とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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星屑のジョジョ 前編

 

「……っ」

 

 ガクンッとジョットの体が崩れ落ちかけた。しかし、それも無理もない。地震の力を何度もその身で受け、立っているのも奇跡なほど体がボロボロだ。

 加えて、先ほどの時を止める力。消耗が激しいのか、ジョットは途轍もない疲労感を感じ取っていた。もはや、意地で立っている状態だ。

 しかし、まだだ。

 黒ひげをぶっ飛ばしたが――まだ生きている。すなわち、白ひげの魂をまだ取り返していない。下がっていた頭を上げ、ジョットは軍艦に突っ込んだ黒ひげを再度睨み付け――。

 

「“波動エルボー!!”」

「ぐっ……!?」

 

 ――意識外からの攻撃を、まともに受けてしまった。本来なら見聞色の覇気で容易に見切れる一撃。微弱に覇気が込められていたようで、ジョットの体内が波動によるダメージで悲鳴を上げ口から赤い血が垂れる。

 

「ジョット!」

「テメエ……卑怯だぞ!」

 

 その光景を見た白ひげ海賊団の面々が悲鳴を上げる。しかし、それを黒ひげ海賊団が鼻で笑って返す。

 

「ホホホ! 海賊が何を言っているのですか? 弱り切った脅威をみすみす逃す程、ウチはバカではないので」

 

 しかし、ラフィットは余裕綽々な態度とは裏腹に内心焦っていた。

 当初の計画と比べて、随分と狂ってしまった。

 今此処で黒ひげが誰かに倒されるのは非常に不味い。映像電伝虫で世界中に発信されていたのも悪かった。これでは、いくら最強の力を手に入れようとも要らぬ面倒が増えるのは確実。不安材料は、できるだけ排除したいのがラフィットの考えだった。

 

「ウィーハッハッハッハッ! 死ね星屑!」

 

 バージェスの巨漢から繰り出されるラリアットがジョットに叩き込まれる。

 その感触から、バージェスはジョットに覇気を使うだけの余力はない事を確信した。

 今なら殺せる。

 悪意に染まった笑みがバージェスの顔を歪め――そして、次の瞬間物理的な力で顔がさらに歪んだ。

 殴られたのだと認識したのは、吹き飛ばされて頬の痛みに悶えた後だった。

 殴り飛ばされたバージェスを見て、そしてそれを為したジョットに黒ひげ海賊団は信じられないと目を見開く。

 

「まさか、そんな……!」

「――オレを、その程度の攻撃で殺せると思うなよ。黒ひげ海賊団……!」

 

 怪物。

 満身創痍の状態で、こちらを睨み付けるジョットの姿に彼らは戦慄した。

 覇気も、そして能力も使えない。

 にも関わらず、このプレッシャーはなんだ? 氷のつららを背中に突っ込まれたようなこの悪寒は何だ?

 ――この男は、今此処で殺さなくてはならない。

 各々武器を手に、黒ひげ海賊団がジョットに殺到する。それをジョットは己の体一つで迎え撃った。

 

 銃撃がジョットの体に穴を空け、剣や槍が肉を裂く。

 それでも尚、ジョットは己の拳で襲い掛かる黒ひげ海賊団たちに大立ち回りした。

 血が濡れていない所を探すのが難しいと思える程の傷を受けても尚、彼は立ち続けた。

 その姿に白ひげ海賊団たちは泣き叫び、ジョットの言葉に反して飛び出し、それを彼の言葉を守る為に止め、悲鳴だけが広場に響いた。

 そして、それを傍観していたセンゴクが――屈辱の表情を浮かべて、全海兵に指示を下した。

 

「――全軍。海賊共を殲滅せよ……!」

「え?」

 

 その言葉に、誰もが耳を疑った。

 火拳のエースは解放され、白ひげは黒ひげによって討ち倒され、要塞は全壊。

 もうこの戦争は、海軍と白ひげ海賊団のものとは言えない。

 それ程までに、黒ひげ海賊団とジョットが戦場を掻き回した。今、彼らに手を出そうものなら、民衆の――いや、全世界の人々の海軍に対する信頼が崩れてしまう。そして、その中には海兵も含まれていた。

 それでも尚、センゴクは海兵たちに指示を下した。

 このままでは、()()()海軍が負けてしまうから。

 例え、醜態を晒そうとも――此処で結果を残さなくてはならない!

 センゴクは、己の立場を失う事も承知で叫んだ。

 

「奴らをこのマリンフォードから逃がすなァ! 海軍の力を、今此処で示せェ!」

 

 覇気を伴った声は、海兵たちの体を動かした。空を飛べる者は黒ひげ海賊団とジョットたちを飛び越え、崖の先にいる白ひげ海賊団、特にエースに向かって青雉を先頭に襲い掛かる。空を飛べない者は地下通路に向かい……すぐに引き返して全て破壊されている事をセンゴクに伝えた。センゴクはそれを受けて、回り込むように指示。

 それを空から見ていたシキも動く。

 

白ひげ海賊団(奴ら)に被害が無いってのは、癪だな」

 

 シキは、崩壊したマリンフォードの要塞と町の瓦礫を能力で浮かした。そして、ジョットが空けた大穴を塞ぐように次々と瓦礫を放り込んでいく。それによって、分断されていた崖が無くなり、シキはこちらを見上げて睨み付けるセンゴクへと笑みを返した。

 

「さぁ。とっと目的を完遂しなセンゴク?」

「シキ……!」

 

 さらなる屈辱に身を焦がしながらも、センゴクはそれを振り切って指示を下す。

 

「瓦礫を超えて、火拳を討ち取れ! 金獅子の動向には常に注意しながらな!」

 

 瓦礫に足を取られないようにしながら、そしてシキの動向に警戒しながら海兵たちは白ひげ海賊団に襲い掛かる。

 

「くそ、させるか……!」

 

 それを見たジョットは、黒ひげ海賊団たちに傷を付けられながらも妨害しようとし――。

 

「隙だらけだねェ~、星屑のジョジョ」

「黄ざ――」

「君には今此処で死んで貰うよォ~」

 

 黄猿の光速の蹴りが、ジョットの頭を捉えた。

 メシリッと嫌な音を立ててジョットの体が吹き飛び、白ひげ海賊団は海兵たちに応戦しながらもそれを見た。

 

「ジョット!!」

「不味い! このままじゃアイツが……!」

「もう、我慢できねえ! おれァ助けるぞ! オヤッさんの為にあそこまで頑張ったアイツを見殺しにできねえ!」

「待て! 向こうにはパシフィスタが居る! 多分罠だ!」

「お前は平気なのかよ! ジョットがあんな目にあって!」

「平気な訳あるか! おれだって……!」

 

 

 ――戦場は、まるで息を吹き返したかのように混乱した。

 

「海賊共を討ち取れェ!」

「火拳を必ず仕留めろォ!」

「星屑を此処から逃がすなァ!」

 

 海軍は己の正義を世に知らせる為に。

 

「この死にぞこないが……倒れろ!!」

「ホホホ。あなたは、存在してはいけない――此処で消します」

「そういう事だ……これもまた、運命……」

 

黒ひげ海賊団は最も巨大な脅威を潰す為に。

 

「ジョットを助けるぞォ!」

「オヤジとの約束はどうするんだ!?」

「その約束の為に、アイツは戦っているんだァ!」

 

白ひげ海賊団は白ひげとの約束と、それを守らせる為に死力を尽くしたジョットに揺れ。

 

「エース、どうする……?」

「決まっているだろ……ジョジョの援護をする!」

「分かった――おれも一緒に戦おう!」

 

 運命を変えられた兄弟は、その大恩を返すために動く。

 

 まるで第二ラウンドとも言うべき騒々しさに、中継を見ていた民衆たちはまるで地獄を見ているかのようだった。

 もう、海軍も海賊もない。そこにあるのは人が死に、殺すのが当たり前の狂った世界。

 心の弱いもの、純情な者は思わず目を逸らしてしまう程だった。

 

「――あ」

 

 そんななか、映像を見ていた誰かが呟いた。

 

 そして、同時刻。ようやく地下で破壊工作をしていたメアリーが地上に出た時、その目に映ったのは……。

 

「――え?」

 

 空からの地震の力と、地中から飛び出したマグマの拳が――ジョットの体を貫いた瞬間だった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

『ジョットーーー!!?』

「か、ふっ……!」

 

 ゴポリッと血の塊がジョットの口から吐き出された。

 地震の力で全身が悲鳴を上げた瞬間の一撃だった。常人の何倍も強靭な肉体を持つジョットでも――限界以上のダメージだった。

 その光景に、メアリーや白ひげ海賊団たちが悲鳴を上げ、彼に襲い掛かっていた黒ひげ海賊団と黄猿はそれぞれ足を止めて、各々の友軍へと視線を向ける。

 

「船長……無事でしたか?」

「ゼェ……ハァ……これが無事に見えるのなら、ドクQに目を治して貰いなラフィット」

 

 歯がほとんど折れ、鼻が曲がった黒ひげはゆっくりと空に浮く板切れに乗りながら降り立った。その目に、白ひげに指摘された慢心は無い。代わりにあるのは、闇よりもドス黒いジョットへの憎悪。その憎しみが、本来動かない体を突き動かしたのだろうか。

 

「オォ~……無事だったのかいサカズキ~」

「ふん……この程度でやられる程、柔ではないわ……!」

 

 ジョットの腹を撃ち抜き、内臓を焼いたマグマを流動させながら赤犬は黄猿の問いに答えた。一度は限界以上のダメージで死にかけた赤犬だったが、それすらも執念のマグマと化して復活し、そして弱り切っていたジョットに致命的な傷を負わせた。

 しかし、それが自分自身だけの力ではない事が不満なのか、その顔には苛立ちが募っていた。

 

「――うおおおおおおおおお!!」

「――ジョジョ!?」

 

 一瞬、現実を受け止める事ができなかったメアリーだったが、ジョットの雄叫びに覚醒すると走り出した。

 

「ダメ――それ以上はダメ、ジョジョ!!」

 

 意識を失っても尚、己の敵へと突貫するジョットに向かって。

 

「まるで猛獣だねェ……」

「奴はもう助からん――引導を渡してやる」

 

 赤犬と黄猿がそれぞれマグマとレーザーを撃ち出す。

 ジョットの肉体に次々と穴が空き、肉が焦げ、溶け、抉れていく。

 しかし――まるで逆再生するかのように傷が戻っていく。

 

「なんじゃ――」

 

 それに驚いた赤犬は、剃で一気に距離を詰めたジョットの拳で殴り飛ばされる。普段なら受ける筈も無い攻撃。しかし、今までの傷のせいで動けなかったのだろう。彼は、いとも容易く地面に崩れ落ちた。

 

「――ぬうん!!」

 

 赤犬が殴り飛ばされた事に動揺を見せず、黄猿は冷静にジョットへと攻撃を繰り出していた。光の剣を作り出し――彼が突き出していた腕を綺麗に切断した。

 これで自慢の拳は、永遠に無くなった。

 次は、首を狙おう。

 返す刀で、黄猿は勢いよくジョットの首へと光の剣を振るった。

 

「……冗談でしょう」

 

 しかし、それは受け止められてしまった――ジョットの歯によって。

 その光景に思わず呟き、次の瞬間強い殴打が黄猿の腹部へと叩き込まれた。そちらへと視線を送れば、どうやら腕を斬り落とされた状態で殴りつけたらしい。

 バキリッと剣が噛み砕かれ、叩き込まれた腕は勢いよく振り抜かれ、黄猿もまた赤犬と同じ末路を辿った。

 

「――ッ!」

 

 ジョットは――いや、ジョン・スターの血に飲まれてしまったジョットだったモノは、落ちていた己の腕をグチャリと不快な音を立てて無理矢理引っ付けると、次はお前だと言わんばかりに黒ひげへと視線を向ける。

 その目は、頭から流れ出た血で赤く染まっていた。バージェスは、そんなジョットを見て先ほどまで自分はアレと殴り合っていたのかと恐れおののく。唯一黒ひげだけは変わらず憎悪の目でジョットを見ていた。

 

「――」

 

 ジョットの腕の切断面から黒いオーラが湧き出て、腕全体を覆う。

 覇気による変化とは別の色彩変化。いや、もはや侵食と言っても良いだろう。

 その光景を遠く離れた場所から見ていたドフラミンゴは、感じる力の禍々しさに冷や汗を流しながらも呟いた。

 

「能力には“覚醒”があるが――あれは、違うな。

 いわば“暴走”! 奴に流れる血が、悪魔の実を変質させてやがる」

 

 少なくとも、アレと相手をするのはゴメンだと思う程に危険極まりない。

 能力の暴走はジョットの体の半分まで侵食し、まるで悪魔そのものにでもなりそうな歪な形をしていた。

 

「“流星火山!”」

「おらァ!!」

 

 しかし、黒ひげと赤犬は怯まなかった。

 地震の力と大量の火山弾がジョットに襲い掛かる。

 当たれば死は確実。

 

「――」

 

 それをジョットは受け止めた。

 そして、受け止めた地震と火山弾を――オーラに変換して己の物とした。

 さらに黒いオーラの侵食が進み、ますます化け物染みた姿になっていくジョット。

 このままでは不味い。

 そう判断した黒ひげの動きは早かった。

 

「“闇水(くろうず)!”」

 

 地震の力は無効化され、それどころか自分の物へと変換されてしまう。

 なら、闇の引力で引き寄せて――能力の力を引きずり込む。

 引力によって黒ひげの元へと引き寄せられたジョットは、黒ひげの目論見通りに暴走したオーラを全て引きずり込まれた。四分の一まで侵食していた黒いオーラが消え去り、全身に様々な傷を作り腹に風穴を空けたジョットが姿を現す。

 

「死ねェ! ジョジョ!!」

 

 そして、渾身の一撃を地震の力と共に叩き込み――ジョットの体からは力が抜け、彼は勢いよく吹き飛び包囲壁へと叩き付けられた。

 巨大なへこみの中央からズルズルと落ちていき、ドサリと地面に横たわる。

 

『ジョット!!』

 

 それを見た白ひげ海賊団たちの行動は早かった。逃げていた者も、応戦していた者も、彼を救おうと海兵の実力者たちに囲まれていたエースとサボも、全員がジョットを助ける為に動いた。

 敵を振り切って、一刻も早くジョットを確保してマリンフォードから脱出する。皆が同じことを考えていた。此処で死なせては白ひげに合わす顔が無い。何より――彼を死なせる訳には行かなかった。

 

「――トドメじゃあ! ジョジョォオオ!!」

 

 しかし――地面を熔かして進む赤犬が早かった。いや、その執念が誰よりも先にジョットの元へと辿り着かせたと言うべきか。

 一足早く到着した赤犬が、倒れ伏すジョットの前に飛び出し、全てを熔かす凶悪な拳を振り下ろした。

 エースが炎を撃ち出そうと構える。サボが駆け出す。マルコが攻撃を受けながらもジョットへと飛ぶ。しかし、彼らの前には中将以上の海兵たちが居る。まるで、赤犬の邪魔をさせないと言わんばかりに。今この瞬間だけは妨害に徹している。

 もう、彼らでは間に合わない。

 

「――させるかァアアーーッ!!」

 

 ――だからこそ、ノーマークだった彼が間に合った。

 気絶してジンベエに背負られていたルフィが、一撃が赤犬のマグマを逸らした。ルフィが繰り出した拳には、僅かながらにオーラが宿っていた。ギリギリ一撃分残っていたようだ。

 ジュウジュウと音を立てて焼かれながらも、ルフィは痛みに堪えて反対の腕でジョットを掴んで引き寄せた。反動で胸に飛び込んだ際に、ベチャリと赤い血がルフィの体に飛び散る。それに、普段は能天気なルフィも顔を強張らせた。

 もし、今血濡れになっているのが他の人間だったら、もう助からないと思う程の重傷だった。傍に居たジンベエが呻く。

 

「ぐっ……不味いぞ。早くこの場から逃げ出して手当てせねば!」

「ああ、分かった! ……死ぬなよ、ジョジョ!! おれ、お前にまだちゃんと礼を言ってねえんだ!」

「それはおれ達もだ、ルフィ」

「サボ! それに、エースも!」

 

 海軍の包囲網を破ったサボとエースがルフィたちに合流する。後ろには革命軍の面々も着いて来ていた。

 

「さっさとズラかるぞ――おれ達が此処に居たら、マルコ達の邪魔になる」

 

 そう言って、何かに堪えるようにエースは振り返った。

 その先には、黒ひげ海賊団と対峙するマルコ達が居た。

 

「ゼハハハハ……そこを退けよマルコ。そして隊長たち」

「黙れよい! オヤジの為、ジョットの為今まで我慢していたが――あんなの見せられた以上、もう止まれないよい!」

「オヤジ達に代わって、お前に引導を渡してやる!」

「――お前らじゃあ無理だ。この残党兵共が!」

 

 何がなんでもジョットを殺したい黒ひげ。何がなんでもジョットを生かしたいマルコたち。エースは、自分たちが此処から居なくなればマルコ達も無茶しないで済む事を理解していた。

 海軍の狙いである自分たちは、一刻も早く此処から立ち去らなければならない。

 

「海兵を一人でも足止めしろォ!」

「ジョットたちを逃がすんだァ!」

 

 そしてそれは海軍を止めている白ひげ海賊団たちに対しても言える事だ。

 此処で戦う事が許されないエースは、拳を握り締めながら走った。

 ジンベエとルフィたちも走る。それを守る為に、サボたち革命軍も走る。

 湾内にある船に向かって走り続ける。

 

「よし、海に出ればこちらの勝ち――」

「海が、凍ってる!!」

 

 しかし、それを阻むように湾内の海水は凍っていた。下を見れば、青雉が氷の大地に手を付けてこちらを見上げていた。

 エースが拳に火を宿らせ、全てを燃やそうと構えた瞬間、後ろから響いた声に振り返る。

 

「みんな、走って!」

「メアリー!? お前、今まで何処に――」

 

 背後から走って来たのはメアリーだった。

 彼女は、傷だらけのジョットを視界に入れないようにしていた。何故なら、今の彼を見てしまえば――心が折れて正常な判断ができそうにないからだ。

 故に、彼女は自分の本心を騙し続けて最善を求め続ける。

 

「私の能力があれば、氷なんて関係ない! だから、早く船に――」

「――行かせないよォ~」

「――お前も此処で死んで貰うぞ、邪眼」

 

 必死に叫ぶメアリーの背後に、マグマと光が現れやがて人の形となる。

 彼女は、咄嗟に己の体を能力で透過状態にするが――光が左肩を射抜き、右腕がマグマで焼かれた。

 

「う――」

 

 痛みで泣き叫びそうになり、彼女はガリッと舌を噛んで無理矢理止めた。

 鼻腔の奥に己の肉が焼かれる嫌な臭いが擽り、鼓膜に後ろの皆の叫び声が聞こえる。

 

「まずは貴様からじゃ、邪眼!」

「星屑の妹なら、此処で消さないとねェ~……」

 

 ルフィたちが、助けようと引き返すのをメアリーは感じ取っていた。

 来るな! と叫ぼうとして、喉の奥が引っ付いて上手く声が出なかった。

 視界が、光とマグマの二色で埋め尽くされ、そして――。

 

「――どう、して……?」

「……っ」

 

 目の前には、赤犬と黄猿の攻撃を受けて――力なくそこに佇んでいるジョットが居た。

 








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