職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌   作:地雷一等兵

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前回の話はだいぶ前の投稿になってますね。
申しわけありません。

では本編をどうぞ↓



第10話 迎え撃つ準備

 

 

「あぁ…寒い…。」

 

12月も半ばを過ぎそろそろ年末になろうかという時期、寒さもいよいよ本格化してきた頃のことである。

雪がちらつく三門市を鷹原は静かに歩いていた。

こんな時は熱燗で一杯……などという事を考えながら鷹原は真っ直ぐにボーダー本部を目指す。なぜか?それは呼び出しを食らったからだ。

別に鷹原は書類の締め切りを破ったり、城戸司令の車を叩き割ったり、水の上を走ったりもしていない。後者二つをやらかしたのはノーマルトリガー最強の男、前者は乗り物に弱いA級隊長だ。

吐いた息も白く染まる中、ぎゅっぎゅと足元の雪が固まる音を聞きながらようやく鷹原は本部に到着した。

ついでに自分の隊室に顔を出せばコタツムリと化した猫葉が炬燵から顔だけ出して眠っている。

近くにミカンの皮が日本列島の形に置かれていることから、彼女がかなり暇であったことが伺えた。

 

そしてそんな隊室を後にして向かうのは会議室だ。

ここ最近、様々なゴタゴタがあったものの、一介の社畜に過ぎない彼は噂や憶測でしか話を聞くことができず、その裏にある真実はまるで知らない。

強いて言えばA級トップが帰還してきたら迅がS級からA級になったということくらいだ。

迅がA級になったことでまた試合ができると猫葉や太刀川は万歳しながらよろこんでいたことが周囲の記憶に新しい。

そしてこの前、迅、太刀川、猫葉の3人が主体になって四つ巴の混成チーム戦を行い、ボーダー内が大きく盛り上がったこともあった。もちろんそれには鷹原も参加している。

ボーダーA級、B級のオールスターが集ったそのチーム戦は今でも話題に上る。

 

さて、そんな話題は今は脇に置いておくとして鷹原が会議室の扉を開けて入るとそこにはボーダーの上層部に加え、東春秋、風間、太刀川、冬島と言ったボーダーを代表する隊員が揃っていた。

 

「自分が一番最後……ですか?」

 

「いや、まだ来てないのがいるよ。」

 

負い目を感じかけていた鷹原に東が優しく声を掛ける。

こういう気配りが人気の秘訣なんだとか。

そうして鷹原が席に着くとまたガチャリと会議室の扉が開けられ、数人の人が入ってきた。

 

「どーも、連れてきましたよ。」

 

「遅れました。」

 

入ってきたのは迅と三輪に米屋、そしてカピバラに乗った子供と、あの時鷹原に質問した白髪の少年だった。

前3人はともかく、その後ろに着いてきたチビッ子二人プラスカピバラの登場に東たちは疑問を抱く。

いやカピバラの方は林藤支部長の親戚であるから問題は、いや問題はあるのだが、それよりも白髪の方だ。彼と東は面識がないためどうも首を傾げてしまう。

 

「……本部長、この少年は?」

 

「彼の名前は空閑遊真、近界民(ネイバー)だ。」

 

「……は……?!」

 

忍田本部長の言葉に東と鷹原が驚愕の声を上げる。しかし他の面々が何も動じていないことから知らないのは自分達だけだと二人は自分を落ち着けた。

動揺を押さえ込んだ二人を見て忍田本部長は話を続ける。

 

「彼には近界民の立場から迅の予知した大規模侵攻防衛のアドバイザーとなってもらう。」

 

「蛇の道は蛇……と。」

 

「そうだ。」

 

東の言葉に忍田はコクりと頷いて遊真の方を見やる。

するとさっきまでいなかった小さな黒い炊飯器が流暢な言葉を操りだした。

 

「遊真のお目付け役のレプリカだ。どうぞよろしく。」

 

太刀川たちもその存在は知らなかったようで初めて見る自立型トリオン兵の存在に目を点にしていた。

しかしそれにも構わずレプリカは話を進めていく。この世界とどの世界が近いのか、そしてこの前現れた新型を使うのはどこの国なのか、事細かに説明していく。

その話から細かな特徴を一字一句逃さず鷹原はノートに書き込んでいった。

そして話題は佳境に入る。それは侵攻する可能性のある国がこちらの世界から離れるまでの間に敷く、防衛体制のことだ。

 

「基本的にはいつも通り……、しかないのでは?」

 

「その心は?」

 

鷹原が挙手して意見を述べると太刀川が面白そうな視線を向けて続きを求める。

 

「あー、アレだ。今から条件に合致する惑星国家が離れていくまでにだいぶ日にちがあるだろ? その間ずっと警戒してたらへばっちまうよ。」

 

鷹原の主張に太刀川は“たしかにそうだ。”と頷き、次の言葉を待つ。

他の面々も鷹原の主張には賛同しているようで口を挟まない。

 

「だからこの大規模侵攻を教えるのは一部の隊員、A級全員とB級の一部隊員にして箝口令を敷きましょう。」

 

「へぇ、教えない……か。」

 

「あぁ、教えちまうと変に身構えたりする奴も出るだろうし。」

 

「そりゃそうだ。今までと規模の違う数が攻めて来るんだ。身構えない奴は小数だ。」

 

淡々と述べる鷹原の論に太刀川は相づちを打ちながら口を挟む。

タイミングよく挟まれるそれに鷹原はすらすらと言葉を紡いでいく。そうやって最後まで結論に辿り着いた鷹原が周りを見渡して意見を述べると求めると先ずは東と忍田が賛同の言葉を口にした。

 

「確かにB級まで運用するならそれが一番だろう。」

 

「その点で賛成だ。でも予備戦力をほぼなくすって点には疑問があるな。どうしてだ?」

 

「迅が言うには規模はかなりデカいらしい。今まで何回かあった中規模侵攻よりも、ね。その状態で生駒隊、王子隊、影浦隊、二宮隊を遊ばせるのは正直キツいと思います。」

 

「そうは言っても万が一があるのでは……?」

 

鷹原の意見に根付が口を挟む。しかしその言葉に鷹原は首を横に振って続ける。

 

「始めから全力でことに当たらなければと、自分はそう思います。相手は数でこちらを上回る、だから処理を誤れば被害は一気に増えるはずです。」

 

「なるほどね、出て来た端から叩っ切れば安全で簡単ってわけだ。」

 

根付の言葉を否定する鷹原の発言に“ほほう”と楽しげな笑みを浮かべた太刀川が賛同する意見を述べる。

その太刀川の脳筋的発言に鷹原はニュアンスは間違ってないと言いたげに頷いた。

戦闘狂(バトルジャンキー)な太刀川の言葉であるが、それだけに分かりやすい。

太刀川の賛同、それに続く形で風間と冬島も賛成し場は鷹原の全力防衛案を採用する流れとなった。

 

そうやって大まかな案の枠が完成すれば次は枠の中、細かな部分を詰めていく。

B級の誰に伝えて、誰に伝えないのか。警戒期間の間のシフトはどうするのか。C級の扱いはどうするのか。

様々な事が話し合われる。

 

会議が始まってから数時間、たっぷりも話し合われた内容はとても濃く、実のあるものになった。

そうして完成した防衛案を早速実行に移すために上層部はそれぞれの仕事に取りかかるのだった。

 

 

 






ではまた次回でお会いしましょうノシ



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