とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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それぞれの道

 

「……」

 

 ルスカイナの奥地にて、一人ジョットは空を見上げていた。

 他の皆は、海岸で別れの挨拶をしているだろう。特にルフィとエースとサボは、永遠に叶わないと思われていた兄弟三人による再会が叶ったという事もあり、別れを惜しんでいた。ジョットがこっそりと抜け出す前にチラリと見たところ、メアリーもまた何か思う所があるのだろう。彼らを見て薄っすら涙を浮かべていた。

 ジョットもまた、エースが助かって良かったと思っている。

 ――思っているのだが……。

 

「……っ」

 

 一つだけ悔いがあるとすれば――黒ひげから白ひげの魂を解放するという約束を守れなかった事だろう。

 黒ひげは、今新世界で暴れている。白ひげの船に乗っていた際に得た縄張りの知識とそのグラグラの能力にて。シキと組んでいるからか、その快進撃は凄まじい。瞬く間に勢力を拡大している。

 もし、あの時ジョットが黒ひげを仕留めていれば――こうにはならなかった。

 

「……違うな」

 

 ジョットが一番辛かったのは、やはり白ひげを助けることができなかった事だ。

 黒ひげへの怒りよりも、そちらの方がずっと心に残っている。現状を冷静に分析して『打倒黒ひげ』と考える前に――彼は悔いた。

 白ひげを――自分に母の事を教え、彼女の愛を伝えてくれた偉大な男を失った事が何よりも悲しかった。

 

「――オラァ!!」

 

 目の前にある岩壁を、感情と共に殴りつける。すると、地響きが起こりガラガラと目の前に瓦礫の山が出来上がり、近くでジョットを狙っていた猛獣たちはその光景に目を剥いて逃げ出し……しかし、ジョットの心は晴れなかった。

 彼は、再び空を見上げる。

 

「……爺さんは、死んだ」

 

 そして、まるで自分を叱咤するかのように呟いた。

 

「……もっと強くならねえとな――アホンダラって言われねえように」

 

 それを影から見ていた男は――気づかれないうちにそっとその場を離れた。胸の中で、彼に礼を述べながら。

 

 しばらくして、ジョットはルフィたちの元へと戻った。

 彼の頬には、涙の跡は残っていなかった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「ジョジョ! さっきそっちの方からすげー音がしたけど、大丈夫だったか?」

「ああ。オレは大丈夫だ」

 

 ルフィの言葉にそう返しながら、ジョットはジョセフが奪って来た軍艦に乗り込んでいる革命軍の面々を見る。彼らは、この船を使って基地に戻るらしい。船の上にはサボが居り、現れたジョットに気が付くと笑顔で手を振った。

 

「ジョット! お前には、本当に感謝している! この先、何か困った事があったら連絡してくれ。いつでも駆け付ける!」

「ああ、ありがとう。その時は、頼らせて貰う」

 

 そしてジョットは、顔見知りのコアラや革命軍のメンバーと別れの挨拶をし、一足先に海に出た彼らをルフィらと共に見送った。見えなくなるまで手を振り続け、次に出航するのはジョットたちだ。

 ジョット、メアリー、エース、ジョセフは、ジンベエが呼んだジンベエザメに乗ってシャボンディ諸島に向かいギンたちと合流後、そこからレッドイーグル号で魚人島に向かう予定だった。

 既に他の皆はルフィと別れの挨拶を済ませているのか、彼はジョットに視線を送っていた。

 

「ジョジョ! 戦争じゃあ、本当にありがとうな! おれ、此処で強くなって――そして、絶対に追いつくから!」

 

 ルフィは、二年間此処で修行する。彼のクルーもまた、それぞれ二年後に備えて各々の道を歩んで強くなろうとしているだろう。

 レイリーの提案に乗って一度足を止め、力を付ける事をルフィは決めた。

 そしてそれは、ジョットがルフィの先を行く事と同義であり――彼は、それに追いついてみせると決意を新たに宣言した。

 

「――ああ。新世界で待っている」

 

 そして、ジョットはその言葉をしっかりと受け止めて――ルフィと別れてシャボンディ諸島に向かった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「やはり生きとったか……」

 

 病室で、新聞を広げるのは海軍大将赤犬ことサカズキだった。

 彼は、しばらくは治療に専念する事になっている。戦争前と戦争中でも、彼は深い傷を負わされた。そして、それを為したのはジョットだ。

 本当なら、今すぐにでも軍艦に乗ってジョットの首を獲りに行きたい。しかし、それ以上に思うのが、このままで良いのかという疑問。

 海軍は、今回の戦争で成果を得られなかった。それもこれも全て――ジョットが悪い。

 ただの恨みから来る言いがかりだと言うには、あまりにも彼の影響力は強い。

 

「――さらに強い正義の力が必要じゃな」

 

 サカズキは、先日自分の元に現れた使者から受け取った“推薦状”を見て――決意する。

 ジョットを、メアリーを、ウソップを――海賊を滅ぼすために。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「元帥を止めるようだなセンゴク」

「ああ……お前はどうするゼファー?」

 

 センゴクの部屋にて、体に包帯を巻いた老人たちが顔を突き合わせていた。

 先ほどセンゴクはコング総帥に元帥を退位する事を告げ、現場から離れる意志を伝えた。これからの時代に老兵がのさばっても意味が無い。

 そう考えての行動だった。

 ……決して、次々と舞い込むストレスに嫌気が差した訳ではない。

 

 ゼファーは、センゴクの決定にあまり表情を変えず答えた。

 

「クザンを推薦するようだな」

「ああ。普段はやる気を見せん男だが、奴なら……」

「くくく……かつてのヒヨッコが元帥に、ね。時は流れるものだ」

「……お前は、まだ戦うつもりか」

「――ああ。一人、倒さなくてはならない海賊が居る」

 

 ゼファーは、戦争が終わってから得た情報から早急に倒すべき()を見つけた。

 邪眼――いや、新たに発行される予定の手配書では“邪王真眼のメアリー”になるだろう。彼女の力は、海軍にとって脅威になる。スカスカの実とはまた違う能力。世界政府や海軍は、彼女の邪王真眼の能力を測りかねている。

 黒ひげのように二つの悪魔の実を得ているのか。もしくは、全く別の能力か。

 どちらにしても、彼女はエースやジョットに次いで危険視されている存在だ。そして、ゼファーにとっては教え子を手に掛けた憎き敵である。

 

「それにしても謎だな。遠くに居る敵を害す力があるとは……」

「ああ。アインやビンズは、奴の眼によって気絶させられていた」

 

 アインたち曰く、意識を失う前に見たのは闇の中でも光る赤く禍々しい瞳だったそうだ。

 メアリーは、相手の記憶にある力を行使すると言っていたが――能力の真髄は別の所にあるのかもしれない。

 

「野放しにできん。兄共々な」

 

 海軍の正義に則り、ゼファーは力強くそう宣言し――しかし、一年後。その正義に彼は裏切られ、世界を憎む破壊者となった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「ウソップン。無理だん! この島でずっと目隠しをして生きるのは!」

 

 ボーイン列島に飛ばされたウソップは――現在、死にかけていた。

 この島の不思議な食べ物によって肥大化した肉のおかげで心臓にまで至っていないが――それでも、猛獣や食肉植物に負わされた傷が痛々しい。

 息を切らして目隠しをした状態のウソップは、声がする方へ顔を向けて言った。

 

「ルフィには……おれ様の力が必要なんだ! だから、この程度でへこたれちゃあいられないんだ!」

「しかし、あまりにも無謀だん! 死んだら、元も子も――」

「それに! おれには、絶対に追いつきたい兄弟と、倒したい奴が居る!」

 

 ヘラクレスンの言葉を遮る程の強い決意が、ウソップの口から放たれた。

 思い出すだけでも、頬に残った大きな火傷痕が痛みだす。兄弟をバカにした相手を前に、ウソップは何もすることができなかった。他人が見れば、海軍大将にあれだけの啖呵を切れるのなら大したものだと称賛するかもしれないが――ウソップはそれ()()ではダメだと思っていた。

 

「絶対にあり得ないような嘘を、本当にできるくらいの男じゃないと――おれはジョットの隣に立てねえ! あのマグマ野郎にも勝てねえ!」

「それで目隠しなのかん?」

「目隠しだけじゃねえ! 慣れたら耳! さらに慣れたら鼻――おれは、この力をこの二年間でモノにしてやる!」

 

 そう言ってウソップは、振り向いて自分に襲い掛かろうとしていた食肉動物を火薬星で打ち抜いた。その光景に、ヘラクレスンは圧倒される。

 今、この瞬間にもウソップは――強くなるための修行をしている。

 いや、それどころではない。彼の言い分が嘘でなければ、これからずっと……二年後に仲間と会うその時まで休み事無く気配を読む力――見聞色の覇気を鍛え続けると言っているのだ。

 それは狂気の沙汰であり――かつてジョットが苦しんで一ヶ月で断念した修行方法だ。

 ヘラクレスンは、そのウソップの決意に畏怖を覚え、しかしそれ以上の感情の高鳴りに体を震わせ――。

 

「あ、でもポップグリーンの勉強は見ないと分かんねえな」

「台無しだなん! ウソップン!?」

 

 目隠しをズラしてそう言うウソップに、ヘラクレスンは思わず突っ込んだ。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「皆、心配かけたな!」

『船長!!』

 

 シャボンディ諸島に着き、自分たちの船に戻ったジョットはクルセイダー海賊団のクルーたちと合流していた。

 全員、戦争を見ていたのか目に涙を浮かべている。シャッキ―から無事だという話は聞いていたが、それでもこうして実際に目にするまで気が気でなかったのだろう。

 彼らは、ジョットの元に集うと彼の無事を喜んだ。

 ジョットは、彼らに応対しながらも違和感を感じていた。一人、見当たらない人物が居る。

 ギンだ。

 

「おい、ギンが見当たら――」

「ジョジョ、上だ!」

 

 エースの警告の言葉に咄嗟に上を向くと、そこには――武器を構えたギンが襲い掛かる光景が広がっていた。

 一瞬、理解が及ばず意識に空白が生まれる。

 しかしすぐに持ち直すと覇気を纏った腕で受け止め、弾き飛ばす。それでもギンは止まらない。

 

「おい、ギン! 何しやがる!」

「……」

 

 だが、彼は答えない。それどころか、さらに可笑しな事が起きる。

 ジョットを取り囲んでいたクルセイダー海賊団のクルーたちが、まるで戦いの場を作るかのように距離を置いて円を作った。

 彼らの行動にジョットもメアリーも訳が分からず困惑した。

 襲われているジョットを見て、ジンベエとエースが飛び出そうとするがそれをジョセフが止める。

 

「何で止めるんだ!」

「そうじゃ! ジョットさんは病み上がりだぞ。あまり無茶させちゃ――」

「黙ってろよ……こりゃアイツがケジメ付けねえといけねえ事だ」

 

 ジョセフに止められたエース達は、仕方なくその戦いを見守る事にした。

 ジョットは、ギンの攻撃を捌きながらも問いかけた。

 

「ギン! 攻撃を止めろ!」

「……」

「くそ……」

 

 止まらないギンを見て――ジョットは覇王色の覇気をギンに叩き付けた。

 意識を飛ばして、この場を収めようとしたのだが――ギンは、飛びそうになる意識を舌を噛んで堪えた。口の端から血が流れ、それを見たジョットが驚き――隙ができる。

 そして、ギンはそこを見逃さず剃で間合いを詰めると渾身の一撃を叩き込んだ。

 鈍い音が辺りに響く。

 

「ジョジョ!」

 

 メアリーが声を上げ――ギンのトンファーが砕け散った。

 衝撃に耐えきれず壊れてしまったらしい。対して、ジョットは武装色の覇気で体を硬化させていたため、ダメージはゼロ。

 バラバラと落ちる武器の破片を見てようやくギンは止まり、その場に座り込んだ。

 

「は、はは……やっぱり船長はすげえよ。病み上がりなのに、おれの一撃がまったく効かねえ――いや、違うな。おれが弱いだけだ。冥王レイリーの――赤犬の言う通りだ」

「ギン、お前……」

 

 ギンの声を聞いて初めて――ジョットは彼の心の悲鳴に気が付いた。

 

「なァ、船長。おれ達、戦争にアンタが参加していると聞いて居ても立っても居られなくて駆け付けようとしたんだ――でも、冥王レイリーに止められた。『君たちが行っても犬死するだけだ』って」

 

 しかし、ギンたちはそれで止まる程賢くなかった。

 レイリーの静止を振り切ってマリンフォードに向かおうとし――全員叩きのめされた。

 無暗に命を粗末するだけだと、レイリーは彼らに傷を負わせてでも止めた。

 彼一人にやられるようでは、ただ死にに行くだけだと無理矢理理解させられた。

 そして――戦争中に赤犬がメアリーに放った言葉に全員心臓を鷲掴みにされた気分だった。

 

「なァ、船長――おれ達、弱いよなァ。アンタの足、引っ張っちまうよなァ――こんなに無様な男ァ他に居ねえよなァ!」

 

 ギンは――いや、クルセイダー海賊団たちは泣いていた。

 自分たちの無力さに。

 

「アンタの力に成りたくても! 追いつきたくても! 支えたくても! おれ達は弱すぎる! 赤犬の言う通り、おれ達の弱さが――アンタを傷つけるんだ!」

 

 ギンは、苦しんでいた。自分とジョットの間にある圧倒的な壁と、そしてそれを乗り越える事ができない事実に。

 自分が一歩進めば、ジョットは十歩も百歩も――何千歩も先に進んで行く。

 いつか追い付こうではダメだ。今すぐにでも追い付かないと――ジョットは自分たちの知らない場所で死んでしまう。

 それが辛くて、でもどうしようも無くて――ギンは泣いていた。

 

「なァ船長……おれ、アンタに相応しいクルーなのか? ただの足手纏いで居るのが――死ぬほど辛いんだ!」

「ギン……」

 

 ギンの魂の叫びに、他のクルー達も声を上げる。

 

「俺たちもだ船長!」

「あの日、自分たちの無力に嘆いて強くなろうとしたけど――まだ足りないって事が分かった」

「このままじゃ俺たち、アンタを殺してしまう!」

「悔しくて堪らねえよ!」

「船長……俺たち必要なのか?」

 

 彼らは情けなくも、ジョットに自分たちの存在意義を問い掛ける。

 もし、邪魔だと足手纏いだと言うのなら――船を降りる事も考えていた。

 それで、彼がこの先何不自由なく航海できるのなら、と。

 そんな彼らを見てジョットは――大きく大きくため息を吐いた。

 

「テメエら、全員そこに並べ」

「はい?」

「並べこのアホンダラァ!!」

 

 ジョットの怒号が響き渡り、クルー達は体を跳ねらせて急いで一列に並んだ。

 ギンだけは俯いて涙を流していたが、クルーに促されて彼も並んだ。

 

「メアリー、お前もだ」

「……うん、分かった」

 

 そして、密かに彼らと同じ思いを抱いていたメアリーも列に加わる。

 ジョットの前には、クルセイダー海賊団22人が勢揃いしている。

 全員、東の海から此処まで共に航海して来たジョットの仲間たちだ。

 こうして眺めているとジョットの脳裏にこれまでの出来事が思い浮かび――そして、一度も『邪魔だな』と思った事は無かった。

 

「――こういうのガラじゃねえんだけどな」

 

 ジョットは、視線が集まるなか――ゴホンッと咳ばらいをして答えた。

 

「おれァ、ランみたいに船を直せねえ。ヤックルみたいに歌が上手くねえ。テキラスみたいに傷を治せねえ」

「せ、船長何を……?」

 

 ジョットは突然、クルーたち一人一人の名を上げていき普段航海でしている役割を述べていく。彼らにとってはやって当然のこと。それがジョットの口から次々に放たれていく。

 当人たちは気が付いていないようだが――外野の人間たちは気が付いているようで笑みを浮かべていた。

 

「――アーサーは剣術が上手く、咄嗟の判断が鋭い。ギンはクルー達の総括をし、戦力の強化をしている。それに、毎晩自主練をしているのも知っている。メアリーは普段ふざけているが、いざという時は度肝を抜くような行動力がある。

 ……全部、お前らがやってきた()()事だ。実感湧かねえみてえだが、今までオレはお前らに助けられて此処に居る。一人じゃ無理だったんだ。そして何より――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 クルーの居ない海賊団など、ひとりぼっちの海賊など、ジョットは考えられなかった。

 彼らが居たからこそクルセイダー海賊団は成立し、彼は船長で居られた。

 彼らの弱さがジョットを殺す? 足手纏い? ジョットにとってはそんな()()()()はどうでも良かった。

 

「強さ弱さじゃねえよ――お前らだから、一緒に海賊してんだ。今更こんな事言わせるな」

『船長ーー!!』

 

 クルーたちは号泣し――今度こそ心の底からジョットの生還を喜んだ。

 自分たちを必要としてくれる。そう言ってくれるジョットの言葉に涙を流した。

 ――彼らはもう疑わないだろう。自分たちがクルセイダー海賊団でいる事を。そして、ジョットが彼らを仲間だと思ってくれている事を。

 

「――船長、それでもおれは……!」

 

 そして、ギンもまた同じ気持ちだった――だからこそ譲れない物がある。

 認めてくれたからこそ。必要だと言ってくれたからこそ。仲間だと言ってくれたからこそ。

 ギンは、現状に満足できない。強欲にも力を求める。

 ジョットは、その揺らがない決意に少し困った表情を浮かべ――後ろから響く声に振り返った。

 

「ジョット。そいつ、おれが強くしてやろうか?」

「親父……」

「その兄ちゃんは、お前の言葉を受け止めても止まらねえよ――正直、これだけの意志の強い人間が誰かの下に着いているってのも面白い」

 

 ジョセフは、ギンの可能性に久しぶりに興奮していた。

 ジョットを鍛えていた時の高揚感を思い出す。もし、この男を鍛えたら――そう考えると浮かび上がる笑みが収まらない。

 しかし、それに待ったをかけたのはジョットだ。

 

「断る。お前に任せるのは不安でしかない」

「酷いな。父親相手に」

「――父親だからこそ、だ。血の繋がったオレで()()なら、ギンがどうなるか。分かったもんじゃねえ」

 

 ピリピリとした空気が、両者の間で生まれる。

 ジョセフは酒を飲んでヘラヘラと笑っているが、ジョットの目は真剣だ。

 まるで、敵から仲間を守るように。明らかに肉親に向ける目ではなく、しかし彼の事をよく知る者なら当然の反応だと頷くだろう。

 それだけジョセフは()()に容赦が無い。

 

「――船長、行かせてくれ」

「ギン」

「あの人に着いて行って強くなれるならオレは――世界最悪の海賊にだって魂を売ってやります!」

「ほう……言うじゃねえか小僧――いや、ギンって言ったな。ますます気になった」

「おい、親父! ……ギン、考え直せっ」

 

 このままでは不味い。

 焦りの表情を浮かべ、昔を思い出しながらギンを止めるジョットだが……ギンは止まらない。

 

「船長。おれァ、アンタを助けに行けなくて死ぬほど苦しかった。あんな思いをしないためにも、どうか止めないでくれ……!」

「――だが」

「漢の約束だ! おれァ死なねえ! 絶対に強くなって、アンタが無茶したら殺してでも止められるような漢になってやる! それでも止めるのなら――おれを殺してくれ星屑のジョジョ!」

 

 ギンの言葉は本気だった。此処でジョットが首を縦に振らなければ、死ぬつもりな程に――重く固い覚悟だった。

 もう、ジョットの言葉では考えが変わらないのだろう。

 ジョットは、ため息を吐いて帽子を深く被ると――。

 

「――分かった。……あの時(クリークの時)みたいに船長命令は要るか?」

「――要りません。これは、おれが決めた事ですから」

 

 その言葉を聞いたジョットは、一つ頷いて鋭い視線をジョセフに向ける。

 

「親父。もしギンが死んだら――お前を百回殺す」

「親に言う言葉じゃねえな――そりゃあギン次第だ」

 

 ジョットの釘刺しに動じず、ジョセフは笑って言った。

 

 

 ――こうして、ギンはジョセフの元で修行をすることになり一時クルセイダー海賊団から離脱した。

 この時の判断をジョットは後に後悔し怒り、しかしギンは強く逞しく成長した。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「さて――ジンベエ、案内を頼む」

「ああ、任せろ」

 

 ジョットは、ジンベエを信頼してそう言った。

 この後船の中で色々と話すつもりだが、時間はたっぷりある。

 ジンベエもまた話したい事があるようで、退屈はしなさそうだ。

 

「エースは魚人島までだな」

「ああ。それでもよろしく頼む」

 

 エースは、魚人島で白ひげ海賊団たちと合流する予定だ。

 そこまでは一緒に航海をする事となっている。

 彼の力があれば、深海でも活躍する事間違いない。

 

「メアリー。いつでも行けるか?」

「うん、準備オッケー! 皆がやってくれたから!」

「船長が認めてくれた力だからな!」

「船長が褒めてくれたからな!」

「今日までは許すが、しつこいと船から放り出すぞ」

 

 クルセイダー海賊団は、いつも通りのテンションに戻っていた。

 ギンは居ないが、彼とはすぐに会える。ジョットはそう信じて彼の覚悟を認めた。

 なら、もう何も言うまい。後は待つだけだ。

 

「じゃあ――行くぞ、野郎共! 魚人島に!」

『おう!』

 

 ジョットの声に皆が応え――レッドイーグル号は深海へと進んだ。

 いざ行かん。魚人島へ。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「さて、鍛えると言ったが――その前にお前のステータスを見させてもらうぞ?」

「ステータス?」

 

 レッドラインのすぐ傍に、ジョセフとギンは居た。

 小舟で壁に近づくと、ジョセフがギンに向き合うとその赤く染まった目で彼を見る。

 ギンは、全てを見透かされているような感覚に気味の悪さを覚え、しかしそれは実のところ当たっていた。

 

 ジョセフは“ゲムゲムの実”を食べたゲーム人間。

 あらゆる事象をゲームに基づいて行動する事ができる能力者だ。

 この能力により、彼は“潜入ゲーム”で敵の基地や陣地に侵入したり、キャラメイキングで名前や容姿を変えたりする事ができる。

 また、とある能力の禁術が作用し彼には永遠に近い命が与えられているが……それはまた別の話。

 現在、彼の目にはギンの筋力、脚力、覇気の容量、がデータ化されて映し出されている。

 これにより、彼をどのように育成すれば、どれだけ強くなれるのかが分かる。

 

「分かりやすくて良いなァ。ジョットの野郎は色々とバグっててこっちが合わせないといけなかったからなァ」

「は、はぁ……?」

「うーん。こりゃあ、下手に悪魔の実(オプション)付けない方が良いかねぇ」

 

 考えが纏まったのか、ジョセフは『よし!』と呟くとギンに笑顔で言った。

 

「まずは壁、昇ってみるか」

「……はい?」

 

 ――後にギンは、ジョセフの修行(拷問)を受けてこう述べた。

 

『確かに強くなりました、心身共に。その事には感謝してます。しかし、あの人の事を人として見る事ができなくなりました。……というか、本当に船長の父親なんですか?』

 

 その事を知らないギンは綺麗な瞳で『はい!』と応えた。

 彼の瞳が濁るまで、後26時間。

 




第一部完!
てな訳で後書き的なものをこれから活動報告でダラダラと書きます







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