とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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崩壊

「ふざけんな星屑ッ! パシフィスタ(そいつら)はおめぇのサンドバッグじゃねぇんだぞっ!」

 

 口の端から血を流して倒れ伏している戦桃丸。しかし、ジョットはそんな事知らんとばかりに、射程範囲に入ったパシフィスタに()()叩き込むと、鋭い視線を黄猿へと向ける。

 

「キィイイザァアルゥゥウーーッ!!」

「怖いねぇ~~……この強さ、どう考えてもルーキーじゃないでしょ」

 

 雄叫びを上げて黄猿へと飛び掛かり、覇気で染まった腕を振り下ろすジョットを見ながら、戦桃丸はパンチ一発で沈んだ己の体に苛立ちを覚え……それと同時に目の前の化物のデタラメさに戦慄した。

 彼は、ベガパンクのボディーガードだ。世界政府にとって最重要人物である彼の身を守る戦桃丸の強さ(硬さ)は、そんじょそこらの海賊では手も足も出ない程に高い。そんな彼が、ジョットのパンチによって一発KOしたのは、やられた本人にとっても黄猿にとっても予想外だった。当然、そんなパンチにパシフィスタ程度が耐えられるはずもなく、ジョットの拳でスクラップになっていった。

 

(パンク野郎が言っていた事が、よ~く分かったぜ……!)

 

 ベガパンクは、今回ジョットの足止めとしてパシフィスタが運用される事を知ると、戦桃丸に戦闘よりもデータ収集に集中して欲しいと言った。

 

 ――彼の前ではパシフィスタは戦力にならず、片っ端から壊されるだろう。

 ――改良をしようにも、現在の科学力では彼の……彼の血に流れる力の前では不可能。

 ――この後の本命の為にもデータを収集してより強くするべきだ。

 

 ベガパンクは、ジョットに壊される事を前提に考えて、既にパシフィスタの改良、量産化に乗り出していた。とある国で一人の科学者が試作品を持ち出し、勝手に運用した事があったのだが、その時の戦闘の時点でベガパンクは未来を見ていた。

 故に、戦桃丸にデータの収集を命じたのだが……。

 

「これじゃあ、データもクソもねえじゃねえか」

 

 目の前に広がる残骸の山を視界に入れながら、戦桃丸は悪態を吐いた。

 現在、ジョットの相手をしているのは黄猿のみ。

 メアリーは既にこの場を去って、レイリーの元に向かって合流。その後、猛スピードでルフィ達の元へ()()()で駆け付けている。

 だが、それでもジョットの表情は優れなかった。

 

「テメェ……やる気あるのか!!」

「そうだねぇ~……正直なところ、無いねぇ~」

 

 間延びした声でそう答えると、黄猿は空中に移動し両手の指で円を作る。すると、彼の手元が光だし、そこから無数の弾丸が解き放たれた。

 

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

「チィッ――“スタープラチナ!”」

 

 舌打ちをし、前面にオーラで作ったもう一人の己を作り出す。

 そして――。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」

 

 降り注ぐ光の弾丸を、一発一発ラッシュで打ち消していく。

 しかし、幾つかの弾丸を取り逃がし本体のジョットに被弾してしまう。体から血を流しながら、それでもジョットは怯まない。

 弾丸が止む前にスタープラチナでラッシュしながら、黄猿の元へ飛ぶが――。

 

「おっと――近づかせないよぉ?」

 

 その前に、光となった黄猿が移動してジョットの射程範囲から逃れた。それを見たジョットの額の青筋が数を増やしていく。

 

「黄猿―――!!」

「そう怒りなさんなって――これが、わっしの任務なんでねぇ……」

 

 凄まじい形相で再び殴りかかってくるジョットから距離を取りながら、黄猿は数時間前の事を思い出していた。

 

 

 

『わしゃあ反対です、センゴクさん』

『赤犬……』

 

 任務遂行の為にシャボンディ諸島に向かおうとした黄猿を止め、センゴクに異議を唱えたのは赤犬だった。未だに先日の戦いの傷が癒えていないのか、体の至るところに包帯が巻かれていた。そんな痛々しい赤犬に向かって、センゴクがギロリと睨み付ける。

 

『どういう意味だ』

『イタズラに戦力を失うと言うとるんです。ジョジョの奴を無視しようと、アイツは必ず噛み付いてくる。そうなりゃあ戦争どころじゃない』

『ん~~……じゃあどうするつもりだい?』

 

 言外にジョットにやられると言われた黄猿は、赤犬と青雉の傷を見ているからか目くじらを立てる事はなかった。

 しかし、現状他に良案があるとは思えず赤犬に問いかけた。

 すると……。

 

『――天竜人に手を出した麦わらは、わしとクザンで処理する。ボルサリーノ。貴様はわしらの邪魔をせんよう、あのバカを抑えとけ』

『!? ば、馬鹿者! そんな事認められるか! 貴様らが暴れると島がどうなると思っておる!』

『それに、その傷で動いても大丈夫なのかい? 君らの損失は海軍にとって痛手だと思うがねぇ……』

『ふん。覇気も使えんヒヨっ子にやられるようなら、この先の戦争で役に立たん! だが――』

 

 

 

 

 

 ――ジョジョ(アイツ)は違う。せいぜい、抜かれんようにしとけよ、ボルサリーノ。

 

「とは言ってもねぇ……こりゃ貧乏くじを引かされたかもしれないねぇ」

 

 簡単に言ってくれる、と別の戦場に居る赤犬に対して悪態を吐きながら、黄猿は己の腹部を押さえた。

 そこは、戦闘が開始してすぐジョットに付けられた傷だ。以前から目撃情報があった冥王レイリーだったが、ジョット達の口振りから察するにこの島に居るらしい。そして、彼らと麦わらは冥王と知己の存在らしく、助力を求めようとメアリーはこの場を逃げ出そうとしていた。その際、戦桃丸と共に妨害しようとし――射程範囲に入った彼らはジョットによって大ダメージを負った。

 ロギアでなければ、危なかったかもしれない。そう思えるほどの桁違いの覇気だった。加えて……。

 

(あの妙な物……時間が経つ度に速くなっているねぇ)

 

 光人間である黄猿の目から見ても、ジョットのスタープラチナのラッシュのスピードは異常だった。先ほど八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を数弾撃ち消し損なったスタープラチナだが、戦闘開始時に光の弾丸を……それも視界を埋め尽くす程の量を捌くスピードは無かった。

 とてつもない速度で成長している。戦いの中で、ジョットは強くなっている。

 もう少しすれば黄猿の光速に対応するスピードを……いや()()()()のスピードを得るかもしれない。それこそ、覇気で見切る事が不可能な程に。

 

「さっさと麦わらを捕らえてくれよぉ~……このままだと、色々と覚悟しないといけない」

 

 巨大なマングローブを粉砕するジョットを見ながら黄猿はそう呟いた。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「なんで大将が二人も此処に居るんだよォオオ!!」

 

 絶望を前に、ウソップが涙を流しながら叫ぶ。

 既に、一味は満身創痍だ。戦える者は居らず、ゾロにいたっては動くことすらできない。スリラーバークで負った傷が未だ癒えていないのだろう。パシフィスタのレーザーで撃たれてから身動き一つできない状態だった。

 ルフィも、胸を焼かれた痛みで立っているのもやっと。サンジは下手に動けば足が砕けてしまう。

 何処か心の拠り所だった三人の姿に、一味の心は折れかけていた。

 ウソップも恐怖で体が動かない。ただ、受け入れられない現実に対して泣き叫ぶだけだ。

 

「恨むなら、星屑のジョジョを恨め。奴が居なければわしらが此処に来る事も無かった!」

 

 しかし、次の瞬間ウソップの耳に兄弟の名前が響く。

 星屑のジョジョ――ジョットの事だ。

 

「あいつの存在が、お前らを殺す! 天竜人に手を出しただけなら兎も角、あいつと同じ時期にこの島に辿り着き、問題を起こした! その時点で貴様らの運命は決まっとったんじゃ!」

「おい、サカズキ。それ問題発言だぞ。仮にも世界貴族に……」

「ふん。心にも無い事をほざくな! ――ジョジョは存在自体が悪! あいつの存在が災いをもたらすんじゃ!」

 

 過激な赤犬の発言だが――おそらく、この騒動に巻き込まれた海賊たちは牢獄の中で口々にこう言うだろう。

 星屑のジョジョのせいでこうなった。

 星屑のジョジョが大将を退け、この島に来なければ海賊として生きていけた。そう思える程に、彼が海軍に与えた影響は大きい。

 白ひげとの戦争を控えた今、事態の早期解決のために三大将を派遣する思い切った決断。それを後押ししたのは他ならぬジョットの存在だ。

 故に、赤犬は言う。

 

「あいつは、存在してならん悪じゃ!」

 

 ――だが、それを許さない男が居た。

 プツン、とウソップの頭の中で何かが切れた。

 

「――待てよ。テメェ、ジョットの事を好き勝手言いやがって……!」

「ダメよ、ウソップ!」

「待てウソップ! やめろォ!」

「止めるなロビン! ルフィ! ジョットが――おれの兄弟が侮辱されたんだぞ! こんな事言われて黙っていられるかぁ!!」

「――アァ? あいつの……兄弟じゃと……?」

 

 ギロリ、と赤犬の目に殺意が浮かぶ。

 海軍本部大将の殺気がウソップにぶつけられ、彼の体がガタガタと震えだし……しかし心だけは折れなかった。

 それだけの怒りが、ウソップの体を、心を、己を奮い立たせていたからだ。

 

「貴様があいつの兄弟じゃと? 嘘を吐くなぁ!!」

「嘘じゃねえ!! おれは、あいつと盃を交わした正真正銘の兄弟だ!」

 

 赤犬の怒号に負けずに、ウソップが叫び返した。

 かつて、ウソップは百計のクロに父を、己の身に流れる海賊の血を馬鹿にされた事がある。いつもくだらない嘘や保身のために嘘を吐くウソップだが、己の誇りを汚されたり憧れの人を馬鹿にされた時は――嘘を吐かない。

 

「確かにあいつは凄い海賊になって兄弟として釣り合っているのか不安になる――けど、あいつはおれの事を兄弟だと言ってくれたんだ! お互いの夢を語り合ったあの時から何も変わらねえ――おれの憧れの兄弟なんだよ! その兄弟を馬鹿にするのは、このおれ様が絶対に許さねえ!!」

「ウソップ……」

 

 ナミは、ウソップが何故ジョットの事を覚えて……いや、忘れなかったのか理解した。

 お互いに相手の事を信頼し、兄弟だと思うからこそ――忘れることはなかった。

 シャッキーのBARで言っていた切っても切れない絆。それは、誇張でも何でもない本心からの言葉だったのだ。

 

「手配書に載ってもいないゴミが――」

「ああ、そうだ! だが、今に見てろ! このキャプテン――いや、ゴッド・ウソップが、ジョットに負けない程の男になってやる!」

 

 キャプテンでも、キングでもない。ジョットに並び立つのなら――神にでもならないといけない。

 その決意を胸に発した言葉は、赤犬の脳裏に少し前の記憶が蘇る。

 まだジョットのクルーでもなかった男たちが、体を震わせながら赤犬に向かって『海賊だ!』と叫んだあの日。

 あれからだ。あれから始まったのだ――屈辱の日々は。

 

「――ふんっ!」

「ぐあ!?」

「ウソップ!? こんにゃ――ぶほっ!?」

 忌々しい記憶を振り払うかのように、マグマ化させた腕をウソップの頬に叩き付ける赤犬。殴られた衝撃でウソップの体は宙に浮き、そして地面に沈む。

 それを見たルフィが突っ込むも“大将を援護せよ”とプログラムされたパシフィスタによって殴り飛ばされた。

 

「あ、ぐあ……ああああああああ!?!?」

 

 ルフィが遠くに吹き飛ばされ、殴られたウソップを見た仲間が悲鳴を上げるも、しかしそれ以上に大きな……痛みに悶えるウソップの絶叫が掻き消した。

 いつものように大質量のマグマを作り出すのではなく、表面をマグマ化させただけだからかウソップの頬が溶けて無くなる事はなかった。しかし、それでもマグマ。ウソップは今まで感じた事が無い程の激痛に襲われていた。

 

「この程度の痛みで泣き叫ぶ奴が神を名乗るか――見苦しい。あまりにも見苦しいぞ海賊!」

「――い、痛くねえ……!」

「あァ?」

「痛くねえって言ってんだ! こんなもの、大した事無ぇ! おれの怒りに比べたら、温い!!」

 

 火傷した頬を抑えながらも、ウソップは立ち上がる。

 

「ジョットが何度も……逃げれる、筈だァ! あいつの凄さに比べたら、お前の能力なんて屁の河童だぁ!」

 

 赤犬を睨み付けながら言葉を吐き続ける。

 

「おれ達兄弟は、お前なんかには負けねえぞ!」

 

 決して、負けない。ジョットを、兄弟を馬鹿にしたこいつだけには――心で負けたくない。

 

「もう一回、言うぞ……!」

 

 その一心で、本来なら敵わない相手にウソップは挑み続ける。今の彼を止めるには――もう、殺すしかない。

 

「海軍大将赤犬! お前のマグマは、おれの怒りに比べれば温いぞ! その程度じゃあおれは止まらねえ!!」

「なら――とっとと死ねぇ海賊ッ!!」

 

 ゴプリッと湧き出したマグマを、赤犬は目の前の()に向かって全力で解き放ち――ウソップはそのまま飲み込まれた。

 明らかに過剰な能力の解放に、ナミも、ロビンも、チョッパーも、フランキーも、ブルックも、サンジも、ゾロも、そしてルフィも――絶望の声を上げた。

 

『ウソップーー!?』

 

 だが――青雉だけは気づいていた。

 

「避けろ、サカズキ!」

 

 青雉の警告の叫びと共に、マグマから飛び出したのは――冥王レイリー。

 その背にはメアリーが片腕でしがみ付き、そして限界が来て気絶したウソップを掴んでいた。

 レイリーの覇気が籠った蹴りが赤犬の腹部に――直撃。衝撃によって赤犬が後方に飛ぶ。

 

「――冥王!!」

「やれやれ……随分仕事熱心じゃないか――赤犬くん。青雉くん」

 

 ウソップの生んだ数十秒が――彼らを救った。

 ジョットを除いて、唯一大将と戦える者がこの場に間に合った。

 そして――。

 

 

「――生きていたか、ロロノア」

 

 この男もまた、どうにか間に合った。

 

「お前は――」

 

 意識が朦朧とするなか、ゾロが見上げた先には――正真正銘の王下七武海“バーソロミュー・くま”が居た。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」

「ぬぅ……!」

 

 現在……黄猿は追い詰められていた。

 マングローブを背に、正面からジョットとスタープラチナのラッシュの壁が襲い掛かっていた。光の弾丸で相殺しているが、ジョットは拳を焼かれてもラッシュを止めなかった。

 回避をしようにも、隙間がほとんどなく、唯一空いている上は明らかに罠。黄猿の行動を制限して、ジョットが用意した選択肢を選んだ瞬間――訪れるのはラッシュによる蹂躙。

 

「――天照!!」

 

 なら、どれも選ばず作ればいい。

 黄猿の指先から強烈な光が放たれる。しかし、これに相手を殺す力はない。あるのは――視力を奪うこと。

 黄猿の次の行動を注意深く見ていたジョットは、目を焼かれて視界が真っ白になる。

 

「油断大敵――」

 

 その隙をついて、黄猿が光の速度の蹴りをジョットの脳天に叩き込み――。

 

「――オラァ!!」

「――!?!?」

 

 それでも尚、ジョットは己の拳を黄猿の腹にぶち込んだ。

 瞬間、両者の距離は勢いよく離れる。お互いの強烈な一撃で体が吹き飛んで行き、ジョットは地面に体を何度も跳ねらせ、黄猿は何本かの巨大なマングローブを貫通していった。

 ジョットも黄猿もダメージは、大きい。

 だが、状況はジョットにとって有利だ。

 

「――あいつらの、所へ、行かねえと」

 

 

 オーラで視力を治しながら、ジョットは覇気に従って麦わらの達の元へと走った。

 だが、どういうことだろうか。

 

 ――何故、感じる気配の数がこんなにも少ない?

 ――何故、気配が……一つずつ無くなっていく。

 

「……レイさんは――いやっ! そんな筈あるわけねえ!」

 

 頭に浮かんだ最悪の事態を振り切り、ジョットは走る。走る。走る。

 そして、徐々に視力が戻り、ルフィの気配を身近に感じて、彼の目に映ったその光景は――。

 

「さよならだ。麦わらのルフィ……もう出会う事もないだろう」

 

 麦わらの一味が完全崩壊した瞬間だった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 オレは、また間に合わなかったのか?

 友達が消される前に、駆け付ける事もできなかったのか?

 誰がそんな事をした?

 誰が――オレの友達に手を出したんだ――。

 

 

 ――ジョットの血が、『ジョン・スターの血』が、彼を怒りに染めた。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 くまの手……肉球によって麦わらの一味は何処か別の場所へと消された。その行動を、赤犬も、青雉も、レイリーも止める事ができなかった。

 大将達は、レイリーを解放すれば麦わらの一味は逃がされる為に。

 レイリーは、大将達を放置すれば死者が出る為に。

 故に、彼らはくまの暴挙を防ぐ事が出来なかった。

 

 麦わらの一味もまた、抗う事ができなかった。パシフィスタで満身創痍だった彼らは、立ち向かう者から順に消され――船長のルフィを最後にその島から完全に消え去った。

 

 メアリーは、ウソップの手を掴んだ状態で能力を行使された為に巻き込まれ、そして――。

 

 バーソロミュー・くまは何を目的に動いたのか。唯一知っているメアリーは飛ばされ、レイリーは耳元で「麦わらの一味を逃がしたい」と囁かれただけで詳しい事は知らない。

 立場的には味方に近い大将達は――殺気を含んだ視線をくまに送っている時点で明らかだろう。

 

「貴様、自分が何をしちょるのか――」

 

 裏切りに等しい行動をしたくまに、赤犬が口を開いた瞬間――荒れ狂う覇王色の覇気がその場に居た者達を威圧した。一瞬意識が飛びかけ、耐えて発生源を見れば――そこには修羅が居た。

 

「――ジョォジョオオオオオ!! 貴様、よくもわしの前に……!」

「待て、サカズキ。……様子が変だ」

 

 ジョットの目には、くましか映っていなかった。ルフィを消した光景を見て、彼を完全に敵として捉えている。くまも、噂で聞くジョットに振り向き――瞬間、鉄の顔面から嫌な音が響く。

 ジョットに殴られたのだと理解したのは、彼の殴打が八発叩き込められた時だった。それだけ彼の拳が速く、そして重かった。まともに喰らっていてはスクラップになる。

 くまは咄嗟にジョットの拳に合わせて肉球を構えた。彼の肉球は能力によって万物を弾く力がある。ジョットのパンチの衝撃を、先ほどのルフィのパンチの様に弾こうとしたくまだったのだが――。

 

「――っ!」

「ぐっ……!」

 

 殺しきれない。ボキッとジョットの腕が折れて体は後方に飛び、くまもまた後ろへと吹き飛ぶ。初めての経験にくまは驚いていた。星屑のジョジョとは、ここまでデタラメの強さだったのだろうか、と。

 そして、その疑問は赤犬達もだった。

 

「なんじゃい、あのパワーは!」

「怒りによって目覚めた……ってところか? 厄介な」

 

 起き上がったジョットは、変な方向に曲がった腕を掴むと音を立てて元に戻しオーラで治療――いや、再生する。

 しかし、彼のオーラが足りないのかガクンッと膝を折る。黄猿との戦闘で体力を消費したからだろう。動きが鈍い己の体に苛立ちを覚え――背後からのレーザーに貫かれて苦悶の表情を浮かべる。

 

「……!」

「わっしを忘れて貰っては困るね〜……星屑のジョジョ」

 

 頭から血を流し、腹部から夥しい血を流す黄猿。瀕死の状態だがそこは流石の大将。すぐ様戦線復帰してジョットを追い掛けた。そこに当初の任務は無い。自己判断の元――ジョットは此処で殺さないといけないと思ったからだ。

 そして、それは他の大将達も同様だ。

 

「やっと……貴様を殺せる……!」

 

 赤犬は言わずとも。

 

「センゴクさんの指示では戦闘禁止だったが……こうなったら仕方ないか」

 

 青雉もジョットの危険性を考慮して戦闘態勢に入る。

 これに焦るのはレイリーだ。全員手負いとはいえ、三大将相手に生き残るのは至難の技。老体の身の自分にとっても、半ば理性を失っているジョットにとっても。

 そんななか、一人の男が現れる。先ほどジョットに吹き飛ばされたくまだ。

 彼は、ジョットに向かって手を……肉球を振り下ろした。戦って分かったが、まともに相手をしたら身が持たない。故に、ルフィ達と同じように、しかし脅威をこの場から消すという別の理由で能力を発動させた。

 ポンっと軽い音が響き、ジョットはくまの能力でシャボンディ諸島を――。

 

「っ、ぐっ、うううう……!」

 

 去る事は無かった。嫌な予感がしたジョットは、両腕を地面にめり込ませるとその場に無理矢理留まった。これに驚いたのはくまだ。未だかつて、このような方法で能力を耐えた者は居ない。

 ジョットを遥か彼方に弾き飛ばそうとする力が、耐えるジョットの腕に負荷を掛けてブシュッ、ビシュッと嫌な音を立てて血が吹き出す。

 

「暴君……! 貴様、また!」

 

 赤犬の怒声を耳にしながら、くまは二度目の能力の行使に入った。ポンっと再び軽快な音が響くも、ジョットはまだ耐えている。今にも千切れそうな程腕から血が次々と吹き出し、ジョットはくまを見上げて睨みつける。

 

「許さねぇ……兄弟と友達を消したお前を――」

「なるほど、そういう事か」

 

 くまは、ジョットが吐き出した恨みが込もった声に納得し、彼の耳元に口を寄せると――。

 

「麦わらの一味は――生きている」

「――」

「だが――お前はどうなるか分からない」

 

 そう言ってくまは三度目の能力を使い――ジョットはシャボンディ諸島から消え失せた。

 

 

 

 

「やってくれたのぅ……くまッ!」

「これは大問題だねぇ……」

「やれやれ……センゴクさんになんて報告すれば良いんだか」

「……」

 

 ――こうして、後に語られる海軍三大将とルーキー達の騒動は幕を閉じ。

 ――麦わらの一味とクルセイダー海賊団船長並びに副船長は……行方不明となる。

 




被害状況
キッド、ロー。協力してパシフィスタを退けて逃亡に成功。
アプー、ホーキンス、ドレーク、ウルージ。原作通りに黄猿にやられるも逃亡に成功。
ベッジ。一度氷漬けになるも、部下の手によって解凍され無事逃亡に成功。
ボニー。赤犬に一度捕らえられるも、黄猿がジョットによって吹き飛ばされた際の戦闘の余波で軍艦が転覆。その時の混乱に乗じて逃亡。
他の海賊。マグマで溶けたり氷漬けにされたり光で撃たれたりして牢獄の中。
シャボンディ諸島。いくつかのマングローブ消失。崩壊は免れた。
ギン率いるクルセイダー海賊団。シャッキーの手を借りて無事にやり過ごす。しかし、船員達の士気は――消失。
メアリー。途中ウソップとはぐれ、そして――。


次回は日記です







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