちは、外に広がる光景に舌を巻いた。

 

「イキナリこれかよ!」

「あの二人も当然のように能力者か」

「ス、スンゴー! 目を疑いますね! 私、目ないんですけどーー!!」

 

「あーあー。暴れちゃって船長(キャプテン)……」

 

「気の早い奴らだ」

 

「予想通りというか何というか……」

 

「わははははは! なかなか頼もしいじゃないか!」

 

 クルー達は、敵船もしくは自分の船の船長の力に警戒、驚き、呆れ、達観とそれぞれ反応を示す。

 レイリーは次世代の海賊の力に喜びを隠し切れない。

 

「なんだそりゃあ麦わら屋。締まらねえな」

「そうか?」

「強力な分、反動があるみてえだな」

「こうなれば陣形もクソもねえだろ。後は敵味方入り乱れての乱戦だ!」

 

 海軍も同じ考えなのか、ヒューマンショップから出てきた海賊たち……特に賞金首に反応を示す。億越えがさらにもう二人追加されたからか、海軍は一層引き締めて隊列を組み直し、討ち倒さんと殺到し始めた。

 

「――それじゃあな麦わら。お前に一目会えて良かったぜ。次に出くわした時は容赦しねえ……」

 

 意地の張り合いから始まった共闘もここまでだろう。それを感じ取ったのかキッドが口を開く。

 噂のイカれた海賊がどのようなものか。実際に目にしてそれ以上だと分かり……彼もまたこの先の海で戦う事になるライバルだと確信していた。故に、ここで宣戦布告をしたのだが――。

 

「ふ~ん。でも、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を見つけるのはおれだぞ」

『――!』

 

 その言葉を口にする意味を、彼らは知っていた。

 その存在を信じていない者も居り、夢を見るバカだと笑う者も居ただろう。

 だが、彼らはそんな海賊たちに勝ち――こうしてこの場に立っている。

 信念無き者に、新世界を行くことは不可能。キッドは、真の意味で麦わらとの邂逅に喜びを感じ――改めて宣戦布告をする。

 

「――それを見つけるのはオレだ。新世界で会おうぜ!」

 

 そう言って、キッドは自分たちのクルーを連れて海軍の包囲網を破るべく進撃する。返事はしなかったが、彼らの答えは口にせずとも決まっていた。

 負けるつもりは無い。ライバルの背を後にし、それぞれがこの場から去るべく行動を開始する。

 ローが海軍の攻撃を部下に任せて建物に戻るなか、ジョットはルフィへと声をかけた。

 

「麦わら。お前らの目的はレイさんだろう?」

「ん? ああ、そういえばそうだった。船をコーティングしてもらうつもりだったんだ」

「なら目的地は一緒だな。――それに、お前とは話がしたかった」

 

 呑気に会話をする彼らに向かって、海兵が襲い掛かる。

 しかし、その前にサンジが躍り出て蹴散らした。

 

「サンジ!」

「テメェら、さっさとズらかるぞ! あっちに足もあるしな」

 

 サンジの指し示す先には、トビウオライダーズが居た。

 トビウオの速さなら、すぐにこの場から離脱できるだろう。良い逃走手段を持っているじゃねえか、とジョットは関心した……のだが。

 

「……何故オレを睨む、サンジ?」

「うるせえ! メアリーちゃんを泣かせるお前はおれの敵だ!」

「どうせつまらない理由だろ」

「何だとこの野郎! というかルフィ、お前寝るな!」

 

 サンジとジョットが言い争う中、ルフィはブルックの技で眠っていた。先ほどの度胸ある言葉に感心していたジョットは、自分のクルー達を思い出していた。

 

「おい! 四人とも! 急げ!」

 

 他の者は全員包囲網を脱したのか、殿を務めていたジョットとルフィたちに向かってウソップが離脱するように言った。

 それを受けてジョットはルフィたちの後を追って走り出すが……。

 ふと、頭上に暗雲が立ち込めているのを見て――今すぐにでも雷を吐き出しそうなオーラの揺らめきに表情を変えた。

 

「“サンダーボルト=テンポ”」

 

 ギリギリ落雷の射程範囲外に出たジョットは、黒こげになった海軍を見てナミに文句を言った。

 

「おいナミ! テメェ、なんつーもん繰り出してんだ!」

「あら? この程度でやられるタマじゃないでしょ?」

「……ケッ。逞しく育ったもんだ」

 

 踵を返して走り出すナミと並走するジョットに向かって、彼女は不敵な笑みを浮かべた。

 

「強い女は好みじゃない?」

「ふっ。さぁな」

「……ふふ」

 

 久しぶりのやり取りに、二人は笑みを浮かべた。

 懐かしい。積もる話もあるが――それは後で良いだろう。互いにそう思ったのか、彼らは黙って走り続ける。

 

「テメェこの野郎ーー! ナミさんに色目使っているんじゃねーー!」

「……アイツも変わらないな」

「……昔から()()なの?」

「……ああ」

 

 嫉妬で燃え上がるサンジに、二人は何とも言えない表情を浮かべた。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

『――じゃあ、引き続きお願いね?』

「はい。サンジさん達には船を任してください、と」

『うん、分かった――ガチャ』

 

 メアリーからの報告を受けたギンは、視線をクルーたちに向ける。

 彼らは正座した状態で安堵の息を吐いた。ケイミーが攫われたと聞いた時は泣き叫んで騒がしかった彼らだが、メアリーからの電伝虫で無事を知ってからは大人しくなった。

 

「いやー、良かった」

「本当本当。一時はどうなるかと」

「これは祝杯を挙げて、麦わらさん達と宴をしねえとな!」

 

「お前ら、反省する気あるのか……?」

 

 ギンのドスの効いた言葉に、クルー達は姿勢を正した。

 

「まったく、お前らと来たら……」

「いや、でもギンの兄貴! 俺たちはただ船長にサプライズしようと……」

「傍から見たら、名を上げようとしている海賊にしか見えなかったが?」

「そんなぁ! 武装解いて近づいたのに……」

「顔が怖いんだよ」

「いや、ギンの兄貴も大概……」

「あん?」

『すみませんでしたー!!』

 

 大げさに謝罪をするクルー達にため息を吐きながらも、ギンはもう少ししたら解放するつもりだった。悪気が無いのは知っているし、サウザンドサニー号をトビウオライダーズが来るまで守る必要があるからだ。自分たちの船の様子も見ないといけない。

 

「それにしても……」

 

 久しぶりに会ったサンジは、随分と強くなっていた。自分も強くなっている自覚はあったが……まともにやり合ったらどうなるか分からない。海賊王を目指す以上、何れ戦うことになる。

 ――まぁ、今は再会できた事と無事を喜ぼう。

 ギンは、顔を合わせた時の事を思い出した。

 

 

 

『お前、ギンか!? こんな所で会うなんて……』

『はい! ……サンジさん、おれ約束を守りました!』

『……! ああ、そうだな! ルフィも喜ぶぞ!』

 

 

 

 その後すぐにケイミーの件で、詳しい話はできなかったが……。

 

(船長たちは、今麦わらさん達と一緒に居る)

 

 後で合流するだろう。……その時に、改めて彼らに紹介しよう。

 自分の自慢の船長と海賊団を……。

 

「ん? ニュースクー?」

 

 そんななか、空から新聞が落ちてきた。それを取ったギンは新聞に目を通し――驚愕した。

 

「こいつは……!」

 

 海軍本部が火拳のエースを公開処刑する事を……決定した。

 それに伴って、来るべく戦争に備えると。

 

「メアリー副船長が言っていた事が当たった……!」

 

 時代が、変わろうとしていた。

 




本当はもっと進めるつもりでした
原作沿いの話なので、薄味に感じるかも







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