「“ゴムゴムの――”」
「跳んだ!?」
「馬鹿め。空中では避けられまい!」
身軽さを利用して空高く跳び上がるルフィ。それを見た海兵は驚くも、すぐに格好の的だと判断して大砲や銃を構える。
ルフィにその系統の攻撃は通じないが、中には将校も居る。もしかしたら覇気を使う者が居るのかもしれない。
しかし、そんな事は関係なく彼らはルフィに攻撃する事はできなかった。
「ふん!!」
「うわ!? 氷が!?」
「星屑のジョジョだ! あいつがパンチ一発で砕きやがったァ!!」
「パンチ一発ゥ!?」
オーラで何処をどのくらいの力で殴れば周囲の氷を崩せるのか。それを見切って放たれたジョットの拳は、ルフィたちを狙っていた海兵たちの足場を崩す。彼らは銃を構える事ができず、その場で立つのがやっとだ。
しかし、そうなればどうなるのかは――上を見れば分かる。
数人の海兵がハッと気づいていた上を見上げるのももう遅い。
「“スタンプ
『ぎゃあああああ!?』
ゴムの性質を利用した連続蹴りは、次々と海兵たちを捉える。
ジョットが氷を砕いたこともあり、彼らは冷たい海の中へと沈んでいった。
「くそこいつ!」
同胞をやられて頭に血が昇った海兵が、ジョットに向かって刀を振り下ろした。
「よっと」
「ぶへえ!?」
それを見たルフィが腕を伸ばして殴りつけ。
「オラァ!」
「ぐほっ!?」
ルフィが着地する瞬間を狙っていた海兵を、ジョットのスタープラチナで氷塊を投げる事で妨害し……。
殴る。投げる。蹴る。オーラで痺らせる。銃弾を跳ね返す。
彼らは、時に助け合いながら、時には連携しながら近づく海兵たちを吹き飛ばして行った。
その光景に海兵たちは恐れ、一人、また一人と後退る。
「どけ、お前ら!」
「あの程度のチビ人間に何を恐れる!」
「巨人族の力思い知れ!」
そこに巨人兵三名が、ルフィ達を潰そうと動いた。歩く度に氷の大地が揺れ動き、ルフィは向かって来る敵を前に親指を噛んで技を発動させる。
「“ギア
「なるほど……麦わら、援護する!」
跳び上がったルフィの背後に追従するように、ジョットもまた跳び上がる。
ゴムの性質を利用して、巨大化させた腕を後方へと伸ばすルフィ。ジョットはその腕に着地すると、両手で触れる。
「――武装色硬化!」
「なんだ、これ!?」
ジョットが覇気で強化すると、ルフィは己の巨大な腕が黒く染まり……しかしそれ以上に凄まじい力が纏わりついているのを感じ取っていた。
それに戸惑うルフィにジョットが叫ぶ。
「気にするな麦わら! お前はそのまま叩き込め!」
「――おう! “ゴムゴムの――
『ぐ――があああああ!?!?』
武器を構えて突進した巨人三人は、覇気で強化されたルフィの一撃で武器を破壊され、そのまま気絶した。
巨人たちを倒したルフィは技の反動で小さく縮み、氷の大地に落ちる前にジョットに首根っこを掴まされて救助された。
「あれは良い一撃だが……反動が厄介だな」
「そうなんだよなー。あれ強ェけどしばらく小さくなるんだよ!」
子どもの姿で文句垂れるその姿にジョットは密かにため息を吐き、ハンコックは目をハートにして仰け反っていた。どうやら愛しい人の幼い姿に心撃たれたらしい。周囲の海兵たちが「星屑のジョジョが何かしたのか!?」と騒いでいる。
とはいえ、戦場で戦えなくなるのは不味い。ジョットはルフィの縮小された彼のオーラを見て、手を加えても問題ない事を確認すると能力で刺激する。
すると、ルフィの体はミョンッと元に戻り、本人は縮小化が解除されて驚いていた。
「わわっ!? な、なんだ?」
「お前のオーラを元に戻した。……おそらく技にまだ慣れていないだけなのだろう。もっと強くなれば反動無しで巨大化を使える」
「そうなのか! そっかァー……ところでよ、さっきのあの黒いの何だったんだ?」
「“覇気”という奴だ。見た感じお前も――いや、その話は後にしよう。今は戦争中だ」
そう言って、ジョットは突っ込んできた海兵を殴り飛ばし、ルフィも自分に襲い掛かって来た敵を吹き飛ばした。
ルフィがドラゴンの息子だと知り、海兵たちは今まで以上に殺意高く彼らを討ち倒そうとしている。ジョットとルフィが手を組んでエースを助けようとするその光景は、海軍にとって不吉以外の何物でもない。彼らの思い通りにすれば――海軍はかつてない危険因子を世に解き放つ事になる。
「麦わらァ~~! 星屑ゥ~~!」
「モリアか……厄介な奴が居るな……!」
そんな海軍とは他所に、私情でルフィたちを襲うモリア。
目の前の二人には酷い目に遭わされた。片やスリラーバークで集めた影を解放され、片や一撃で己を吹き飛ばしプライドを傷つけた。無視するにはあまりにも目障りだった。
「行け! ゾンビ兵たち!」
此処は戦場。時間が経てば経つほど死者が増え、相対的にモリアの兵士が増える。
近くに居た海兵たちから手当たり次第に影を引き抜くと、モリアはそれを死者に植え付け己の私兵にした。新世界の海賊並びに名を馳せる海兵たちの肉体と影を持ったゾンビたちが、主の指示に従ってルフィたちに襲い掛かった。
「スタープラチナ!」
「無駄だ星屑! オレ様のゾンビ兵は死なねえ! いくらテメエの拳が強くとも、死者は殺せねえだろ!」
飛び掛かって来たゾンビの大群をスタープラチナのラッシュが吹き飛ばし、しかしそれを見るモリアは嘲笑う。かつて新世界でカイドウと戦った時は、仲間が生きている人間だったから負け、そして失う喪失感を味わった。その時の屈辱からモリアは死なないゾンビ兵を求めて――現在に至る。
故に、モリアは己のゾンビ兵に自信を持っていた。考え得る限りで最強の兵士だと。
だが――相手が悪かった。
「――ハア!?」
目の前の光景にモリアが叫んだ。
スタープラチナに殴られたゾンビ兵達が――影を吐き出して倒れていく。
弱点である塩を喰らった訳でもないのに一体どうやって?
「取って付けた
「星屑……!」
答えは簡単。相性が悪かったからだ。
モリアが相手から奪う影は、相手の半身そのもの。故に死体に植え付ければ元の持ち主の力を発揮する兵士となる。だが、オーラを操り、見る事ができるジョットからすれば、モリアのゾンビ兵程倒しやすい敵は居ない。死体に引っ付いている
ジョットの能力に歯噛みするモリア。そんな彼にさらなる天敵が現れる。
突如海水がゾンビ兵たちを飲み込み、その口から次々と影を吐き出していく。
「便利な能力じゃのう……確か名はジョットさんだったか?」
「ジンベエ!」
「ジンベエ? じゃあ、こいつがあの……」
助太刀に入った男にルフィが喜びの声を上げる。ジョットは目の前の男がハチから聞いた王下七武海の一人“海侠のジンベエ”だと知ると、目を見開いて驚いた。
先ほどは白ひげと麦わらに気が取られて気が付かなかったようだ。
しかし、何故七武海の彼がこちら側に? と疑問に思い――ハチの言葉を思い出して一人納得した。
「なるほど。聞いた通りの漢だな」
「……父親から聞いたか?」
「いや、
「ああ、任せておけ」
頼むぞジンベエ! と叫んで処刑台へと向かうルフィを見送り、ジンベエは目の前の敵へと向き直る。
「ワシが相手じゃモリア! ルフィ君たちの邪魔はさせんぞ!」
「ジンベエ~~! お前が一番邪魔なようだな!」
怒り狂うモリアとジンベエが激突する。
一方、モリアをジンベエに任せて先に進むルフィ達の前に、再び敵が立ち塞がる。
暴君くまと鷹の目のミホークだ。
「あいつは、鷹の目! あんな強いのと相手していられねえぞ!」
「くま野郎の能力も厄介だ。あの肉球でまた別の場所に飛ばされたら洒落にならん」
迂回して進むか。もしくはルフィを先に進めるか。
そう考えていたジョットの頭上を二つの影が飛び出した。
「
「イワちゃん!」
「はっ!!」
「ビスタ!」
まばたきでくまを弾き飛ばすイワンコフ。ミホークに斬りかかる白ひげ5番隊隊長“花剣のビスタ”。
新たなる援軍にそれぞれ名を呼ぶルフィとジョット。
「麦わらボーイ! こいつは私に任せっチャブル!」
「行けジョット! 此処は私たちに任せろ!」
「分かった、ありがとう!」
「恩に着る」
素直に従って、二人は戦場を駆け抜けた。
イワンコフは数年顔を見ないうちに豹変した元同胞に、己の顔を大きくさせていきり立つ。
「ヴァナータに何が起きたのか分からないけど、麦わらボーイに害を為すのなら手加減しない!」
「……」
「“花剣のビスタ”か」
「オレを知っているのか?」
「知らない方がおかしかろう」
七武海を足止めし、死なせてはならない男達を守る為――二人は目の前の強敵に踊りかかった。
「ハアハアッ! ――おりゃっ!」
「……」
走りながら戦うルフィを見ながら、ジョットは眉を顰めていた。
随分と消耗している。しかしそれも無理もない。
ルフィはインペルダウンに潜り込み、そこに収容されていたエースを助けるべく暴れていたからだ。毒に侵されて一度死にかけても尚。
ジョットの目から見たルフィの体はボロボロだ。先ほど縮んだ時に体を元に戻すためにオーラを流し込んだのだが、その時にルフィの体は限界を超えている事に気が付いていた。
言っても止まらないだろうから黙っていたが……このまま戦わせるのは少し危ない。
ジョットは隣で走るルフィの背中に触れる。急に触られたルフィが「ん?」と不思議そうに彼を見た。
「はっ!」
「んびびびび!?」
そして、次の瞬間ビリビリッとした感触がルフィを襲った。
「お前! いきなり何すんだジョジョ!」
突然の事にルフィがジョットに吠える。
ゴムの体で電気が効かないルフィが初めて感じる強い痺れ。それに戸惑ったというのもあるが、戦いの最中……それもエースを助けようとしている時にイタズラをされたのでは堪ったものではない。
ジョットは、海兵を殴り飛ばしながら簡潔に言った。
「お前のオーラがボロボロだったからな。少し治させて貰った」
「オーラ??」
「さっきから見ている筈なんだがな……つまり、元気になるって事だ」
「そっか! 言われてみれば確かに!」
そう言ってルフィは腕を伸ばして海兵を殴り飛ばす。ジョットの言う通りさっきよりも調子が良いみたいだ。加えて、拳が何やらモヤモヤしたものに纏わりつかれている。
それを見たジョットが少しだけ驚いていた。何故なら、今ルフィが纏っているそれはジョットが治療用に流したオーラであり、決して強化するためのものではない。それでもルフィが使っているという事は――。
「麦わらァ!」
「あいつ、ケムリン!」
そんな時、突如ルフィの名を呼ぶ怒号が響いた。
前を見ると体を煙に変えて勢いよくこちらに向かってくる海兵の姿があった。
彼はスモーカー。ルフィに因縁ある敵だ。
スモーカーは海楼石が入っている十手を構えて突貫する。それを迎え撃つため、ルフィが拳を構えた。
「“ゴムゴムの――”」
「無駄だ! お前の能力じゃあおれには勝て――」
しかしスモーカーは止まらない。何故なら彼の体は煙だからだ。
覇気を使えないルフィでは、彼の実体を捉える事は不可能!
――本来ならば。
「“――
「――ぐっ……!?」
深々と突き刺さったルフィの拳に、スモーカーの顔が痛みで歪む。
その光景にルフィも驚いた表情を浮かべ、パチンッと戻った己の拳を見て不思議そうにしている。
「どういう事だ……くそ!」
訳が分からない。しかし、止まる訳にはいかない。
再び己の体を煙にしてルフィへと襲い掛かるスモーカーだが。
「ルフィの邪魔をするでない!」
「ぐっ!」
ルフィの前に突如ハンコックが現れ、スモーカーを足蹴にした。
それに海兵の間で動揺が走る。
「海賊女帝が麦わらの援護を!?」
「ハンコック……テメエも七武海をやめるつもりか!」
「黙れ! わらわの愛しき人に手を出すのなら容赦せぬぞ!」
覇気を全開にしてそう叫ぶハンコックは、流石は七武海でありアマゾン・リリーの皇帝だと見るべきか。
彼女の姿に海兵は恐れおののき……しかし美しさに目が眩んでメロメロだ。
ハンコックは振り返るとこっそりとルフィにある物を渡した。
「ルフィ、これを。兄の手錠の鍵じゃ。これでそなたの兄を救うのじゃ」
「ハンコック……! ありがとう!! 恩に着るよ!」
「はぁん♡」
嬉しさのあまりハンコックに抱き着いて喜びを顕にするルフィ。
しかしそれ以上に嬉しいのがハンコックだった。今までは何処か自分に都合の良い妄想をしていたが、これは違う。正真正銘本人からの抱擁だ。
名前を呼んでもらうだけで嬉しいのに、このような事があっていいのか? と思ってしまう。美しいから何をしても良いと思っている彼女が、だ。
「これが……プロポーズ!?」
「ありがとう!」
「何だったんだ?」
嬉しさのあまり崩れ去るハンコックに、こっそり礼を言いながら走るルフィ。それを追いながらあまり状況を理解していないジョット。
海兵たちはハンコックがルフィにやられたと騒ぎ立ち、スモーカーは走り去るルフィを追いかけようとするが……。
「“
「っ……テメエ、海軍の邪魔をしてただで済むと思ってんのか!」
「――何をしようとも、わらわは許される。何故なら――わらわが美しいから!」
そう言って見下し過ぎて逆に見上げるハンコック。
スモーカーにとってはふざけた態度だが――ルフィを追うには、目の前の女が邪魔だった。しばらく追えそうにない現状に、ギリッと葉巻を強く噛む。
「知り合いか?」
「ああ! あいつには何度も助けられた!」
「そうか――だったら、それに報いる為にも必ずエースを救うぞ!」
「ああ!」
ジョットの言葉に、ルフィは力強く答えた。
――仲間たちの手を借りて、着実に処刑台までの距離を詰めていくルフィとジョット。
友の為、兄の為、家族の為――ただ一人の為に彼らは走り続ける。
そして、それを迎え撃つ海軍はこの先の海の平和の為に戦力を惜しまず投入し――次の一手を繰り出す。
「あいつら、何をしているんだ!?」
「エースの処刑までまだ時間がある筈だぞ!?」
早まる処刑。切られる映像電伝虫の通信。
「湾頭を見ろ! 何かいるぞ!」
「おれ達の仲間じゃねえ! 氷の裏を通って回り込んできたんだ!」
現れるのは世界政府が作り出した人間兵器『パシフィスタ』。
「さァ、お前ら出番だぜ!」
そして――蘇る伝説の海兵。
「遊撃隊――この黒腕のゼファーに続けェ! 海軍の正義の元、海賊共を殲滅しろォ!!」
開戦より約一時間半の死闘を経た頃、海軍が大きく仕掛ける。
戦争は急速に流れを変え――最終局面へと一気に雪崩れ込む!
ドフラミンゴさんはジョット関わるのが正直嫌だったので
原作通りクロコダイルさんを誘った所原作通りフラれました