とある海賊の奇妙な冒険記   作:カンさん

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主人公日記 二十ページ目+???

 ¥月#日

 

 今日は珍しい……いや、意外な人物とでも言うべきだろうか?

 以前ならば、その力と立場から遭遇したくないと思っていた人間で、しかし今ではもう追って追われる立場でもない……つまり、オレ達とは良く分からない関係であり、しかし因縁のある相手と出会った。

 名をクザン。元海軍大将青雉だ。

 奴は、少し前に赤犬に敗れて海軍を去った。それ以降の足取りを誰も知らなかったが……まさかああして偶然にも遭遇するとは思わなかった。

 赤犬との戦闘で負ったのか、体の所々に火傷の痕があり、足も片方無くなり氷で義足を作っていた。しかし、感じる覇気は昔と変わらず未だに健在。

 だから、オレ達と戦う理由が無くても思わず身構えてしまった。

 

 それと、だ。どうにも青雉の奴、黒ひげと手を組んでいる……らしい。

 らしい、というのはまだそうと決まった訳じゃ無いからだ。ただ、メアリーの質問に反応していたことから恐らく……。

 ただ、奴に頭を垂れている訳ではなく、何か考えのあっての事だというのは何となく察せた。立場が変われば見れる景色が変わる。そう言っていた。

 それに、オレと戦うのはコリゴリだと言っていた。割と本気の口調で。

 

 後、青雉……ではなくクザンから幾つかの情報を買った(メアリーが)。

 先日戦った百獣の海賊団のジャックだが、今でも生きているらしい。やはり仕留め切れていなかったか。メアリーは、連戦で疲れていたから仕方ないと言っていたが――ああいう輩を倒しきれなかったのは、痛手だ。

 ジンベエも同じ考えらしく、神妙な顔をして頷いていた。あの時確認していればと言っているが……同じ海域に留まると、すぐに海軍に捕捉されるからな……。昨日戦った緑牛も、藤虎並みにヤバかったしな。戦闘が長引くと他の大将が来てしまう。海に落とされないように戦うのも疲れる。

 青雉がオレ達の前に現れたのも、緑牛との戦闘を聞いて立ち寄ったらしいし。……新世界で、そんな気軽な行動ができるのはアイツくらいだろう。

 

 そして、次の情報だが……最近ゼファー達と海軍本部の間で大きな衝突があったらしい。

 今は沈静化しているらしいが……ゼファーはオレ達を執拗に追って来ている。しかし、ここ最近はその頻度が下がって来ている。それと何か関係があるのだろうか? メアリーも神妙な顔をしていた。

 

 他にも色々と気になる情報があったが……特に気になったのは黒ひげと金獅子が、妙な動きをしている事。

 黒ひげ陣営ではなく、黒ひげと金獅子が、だ。

 青雉も詳しい情報を知らないようだが――近々アイツらが動くのは確か。そして、それにオレが巻き込まれるのは確実で十分に気をつけろとのこと。

 

 青雉はそれを最後に、去って行った。

 それにしても――かなり厄介な事になっているな。今後もさらに気を付けて行動しないとな。

 

 

 ¥月/日

 

 今日はオルガが活躍していた。

 アシエが作った道具を駆使して、海軍の船を転覆させていた。

 それにしても、あのキック力増強シューズっていうのは凄いな。大人の意識を吹き飛ばす威力があるのだから。ただ、ロギアや体力のあるゾオン相手だと少しキツイかもしれないが。

 アシエも改良しなくては、と呟いてメアリーとまた何か話している。……不安だなぁ。

 

 それと、パシフィスタを一体捕獲した。前々からメアリーが興味あったらしい。アシエとまた何か企んでいるのだろう。

 

 

 ¥月$日

 

 ……ビッグマムの縄張りに入った。いや、誘導されたと言うべきか?

 入った途端に、ビッグマムの幹部――いや、子どもか――が現れた。

 オレを倒して、ショウセイになると言っていた。

 それで、いつも通り倒して投げ飛ばした所――天候が荒れて、無数の艦隊が現れた。

 メアリーは、その光景を見てこう言った。

 

 

 

 ――怒りの軍団、と。

 

 

 ¥月+日

 

 怒りの軍団を撃破したオレ達は――このままビッグマムの所へ殴り込むことにした。

 元々、アイツとは決着を付けるつもりだったのだ。それが今来ただけ、ということ。

 ただ、クルー達の疲労が限界を超えている。シャーロット家の人間だと名乗っていた男の一人を、全員で力を合わせて戦い、見事破って見せたが――その代償も大きい。

 このまま突き進んでも……全滅は確実。

 だが、今更尻尾巻いて逃げるっていうのは……オレ等らしくないよな。

 全員、腹は据わったと言っていた。ジンベエたちタイヨウの海賊団たちも、魚人島のために戦うと言っていた。アシエもオルガもカリーナも。

 唯一心配なのはメアリーだが――いや、これ以上言うのは止めよう。

 

 オレ達は、もう進むしかないのだから。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「――ペロリン。流石は隠者の息子と言うべきか。ルーキーのように甘くはない、と」

 

 怒りの軍団を退けたという情報は、瞬く間に万国に駆け巡った。

 そして、その情報を耳にし感心したように口を開くのはシャーロット家長男にして“キャンディ大臣”ペロスペロー。

 彼は、突き進む船上で静かに笑った。

 言葉とは裏腹に、あまり驚いていない様子だった。部下の海賊たちが口を開く。

 

「でも、奴もこれで終わりですね!」

「何たってペロスペロー様に加えて“豆大臣”ダイフク様、“こんがり大臣”オーブン様や“生クリーム大臣”オペラ様。さらにさらに! “四将星”からはスナック様とクラッカー様!」

「プクククククーーッ! これであの生意気な星屑も終わりですね!」

 

 部下たちの言うように、ジョットに再び派遣された軍隊は先日の“怒りの軍団”よりも戦力を大幅に強化されている。組み込まれたシャーロット家のほとんどは、兄弟姉妹の中でも選りすぐりのエリートであり、実力も懸賞金も化け物クラス。

 怒りの軍団を撃破したと聞いた時は、驚いてビビっていた彼らも、ビッグマム海賊団の大戦力に気を良くして笑っていた。

 それをペロスペローは……。

 

「――“キャンディマン”」

「ぎゃああああああ!?」

「なぁ!? いきなり何をするんですペロスペロー様ァ!?」

 

 何人かをペロペロの実の能力でキャンディで拘束し、そのまま全身を覆う。悲鳴を上げていた部下たちは、そのまま大きく開いていた口の中にキャンディを入れられ溺れていく。

 呼吸ができず、もがく男たちにペロスペローは笑みを浮かべながら……しかし冷たい視線で部下たちを見下ろしていた。

 

「キャンディより甘い考えのバカは、いらねえよペロリン。そうやって油断している役立たずのせいでこれ以上の失態を重ねてみろ――ママに魂全部持ってかれるだろうに」

 

 ――ペロスペローは、ジョットを“敵”として見ていた。

 そしてそれは、この軍隊に組み込まれているシャーロット家の者たちにも当てはまる。

 差し向けた刺客を次々と倒し、カイドウの所のジャックを退け、怒りの軍団を踏み越えてビッグマムの元へ行く人間を――果たして、ルーキーと侮れるだろうか。

 ビッグマムは笑っていたが……上の兄弟姉妹たちは、あの日の事を思い出していた。

 ロジャーがビッグマムを出し抜き、ラフテルに行き――そして海賊王になった日の事を。

 忘れてはならない。ビッグマムを出し抜いたあの船には――ジョン・スターの人間が居り、そしてその血筋が再び此処にやって来たのだから。

 

(寿命を抜かれるのは、ゴメンだ……ペロリン)

 

 幾つかの窒息死体を踏み越え、ペロスペローはギロリと船上に居る部下たちを見る。

 

「ルーキーと侮るな! 四皇を相手にしていると思え! キャンディのように甘い奴は、即死刑だ!」

『は!!』

 

 おそらく、他の船でもシャーロット家の者たちが部下たちに念押ししているだろう。

 それだけ、今回起きている事件は深刻だ。

 ビッグマムは、海賊王へと近づく為の鍵が自分からやって来たと笑っているが――あの頂上戦争を見たペロスペローは、即甘い考えを捨てた。

 さらに――。

 

『ぺロス兄。星屑をママの所に行かせたらいけねえ。とんでもない事が起きる予感がする……!』

(未来を視た訳じゃないようだが……用心深いあの(カタクリ)の事だ。素直に従った方が良い)

 

「――敵影、確認!」

 

 出発する直前に、カタクリの言葉を思い出していたペロスペローの耳に、部下からの声が響く。

 バッと顔を上げて、船上から遠くへと目を向ける。

 クルセイダー海賊団は、空を飛ぶ船で航海している。ゆえに、空に視線を向ければすぐに分かると思っていた。

 しかし、ペロスペローの目に、船の影は見えなかった。だが、敵の影は良く見えた。

 

「――な」

 

 ジョットは、居た。

 正確には、ジョットだけしか居なかった。

 空を蹴って、真っすぐこちらに向かっているジョットだけが居り、辺りには船の影も無い。クルセイダー海賊団が乗っているレッドイーグル号も、傘下のタイヨウの海賊団も。何処にもない。

 どういう事だと、ペロスペローが眉間に皺を寄せると同時にジョットが船に降り立った。ペロスペローが乗る船の……彼の目の前に。

 

「テメエが、この軍隊の頭か?」

「ペロリン。初めましてだなジョン・スター・D・ジョット。いきなりで悪いが、質問させて貰おう――君たちのクルーは何処に行った?」

「――敵に教えると思うか?」

 

 それだけを言って、ジョットはペロスペローに殴り掛かり……ペロスペローのキャンディウォールに阻まれる。ビキリと罅が入る壁を見ながら、ペロスペローは思考を切り替える。

 

「全く――あまり私たちを舐めないで欲しい」

 

 囮であろうジョットを倒すために。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 クルセイダー海賊団は、四つのチームに別れた。

 一つ目は、タイヨウの海賊団の逃走経路を確保する為のAチーム。船をランのシャボンコーティングで潜水させ、魚人の水中でも自由に活動できる力を最大に活かし、ビッグマム海賊団の情報確保手段であるウミウシの無力化を図る為でもある。このウミウシをどうにかしなければ、ビッグマム海賊団からの追撃を逃れるのは厳しいとメアリーの邪王真眼(未来知識)が言い、タイヨウの海賊団が対処する事になった。また、ビッグマム海賊団の実子のほとんどは能力者なため、逃亡するのに海中は適しているという側面もある。

 

「アラディン! おそらくあれがウミウシだ!」

「ああ。しばらく眠ってもらおう……!」

 

 

 二つ目は、ジョットを海賊王にする為に必要不可欠であるロード・ポーネグリフを奪取するBチーム。つまり、ビッグマムの根城であるホールケーキ(シャトー)に侵入し、ビッグマムや強力な力を持つシャーロット家の人間の目を欺き、宝物庫に辿り着くという最も過酷で危険な任務を持つチームだ。メンバーはメアリー、ジンベエ、カリーナだ。メアリーのスカスカで障害物をすり抜け、カリーナの泥棒としての技術を駆使して盗み出し、ジンベエがその護衛に当たる。少数精鋭による電撃作戦が要であり、彼女たちの働き次第でクルセイダー海賊団はビッグマムに勝つ事ができる。

 

「ジンベエ、カリーナ。絶対にロード・ポーネグリフを手に入れるよ!」

「ウシシ! 泥棒の血が騒ぐね!」

「……ああ」

 

 三つ目はアーサーやラン、アシエ、オルガ達クルセイダー海賊団のCチーム。彼らは、アラディン達Aチームとメアリー達Bチームが仕事をしやすくする為の囮だ。空を飛べる船で派手に暴れまわる事で、ホールケーキアイランドの戦力を分散するのが仕事。メアリー達が逃げた後は、ランのシャボンコーディングで水中に逃げアラディン達と合流して逃げる予定だ。現在はアーサーの能力で音を消して、万国の空高くを飛んでホールケーキアイランドに向かっている。

 

「――お前ら、気合入れていくぞ!」

「アーサーさん。能力で声が聞こえません」

 

 そして、最後のDチーム――というよりもジョット。

 彼もまた囮であり――クルセイダー海賊団の主戦力。

 ジョットは、突き進むだけだ。魚人島での喧嘩を正式にビッグマムに売るために、真正面から、向かい来る敵を薙ぎ払って。

 

『オオオオオオオーー!!』

「ビッグマムを出せ!! 用があるのは、アイツだけだ……!!」

 

 拳を叩き込み、スタープラチナが雄叫びを上げ、ジョットの鋭い眼光が敵を威圧する。

 彼の足元にはたくさんのチェス戎兵と海賊たちが倒れ伏していた。

 ジョットの拳によって半壊した船の中、ペロスペローはドクドクと流れ出る血を抑えながら思わず呟いた。

 

「――化け物め……!」

 

 スタープラチナの雄叫びが轟き――船に衝撃が走った。

 

 そして――。

 

「ブリュレ、ミラーワールドを使う」

「何処に行く気だい、カタクリ兄さん?」

「決まっている――星屑の所だ」

 

 ――10億越えの男も動き出した。

 

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