職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌 作:地雷一等兵
思い付きで書いた作品です。
あまり期待はしないでください。
では本編をどうぞ↓
ボーダーB級部隊のトップスリー部隊はどこかと聞かれれば、隊員達は皆こう答える。
“二宮、影浦、鷹原だ”と。
ではそれぞれどんな部隊なのかと問われればこんな答えが返ってくる。
“スーツ、攻撃偏重、色物部隊”と。
ではさらに鷹原隊のメンバーはどんな奴らだと聞けば、どんな答えが返ってくるだろうか、答えはこれだ。
「不死身の社畜隊長」
「功名餓鬼なネコミミ」
「パルクール狙撃兵」
「オペ子ちゃんは天使」
「一人ゲリラ戦」
「悪鬼羅刹道化師」
「移動砲台」
「唯一の清涼剤」
変わった人間の多いボーダーにおいて色物部隊と称される彼らはどんな人間なのだろうか。
この話はそんな変人達の集う鷹原隊の日常とボーダー任務の日々を描いた物語である。
「ヒャッハー手柄だにゃ~!!」
「あっ!ネコ!テメェ、そのモールモッドはオレの獲物──」
「さっさと狩らない方が悪いにゃ!」
わらわらとゲートの中から沸いてでるトリオン兵の群れの中で、猫耳フードを被った少女が駆け抜ける。
そして彼女の駆けた場所では大量のトリオン兵が弱点のコアからトリオンを吹き出し活動を止める。
『射線通りました、これより狙撃を開始します。』
手短な通信からすぐ後にライフルによる狙撃が始まった。その狙撃は一発ごとに角度を変えていき、次々とトリオン兵を葬る。
たった3人のこの部隊は何倍もの数のトリオン兵を紙でも切るような感覚でしばき倒していく。
「ひーふーみー……、にゃはは、結構稼げたにゃ~。これも隊長達の援護のお陰だにゃ。」
「おう、そうかい。」
現れたトリオン兵を片っ端から千切っては投げ、切り刻み、爆発させ、狙撃していった彼らは任務時間を終え次の隊員と交代すると、本部にある隊室で談笑を始めていた。
「ワリィな慧、いつもお前の指示が通らなくてよ。」
「大丈夫ですって。澪さんもランク戦の時はある程度指示は聞いてくれますし、慣れましたから。」
あははと笑って隊長の謝罪を受け流すのは誰もやりたがらなかった鷹原隊のオペレーターを二つ返事で引き受けた二条慧(ニジョウ ケイ)だ。
そんな彼女はお茶請けのどら焼きをもぐもぐと頬張っている。
「にゃ、そう言えば鋼にゃん達とランク戦の約束があったにゃ!」
思い出したように席を立ったネコミミは急いで支度をして隊室を出ていった。
その様子を見送ったスナイパーの蓮川がゆっくりと席を立つ。
「私も少し狙撃し足りないので、ちょっと模擬戦してきます。」
「おう、行ってこい。」
さっきまで散々っぱら狙撃してた癖に、などとは言わない。そんな事を言えば次の任務で不運な流れ弾が飛んで来るのが明白だからだ。
因みに言うと、鈴鳴第一の別役隊員が蓮川のノートにお茶を溢してダメにしてしまった時は、合同任務で不幸な流れ弾に数発遭遇したことがある。
「にゃ~にゃにゃ~にゃにゃ~。」
鷹原隊の切り込み隊長ことアタッカーの猫葉澪(ネコバ ミオ)はご機嫌に鼻唄を歌いながらとてとてと廊下を歩く。小学生にも見える小柄な体と、袖の余ったネコミミフード付きパーカーはその行動をより一層微笑ましく見せる。
しかしそんな彼女の表情は見えない。お面で顔を隠しているからだ。
これは彼女がボーダーに入隊した時から着けているもので、彼女の素顔を知るのは極々一部の人間だけである。
一説には昔の大規模進攻の時に負った傷があるからだとか、単に顔を見せたくないからとか、素顔を見せた相手と結婚せねばならない風習の村出身だとか、色々な噂が囁かれている。
「来たか。」
「待たせたにゃ~。防衛任務の後にまったりしてたらついついにゃ…。」
ブースにたどり着いたら彼女を迎えるのはボーダーNo.4アタッカーである村上鋼である。
彼はB級部隊の隊長である荒船を通じて知り合った仲で、今ではプライベートでも親交があるほど仲が良い。
「それじゃあ早速始めるにゃ!」
元気一番に叫ぶと、猫葉と村上はそれぞれ隣の部屋に入っていった。
「……。」
トリオン体のまま、無言で廊下を歩くのは鷹原隊のスナイパー、蓮川蓮(ハスカワ レン)である。
鷹原隊の一員と言ってもまだ鷹原隊入隊から3ヶ月という新人、C級隊員の時に才能を見込んだ鷹原によってスカウトされB級昇格と同時に入隊を果たしたのだ。
まだ高校1年生という華の女子高生で、趣味はパルクールとボルダリングというアクティブな女の子。将来の夢はボーダーに永久就職という隊長の鷹原や猫葉と同じ道を歩もうとしている。
「お、蓮川ちゃん!」
「北添さん、どうもご無沙汰してます。」
そんな彼女に話しかけたのはB級2位部隊の影浦隊ガンナーである北添尋だ。ふくよかで優しい彼はある種年下隊員にとって相談できるお兄さん的なポジションにある。
「どうしたの? こっちの方で見かけるなんて珍しいね。」
「いえ、防衛任務で撃ち足りなかったので模擬戦しに来ました。」
「あはは、蓮川ちゃんらしいね。それならガンナーの人とかが今日はいっぱいいるから満足できるんじゃないかな?」
そう言って北添がブースの方を指差すとそこには確かに諏訪隊の諏訪と堤や香取隊の若村などが見える。
その光景に蓮川はニッと笑ってそこに向けて足を進める。
「ふ~…。さてと書類を片付けますか…。」
そう呟いて隊室の一角に置かれているデスクに座るのはB級3位部隊の鷹原隊を率いる鷹原啓(タカハラ ヒロシ)、21歳である。
自己紹介の定型文は「鷹原啓、21歳、職業はボーダー隊員です」だ。高校卒業後、進学することなくボーダー隊員として社畜の毎日を送っている。
そんな彼の1日を簡単に表すと、「朝起きて牛乳のんで朝メシ食って牛乳のんで体操して防衛任務に出て昼メシ食って牛乳のんで防衛任務に出て晩メシ食って牛乳のんで防衛任務に出てシャワー浴びて寝る」というものだ。
それを知る者達はこう呼ぶ、「社畜を越えた社畜」と。
しかし彼の凄い所はその常軌を逸した出動回数だけではない。
彼の逸話に華を添えるエピソードとして、彼はランク戦においてベイルアウトしたことがない。正確に言うとベイルアウトしたことは何度かあるのだが、その原因は損傷を受けて長期間戦ったことによるトリオン漏出過多によるものである。その一方で、トリオン供給機関や伝達機関をやられるといった、一撃でのベイルアウト、言い換えるならば即死の一撃を一度たりとも受けたことがないのである。
誰が呼んだかいつの間に定着した彼の渾名が「不死身の社畜隊長」である。
「ニャハハハハハ!!その首貰い受けるにゃ!」
余っている袖を貫通するように飛び出た3本のスコーピオンがブンッと勢いよく振られる。しかし村上もそれには慣れているのかレイガストで受け止めて冷静にもう片方の手で握っている弧月で切り返す。
その切り返しを身を翻して避けた猫葉はグラスホッパーを起動して屋根の上に退避する。
彼女の戦闘体は普段着と同じで、ネコミミフード付きの隊服で袖も余ってぶらぶらしている。
しかし、その袖の手があるであろう場所には3つの穴が空いており、そこから爪のようにスコーピオンが伸びている。
「相変わらず冷静だにゃ、もっと奇襲に慌ててくれてもいいんにゃよ?」
「悪いな、お前の手の内は全部知ってるから。」
「知られちゃってたにゃ!」
オーバーリアクションで反応する猫葉に村上は思わず笑いそうになる。しかし、それもまた猫葉の釣りかもと思いすぐに気を引き締め直す。
「にゃ~、鋼にゃんとの勝負はやっぱり楽しいにゃ!」
そう嬉しそうに呟くと猫葉はぴょんと屋根の上から飛び降りるとグラスホッパーを起動してぐるぐると村上の周囲を飛び回る。
「ニャハハハハハ!見切れるかにゃ!?」
「ピンボールか…。流石のキレだな。」
体ではなく目だけで猫葉の動きを追う村上はぐっと腰を落として力を入れる。
そして一瞬、猫葉が仕掛ける振りをして反転しようとした瞬間に村上は大きく踏み込んで猫葉の体を両断した。
「ふにゃ~…、5対5、また勝ち越せなかったにゃ…。」
項垂れて個室から出てきた猫葉は駄々っ子のようにぐるぐると両腕を回す。
そんな猫葉の頭にポンと優しく手が置かれた。
「むしろ、鋼に負け越さないお前がすげぇよ。」
「にゃ~、荒ふにゃん~。」
声の主は荒船隊の隊長にして、村上に剣を教えた人物である荒船であった。
荒船はワシワシとフードの上から乱雑に猫葉の頭を撫でる。
そんな事をしていると猫葉が出てきた部屋の隣の部屋から村上が出てきた。
「! 荒船、こっちに来てたのか。」
「まぁな、お前と猫葉の試合があるって風の噂で聞いてよ。」
荒船を見つけた村上がそのまま歩み寄る。
会話をしながらも荒船は猫葉を撫でることを止めない。
「にゃ~、荒ふにゃん、折角だから模擬戦しないかにゃ?」
村上と荒船の会話が暫くして落ち着いた頃、そう言って猫葉が切り出した。その言葉を聞いた荒船は口の端を少しだけつり上げる。
「良いぜ、久々にお前をぶった斬ってやる。」
「にゃにゃ~、そう来なきゃだにゃ!」
アッハッハと高笑いしながら二人はとなり同士の個室に入っていった。
その後ろ姿を村上は見届けて近くのソファに座るのであった。
「ち、どこに行きやがった!?」
イラついた口調で叫びながら諏訪は周りを見渡す。しかし幾ら見渡せども視界には建物と、街路樹しか映らない。
確かに相手はどこかに存在するはずなのに、影も形も現さないその状況にショットガンを握る手に思わず力が入る。
時折ガサガサと街路樹の葉が音を立てればそちらを振り向き、時には建物の影に隠れる。
そして、場が動いた。
「っ!来やがったな!」
諏訪が見たのは屋根の上から放たれる大量のトリオンキューブだった。
それを見た諏訪は恐らく着弾するであろう場所、現在地から急いで後退する。着弾したトリオンキューブは周囲を巻き込んで爆発し、瓦礫の山を作り上げる。
爆撃され、既に居場所が割れている事を悟った諏訪はバックワームを解除してメテオラが飛んできた場所へと駆ける。
その先には周りよりもやや高い建物、なるほどスナイパーが陣取る訳だと諏訪は納得する。
「はっ、吹っ飛ばしてやる!」
諏訪は走りながら空いている片方の手にもう一つショットガンを取り出した。
が、その諏訪の足首から下を右から飛んできたライフルの一撃が吹き飛ばす。
全力で走っている最中で片足を吹き飛ばされた諏訪は勢いのままに転ぶも咄嗟の判断で受け身を取り、物陰に入る。
「ちっ! 移動砲台め、足が速えなぁ、こんちくしょう! さっさと移動しねぇ──!?」
悪態を吐きながら射線から外れようとした諏訪の胸を正面から飛来したアイビスの弾丸が撃ち抜き、ベイルアウトさせる。
「チキショー!またかよ!!」
「またまた勝たせていただきました!」
模擬戦を終えると部屋から出てきた諏訪がワシワシと自分の髪を乱雑に掻く。その様子を隊員の堤が苦笑いしながら見守っている。
諏訪から少し遅れて部屋から出てきた蓮川はほくほく顔で、とても満たされていた。
「めちゃめちゃ良い笑顔しやがって、この移動砲台が…。」
「生駒隊の隠岐みたいな高機動スナイパー、か…。」
「違えぞ、若村。こいつは隠岐みてぇに移動してから撃ってる訳じゃねぇ。グラスホッパーで移動しながら狙撃してくる変態だ。」
「なー! 年若い華の女子高生に変態とは酷いですよ、諏訪さん!」
諏訪の言い分にむぅと拗ねたような顔を浮かべて蓮川は抗議する。
蓮川蓮、B級昇格し、鷹原隊に入隊したばかりのニューフェイス。しかしながらその実態はA級スナイパーにも迫る変態的な技量と、グラスホッパー・テレポーターを活かした機動力を兼ね備える変態スナイパーである。
狙撃の心得を木崎レイジに教わり、グラスホッパーの使い方を緑川と猫葉から教わった。
そして彼女の特性を後押ししたのが趣味のパルクールとボルダリングである。生身でもとんでもない身体能力を誇る彼女はトリオン体になることで更なる地形踏破能力を手に入れたのだ。
そんな彼女の渾名は誰が付けたか“パルクール狙撃兵”である。
「不死身の社畜隊長」、「功名餓鬼なネコミミ」、「パルクール狙撃兵」、そんな色物な3人が集まった鷹原隊。
彼らの未来がどうなるのか、それはあのエリート隊員にさえも分からない。
何か感想がありましたらよろしくお願いします。
作者が小躍りして喜びます。
…続く、のかなぁ…?