とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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頂上戦争編
開戦


 世界政府が白ひげと戦争をしてでも、火拳のエースを公開処刑する理由――それは、エースが海賊王ゴールド・ロジャーの実の息子だからだ。

 当時血眼になって探した鬼の子は、海賊次世代の頂点に必ず立つ。その芽を摘むことは、世界政府にとって大きな意味を持つ。

 エースがロジャーの息子であるという事実を否定し、白ひげの息子だと叫ぼうが――既に、開戦の火蓋は切って落とされたのだ。

 

「来たぞォーーー!!」

「全員、戦闘態勢!」

 

 看守塔にて、海上を見張っていた海兵が叫び警報が鳴り響く。

 

「いきなり現れたぞ……!? 何処から出てきた!」

 

 突如現れた総勢43隻の海賊艦隊にセンゴクの表情が険しいものになる。

 “遊騎士ドーマ”“雷卿マクガイ”“ディカルバン兄弟”“大渦蜘蛛スクアード”。新世界にて名を轟かせる錚々たる面々に、海兵たちの間に戦慄が走る。

 しかし、あの男は――白ひげの姿は確認できず、センゴクは海上に注意を呼びかけ――それが間違いだとすぐに気づいた。

 

 初めに気づいたのは、処刑台の下に座る大将たち。次いで、英雄ガープ、大参謀つる。

 

「――こりゃあ、とんでもねえ所から現れやしねえか?」

「……布陣を間違えたかねえ」

 

 次第に、海兵たちも気づき始めた。

 湾内から気泡が発生し、ゴボ、ゴボボ……と音がする。それと同時に海底に影が映り――彼らはようやく気づいた。

 

「――そういう、事か……! あいつら全船、コーティング船で海底を進んでいたのか!」

 

 いくら海上に目を配ろうとも、海の中に居るのなら見える筈もなく。

 白ひげ傘下の海賊艦隊の出現に気を取られた海軍は――最も恐ろしい男を懐まで呼び寄せてしまった。

 水飛沫を上げて、白ひげ海賊団旗艦“モビーディック号”が姿を現し、それに続くように3隻の海賊船も湾内の海上に飛び出した。

 そして、船上に居るのはもちろん……。

 

「“不死鳥マルコ”! “ダイヤモンド・ジョズ”! “花剣のビスタ”!

 ――14人の隊長達の姿を確認! そして――」

 

「グラララ……おれの息子は無事か? センゴク」

 

「――四皇“白ひげ”です!!」

 

 急接近されたセンゴクは歯噛みし、エースは現れた白ひげに苦悶の表情を浮かべた。

 

「何で、見捨ててくれなかったんだ……! おれの身勝手で、こうなっちまったのに――」

 

 そう叫ぶエースに、白ひげの……家族たちの声が彼に優しく語りかける。

 

「おれは行けと言った筈だぜ……なぁ、マルコ?」

「ああ。おれも聞いたよい! 苦労かけちまったなエース!」

「……ウソつけ! バカ言ってんじゃねえよ! あんたがあの時、止めたのにおれは――」

 

 家族の優しい嘘に、エースは身が張り裂けそうな思いだった。

 できる事なら、自分なんて見捨てて新世界に帰って欲しい――しかし、家族だからこそその願いは聞き届けられない事をよく理解している。

 家族を助ける。

 その一心で此処まで来た彼らの覚悟は――もう誰にも止められない。

 

「――おれ達の仲間に手を出せば、どうなるか思い知らせてやるよい!」

「お前を傷つけた奴はァ、誰一人生かしちゃおかねえぞエース!」

「待っていろエース! 今すぐに助けるぞ!」

 

 マルコの啖呵を筆頭に、エースの仲間が――家族が士気を爆発させる。

 

「とんでもねぇモン呼び寄せたなァ……」

「気味が悪いねぇ~~……」

 

 そんな白ひげ海賊団に、思わず言葉を零す青雉と黄猿。

 傷を癒し、全盛期以上の肉体まで若返ろうとも相手は四皇。

 大将と言えども、油断をすればただでは済まない。

 そんな敵を見据えたセリフに、赤犬も反応を示す。

 

「ふん。何を今更言うちょるん――」

 

 しかし、その途中で言葉を途切らせ――彼は、モビーディック号の船内から現れた一人の男に目を奪われた。

 同時刻、処刑台の上で白ひげを睨み付けていたセンゴクもまた口を大きく開いて驚きを顕にする。

 その男は階段をゆっくりと……しかし堂々と昇り、白ひげの隣に立つと全海兵の前に姿を現した。海兵たちは、その男が誰かすぐに理解した。

 記憶に新しかった。過去に起こした戦いから注目をしていた。手配書を見て震えが止まらなかった……様々な理由があるが、この場に居る者で、彼を知らない者は居ない。

 

 エースは、白ひげの隣に現れた男――いや、友に向かって戸惑いの声を上げる。

 

「――ジョジョ!? 何で、お前が此処に……!」

 

 鎖で繋がれたエースの姿に何かしら感じるものがあるのだろう。

 男は、エースの問いに簡潔に答えた。

 

「――カッコイイ先輩方の啖呵に痺れて、ちぃとばかし遅れたが……オレも助けに来たぜ、エース(友よ)

 

 男は――ジョットは、不敵な笑みを浮かべてそう答えた。

 

 ――星屑のジョジョ、参戦!

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「アレァ……星屑のジョジョじゃねえか!」

「懸賞金五億ベリーの怪物……何故、白ひげ海賊団と共に!?」

 

 葉巻から白い煙を吹き出しながら、スモーカーはこの場に現れた超新星の海賊を睨み付けた。たしぎは、この場に居る誰もが抱いている疑問を口にし、しかしこの戦場に全くと怖気づいていない怪物に早くも畏怖を感じていた。

 ザワザワと海兵たちの間で戸惑いの声が伝染し、ざわめきが広場を包みこみ――。

 

「――ジョォオオオオッジョオオオオオオオ!!!」

 

 それらを吹き飛ばす怒号が赤犬から解き放たれた。

 ビリビリと空間を震わせる程の咆哮。何事だと海兵たちが振り返り、両隣に居た大将達は耳を抑え、上に居るセンゴクは胃を押さえた。

 尋常じゃない怒りの感情を向けられたジョットは、鬱陶しそうな顔をしてため息を一つ。

 

「“大噴火ッッ!!”」

 大質量の憤怒のマグマが赤犬の腕から解き放たれ、憎き怨敵を葬り去らんとジョットに向かって死の咢を開く。

 いきなりの大技に海兵たちは目玉が飛び出す程の驚愕を顕にし、白ひげ海賊団たちは迎撃しようと構え――しかし、その前にジョットが飛び出した。

 舟板を蹴って宙へと飛ぶと、腕を覇気で黒く染め、青色のオーラを纏わせる。

 そしてそのまま――一撃。

 轟音が響き渡り、赤犬の“大噴火”は見事受け止められた。

 

「大将の攻撃を受け止めたーー!?」

「あの腕……覇気か? いや、能力か?」

 

「両方だ、海軍――オラァ!!」

 

 ジョットは、受け止めていた巨大な溶岩を広場に集結している海兵たちに向かって――振り下ろした。

 それを見た海兵たちは悲鳴を上げる。

 あんなものに圧し潰されたら一溜まりもない。

 中将たちがそれぞれ覇気を纏わせて迎撃準備を取る中、赤犬の隣で座っていた青雉が動いた。

 

「“氷河時代(アイスエイジ)!!”」

 

 ジョットが弾き飛ばした赤犬のマグマを、青雉は己の能力によって一瞬で凍らせる。

 さらに……。

 

「“アイス(ブロック)――暴雉嘴(フェザントベック)!!”」

 

 雉型の巨大な氷の彫刻を作り出し、そのままジョットに押し返した。

 

(マグマの次は氷。そして極めつけは――)

 

 自分に向かって飛んでくる氷塊を湾内の海へと叩き落して、ジョットは空を見上げる。

 そこには、光の速度でジョットの上を取っていた黄猿が既に攻撃態勢に入っていた。

 

「“八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)!”」

 

 両手の指で作った円から、無数の光の弾丸が雨のように発射される。

 視界が黄色一色で染め上がるなか、ジョットは迫りくる弾丸を見聞色の覇気で見切りながら能力を使用した。

 

「“オーラビジョン――スタープラチナ!”」

 

 前面に現れたジョットの半身スタープラチナ。

 スタープラチナは、拳を強く握りしめて――まるで時が止まっていると錯覚しそうな程のスピードで、本体に降り注ぐ弾丸にラッシュを叩き込む。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」

 

 シャボンディ諸島の時よりも洗練されたスタープラチナの拳は――その背後に攻撃を通さない。それを見た黄猿は早々に攻撃を中止し、青雉と共に広場に降り立った。

 捌き切って仕事を終えたスタープラチナはジョットの体の中へと戻り、ジョットは空を蹴って白ひげの隣に着地する。

 

「おめぇ……随分と赤犬の小僧に嫌われてるなァ。そういう所は、父親にそっくりだ」

「向こうが噛み付いて来るんだ……オレはそれを振り払っているだけだ」

 

 隠者の影を見て、白ひげは何処か複雑そうにため息を吐く。ジョットは心外だと言わんばかりに顔を歪めて悪態を吐く。

 その光景を……いや、先ほどの一連の戦闘を見ていた海兵たちは、次々と頭の中に入ってくる情報に混乱していた。

 

「なんでルーキーが大将三人の攻撃を捌き切っているんだ!?」

「それよりも、何故白ひげと共に居る? 傘下に入ったのか!?」

「それにしては横で堂々として……」

「何であんなのが偉大なる航路(グランドライン)前半の海に居る!? レベルが違うぞ!」

「そもそも、どうしてこの戦争に参加したんだ!?」

 

 海兵たちの動揺は大きく、その原因とも言える赤犬に向かってセンゴクは頭上から怒鳴りつけた。

 

「赤犬!! 大将ともあろう者が、感情のままに動くとは……恥を知れぇ!!」

 

 しかし、センゴクの怒声に赤犬は反応を示さずドカリと椅子に座った。

 図星を突かれたのか、帽子を目深く被りだんまりを決め込んだ。だが、内心湧き上がっている怒りのマグマは、今こうしている間にもフツフツと煮え滾っている。

 そんな赤犬から視線をジョットへと移し、センゴクは叫んだ。

 

「星屑のジョジョ! 貴様がどういう理由で白ひげに加担しているのかは知らないが――生きて此処から逃げられると思うな!!」

「やれやれ……どうやら嫌われているのは赤犬からだけでは無いようだ」

 

 余裕綽々な態度のジョットの反応に、センゴクは歯噛みしつつも――口を開く。

 海賊王ゴールド・ロジャーの実子である火拳のエースを公開処刑するために整えたこの場だが――自分から向かってくるのなら、もう構わない。

 どうせ、この戦争後には情報を公開する予定だったのだ。それが少しだけ早くなっただけの事。それに、ジョットもこの処刑に無関係では無いのだ。

 

「良いだろう――全海兵に告ぐ! その男もまた、海賊次世代の頂点に立つだけの力と血を引き継いでいる! 故に、今日、この場でその男を抹殺せよ!」

 

 突然のセンゴクの言葉に海兵たちは戸惑いの表情を浮かべ、ジョットの事を本人以上に知っている者達は目を細めた。

 ついに、この名が全世界に解き放たれるのか、と。

 

「星屑のジョジョ――本名は“ジョン・スター・D・ジョット”!」

 

 ジョン・スターの名に、まさかと誰もが目を見開く。

 

「かつてゴールド・ロジャーを海賊王へと導いた“災厄の女王ジョン・(スター)・リード”と――」

 

 実在してはいけない血を引いた人間に、心臓の鼓動が早くなる。

 

「世界最悪の犯罪者にして海賊王ゴールド・ロジャーの傘下、“隠者ブラン・D・ジョセフ”の血をその身に宿す――」

 

 口にするのも恐ろしいその名に恐怖し、目の前の存在がその血の半分を引いている事に、誰もが耳を疑う。

 

「火拳のエース以上の――“有害因子”だ。ルーキーと見て油断すれば――こちらがやられるぞ!!」

 

 センゴクの口から放たれた衝撃は――全世界を震わせた。

 途絶えた筈の最悪の血筋。それが今こうして蘇り――再び世界を混乱の渦へと陥れようとしている。

 映像電伝虫で実際に見て聞いた記者たちは、あまりにも衝撃的なスクープに腰を抜かし。

 彼を知りつつも、根幹の部分を知らない者たちはその事実をどう受け止めれば良いのか分からずに震えた。

 

「フッフッフッ……! 流石に、驚いたぜ! あのクソッタレな一族が生きていたとは!」

 

 特殊な過去を持つ者は、その意味を正しく理解し――。

 

「キーッシッシッシ! あの強さ! あの肉体! 影かゾンビか悩むぜ!」

 

 ある者は、純粋にその強さを欲しがり――。

 

「ルフィの同盟相手が隠者の息子……!」

 

 ある者は、父親の悪名に目を細める。

 

 反応は様々だが、一つだけ明確な事がある。

 それは、海軍は絶対にジョットを此処から逃がさないという事。

 もしかしたら、白ひげ以上に優先してその命を……その血を絶とうとするのかもしれない。

 殺気立つ海兵たちを見ながら、ジョットは呟いた。

 

「どうも実感が沸かないが……親父が隠す訳だ」

「グラララ……怖気づいたか?」

「いや――身が引き締まった。丁度良い……!」

 

 ギラリと鋭い眼光を目の前の強大な敵に向けるジョット。

 そこに恐れはない。あるのは、立ち塞がる敵を薙ぎ倒し、友を救うという覚悟だけ。

 それを見た白ひげは一層笑みを浮かべて――構えた。

 

「威勢が良いこった――始めるぞ、野郎ども!!」

 

 白ひげが両腕を左右に叩き付けると共に、地震の力が海を爆発させ、それと共鳴するかのように――白ひげ海賊団達の雄叫びがマリンフォードを震わせた。

 白ひげ海賊団と海軍の戦争が――今、始まった。

 








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