とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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番外編 もしもジョットが海兵だったら?

 

IFSTORY もしもジョットが海兵だったら?

 

「メアリーめ……次々と問題を起こしやがって」

 

 新たに発行された手配書を見ながら、オレはそっとため息を吐く。

 まだ一緒に暮らしていた時に海賊になると言っていたあの少女が、今ではエニエスロビーを滅ぼすまでの凶悪な一味の一人として立派な札付きとなってしまった。

 しかし、オレはそれに対して悲しいという気持ちを抱かなかった。

 あの時、オレはアイツに海賊になるとはどういう意味を持つのかを聞いたのだ。それに対してアイツは分かっていると言い、現にこうして“邪眼のメアリー”として一億ベリーの懸賞金を掛けられている。こうなれば、あらゆる強敵がアイツを殺しに来るし、それも覚悟の上だろう。

 

「で、問題はコイツだな……」

 

 オレが視線を向けた先には、笑顔を浮かべてピースしている麦わら帽子を被った男。名をモンキー・D・ルフィ。ファミリーネームから分かる通りに英雄ガープの孫にして、革命軍ドラゴンの息子。とある理由で最近知ったのだが、この暴れっぷりも世界最悪の犯罪者の息子だと思えば納得できる。

 それと同時に、もしかしたら自分もコイツのようになっていたのかもしれないと思った。オレの父“隠者ジョセフ”も大層な悪党。やっている事は大規模な小犯罪って感じだが……。

 この前も青雉さんや赤犬のおっさんにちょっかいを出し、被害を受けた奴らから抗議を受けて辟易としている。血縁者なのだから何とかしてくれ、とな。

 全く。五歳の時に遭難したっきり顔を合わせていないというのに……。特に赤犬のおっさんの怒りは面倒だったな。相性最悪っていうのもあるが、ついキレて喧嘩してしまった。その後センゴク元帥に怒られたが……。悪の血筋だからって突っかかって来やがって。

 

 話を戻そう。

 この麦わらのルフィだが、オレの勘がコイツは近々大きな問題を起こすと言っている。

 12人の超新星の中でも飛びっきりの問題児。

 火拳のエース公開処刑を控えた今、海軍はかつてない緊張状態に陥っている。そんな時にコイツが何かやらかせば……確実にオレが出なくてはならないだろう。

 

 ――臨時新大将“黒狼(こくろう)”として。

 

 その時オレは“誇りある正義”の元、麦わらの首を――獲る。

 一時家族だった女の船長であろうとも……。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 そして、暫くしてオレの勘が正しかった事は証明された。

 天竜人を人質に取った凶悪事件。主犯は麦わらのルフィ。共犯者としてユースタス“キャプテン”キッド並びにトラファルガー・ロー。

 個人的には胸がスカッとする案件だが、時期が悪い。

 白ひげと戦争を控えている現状、天竜人程度の事件に囚われている場合ではない。

 

 故に、さっさと面倒事は片付けるに限る。

 

「オレが行きましょう」

「ジョット……!」

 

 報告を受けて苦悶の表情を浮かべていたセンゴク元帥が、まるで救いを得たかのように表情を明るくさせた。自分で言うのも何だが赤犬のおっさん関係以外では、オレは模範的な海兵だと自負している。

 先日も脱走して行方を暗ましていた金獅子が海軍本部を警告しに来た時も捕らえたし、本部の菓子を盗りに来たあのアホ親父も返り討ちにした。

 ……いや、これは何か違うな。

 とにかく、センゴク元帥はオレに期待の視線を向けている。オレもそれに応えたい。腰を浮かした黄猿さんには悪いがな。

 

「それに、新大将の実力を海賊共に見せつけるパフォーマンスにもなります。ここで釘を刺しておけば、下手に奴らも動かないでしょう」

「ああ、そうだな。全くその通りだ! 一刻も早く解決してくれ!」

「分かりました。では、行ってきます」

「頑張ってねぇ~」

 

 センゴク元帥と黄猿さんの激励の声を耳にしながら、オレはシャボンディ諸島に向かった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 一般海兵と別れてパシフィスタの指揮を執る戦桃丸と合流する途中、オレは偶然にも大きな得物を見つけた。

 そいつの名は“魔術師ホーキンス”。億越えの超新星の一人だ。

 

「船長! 逃げてください!」

「そいつ、新大将の黒狼(こくろう)です! 不味いですよ!」

 

 ホーキンスは、自分のクルー達が焦った声で逃げるように警告の言葉を発する。

 しかし、ホーキンス自身はタロットカードを使って何やら占いをしている模様。逃亡やら防御やらブツブツと独り言を呟いているが……こんなものが当たるのだろうか?

 物珍しさから近くで見ていたオレに、ホーキンスは占いを終えたのか視線をこちらに向ける。

 

「――勝率0%。噂の新大将が何の用だ?」

「天竜人に手を出した麦わらたちを捕らえに来た」

「なるほど。なら、おれには関係の無い話だ。用が無いのなら、目の前から消えてくれ」

「悪いがそうはいかない。オレは海兵だ――海賊を見逃す理由が無い。魔術師ホーキンス」

 

 その言葉を最後に、オレはスタープラチナを解放。飛び出した己の半身はホーキンスの横っ面を殴りつけ、奴はそのままガラ空きの民家に吹き飛んで行った。

 

「ホーキンス船長!!」

 

 建物が崩れる音が響き、ホーキンスのクルー達が悲鳴を上げる。

 大将を前にして、船長の心配をするとは……よほど慕っているのか。それとも唯一の心の拠り所なのか。どちらにしても、大将を前に随分と呑気なものだ。

 さっさと捕縛しようと足を前に出すと同時に、見聞色の覇気がホーキンスはまだ死んでいないと訴えかけて来た。

 ……バカな。確かに手応えはあった筈。

 視線をモクモクと沸き起こる土煙の向こうへと移す。そこには、スタープラチナの拳を受けたにも関わらず、平然と立ち上がっているホーキンスの姿があった。

 

「妙な能力だな。ロギアでは無さそうだが」

「それはこちらの台詞だ――まさか、一発で二体も減らされるとは思わなかった」

 

 ボトリボトリとホーキンスの体から何かが落ちた。

 藁人形? 頭部が無い体だけの人形が力なく横たわっており、それがスタープラチナの攻撃を防いだ原因だというのは分かった。

 元々そういう形状なのか、それとも違うのか。

 その理由を確かめるため、オレは懐の中に入れていた銃弾をスタープラチナに持たせて――指で弾く。すると、衝撃音が響き弾丸は真っすぐとホーキンスの額に向かって……直撃。ホーキンスの体が後方へと倒れ、しかしすぐに起き上がった。頭部に穴が空いた藁人形を体から排出して。

 

「なるほど……何かしらの身代わりか。それでオレの攻撃をやり過ごしているようだ。だが――」

「……」

「無限という話はあるまい。時間が経てば、お前は終わりだ」

 

 種が分かれば後は簡単だ。

 攻撃をやり過ごせないようになるまで殺し続ければ良い。

 今度は本体であるオレも動いて目の前の敵をさっさと片付けよう。そう一歩踏み出した時だった。空から巨漢が落ちて来たのは。

 

「ぐあっ!」

 

 傷だらけになり苦悶の表情を浮かべる――怪僧ウルージ。それを追いかけてこの場に降り立つパシフィスタ。

 息も絶え絶えな表情で目の前の男ウルージは言った。

 

「まいった……降参! なんて強さだ!」

「潔いな、怪僧ウルージ」

「……!?!? なんと、新大将黒狼! なんて悲運……! 正面には七武海。後方には大将。もはやここまで……!」

「そうでもないぞ怪僧ウルージ。貴様に死相は出ていない」

 

 海賊同士だからか。もしくは海軍を前にしているからか。

 ホーキンスはウルージに慰めの言葉を送っていた。いや、ただ単に占いで見た結果を口にしているだけという線もある。

 しかしそうなると、オレも舐められたものだ。オレを相手にして無事でいられると思っているらしい。

 その考えが如何に甘いか――思い知らしてやろうか。

 大将としての責務を果たそうと一歩を踏み出した途端、またもや乱入者が現れた。

 その乱入者はメイスと剣でパシフィスタの横から突撃し、建物へと叩き付ける。ガラガラと瓦礫に埋まるパシフィスタから、それを為した敵へと視線を向けた。

 そしてその正体を知ったオレは思わず眉を顰めて口を開いた。

 

「テメエは……裏切り者のドレークじゃねえか」

「――! しまった。大将と出逢うつもりはなかった!」

 

 新聞で見た時はまさかと思っていたが……こうして見ると現実だと言うのが分かる。

 こちらを睨み付けるドレークの額には冷や汗が一つ垂れていた。同じ海軍なら、オレの強さを理解している。少将まで昇りつめたとはいえ――オレはその上を行った男だ。

 見かけた億越えを捕らえるための寄り道だったが、思いもよらない収穫だ。

 ――ここは、オレ一人でやらせてもらおう。

 

「パシフィスタ。オレがやる。テメエは手を出すな」

「了解。攻撃行動を中止。以後、大将黒狼の指示があるまで待機する」

 

 その言葉に一瞬希望を見る海賊たち。

 ……つくづく舐められたものだ。

 オレは、剃で一番遠い位置に居るドレークに近づくと……黒いオーラと覇気で染まった拳を叩き付ける。

 

「“黒色の(ブラック)オーラドライブ!”」

「ぐ――がはっ!?」

 

 黄猿さんには敵わないが、少将程度の実力なら気づかない速度。

 しかしこれまでの航海である程度成長していたのか、ドレークは直前に鉄塊をし――オレはそれを粉砕して殴り飛ばした。

 一瞬で視界の奥へと遠ざかり姿が見えなくなる。しばらくして遠くで土煙が上がる。運が良ければ生きているだろうが……意識はあるまい。

 

「“因果晒し!”」

「“降魔の相!”」

 

 背後から巨大化したウルージと藁の怪物へと変化したホーキンスが襲い掛かる。それを見聞色の覇気で見切り、まずはウルージの懐に入る。

 そして、未だにオレの姿を捕らえていない奴の腹に軽く手で触れる。その感触でオレの居場所に気づいたようだが、もう遅い。

 

「オーラドライブ!」

「ぐおおおおおおお!?」

 

 激痛に悲鳴を上げるウルージ。見るからに肉体操作の技を使用していたので、それを利用して体内のオーラを暴走させてやった。すると今まで受けていたダメージもあってか、ウルージは血を吐いて気絶。

 それを見送ると、右からオレの頭を狙っていたホーキンスの攻撃を避け背後に回る。

 

「船長! 後ろです!」

「遅い」

 

 ホーキンスが振り向くよりも早く、黒く染まったスタープラチナの拳が奴の体を貫通した。ボトリ、と次々と藁人形が落ちていく。

 それを見たホーキンスの表情が驚きの色に染まった。何故? って顔をしているな。

 これもまたウルージにした事と一緒だ。ホーキンスが何かしらの手段で繋いでいた誰かの生命力を絶たせて貰っただけの事。

 種が分かれば後は簡単とは、そういう意味だ。

 

「お前らの抵抗は――無駄なんだ」

『無駄無駄無駄無駄――無駄ァ!!』

 

 全ての藁人形を消費したホーキンスの体に、スタープラチナのラッシュが襲い掛かる。ラッシュの途中で気を失ったようだがスタープラチナは止まらずそのまま殴り続け……最後には蹴り上げて瓦礫の中へと吹き飛ばした。

 戦闘で柄にもなく興奮しているのだろうか。どんどん凶暴性を増していくな。

 

「さて――次はお前だ」

「は?」

 

 ある方法で先ほどから戦闘を覗いていた海賊――“海鳴りスクラッチメン・アプー”からすれば、オレは一瞬で移動したように見えるだろう。実際は違うが。

 こちらに振り返るアプーだが、そろそろ奴らを捕まえなくてはならない。

 無駄な時間を吹き飛ばす、スタープラチナの無数の拳が海鳴りを吹き飛ばした。

 

「アジャパアアアア!?」

「ふう……もしもしこちら海軍大将黒狼。超新星四名を撃退した。オレは麦わら達を追うから、捕縛は任せた」

『は! かしこまりました!』

 

 パシフィスタに見張らせておけば、下手に抵抗もできないだろう。

 海兵へと繋いでいた電伝虫を別の番号にかける。

 

「戦桃丸。こちら黒狼。犯人は何処に居る?」

『既にバラけたよ! 寄り道するからだ!』

「ああ、すまない――お前はユースタスとトラファルガーを追え。麦わらはオレが捕らえる」

『いきなり掛けて来たかと思えば指示しやがって――了解! で、パシフィスタは要るか?』

「いや――オレ一人で良い」

 

 そう返すと、オレは見聞色の覇気で感じ取った懐かしき気配……いや、件の一味の元へと向かった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 全員で何とかパシフィスタを倒した麦わらの一味。

 疲労困憊で息も絶え絶えな彼らだが、今すぐにも移動してこの場から離れなければならなかった。友を救う為とはいえ、彼らは天竜人に手を出してしまった。それによって海軍は軍艦と大将をシャボンディ諸島に派遣している。

 大将に見つかれば命は無い。

 故に早く逃げなくてはならない。

 

「皆、早く此処から――」

 

 ルフィの初めての仲間であり、副船長であるメアリーが一味に声を掛けた途端。

 突如上空から飛来した何かが麦わらの一味達のすぐ近くに着弾した。

 ドゴンッ! と大きな音が響き揺れが彼らの疲れ切った体に響く。

 

「な、なんだ! 今度はなんだ!」

 

 急いで立ち上がったウソップは己の武器を構えて土煙の向こうに居る誰かを警戒する。そしてそれは他の者も同じで、それぞれ戦闘態勢に入った。

 それはメアリーも同じで、ジャラリと服の袖から鎖を垂らして敵を見据え――現れた男に目を見開いた。

 

「アナタは――ジョット!」

 

 ジョット。その言葉にロビンの顔が険しいものに変わる。

 

「気を付けて! その男、大将よ!」

 

 ロビンの言葉に、全員が驚き――非常に不味い状況だと理解した。

 現在、麦わらの一味はベストコンディションからほど遠い。その状態で……いやそもそも全快の状態で戦っても大将に勝てる可能性は低い。

 むしろ全滅の可能性がグンッと高くなった。

 白い帽子に海軍のコートを着た男――黒狼のジョットは視線をメアリーへと向けた。

 

「久方ぶりだな――妹よ」

「あら。まだ私の事を家族だと思っていてくれたの?」

 

 ジョットから放たれた言葉に、一味の間に動揺が走る。

 海軍大将がメアリーの兄? どういう事だ?

 昔から意味深な発言や行動をするメアリーだが、今回もまた一味を驚かせる。

 ルフィが英雄ガープの孫だと知った時も驚いたが……。

 しかし、この事実を好機と見た者が居た。ナミとウソップだ。

 

「おいメアリー! こいつお前の兄貴なんだろ! 何とか見逃して貰う事はできないか!」

「そうよメアリー! あ、でもルフィのお爺さんは結局……」

「それは無理な話だ」

 

 少しだけ緩んだ空気をジョットが払拭した。

 ジロリと彼らを見下すと、麦わらの一味にとって死刑宣告に近い言葉を吐いた。

 

「天竜人に手を出された以上――大将としてお前らを捕らえなければならない。これは決定事項だ」

「――っ。アナタは、天竜人の肩を持つの!?」

「肩を持つかどうかの話ではない――悪いがこれも仕事だ」

 

 メアリーの問いかけに、ジョットは感情を押し殺した声で答える。

 天竜人の事は彼も嫌いだ。だが、好き嫌いで任務を選べる立場ではないのだ、海軍本部大将というのは。

 故に、命令通りに彼は麦わらの一味を捕らえる。

 

「仕事って――」

「待て、メアリー!」

 

 尚も食い下がるメアリーを船長であるルフィが止めた。

 フラフラの体で一味の前に出ると、強い眼差しでジョットを見上げる。

 こうして前に立つと分かる。この男は、青雉と同格の存在だと――。

 

「おれが、相手だ……!」

「……」

 

 拳を握り締め、構えるルフィ。

 そんな彼を止めようとメアリーが前に出ようとし、そんな彼女をサンジが止める。

 

「サンジ!」

「逃げてくれメアリーちゃん。――大丈夫。今回はルフィだけに任せねえ」

 

 そう言うと、サンジはキッとジョットを睨み付けた。

 現状、一味の中で最高戦力なのはルフィとサンジのみ。ゾロはスリラーバークで負った傷が癒え切っておらず、走るのでやっとだ。

 だから、ここはルフィとサンジが残って時間稼ぎを――。

 

「――全員、逃がさんよ」

 

 しかし、そんなサンジの覚悟は――ジョットが放った覇王色の覇気で吹き飛ばされた。

 ヒューマンショップ会場でレイリーが行った謎の技。それと同じ事をジョットが行い麦わらの一味を威圧する。

 手加減されたからか、それとも前もってレイリーのモノを見たからか。気絶する事は無かったが――彼らは理解させられた。大将というものを、そしてこの男の容赦の無さを。

 

「――“ギア(セカンド)!”」

 

 体の震えを血流を流し込んで無理矢理吹き飛ばし、体から煙を出しながらルフィが拳を突き出した。

 ギア2はルフィの技を一段階強くする力。その力はCP9を打ち倒す程強力で、しかしその反面体力の消耗が激しい。

 

「“ゴムゴムの――JET(ジェット)(ピストル)!”」

 

 高速で放たれたルフィの拳は、しかしジョットに見切られて容易く受け止められてしまう。

 

「な!? ――うわ!?」

 

 そして、掴んだそのゴムの腕を勢いよく地面に向かって振り下ろした。

 凄まじい力で引っ張られたルフィは抵抗する事ができずそのまま地面に叩きつけられ、体の半分が埋まってしまった。

 

「くそ! “悪魔風脚(ディアブルジャンブ)!”」

「駄目よサンジくん!」

「よせ、サンジ!」

 

 それを見たサンジが飛び出した。背後から仲間の静止の声が響くが自分がやらなければ誰がやる。

 片足が摩擦熱によって赤く染まる。六式の鉄塊ですら打ち抜くこの蹴り技はサンジにとっての切り札とも言える。

 

「“画竜点睛(フランバージュ)ショット!”」

 

 それをルフィへと視線を向けているジョットの脳天に向かって振り下ろした。

 しかし……。

 

「右足の蹴り」

「な!?」

 

 ジョットは振り向く事無く首を傾けて避けると、作り出したスタープラチナの拳でサンジの腹を強打。思わずサンジは血を吐き出し、顔は苦痛で歪む。

 

「サンジーーー!!」

「あれは、スタープラチナ……! なんで!?」

 

 ウソップが悲鳴の声を上げ、メアリーは目の前の光景が信じられないと口を押さえる。

 一撃でサンジはダウンし、呻きながら地面に落ちた。

 ジョットは、そんなサンジを無視して視線を残りの一味へと向ける。

 

(――不味い)

 

「ゾロ!」

 

 限界の体を無理矢理動かして、ゾロが三本の刀を持ってジョットへと立ち向かった。

 サンジがやられてショックを受けていた一味は、その彼の動きに触発されて援護するべくそれぞれの力と技の行使に出た。

 

「やめろ……お前ら、逃げろ……!」

 

 ジョットの足元で痛みに耐えながら、サンジは仲間にそう言った。

 一撃喰らって分かるこの男の異常さ。スタープラチナの拳の痛み。

 彼の攻撃は――普通ではない。

 

「“九輪咲き(ヌエベフルール)――ツイスト”」

 

 ロビンがハナハナの実の能力でジョットの体から九本の手を咲かせる。そして無理矢理体を捻じ曲げ動きを拘束しようとするが――。

 

「っ、まったく動かない!」

 

 まるで鋼鉄を押しているかのようにビクともしなかった。

 それどころか……。

 

「オーラドライブ」

「ああ!?」

「ロビン!?」

 

 ジョットが流した攻撃性の高いオーラによって、逆にロビンに痛みを送り込まれてしまった。

 激痛にロビンが思わず悲鳴と共に能力を解除してしまう。

 それを見た仲間たちが仇を討つと言わんばかりに力を込めた。

 

「“三刀流――鬼斬り!”」

「“重量強化(ヘビーポイント)――重量(ヘビー)ゴング!”」

「“ストロングハンマー!”」

 

 ゾロ、チョッパー、フランキーが当たれば相手がダウンする程のパワーある一撃をそれぞれ叩き込もうとジョットに接近。一つ防げば、他の二つがあるという打算だった。

 しかし、次の瞬間三人は全身を強い衝撃が走り、痛みが襲う。何が起きたのか理解する前に、弾丸のように勢いよく後ろへと吹き飛んだ。ゾロに至っては傷が開いて危険な状態だ。体中に駆け巡る感触から殴られたのだと分かるが……いつ、どうやってしたのか分からない。

 

「……は!」

 

 そしてそれは、サンジを救おうと動いていたブルックも同じであり、次の瞬間骨が砕けるのではと錯覚しそうな痛みを感じ、肩に担いだサンジごと吹き飛ばされた。

 

「くそ! いったい何が起きているんだよ!」

『ウソップ! 早く抜いてくれ!』

 

 次々とダウンする仲間たちを見ながらウソップはルフィを引き抜こうとしていた。

 しかし、心は恐怖でいっぱいだった。気が付いたら仲間が傷つけられ、そして倒れていく。

 今までの敵は能力の正体が分かる分まだマシだった。

 だが、あれは違う。何の能力が分からず、訳が分からないまま殺されてしまう。それほどの恐ろしさで頭がどうにかなりそうだった。

 

「よくも皆を……!」

「! おい待てナミ! 相手の力が分からないうちに攻撃は――」

 

 仲間をやられて恐怖よりも怒りが勝ったナミが動く。

 ウソップの静止を無視して天候棒(クリマ・タクト)で雷雲を作り出し、その自然の驚異をジョットに向かって誘導する。

 

「“サンダーボルト=テンポ!”」

 

 雷鳴が轟き、光が人を穿つ。

 今度こそ攻撃が入ったと確信するナミだが、ウソップは違った。

 

「ナミーーーー!! 後ろだーーー!」

「え……っ!?」

 

 振り返ると、確かにジョットが居た。ナミが先ほど雷を落とした場所には――誰も居ない。

 死の恐怖に顔を引きつらせるナミ。そんなナミを救おうとウソップが己の武器を構え、技を放つ。

 

「“必殺鉛星!”」

 

 高速で撃ち出されたパチンコの玉がジョットに向かって放たれた。

 せめて意識を逸らせば、おそらく地面の中に潜伏しているメアリーが動く筈だ。

 そう考えての援護射撃だったが――。

 

「――ふん!」

 

 驚くことに、突如ジョットは己の拳を地面に叩きつけた。

 局所的な地震が起き亀裂が走り、隆起した地面からメアリーが投げ出された。

 スカスカの実で下から攻撃しようとした彼女は、彼の覇気を含んだ振動で大ダメージを受けていた。頭から血を流し気絶している。

 

「メア――」

 

 仲間の名を叫ぼうとしたウソップは、それ以上口を開く事ができなかった。

 飛来したパチンコの玉が彼の肩を穿ち、激痛で倒れてしまったからだ。

 肩から血を流し、痛みに悶えるウソップ。そんな彼のすぐ傍に、再び一瞬で移動するジョット。

 

「ぐあ……ち、ちくしょ――」

 

 ズシンッと振動が起き――ウソップも気を失った。

 まだ数人意識がある者が居るが、それでも理解していた。

 この男には勝てない、と。

 しかしルフィは違った。

 ジョットの拳によって地面が隆起した事により、彼はようやく抜け出す事に成功していた。

 そして、目の前の光景に――吠えた。

 

「お前――おれの仲間に何してんだああああああ!!」

 

 ギア2を全開に再びジョットに突っ込むルフィ。

 仲間たちが必死に彼を呼び止めるが、仲間を傷つけられたルフィは止まる事が出来ない。

 

「“ゴムゴムの――銃乱打(ガトリング)ゥ!!”」

 

 超高速で放たれる拳の雨。ゴムの性質を利用したこの技は様々な強敵を打ち破って来た。

 だが……。

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!』

 

 それ以上の速さで、まるで時間が止まっている間に放たれたと思ってしまう程のラッシュが、ルフィの銃乱打(ガトリング)()一つ一つを丁寧に撃ち落としていく。

 拳同士が激突する度に、本来打撃が効かない筈のルフィの両腕に鈍い痛みが襲い掛かる。

 それでも尚、歯を食いしばって痛みに耐えて両腕を動かすルフィ。

 

「――無駄だ。諦めろ」

 

 しかし――届かなかった。

 スタープラチナのラッシュの速度がルフィの拳の数を上回り、次第に拳ではなく体へと当たっていき――ルフィは全身を殴られて吹き飛ばされた。

 

『ルフィ!!』

「終わりだ――麦わらのルフィ」

 

 仲間たちが叫び、ジョットがトドメを刺そうと腕を大きく振り被り――。

 

「――旅行をするなら、何処に行きたい」

「! お前は――」

 

意識の外からの攻撃によって、シャボンディ諸島から飛んだ。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「――申し訳ありません。オレの失態です」

『気にするな……とは言わないが。くまの妨害が無ければ任務は達成できたのだ。そう気を落とすな』

 

 現在、ジョットはとある冬島に飛ばされていた。

 何とか連絡手段を見つけ、こうしてセンゴクと通信を取っているが……結局麦わらの一味には逃げられたらしい。

 

『戦争には間に合いそうか?』

「はい。必ず」

『それなら良い。天竜人の対応は黄猿に任せてある。お前は一刻も早く帰る事だけを考えろ』

 

 それだけを言ってセンゴクは通信を切った。

 電伝虫が目を閉じると、ジョットは息を吐いて上を見た。

 

(戦争か……正直興味ないな)

 

 ジョットは今――虚しさを覚えていた。

 遭難先でゼファーという男に拾われ、そのまま海軍となったが……そこに彼の意志は無かった。

 ゼファーはジョットの素性を知ると、一刻も早く自分の身を守れる地位を得るべきだと言い鍛えた。

 その結果、こうして白ひげの戦争に備えるためとはいえ大将まで上り詰めた。

 だが――。

 

「オレは、本当にそれで良いのか」

 

 風に吹かれて、ジョットの正義のコートが()()()()()()()地に落ちた。

 




正義に属すと闇落ちする主人公がいるらしい…

今回のジョットは本編のような出会いや仲間が居ない場合のIFです。ナミとかウソップとか。そしてシャンクス。
故に本編では絶対に口にしない「無駄」という言葉を使います。

お気に入り7000記念に作ったのになんか暗いなー。
本編も仕上がり次第投稿します!







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