とある海賊の奇妙な冒険記   作:カンさん

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新世界編、開始ィ!


新世界編
主人公日記 十四ページ目+α


 @月☆日

 

 コーティングによって深海へと潜っていくレッドイーグル号。

 爺さんの船で新世界からこっちに来る時に見た光景だが、二度目でも目を奪われる程綺麗だ。

 それはメアリーやクルー達も同じようで、海の神秘に騒いでいる。後、人魚姫が楽しみなのか既に踊っている奴らもいる。

 エースとジンベエは慣れたもので、近づいて来た海獣達をそれぞれの力で蹴散らしている。

 経験者が居るから、魚人島まで安心していけるだろう。

 それはそれとして、オレ達はジンベエと改めて話をした。ハチから聞かされたアーロンの話だ。

 ハチの名前が出て疑問に思っていたジンベエだったが、オレが友達だと教えると驚いた。どうやらアーロンと一緒に捕まっていると思っていたらしい。

 それとクルー達からの補足によるとハチはルフィ達の船を守っているらしい。シャボンディ諸島に着いたら海軍に見つからないようにするため、さっさと船に向かったから知らなかったが……。

 そして、オレは伝えた。アーロンが虐げていた人間の中にオレの友達が居て、その一人が麦わらの一味に居ることも。

 それを知ったジンベエは苦しそうな顔をしていた。それでも伝えるべきだと思っていた。

 ジンベエは教えてくれてありがとうと言い、二年後に魚人島に来る彼らとしっかり向き合って話すと言った。……ハチの言っていた通りの漢だ。

 その後もフィッシャー・タイガーの話や(クルー達がフィッシャー・タイガーの事が好きだと伝えると嬉しそうな顔をしていた)オレの母との出会いの話など色々と話した。

 それにしても驚いたな。まさかジンベエもオレの母と知り合いだったとは。聞くところによると、良く遭難する母を探していたらしい。

 ……遭難、ねぇ。

 メアリーの視線が突き刺さった。悪かったな、よく遭難してよ。

 魚人島にはタイヨウの海賊団が居るから、紹介してくれると言っていた。それを聞いてオレもクルー達も是非会いたいと言った。

 

 だが、それとは別にジンベエは唸っていた。尋ねても個人的な問題らしいが……どうしたのだろうか?

 

 

 

 辺りが暗くなり少し肌寒くなって来た頃、エースとある話をした。

 爺さんの事だ。どうやら、ルスカイナで……あー、なんだ。気分が落ち込んでいた所を見られたらしい。

 エースは、オレと爺さんの関係をあまり知らなかったからジンベエの話を聞いて驚いて……爺さんの為に死力を尽くしたオレに改めて礼を言いたい、と。

 ……エースは、名を上げる為に海賊になり、世界に自分の存在を認めさせるのが目的だったらしい。しかし、あの戦争を通じて本当に欲しかったモノが分かったらしい。

 そしてそれは既に手に入れていて、同時に失ってしまった。

 エースは、皆の前で流さなかった涙をオレの前で流した。

 父親の死に悲しんで……。

 オレ達は、爺さんが好きそうな味の酒を共に飲んだ。

 少し、しょっぱかった。

 

 

 @月#日

 

 深海の航海を終えてオレ達はつい昨日魚人島に到着した。

 以前は船にずっと乗ったままで上陸しなかったが凄いところだ。深海なのに光も空も空気もある。人魚が空を泳ぐ光景には目を奪われた。

 仲良くなったタイヨウの海賊団達の案内の元、色々な場所を巡った。ただ、ジンベエが七武海を辞めたから少し居辛いらしい。

 クルー達はマーメイドカフェに夢中で現在進行形で全力で楽しんでる。楽しむのは良いがお小遣いの前借りはさせんぞ?

 ただ、楽しい事ばかりではない。

 魚人島は爺さんの縄張りだった。しかしその爺さんが死んでしまい抑止力を失ったこの島は、ガラの悪い海賊達がよく来る。

 クソ腹立つことに、地上では人魚は高く売れる。それを狙っての事だろう。実際笑いながらそう言っていた奴が居て……思わずぶん殴ってしまった。

 エースもジンベエも事の重大さに気付いているようで、どうにかしようと考えている。

 とにかく、白ひげ海賊団が来るまで馬鹿な海賊達はオレ達で牽制する事にした。自分で言いたくないが、オレの名を知らない者は居ないだろう。メアリーじゃないが、使えるものは使うだけだ。

 

 

 @月*日

 

 マーメイドカフェを満喫し過ぎなアホどもを迎えに行った所、ある女性と出会った。

 名をマダム・シャーリー。美人な人魚で……爺さんの死を予言で当てた人物。

 彼女はオレ達がこの島に来ることも予言していたようだった。何でもクルセイダー海賊団の旗のイメージが強く見えて、魚人島と強い関わりを持つとか。

 それとマダムの予言ではオレもあの戦争で死ぬ筈だったらしい。しかしその予言だけは外れてオレはこうして此処にいる。彼女はそれに驚きつつも嬉しかったようだ。

 先日助けた人魚の件も含めてお礼に割引すると言っていたが、丁重に断らせて貰った。アイツらにはいい薬だ。

 それよりも、礼をするならベタベタと引っ付いてくる人魚達をどうにかして欲しいんだが……メアリーやクルー達の視線が痛い。

 

 エースやジンベエもオレと一緒に助けたんだがなぁ……。

 というか、この島の人たちはオレにフレンドリー過ぎる気がする。

 そうボヤくと、シャーリーは「何も知らないんだね」と言って笑っていた。

 どういう事だと聞くと、明日分かると言って教えてくれなかった。……占いで何か見たのだろうか?

 

 それと、シャーリーがメアリーに「じゃおうしんがん」とやらについて聞いていた。何でも、メアリーにも未来を視る力があるとか。初耳なんだが。

 その事について聞かれたメアリーは顔を真っ赤にさせて逃げ出し、その日は布団を被って悶えていた。何をやらかしたのか知らんが、夜中に突然奇声を上げるのは勘弁して欲しい。奮発してでももう一部屋借りれば良かっただろうか。

 

 

 @月?日

 

 現在、オレ達は竜宮城に招待されている。そして宴会をした。

 こう書いたらあれだけど、色々とあったのだ。突然この国の王子たちがやって来て、この国の王様が待っていると言われて……。

 クルー達は驚いて口を大きく開いていた。マーメードカフェで楽しんだ後に激変した青い顔はかなり面白かった。メアリーも驚いて、何故呼ばれているのか分からない様子だった。ジンベエは知っているみたいだったが。

 

 で、肝心の呼ばれた理由だが……どうもオレの母親関係らしい。

 ネプチューン曰く、オレの母はこの国を気に入っていて、かつて存命だったオトヒメ王妃と仲が良く、海賊が荒らそうものならすぐに飛んで来て懲らしめる程に入れ込んでいたとのこと。

 だから、息子であるオレの存在をあの戦争で知って、この島にやって来たら歓迎するつもりだったと伝えられた。……この前は戦争の準備で上陸しなかったからな。

 それにしても、妙にこの島の人たちがフレンドリーな理由が分かった。今までは“星屑のジョジョ”として恐れられていたが、彼らは“ジョン・スター・リードの息子”としてオレを見ていたのか。

 だからあの時……人魚たちを攫おうとしていた海賊をぶっ飛ばした時、ジンベエは嬉しそうに笑っていたのか。酒を飲みながらネプチューンに「リードの姐さんを思い出した」と話していた。それを聞いたネプチューンは、オレの今までの暴れっぷりに納得していた。

 ……オレの母親、本当にどんな人だったんだ?

 

 

 @月‘日

 

 明日、バンダー・デッケンというストーカー野郎を捕らえに行く事になった。

 ネプチューンの娘であり、クルー達が一目見たいと喚く程の存在――人魚姫であるしらほし。彼女をあの塔から解放するために……いや、違うな。メアリーの友達を助けるために、オレ達はバンダー・デッケンを捕まえる。

 8年もあんな所に居るのは、可哀そうというのはオレも同じ気持ちだしな。

 メアリーの邪王真眼があれば大丈夫だろう。ジンベエもエースもクルー達も、そしてネプチューン達もその力を頼りにしている。あいつも珍しくやる気だしな。

 しらほしも「邪王真眼の事をもっと教えてください!」と初めは怖がっていたのが嘘のように、キラキラとした目でメアリーに懐いていたのは、今思い出しても微笑ましかった。

 メアリーは友達が少ないからなぁ……友達ができてオレは嬉しい。

 ただ、メアリーの目が濁っていたり「純真な目が心を抉る……」と胸を抑えていたのが気になった。

 どうしたんだ? と聞いてもしらほしが「女の子同士の秘密です」と言って笑っていたから……まぁ大丈夫なんだろう。

 

 

 @月%日

 

 ジンベエやフカボシ達と共に無事にバンダー・デッケンを捕らえる事に成功した。

 それにしてもはっきりとしらほしの口から(電伝虫越しとはいえ)振られた途端、殺そうとするとは……恋愛ってのはよく分からん。

 そう呟くとジンベエに結婚する時は周りと相談してくれと懇願された。疑問に思う前に、オレの両親の事を思い浮かべて納得してしまった。

 なんでオレの母親は親父を選んだのか、永遠の謎だ。ジンベエもそれだけは分からんと言っていた。

 

 ともあれ、これでしらほしもある程度自由に動けるようになる。早速海の森にお墓参りをしに行くと言っていた。流石に護衛を付けるようだが、それでも嬉しそうにしていた。

 

 

 @月$日

 

 ようやく、白ひげ海賊団から迎えがやって来た。やって来たのはスクアードだった。

 で、やって来たスクアードはオレとエースと顔を合わせるなり頭を下げた。

 何でも、一度でも仲間であるエースを疑った事と、爺さんのために命を懸けたオレに負の感情を抱いた自分が許せなかったらしい。だから、どうか殴ってくれと懇願された。

 まぁ、オレもエースもきっぱりと断ったけどな。

 あんな立派な……爺さんを最後まで信じると言った男をオレは殴れねえ。エースも、家族相手にそんなことはできないと言っていた。

 それでもスクアードは納得しなかったが、エースがこれからが大変なんだから

 その時に力を貸してくれと笑って……スクアードは涙を流しながら「ありがとう」と何度も何度も言い続けた。

 

 白ひげ海賊団の絆を再確認し、これでめでたしめでたしだったら良かったんだが――招かれざる客がやって来た。

 ビッグマム海賊団の使者だ。

 アイツらは、ネプチューンとビジネスの話があると言って半ば強引に竜宮城に乗り込んだ。

 四皇を相手に下手な対応をすればどうなるのか――それを盾に笑みを浮かべる顔は、正直に言って苛立った。

 それと、オレに執拗に絡んで来るのがウザかった。ユースタスたちがどうのこうの、持て囃されて良い気になるななど。随分と好き勝手言ってくれた。くだらなすぎて、相手をするのも面倒だった。

 そして、竜宮城でビッグマムからの使者、ネプチューンと右大臣、左大臣。白ひげ海賊団のエースとスクアード。向こうからの要望でオレも加えて――ビッグマムが魚人島を縄張りにして他の海賊から守ってやるという伝言が伝えられた。

 その言葉に皆は衝撃を受け、エース達は怒りで表情を険しくさせて思わず怒鳴った。提案するかのように言っているが、明らかに爺さんの縄張りへの侵略行為。それが許せなかったんだろう。加えて、一ヶ月に10トンの甘い菓子を献上し、破ったら滅ぼすなど――正直に言って狂ってやがる。

 だが、魚人島からすれば……エース達には悪いが渡りに船だ。爺さん亡き今、海賊にとって格好の的であるこの島を守れるのは同じ四皇クラスだ。

 魚人島を想うのなら、どうすれば良いのか――賢い選択を待っているとビッグマムの使者たちは述べた。彼らはもう魚人島を縄張りにできると思っていたのか、口々にお菓子が楽しみだと言っていた。

 エース達は悔しそうにし、ネプチューン達は苦悶の表情を浮かべ――それを見たオレの口は自然と動いていた。

 

 ビッグマムと直接話をさせろ、と。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「テメエがビッグマムか?」

『そういうお前が噂の星屑のジョジョだね?』

 

 電伝虫越しに、四皇の声が竜宮城内に響く。

 先ほどまで余裕の表情を浮かべていたビッグマムの使者たちは、ハラハラとした表情でビッグマムと話すジョットを見ていた。

 どうやら、ビッグマムの事を心底恐れているようでジョットが無礼な態度を取らないか気が気でないようだった。

 ネプチューン達も生唾を飲んでその光景を見ており、彼らの会話に耳を傾けている。

 

『で、隠者の息子がこのおれに何の用だい?』

「魚人島が欲しいんだってな」

『まぁね。何でも、魚人島のお菓子は大変美味しいそうじゃないか! 白ひげの野郎が邪魔で食った事ないが――想像しただけで涎が止まらないねぇ』

 

 そう言ってビッグマムは笑う。子分が子分なら、その親玉も親玉だろうか。

 既にビッグマムの頭の中では魚人島は、彼女の物になっているらしい。

 それを聞くジョットは――冷たい声で言った。

 

「――つまらねえなビッグマム」

『――あ?』

「ちょ……!? 貴様、ママになんて口の利き方を!?」

 

 使者がジョットを止めようとするが――彼にギロリと睨まれて動けなくなる。先ほどまで散々前半の海でおだてられていると笑っていたルーキーに、だ。

 ビッグマムに対する畏怖に勝るとも劣らないそのプレッシャーに、冷や汗がドッと溢れ出す。この島に来て竜宮城に来るまでしつこく纏わりついて、ビジネスの話もビッグマム海賊団の力を知らしめようとしていたのだが――もし過去に戻れるのなら、殴ってでも自分を止めていた。

 

超新星(ヒヨッコ共)と同じ? 誰が言ったんだそんな事!)

 

 石のように固まる使者から視線を外し、ジョットは電伝虫に向かって言葉の続きを言った。

 

『どういう意味だい? 星屑のジョジョ』

「爺さんが死んだ途端、火事場泥棒のように縄張りを掠め取る――それがつまらないって言ってんだ。欲しいなら、白ひげの爺さんから直接奪えよ海賊らしく」

『言ってくれるねぇ……!』

 

 ジョットの知る四皇――白ひげとシャンクスは偉大な海賊だった。

 星の数ほど存在する海賊たちの頂点に位置すると言われる海の皇帝。ジョットは肩書きに恥じない彼らを深く尊敬していた。

 だから、それと同列な扱いを受けているビッグマムの言動に苛立ち、そして何よりも――。

 

「テメエにこの島は任せられねえ――魚人島はオレの縄張りにする」

『――!?』

 

 この無茶苦茶な女に、かつて母が愛したこの島を、白ひげ守っていたこの島を蹂躙される事が許せなかった。

 

「魚人島が欲しいなら、オレを倒して奪え! 四皇ビッグマム!」

 

 ジョットは、臆することなくビッグマムに宣戦布告をした。

 それを聞いた周りの人間は驚きのあまり口を大きく開き、そしてビッグマムは……暫くして大声を出して笑った。

 

『ハハハハ……ママママ! ヒヨッコのお前が、一丁前に四皇であるおれに喧嘩を売るのかい? ちょっと注目されたからって調子に乗るんじゃないよ!』

「……」

『だが――面白い。良いだろう、その喧嘩買ったよ! 魚人島を手に入れるのは少しの間だけ我慢してやる――精々新世界で足掻きな! 星屑のジョジョ!』

「――言われるまでもない。だが、オレからも一つだけ言いたい事がある」

『ああ?』

 

 ジョットは、電伝虫越しにふんぞり返っているビッグマムに向かって言った。

 

「オレは四皇()()で止まっているテメエに負けるつもりはねぇ! 精々足元掬われないように気を付けな――ビッグマム!」

『……!』

 

 ――こうして、ジョットは新世界入りする前に四皇ビッグマムに向かって宣戦布告。

 彼の言葉を竜宮城で聞いた者たちは度肝を抜かし、ジョット一人だけが強く電伝虫を睨み付けていた。

 

 




ちなみにホーディは隠れてます
時期早々ですし相手も悪いですから、用意周到な彼は手を出さないでしょう
ジンベエが一緒に居るなら尚更です
メアリーも邪王真眼で見つけ出そうとしましたが、何処に居るのか分からず断念。しらほしの抱える秘密を共有して、気持ちを軽くする程度に留めておきました
それと原作ではジンベエが七武海に入って魚人島を縄張りにして貰ってましたが、こちらではある男のせいでビッグマムが美味しいお菓子を求めてこうなりました。

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