とある海賊の奇妙な冒険記【更新停止中】   作:解放したPNTマン
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予兆

 戦争が終わり、世界に報じられたのは――白ひげの死。
 それを受けて、人々の反応は様々だった。

「白ひげ海賊団が滅んだんだ!」
「海軍の勝利だーー!」

 世界的に有名な海賊の死に浮き足立ち、絶対的正義である海軍の勝利を疑わない者。

「本当に勝ったのか?」
「どうだろうな……敗けたとは言っていないが、勝ったとも言えないだろう」

 冷静に戦争の結果を分析し、海軍に疑惑の眼差しを向ける者。
 どちらにしても、海軍に対する民衆の印象は――確実に変わる。それをどう活かすのかが……海軍の成長に掛かっていると言える。

 現に、少数ながら動く者が居た。

「――海軍の勝利とか、白ひげの死には興味は無ェ。問題なのは、隠者が海軍に見せつけたエターナルポースだ」

 彼らは、隠者の言動にある可能性を見出していた。
 海軍の手に渡れば、ビッグマムとカイドウが後半の海“新世界”から前半の海“楽園”に来るという言葉。そして、それに過剰に反応するセンゴクたち。
 何故、そこまで警戒したのか。まるで、隠者の言葉に意味があるような――四皇が追い求める物だと答えているような、焦り具合だった。

「あるぞ……四皇が求める宝――ワンピースがあるんだ!」
「もしくは、それに連なる何かだ!」

 気づいた者は少ない。しかし、逆に言えばそれに気付くだけの頭はあり――彼らが、他の有象無象の者たちよりも一歩前に出た事は明らかだった。

 そして、また別の視点から動く者が居た。

「ジョン・スターだと……! 奴を手に入れろ! あれさえあれば、我らの悲願が――」

 太古から続く血統に反応する者。

「黒ひげって奴はすげーよ! あいつの船に乗れば勝ち組だ!」
「金獅子のシキと同盟って話だ! 此処でグズグズしている暇はねえ!」

 新たなる台風の目となる者たちに目を向ける者。

「星屑のジョジョ! 良いね良いねェ! あの漢気には惚れたぜ!」
「大将を何度も退け、海軍を掻き回した男――海賊にも、宝にも興味は無いが……ああいう男の下で戦うとどれだけ楽しいんだろうなァ」

 彗星のごとく現れ、暴れ回った男に憧れを持つ者。
 そして――。

「――ハハハハ……ママママ! 隠者の野郎、随分と息子が大事みたいだねェ……! だったら、やる事は一つだ」

「隠者の息子。それもジョン・スターか……。オレを、殺せるかもしれねえな。だったら――」



『新世界で待っているよ、星屑のジョジョ! おれはお前を歓迎する!』


 ――そして。
 己を脅かす()になり得るかもしれない一人の海賊に、笑みを浮かべる海の皇帝たち。

 様々な海で、様々な者たちが動き出す。それを明確に感じ取っているのは――僅かの人間だけだった。


 ▲▽▲▽▲▽


「――やはり、そうか……!」
「はい――レベル6から脱獄した者は、黒ひげ並びにシキが連れ出した者だけではありません。他にも数名居ました……!」

 ブランニューからの報告に、センゴクの表情は険しいものとなった。
 戦争が終結して、はいおしまいという訳にはいかない。
 白ひげとの戦争で負った被害状況の確認。世界各地で起こるであろう海賊たちの暴走。そして鎮圧。やることは山ほどある。
 その中でも、インペルダウンで起きたレベル6での惨劇は――思わず目を覆いたくなるほど酷かった。黒ひげとシキが連れ出した極悪な犯罪者以外にも脱獄した者は居る。

「今現在最も警戒すべきなのは“世界の破壊者”ワールド。“赤の伯爵”レッドフィールドかと存じ上げます。老いたとはいえ、どちらも白ひげやシキと匹敵する伝説……それが解き放たれた今――」
「分かっている……! だが、最も警戒すべきなのはジョン・スター・D・ジョットだ! 奴の懸賞金を本来の相応しい額にし、しかるべき対処を――」
「その事についてですが、元帥……その、世界政府から報告が」

 ブランニューは――伝えた。
 これ以上、海軍の信頼を失うようなことは控えるべきだと。故に、レベル6からの脱獄者の存在は包み隠し、星屑のジョジョたちの懸賞金を跳ね上げさせることは禁止だと。
 それを聞いたセンゴクは――世界政府への怒りを叫んだ。

「――ふざけるな! 奴だけは、野放しにしてはならん!」

 しかし、センゴクの声は――聞き遂げられる事は無かった。


 ▲▽▲▽▲▽


 ――凪の帯。女ヶ島より北西の無人島“ルスカイナ”。
 かつて、ここには一つの国があった――しかし、それは今は昔の話。何故なら、人は敗れたのだ。猛獣との生存競争に。
 そんな果てしなく危険な島にて――ルフィたちは戦っていた。

「“ゴムゴムの(ピストル)!”」
「“火拳!”」
「“竜の息吹!”」

 次から次へと出てくる強大で凶暴な猛獣たち。一体一体が、現在のルフィよりも強く、七武海であるボア・ハンコックですら危険だという程――この島は人が生きるのに厳しい世界。にも関わらず、何故彼らは此処で猛獣たちと戦っているのか。それは――。

「待ってろよジョジョーー! 今すぐ肉持って行くからなーー!」

 全てはジョジョを救うためだった……。


 ▲▽▲▽▲▽


「ルスカイナ、じゃと。そなた、何故その島のことを知っている?」

 サロメに追跡させ、海軍の軍艦で追って来た海賊女帝ボア・ハンコック。船内から出て来たルフィの無事な姿に、目に涙を浮かばせて喜んでいたのも束の間。彼女は、ルフィを通してメアリーからある頼み事をされていた。
 それは、女ヶ島の北西にある無人島ルスカイナまでの案内だった。

「邪王真眼で」
「そうか」

 血ヘドを吐きそうな顔でメアリーがそう言えば、ルフィ以外への興味が薄い彼女はそれで納得した。しかし、それで首を縦に振るかというと、話は別である。

「何故わらわがそのような事をせねばならんのじゃ?」
「頼むよハンコック! ジョジョを助けてーんだ!」
「はぁい♡」
『変わり身早っ!?』

 ルフィの鶴の一声で180度態度を変えたが。
 それを見たメアリーは、視線をハンコックから話を聞いていた者たちへと向ける。特に戦闘能力が一定水準上に居るであろうエース、サボ、ジンベエ、イワンコフだ。

「これから行く島には、凄く強い猛獣がたくさん居るの。そこの猛獣だったら、ジョジョの体を治すための生命力を得られる可能性が高い。ただ、その分手強いから……」
「なるほど、そこでわしらの出番という訳じゃな――引き受けよう。ジョットさんには恩がある」
「おれも手伝おう。オヤジの為に戦ってくれたからな……それに、こいつはおれの友達だ」
「当然おれもだ。ジョットには、ルフィとエースが世話になった」
「ヴァターシは悪いけど、国に帰らせて貰うわ! 星屑ボーイの事が心配だけど、こっちでもやる事がある。だから、サボ。ヴァターシの分まで頼むわよ!」

 イワンコフたちニューカマー組は、海軍の軍艦を使って故郷の島に帰り、その他の面々はジョット蘇生の為に力を貸す事にした。

「おれも手伝うよ!」
「ルフィ! そなた、もう体が限界では……」
「だけどよ! おれ、あいつにすっげえ助けられたんだ! ……正直、あいつの力が無かったら、死んでいたかもしれねえ。エースを助けられなかったかもしれねえ」

 ルフィは、己の拳を見て呟いた。
 先ほどまでの戦いを――いや、シャボンディ諸島で大将達に惨敗した時からの事を思い出す。今の自分は、あまりにも弱い。仲間を守る事ができず、散り散りになってしまった。それが、どれだけ苦しかったのか……思い出すだけで胸が痛む。
 そして、その経験をもしかしたらあの戦争で……エースを失うという形で、もう一度体験する羽目になっていたのかもしれない。そうなると、ルフィはおそらく――死にたくなる程悔やむだろう。
 だからこそ、ジョットが一度死んでメアリーが絶望した表情を浮かべた時――どうする事もできなかった自分が許せなかった。
 結局は本人が気合で持ち直したが――それもどれだけ持つか。

「おれ、あいつを助けてェんだ!」

 ルフィは、自分を助けてくれたジョットを、今度は自分が助けると言った。
 その言葉を口にしたルフィの目は真っすぐで――誰も、彼に意見する者は居なかった。


 ▲▽▲▽▲▽


 ――こうして、ルフィたちはルスカイナの猛獣たちを狩ってはジョットの元へと運んでいる。その際に、なるべく生命力を吸わせる為に殺さないように注意している。
 その所為か、それとも今までの疲労の所為か、ルフィは第一グループの中で早々にバテていた。

「ゼェ……ゼェ……! つ、疲れたぁ……」
「どうした、ルフィ? もう疲れたのか?」
「ムッ……!」

 エースの挑発的な物言いに、思わず表情を歪ませるルフィ。地面に大の字になって倒れていた体を無理矢理起こすと、己の兄に向かって吠えた。

「そんな事ねェ! ちょっと休憩していただけだ!」
「さっき疲れたって言っていたじゃねえか」
「それは、その……たまたまだ!」
「ははは! どんな言い訳だよそれ」

 ルフィの言葉に、サボが笑みを零した。
 ムスッとしたままそっぽを向くルフィに、エースもまた笑みを浮かべると己の体を火に変えて背中を向ける。

「その猛獣たちをジョジョの所に持って行ってくれ。おれは、もう少し狩って来るよ」

 その言葉にルフィは驚いた表情を浮かべた。何故なら、此処ルスカイナは本当に危険な場所だからだ。全快のルフィでも敵わない猛獣がゴロゴロ存在し、いくらロギア()のエースでも危ないのではないか? そう考えてしまった。
 現に、メアリーもチームを作って一人で行動しないように厳命した程だ。ハンコックも、ルフィの身を案じて彼と同じチームになろうとしたくらいだ――ただ単にルフィと共に居たいだけかもしれないが。

「待てよエース。此処の猛獣は強いから一人で行くなってメアリーが……」
「ルフィ。行かせてやれ。エース。危なくなったら逃げ……はしないだろうから、すぐにおれ達を呼べよ?」
「ああ、分かっているよ」

 止めるルフィをサボが遮って、彼はエースの単独行動を許した。
 エースは言葉少なく去っていき、それを見送ったルフィはサボを非難がましく見る。
 その視線に気づいたサボは、苦笑してルフィにエースを一人で行かせた……いや、一人にする時間を設けた理由を述べた。

「察してやれルフィ――あいつは、親父と慕う男を失ったんだ」
「あ……」
「ジョットがあの黒ひげって男と戦わなかったら――突っ込んで行ったのはエースだろう。今、あいつには時間が必要だ」
「そっか……そうだよな」

 エースは、責任を感じている。白ひげが死んだのは自分のせいだと。
 黒ひげを倒していれば。黒ひげを追わなければ。
 終わった事だと切り替えるには白ひげの死は重く、受け入れがたい現実だった。
 だから、こうして猛獣たちと戦って何も考えないでいられる時間はエースにとって有難かった。
 それを察したサボはエースの好きにさせ、ルフィに分かりやすく伝えた。兄の苦しみを理解したルフィは、素直に頷いてそれ以上は言わなかった。
 二人は、仕留めた猛獣たちを引き摺ってジョットの元へと向かう。

「でもおれ、サボが生きててほんとに驚いたぞ」
「ああ……おれ、少し前まで記憶喪失だったんだ」
「きおくそうしつ?」
「お前たちの事を忘れていたって事だよ」

 サボは、今までの事を全てルフィに話した。
 親の元から逃げ出し海に出たものの、砲弾で撃たれて船は沈み自分は意識不明の重体。運良くルフィの父であるドラゴンに救われて一命を取り留めたものの、全てを忘れてしまっていた。
 そして、革命軍のメンバーとして成長し、戦い続け――最初にジョットと出会い、次にメアリーと出会った。

「あの二人には感謝している……ジョットがきっかけをくれて、モタモタしているおれをメアリーが引っ張り上げたんだ!」

 ジョットの治療は――彼に、大切なモノがある事を思い出させた。
 メアリーの呼び掛けは――彼に、大切なモノを守らせる記憶()を蘇らせた。

「だから、今度はおれがあの二人を助ける! ジョットが死んだら、あの兄妹は永遠に離れ離れだ。あんな思いはしなくて良い!」
「そっか……あ、ところでよ」
「ん?」
「おれ、メアリーの事何処かで見た事あるんだよなー。サボは何か知らないか?」
「……え?」

 サボは信じられないものを見る顔でルフィへと振り返る。
 ルフィは首を傾げて不思議そうにし、サボは頭を抑える。

「いや……あの様子から負い目を感じているのは分かっていたけど……でもなぁ」
「サボ?」
「……あのなぁルフィ。メアリーは、お前の友達だぞ?」
「へ? そうなのか?」
「ほら、ダダンの所に帰った途端に友達になってくれって言った」
「……あー! あー! 思い出した! あのメアリーか!」

 ルフィは思い出した。ある日突然ダダンの元に現れ、ルフィたちと友達になりたいと言って来た一人の少女の事を。

「あの時、警戒するおれとエースは覚えていて、唯一友達になったお前が何で忘れているんだ……?」
「いやー。びっくりした! でもメアリーも言えば良いのに」
「そこはほら……本人も色々あるからな。とにかく、この事は本人から言い出すまで黙っておけよ? あいつ気にしているから」
「おう! 分かった」

 そうこうしているうちに、二人はジョットの元へと辿り着いた。
 そこには、生命力を吸われて衰弱していく猛獣たちとオペをするロー。そして寝たきりのジョットを心配そうに見るメアリーが居た。
 メアリーは、ルフィたちが帰って来たのに気が付くとそちらに視線を送る。

「ルフィ。サボ。あれ? エースは?」
「今一人で狩りをしている……それに、あいつには一人になる時間が必要だからな」
「そっか」

 何となく察したメアリーは、それ以上何も言わなかった。
 サボが獲って来た猛獣と衰弱した猛獣の位置を替えていると、ルフィがメアリーに近づいて言った。

「メアリー。おれたちダダンの所で会った事あるんだな」
「ぶーっ!?」
「おいこらルフィ! お前、そういう所全く変わってねえな!」

 トラウマを思い出して白目を剥くメアリー。
 それを見たサボが叫んでルフィに覇気を込めた拳骨を叩き込んだ。

「痛ェ!? 何すんだ!」
「お前、デリカシーってものが無いのか!?」
「何だよそれ! ……美味いのか?」
「このアホ―!」
「あばばばばばば」
「お前らうるせえ! オペの邪魔だ!」

 わいわいがやがやと騒ぐルフィたち。それを猛獣を狩り終えて帰って来たジンベエは不思議そうに眺めて一言。

「元気じゃな、あいつら」

 その言葉には、何処か呆れの感情が入り混じっていた。


 ▲▽▲▽▲▽


「サボくんたち大丈夫かなー?」

 ルスカイナの海岸では、コアラ達革命軍とローを除いたハートの海賊団のクルー達が見張りをしていた。可能性は限りなく低いが、もし海軍が此処を嗅ぎ付けてやって来たら厄介な事になる。故に警戒して監視を務めているのだが……。

「はぁ……おれ達の船が無事だったらなぁ」
「まだ言うのか革命軍! おれたちは助けたんだぞ!」

 革命軍に所属する若い男の呟きに、ハートの海賊団のクルーが反応した。
 実は、革命軍の船は黄猿のレーザーで沈められてしまった。ローたちの潜水艦の身代わりとなって。幸い船内には人も重要な物も無かったため、ただ単に足を失っただけだが……それでも、真っ先に潰された光景を見た時は思わず叫んでしまったのだ。
 そしてその事に革命軍が愚痴を零し、ハートの海賊団が反応を示し……このようなやり取りが先ほどから何度か行われている。
 その度にコアラが止めていたが、流石に疲れたのか聞き流している。

「ばーかばーか!」
「あーほあーほ!」

 レベルが低いのも理由の一つだったりする。

「はぁ……ん?」

 ため息を吐いたコアラの視界に、ふと何かが映る。
 もしやと思いそちらを見れば――海軍の軍艦が二隻こちらに向かって進んでいた。
 まさか、本当に海軍に嗅ぎ付けられたのか!?
 コアラは急いで望遠鏡を取り出して船上に居る者を確認する。もしこれが大将……それも赤犬だったら不味い。潜水する前に見た所、彼はまだ健在だったのだ。
 マグマによる蹂躙はこのルスカイナを破壊し尽くすだろう。

「――え?」

 コアラの頬に汗が伝う。結果を言えば、赤犬は居なかった。
 その代わり、とんでもない大物が()()居た。

「お、見えた。ジョットたちはあそこに居るな」

 一人は隠者ジョセフ。

「さて……無事だと良いがな」

 そしてもう一人は――冥王シルバーズ・レイリー。
 コアラは手に持っていた望遠鏡を落として……叫んだ。

「何であの二人が此処に居るのーー!?」

 しかし、彼女の叫びに答える者は……誰も居なかった。







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