とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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エドワード・ニューゲート

「それにしても驚いたわ。まさか麦わらボーイと火拳ボーイがサボの兄弟だったなんて」

「イワさん! 無事だったか!」

 

 サボがイワンコフを見て表情を和らげる。

 子どもの時から世話になっている人の無事に喜んでいるようだった。

 

「それにしても、よくドラゴンが許したッチャブルね」

「ああ……一応表向きは任務なんだ。この戦争に参加する同士の救助……ってね」

「それってヴァターシの事? 何故それを――」

「ああ、それはメアリーの邪王真眼で――」

 

「――サボくん!」

 

 戦場に、少女の声が響く。

 名前を呼ばれたサボは、そちらに振り返り表情を明るくさせる。

 

「コアラ! お前たちも無事に――」

「この要件人間!」

「げふ!?」

 

 少女コアラは、サボに向かって勢いよく拳を振り抜いた。

 思いっきり殴られたサボは痛む頬を抑えながら抗議する。

 

「痛ェな! 何するんだ!」

「当たり前でしょ! いきなりメアリーを掴んだと思ったら言うだけ言って先走って……!」

 

 コアラの不満に、革命軍の仲間たちも同じ気持ちなのか半目でサボを見ていた。

 しかし無理もない。CP9達を振り切ったと安堵したと思えば、彼はさっさとメアリーと共にマリンフォードに向かったのだから。彼がどれだけ急いでいるかは、先ほどの戦闘で嫌というほど理解できる。戦闘中、滅多に気を乱さないサボが足止めするCP9に激昂するほどだ。

 それでも、戦争に介入するのだからもっと慎重になって欲しいというのがコアラ達の見解だ。

 頬を膨らませて怒るコアラにサボが困っていると、彼女を見て反応を示す者が居た。

 

「コアラ!? お前、コアラか!?」

「あ、ジンベエさん……!」

 

 コアラが、ジンベエを見て思わず再会を喜び顔を綻ばせ……しかし、すぐに顔を伏せた。

 かつてフィッシャー・タイガー率いるタイヨウの海賊団の手によって彼女は故郷に返して貰った。しかし、フィッシャー・タイガーはその後コアラの故郷の人間が海軍に通報した事により……。

 大人になり、色々と知った彼女はタイヨウの海賊団に合わせる顔が無かった。

 それに、今は戦争中だ。再会を喜ぶのも、話をするのも後にした方が良い。

 ジンベエもそれを何となく察したのか、それ以上何も言わず押し黙った。

 コアラはそんなジンベエに感謝しつつ、サボに話しかける。

 

「サボくん。火拳のエース……いや、君の兄弟は?」

「……あいつなら、あそこに居る」

 

 サボは、コアラの問いにすっとある方角を指差す。

 そこには、他の白ひげ海賊団の面々と共に白ひげと黒ひげ海賊団の戦闘を見守るエースの姿があった。拳を強く握り締めて、必死に飛び出すのを堪えていた。

 

「なんで? 早く此処から逃げないと!」

 

 この戦争で最も狙われるのはエースだ。故に、コアラは早く逃げるべきだと進言する。

 しかし、その言葉にサボは首を横に振った。

 

「おれもそう言った……だが、エースは聞き入れてくれなかった」

「なんで?」

「……」

 

 サボがエースを呼び止めた時、彼はこう言った。

 

『――助けに来てくれたのは分かっている。お前が言っている事が正しいのも……だが、これで最後なんだ。オヤジの姿を見るのは』

 

 エースは、自分を救ってくれた人の最期を看取りたいと言っていた。

 本当なら、自分が代わりに黒ひげと決着を付けたいと思っている。

 しかし、彼は白ひげの船長命令で生きて新世界に帰らないといけない。故に――戦わず、皆と共に見守っていた。

 それを聞いたコアラは何か言いたそうにしていたが、サボがこれ以上何も言わない為にそれ以上の追及を止めた。

 

「……そう言えば、メアリーは?」

「赤犬を放置するのは危ないから、気絶している今のうちに埋めると言って居なくなった」

「……」

 

 ちなみに、コアラはメアリーの事が苦手である。

 一応友人なのだが、それでもやはり……彼女の行動のえげつなさが理由でいまいち距離を縮める事ができないでいた。

 なお、本人は現在持参した爆弾やダイヤルを駆使して地下通路を破壊していた。彼女が恐れられる日々はまだまだ続く。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「はあ!!」

 

 ガープの拳骨が、マリンフォードで暴れる死刑囚の頬に直撃する。かつては山を砕く力を持つそれは、衰えても尚凄まじい威力を持っている。覇気が込められた事もあり、死刑囚は己の自然(ロギア)の能力で回避する事もできず沈められた。

 しかし、ガープの表情は険しいままだった。こちらが一人倒す間に、向こうは大勢の海兵を殺している。その原因は――。

 

「ジハハハハ! ほれ。ほれ。防いでみろヒヨッコ共ォ!」

 

 センゴクとゼファーを相手にしながら、次々と能力で大破した軍艦や海賊船を降らせては、それを再び浮かび上がらせて降らせるシキ。実質、彼一人で海軍は甚大な損害を受けている。

 

「くそ……調子に乗るなァ!!」

「待てゼファー! 今のお前では!」

 

 老いた体でゼファーが空に浮くシキへと突貫する。それをセンゴクが止めるも、シキはあくどい笑みを浮かべてソレをゼファーと己の間に割り込ませる。すると、バトルスマッシャーで殴り掛かっていたゼファーは、直撃する前に攻撃をピタリと止めた。

 バトルスマッシャーの先には、息絶えた海兵……それもゼファーの教え子である遊撃隊に所属する者。シキは、背中に背負られた武器に能力を使用し、ゼファーから身を守る盾としたのだ。

 

「死んだ奴は生物じゃねえよな?」

「――シキィイイイッ!!」

 

 まるで彼の部下を物扱いするかのような発言に、激昂し叫ぶゼファー。シキはそれを鼻で笑うと海兵越しに斬撃を放つ。ゼファーはそれを防ぐも、己の部下に行ったさらなる侮辱に、怒りでどうにかなりそうだった。受け止めた息絶えた海兵を胸に抱きながら地面に降り立ち、叫んだ。

 

「貴様は……貴様だけはッ!!」

「相変わらず甘ちゃんだなゼファー。テメエが相手にしてんのは海賊だぞ?」

 

 しかし、シキはゼファーの怒りを受け流しながらチラリと白ひげと戦っている黒ひげを見る。

 

「さて……もう少し付き合って貰うぞテメエら!!」

 

 そう叫ぶと、シキは再び船の残骸を能力で浮かび上がらせた。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「ふんっ!」

「ゼハハハ! 流石だなオヤジ! 毒を喰らってもなお、まだ動けるとはなぁ!」

 

 嗤いながら、黒ひげは白ひげの地震の力を無効化する。

 サッチを殺し、手に入れた悪魔の実。希少な自然(ロギア)の中でもさらに異質の――ヤミヤミの実。黒ひげの体から吐き出された闇は全てを飲み込み、悪魔の実の力ですら例外ではない。

 闇水(くろうず)を発動させ、闇に染まった拳で何度も白ひげを殴る。毒を喰らっているというのもあるが、彼の拳を受けた白ひげは苦悶の表情を浮かべる。

 黒ひげは、何度も何度も殴りながら嗤い続けた。

 

「おれはアンタを尊敬していたが、今じゃあただの死に掛けの老人! 聞けばルーキー共に介護して貰って、ようやく息子一人救い出したらしいじゃねえか!」

「あいつ……!」

 

 あまりにもあんまりな物言いに、白ひげを父親と慕う者たちが怒りで飛び出そうとした。黒ひげはそれを愉快気に眺めながら、なお拳を白ひげに叩き込みながら薄汚い言葉を吐いた。

 

「アンタの時代は終わったんだ! これからはおれの時代だ!」

 

 そう叫び、一際強い一撃を白ひげに叩き込み――その腕を白ひげに掴まれる。

 

「は――」

「ティーチ……テメエの弱点は慢心し、軽率な行動をする事。昔から何度も言っていたが――どうやら聞いていなかったようだな」

「な……は、放せこの――」

 

 喚く黒ひげの顔面を白ひげの拳が捉える。ヤミヤミの力で能力が使えずとも、覇気で強化された白ひげの鉄拳は一瞬で意識が飛び掛けるほど強烈だ。

 思わず黒ひげは腕を放し――そのまま顔を摑まれて地面に叩き付けられる。

 そして蘇るのは地震の力。黒ひげは、その光景にゾッとして白ひげの腕を掴んで無力化する事も忘れて叫んだ。

 

「ま、待てオヤジ! おれは息子だぞ! 本当に殺す気――」

 

 彼の命乞いは聞き入れて貰えず――白ひげの子を想う怒りが爆発した。

 強い地震の力が彼らを中心に解放され、衝撃が戦場にいた者たちに響き渡る。黒ひげの戦いを傍観していたクルーたちもそれぞれ表情を変えた。

 やはり伝説の海賊。老いても、毒を喰らっても尚あれ程の力がまだ残っている。

 隆起した地面の中央で、白ひげはまだ息がある黒ひげを強く睨み付けていた。

 

「ハァ……ハァ……! こ、この死にぞこないが……! テメエら、やっちまえ!」

 

 黒ひげの叫び声と共に、彼に見出されたクルーたちが各々武器を手に白ひげに殺到する。

 それを見た白ひげが薙刀を構え、地震の力を解放しようとするも……。

 

「地震は起こさせねえ! “闇水(くろうず)!”」

「……!」

 

 足元で倒れていた黒ひげによって地震の力が打ち消される。

 攻撃を妨害された際に生じたその隙を、黒ひげ海賊団は見逃さない。

 殺意と悪意が形となって白ひげの体に次々と傷をつけていく。

 銃声が響き、肉が切り裂かれる音が鼓膜を震わせ、それを見て悲鳴を上げる白ひげ海賊団。

 

「ぬああああああ!!」

 

 それでも尚、白ひげは倒れなかった。能力が使えない状態で、襲い掛かる黒ひげ海賊団を薙刀で薙ぎ払う。吹き飛ばされた面々はまだここまで力が残っているのかと戦慄する。

 

「ちっ。流石にしぶといな」

 

 空から戦況を見守っていたシキが動いた。

 己の能力の支配下にある刀剣類を先ほどまで乗っていた軍艦から浮かび上がらせると、そのまま黒ひげ海賊団と戦っている白ひげへと突き立てた。

 もちろん、マゼランの毒がたっぷりと塗り付けられている。

 幾つもの剣や刀が白ひげの体を貫き、動きが止まった。

 

「今だァあああ! ありったけの弾丸をぶち込めェええ!」

 

 畏怖が入り混じった叫び声と共に、黒ひげ海賊団の総攻撃が始まる。

 目を覆いたくなるような蹂躙。それを白ひげ海賊団たちは泣きながらも見ていた。助けたくても、飛び出したくても、それでも白ひげの船長命令――いや、彼との最後の約束を守る為に耐えて、その光景を目に焼き付けた。

 やがて弾が尽きたのか、銃声が鳴り止む。

 

「ちっ……おいシキ! こっちに武器を――」

「いや、その必要はねェ。もうこの怪物は直に死ぬ」

 

 シリュウの言う通り、白ひげはもう立っているのでやっとだった。

 意地で何とか戦っていたが、老いた体にマゼランの毒は強力過ぎた。

 それでも激痛に耐え、命の灯を必死に燃え上がらせて戦っていたのは愛する息子の為。

 しかしそれも限界だった。

 

(済まねえな息子たち……)

 

 朦朧とする意識の中、白ひげは心の中で息子に詫びた。

 目の前の邪悪なる男を道連れに落とし前を付けるつもりが、それもできそうになかった。

 唯一の心残りを前に、しかし白ひげの心は満たされていた。

 

(あいつらには、たくさんのものを貰ったなァ……)

 

 エドワード・ニューゲートは、海賊でありながら財宝に興味が無かった。

 彼が欲したのは――家族。

 世間は白ひげ海賊団は、彼の名と力で守られていると認識しているが……白ひげもまた彼ら家族によって守られていたのだ。孤独という、世界を壊す力がありながらも堪えられない絶望から。

 

(本当に、おれには勿体無ェ奴らだ……)

 

 白ひげの脳裏に家族全員の顔が思い浮かぶ。

 スクアードが馬鹿な息子で良いと言ってくれた時は、本当に嬉しかった。息子たちが次々と命を落とす光景は、胸が張り裂けそうな程苦しかった。エースを救う事ができて本当に良かった。

 そして思い出すのは最後の最後に出会った……孫の事だ。

 

 “――オヤジィ! 空から変な奴が!”

 “――変な奴だァ?”

 “――その、何というか……日記を書きながら逆さまで降って来たんだ!”

 “――ああ?”

 

 奇妙な奴が来たと思った。

 

 “――グラララ。お前が星屑か”

 “――そういうアンタが白ひげか……ひげ、凄いな”

 “――堂々としている……ジョセフの野郎は元気か?”

 “――さあな。随分前に別れた……親父の事知ってんのか?”

 “――……親父!?!?”

 

 両親に似ていると思った。

 

 “――どうしても話さないんだな”

 “――さっきからそう言ってんだろアホンダラ。この先の海で親父に聞きやがれ”

 “――頑固ジジイ……”

 “――グラララ。そういうテメエは生意気小僧だ”

 

 自分に少し似ていると思った。

 

 “――なるほど。つまり、俺の母親はアンタの娘だった訳か”

 “――ああ、そうなるな”

 “――ふむ……という事は、オレはさしずめアンタの孫って事になるな”

 “――孫? テメエが? グララララッ!!”

 “――ちょ、オヤジそんな大声で笑ったら……!”

 “――爺さん?”

 “――グラララ! グラララ―ーゲホゥ!?”

 “――オヤジィ!?”

 “――オヤジの古傷が開いた!?”

 “――なんで古傷!?”

 

 爺さんと言われて嬉しいと思った。

 

 “――白ひげ”

 “――なんだァ、ジョット”

 “――……死ぬなよ”

 “――……グラララ。おれァ白ひげだぞ?”

 

 ……済まない、と思った。

 

 たったの数日という短い時間。しかし、彼と過ごしたこの時間はとても楽しいものだった。

 そしてそれは彼の息子たちも同じであり、これから仲良くしているだろうと思っていた。

 だからこそ、彼に自分の息子たちを託した。そんな彼に、黒ひげという男をこの世に残すのが申し訳なく思い――しかしすぐに不必要な心配だと悟る。

 

(あいつなら、きっと――)

 

 ……もう、彼に時間は無かった。

 毒が、彼を奈落の底へ落とそうとしている。白ひげにそれに抗う術はなく――。

 

(ジョット、最期にお前と会えて、本当に――)

 

 

 

 

 

「――立ったまま、死んでやがる……!」

 

 息子たちの泣き叫ぶ声を背中に、白ひげはこの世を去った。

 数多の傷を受け、毒に冒されながらも、その体屈することなく――。

 

 そして、その誇り高き後ろ姿には……あるいはその海賊人生に――一切の逃げ傷なし。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 白ひげの死に悲しむ間も無く、()()は行われた。

 

「ハァ……ハァ……! この時を、待っていた! 始めるぞ!」

 

 黒ひげ海賊団が突如白ひげの遺体を囲うと、黒い大きな布でその姿を隠した。

 それを見た海兵たちも、白ひげ海賊団の面々も表情を険しくする。

 

「ジハハハハ! 失敗するなよ、黒ひげ!」

 

 黒ひげもまた布の中に入り、黒ひげ海賊団たちはそれを邪魔しないように守りについた。

 下手に動けず、しばらく時間が経ち中から黒ひげが出て来た。

 しかし、中から出て来た黒ひげにも、白ひげの体にもなんら変化は無かった。

 黒ひげ海賊団たちは何が起きたのか――いや、これから起きるショーを知っているのかニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

「よし! テメエら、船に乗り込めえ!」

「ちっ、もう終わりか!」

「そう言うな! 巻き込まれるとヤバいぞ!」

 

「巻き込まれる……?」

 

 シキの部下になった死刑囚たちは急いで引き返し、軍艦に乗り込む。

 最後にサンファン・ウルフが乗ったのを確認すると、シキは黒ひげの邪魔にならないように軍艦を空高く浮かび上がらせ、自身は黒ひげ海賊団の面々の隣に降り立った。

 黒ひげ海賊団たちの前に出た黒ひげは、警戒する海軍を見据えてその太い指を突き付けた。

 

「海軍~~……おめェらに、おれの力ってモンを見せておこう! 晴れて再び敵となるわけだ」

 

 邪悪に笑いながらそう言うと、黒ひげは右腕を思いっ切り地面に叩き付けた。

 

「“闇穴道(ブラックホール)!”」

「うわ!?」

「なんだ!?」

 

 瞬間、全てを引きずり込む闇が広がり海兵たちを飲み込む。

 

「これがおれの“ヤミヤミの実”の能力(ちから)! そして――」

「……! あれは……あの構えは!?」

 

 腕を引き絞り構えるその姿に――海兵たちの背に悪寒が走る。

 それはまさに先ほどまで黒ひげと戦い、この戦争でマリンフォードを壊滅寸前まで追い込んだ男の能力。

 黒ひげの拳が大気に叩き付けられ、ビリビリと衝撃が走り――海軍本部が完全に崩壊した。

 

「あれは、グラグラの実の能力!」

「オヤジの能力が何で!?」

 

 見間違う筈も無い。黒ひげは――白ひげのグラグラの能力を手に入れた。

 方法は分からないが、それだけは確かな真実だ。

 

「ゼハハハハハ! 全てを無に還す“闇の引力”! 全てを破壊する“地震の力”!

 手に入れたぞ……これで、もうおれに敵はいねェ! おれこそが最強だ!!

 ビッグマムも! カイドウも! 赤髪も! そして! あの隠者でさえおれを止められねェ!

 ――ここから先は、おれの時代だ!! ゼハハハハハ……ゼーッハッハッハッハッ!!」

 

 世界中の人々が恐怖した。この先の未来に。

 目の前に映る光景は、まさに未来の縮図だと誰もが理解させられた。

 圧倒的な悪を前に市民は、世界政府は、海軍は恐怖した。

 

 白ひげ海賊団たちも同じだった。自分たちをいつも守っていた偉大な男の力が、あの過去最悪の“敵”に奪われてしまった事に怒り、そして恐怖した。

 しかし、下手に手を出せばどうなるかは――海軍の要塞を見れば明らかだった。

 

 皆が闇と破壊の絶望に包まれるなか――一人の男がようやく動いた。

 男は、ずっと見ていた。白ひげの最期を。そして――プッツンするのに十分なその光景を。

 彼の血が、ジョン・スターの血が、彼に力を与える。怒りが肉体を動かし、魂を震わせ――。

 

「――船長! 危ない!」

「ああ? なん――」

 

 バージェスの警告に振り返った黒ひげの目の前に――瞳に怒りの炎を宿らせたジョットの姿が映る。ジョットの意志に反応し、消えた筈のスタープラチナが蘇り――その拳が黒ひげの頬に減り込み、吹き飛ばした。

 

「――オラァアアアアッ!!」

「――ぐはァ!?」 

 

 背中から落ち、こちらを睨み付ける黒ひげに向かって――ジョットは宣戦布告した。

 

「――返して貰うぞ、爺さんの魂」

 

 強い眼差しで敵を見据える瞳から、一つの雫が流れ頬を濡らした。

 




白ひげのワンピース宣言が無いのは仕様です







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