とある海賊の奇妙な冒険記【更新停止中】   作:解放したPNTマン
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戦局のカギを握る者達

 ――もう一度。
 空を思いっきり蹴り、その勢いのまま処刑台へと弾丸のように飛ぶジョット。
 しかし、目の前の空間が突如光ると、そこから人の体、足が出現し彼を阻む。

「だから、いい加減しつこいってぇ~……」

 覇気を込め、光速で移動した黄猿の蹴りを受け止める。
 ビリビリと空間が震え、ジョットはもう一度空を蹴ろうとし――下からの殺気に反応して後退する。すると、視界に氷の矛が過ぎ去り先ほどまでジョットが居た場所を穿つ。
 呑気にこちらを見つめる青雉を睨み付け、ジョットは黄猿の追撃のレーザーを避けるとスタート地点――白ひげの元へと戻った。

「――やっぱりダメか」
「無駄に体力消費してんじゃねえぞハナッタレ」

 それは問題ない、と返しつつ、ジョットは海軍の強固な守りに内心舌を巻いていた。
 ジョットは、開戦してから五回処刑台まで飛んだ。
 馬鹿正直に地上から大勢の海兵を薙ぎ倒して行くくらいなら、そっちの方が早いのでは? そう考えての試みだったのだが――結果は御覧の通り。
 初めは、一番惜しい所まで行った。大気を殴りつけ海震を引き起こした白ひげに気を取られた海軍の虚をついたのだが……赤犬によって阻まれてしまった。
 その後も、隙を突いては処刑台まで飛ぼうとしたのだが、大将達に警戒されてしまい段々と距離を詰める事が出来なくなって来た。

「こりゃあ、オレも降りた方が良いな……」

 そう言って、ジョットは青雉が凍らせた湾内の氷を見る。開戦直後は波に揺れていた海水も、今では海賊と海軍の戦場となっている。船の身動きを封じられたと見るべきか、能力者にとっての最大の敵を無力化させてくれたと見るべきか。
 軽々と地形を変える大将の力を改めて実感しながらも、ジョットはふと呟く。

「それにしても何だってんだ。……アイツら、シャボンディ諸島で負った筈の傷がねぇ。それに、妙に動きが良いというか……」
「……今更か。大方、何かしらの能力だろう。見た目から察するに、時間か肉体を操作する系統の能力者だな」
「なるほど。アイツら、若返っているのか。通りでオーラが若々しく揺らめいている筈だ」
「グララララッ! 大将がパワーアップしているっていうのに、お前も大概だなジョジョ!」

 今気づいたと納得するジョットに白ひげは面白そうに笑った。

「だが、厄介なのは変わりねえ。センゴクの事だ。能力者は何処か別の場所に隠しているに違いない――この戦争中に見つけて始末するのは無理だな」
「ふん。だったら、今の……いや、過去のアイツらをぶっ飛ばせば良いだけの話だ。最初(ハナ)からそう変わらねえ」
「グラララララァ! 違いない!」

 全盛期以上の力を持つ海軍大将相手に不敵な笑みを浮かべる海賊二人。
 敵が強くなろうが弱くなろうが、この戦争の目的はただ一つ。
 エースを取り返すだけだ。

「じゃあ、行ってくる」
「せいぜい死ぬなよ、若造!」

 白ひげの激励の言葉を背に、ジョットは氷の戦場に降り立った。
 視線を動かせば見た事ある顔や初めて見る敵と味方が、入り乱れて暴れ回っている。
 あちこちから砲弾の音や怒声が響き渡り、見聞色の覇気を抑えなければならない程様々な情報が入って来る。
 自分に迫る危機にだけ気を付けて、ジョットは走り出した。

「星屑が来たぞーー!」
「奴を打ち取れ! 此処で確実に仕留めるのだ!」

 ジョットの動きに気づいた海軍の目が彼に向く。
 剣、銃、大砲……様々な武器を手に彼に殺到した。
 しかし――。

「オラァッ!!」
「グアッーー!?」
「分かっていたけど強ぇーーッ!?」

 鎧袖一触。彼の射程範囲に入った海兵たちは一撃で吹き飛ばされていく。
 彼の動く足は止まらず、走るスピードは衰えない。

「鉄塊! ――ガハッ」
袷羽檻(あわせばおり)! ――止まらない、ヒナ驚愕」
「ホワイト・ブロー! ――チッ、当たらねえ!」

 鉄を砕き、檻を引きちぎり、死角からの攻撃を最小限の動きで避ける。
 ――誰が止めれば良いんだ、あんなの。
 将校クラスは決して弱くない。しかし、彼の動きを阻害する事すらできない。
 片っ端から海兵たちを薙ぎ倒していくジョットの姿に、改めて畏怖する海兵たち。
 大将と互角にやり合う以上、中将ですら相手になるか不安だ。
 白ひげ海賊団を相手取る以上、ジョットだけに戦力を送る訳には行かず……。
 故に、彼らに動いて貰うしかない。

「――出番だぞ、海の屑共!」

 処刑台から轟くセンゴクの声に応えるように、五人の影が戦場に降り立った。

「フッフッフッ……! オレもそろそろ楽しませて貰おうか……!」

 “天夜叉ドンキホーテ・ドフラミンゴ”。

「キシシ! おい星屑! テメェ、影を抜かれるのとゾンビ兵にされるのどっちが好みだ?」

 “ゲッコー・モリア”。

「久しいな気高き者」

 “鷹の目ジュラキュール・ミホーク”。

「あの方の友と言えど――容赦できぬ」

 “海賊女帝ボア・ハンコック”。

「――星屑の、ジョジョ」

 “暴君バーソロミュー・くま”。

 開戦まもなくして、戦局を左右するカギが動き出した。
 いずれも名を轟かせる海賊たち。
 幾多の困難と強敵を退けてこの場に立つ彼ら王下七武海の力は――例え新世界の海賊と言えども油断すれば足元をすくわれる。
 世界政府に認められた曲者たちを前に、ジョットは初めて足を止めた。
 そして、構える。

「知った顔も知らない顔も勢揃い――友の為にオレは止まらねえ! 通させて貰うぞ!」

 覇気を全開に、ジョットは敵の懐へと飛び込んだ――。


 ▲▽▲▽▲▽


 最初に動いたのは、鷹の目だった。
 ジョットが幼き日に遭い、些細な行き違いから始まった拳と剣のちょっとした死闘。それを両者の脳裏に浮かび上がり――それぞれの得物(拳/剣)で振り払って、敵の息の根を止めんとその力を振るう。
 鷹の目の愛剣――黒刀“夜”。最上大業物12工の一つであり、世界最強の剣。その剣から放たれる斬撃は巨大なガレオン船すら真っ二つにする。
 その死の刃が、ジョットへと解き放たれた。

(あの時は避けるので精一杯だった――だが今はっ!)

 それをジョットは――白羽取りで受け止めた!

「な――」
「鷹の目の斬撃を受け止め――ぎゃあああああ!?」

 その光景に周囲で戦っていた海兵や海賊たちが驚きに口を開き、しかしジョットが逸らした斬撃に巻き込まれて吹き飛んで行った。

「あ、すまん」

 氷の地面に向けて逸らしたとはいえ、仲間に軽度の傷を負わしてしまった。
 謝った彼に向かって、起き上がった白ひげ海賊団の面々から『軽いわ!?』と怒られてしまう。
 だが、ジョットにそれに応える時間は無い。

「星屑のジョジョ、排除する」

 なにせ、敵は一人ではなく五人なのだから。
 既に肉体の改造を終えPX-0へと生まれ変わったバーソロミュー・くま。彼の口からレーザーが三発放たれた。黄猿のレーザーを模して作られたその威力は、当たれば脅威。しかし見聞色の覇気を使えるジョットからすれば、機械に搭載されたプログラム通りの動きは単調過ぎて避けやすい。
 全て回避すると、ジョットは攻勢に出る。

「オラァ!」

 覇気を込めた一撃を一番近くにいたくまに向かって放つ。
 だが、その攻撃を隙と見たのかハンコックが能力と覇気を帯びた脚で彼を横から蹴り上げた。

「“芳香脚(パヒューム・フェムル)!”」
「!!」

 攻撃を中止し防御したジョットの腕が石化する。
 オーラで見ると、桃色のオーラが彼のオーラを侵食していた。まるで、大将たちの攻撃を相殺している自分と同じように――。
 ジョットはオーラを流し込んで腕に纏わりついていた桃色のオーラを吹き飛ばし、石化を解除する。
 そして鷹の目の斬撃とくまの妙な形の衝撃波を躱し――動きが止まった。

「――こいつは」
「“寄生糸(パラサイト)”……フッフッフ。常人の倍以上でようやくか。化け物だな星屑!」

 オーラでもギリギリ見える細い糸。それが、ドフラミンゴの手から伸びてジョットの動きを止めていた。
 無理に動こうとすればギチギチと嫌な音が体の奥から響き、その抵抗力に内心冷や汗をかくドフラミンゴ。もしこの戦争が起きる前に遭遇していれば、自分もただでは済まなかったかもしれない。
 しかし、この場には他に敵が居る。

「“影法師(ドッペルマン)”――“欠片蝙蝠(ブリックバット)”」

 モリアのカゲカゲの実の能力が発動し、モリアの影から大量の黒に染まった蝙蝠がジョットに殺到する。次々と彼の体に噛み付きダメージを与えようとするが……覇気で固められた彼の体は蝙蝠程度の牙なんぞ通さない。
 ガキンガキンと硬い音響き、攻撃が効かないと見たモリアは捕獲に切り替えた。

「“影箱(ブラックボックス)!”」

 影の蝙蝠たちが噛み付くのを止め、彼を立方体の影の中へと閉じ込めた。
 七武海たちの視界から消えるジョット。
 ドフラミンゴとの連携でようやく進撃が止まったジョットに、海兵たちは活気立ち、海賊たちはゴクリと生唾を飲む。

「キーッシッシッシッ!! さぁて、まずは影から頂くとするか。こいつの影は、今までの影と比べ物にならない程強いに違いねえ!」

 影と本体を切り離すハサミを手に、影箱(ブラックボックス)に近づくモリア。
 しかし、それを見ている他の七武海は――特にドフラミンゴは、檻の中の猛獣が既に鎖から解き放たれているのを理解していた。

「は――」

 轟音が響き影箱(ブラックボックス)が壊れるのと、モリアが一撃で後方へと吹き飛ばされるのは同時だった。
 壁に激突し意識が飛ぶモリア。腹部には拳型の凹みが深々と付けられており、本人は口から血を流してグッタリとしている。

「フフフ。やっぱ化け――」

 次はドフラミンゴだった。左頬に撃ち込まれたジョットの拳が、そのまま氷に叩き付けられ彼を中心にヒビが入り、隆起する。
 水飛沫と粉微塵になった氷が高く舞い上がり、二人の七武海が早くもダメージを負った。

「――っ!」

 背筋に走った悪寒に従い、ハンコックはその場から跳び下がる。瞬間、彼女の目の前の氷が砕け散り蜘蛛の巣状に入ったヒビの中心に、めり込んだ拳を引き抜くジョットが視界に映る。

「止まっていられねえんだ。邪魔をするなら、女でも容赦しねえぞ」
「恐ろしい男じゃ……!」

 険しい表情でハンコックは呟いた。
 目の前の男は――ルフィとは別の意味で見た事が無い人間だった。
 そして抱く感情もまた真逆であった……。

「フ……」

 ミホークは、あの時見逃した己の判断が間違っていなかったのだと嬉しく思い――同時に戦慄もしていた。
 今まで数多の強き者と出会って来た。その度に感じるのは、世界最強の剣士である自分と戦える相手への敬意と喜び。しかし、目の前の男はそれ以上の感情――“強敵に挑む”という久しい気持ちを思い浮かばせた。
 海軍と結んだ協定外の案件だが――できる事なら、この男を倒してみたいと思った。
 この、黒刀で。

「っ……くそっ。首がイカれるかと思った! ジョン・スターめ」

 そして、ジョットから手痛いしっぺ返しを喰らったドフラミンゴは、額に青筋を浮かばせていた。半ば楽しむために参加したこの戦い――少し、本気になっても良いと思えるほどには苛立った。
 元々血筋的にも因縁がある。やはりこうして目の前にすると騒ぐのだろう。海賊に落ちようとも、流れる赤い血は変わらない。

 一方、ジョットは内心焦っていた。
 王下七武海。強さはまちまちだが、流石にこの戦争に呼ばれるだけの力はある。全員が実力者であり、それぞれの能力が厄介だった。
 万物を切り裂く斬撃。生命力を石に変える力。弾き飛ばす肉球とレーザー。変幻自在の影。動きを阻害する糸。
 全力を出して立ち向かえば切り抜けられるかもしれない。しかし、後の事を考えれば体力は温存しておきたい。

「曲者……まさにその通りだな」

 ジョットは考える。このまま七武海を引き付けて仲間の負担を減らすか。
 それとも無理やりにでも振り切って処刑台まで突っ走るか。
 周りの戦況を顧みるジョットの耳に、大きく重い足音が聞こえた。
 チラリと視線を向ければ巨人族よりも遥かに大きな影。
 白ひげから聞いた魔人の子孫であるリトルオーズjr。
 巨人海兵を蹴散らし、場をさらに混乱させるその姿に頼もしさを覚える。
 さらに隊長達も中将や大将達を相手に一歩も引かず、思わず笑みを浮かべた。

「――よし、決めた」

 仲間達の奮闘振りを見たジョットは次の行動を決め――こちらを油断なく見据える七武海達へと視線を戻す。
 まずは、彼らを振り切らなければならない。ジョットは改めて拳を握り締めた。







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