職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌 作:地雷一等兵
第2話が出来ました。
これからもこの文字数を維持出来ればいいんですが…。
では本編をどうぞ↓
──グーテンモーゲーン グーテンモーゲーン グーテ──
「……朝、か…。」
目覚まし時計を止めた鷹原はそのまま布団から起き上がるとごりごりと首を鳴らし、冷蔵庫を開ける。
そして中に入っていた牛乳瓶の中味を一気に飲み干した。
「さて、今日も1日働きますか。」
周りから社畜と呼ばれる鷹原の朝は早い。
朝日が顔を出すかどうかという時間に起きてまず牛乳を一瓶空ける。
それからいつもの朝食を摂る。もちろん飲み物は牛乳一瓶だ。
起きてから朝食までの間で既に牛乳二瓶を空けている。
そして二瓶目の牛乳を飲み干した後は体操という名のハードなガチトレーニングを行い、ランニングがてら走ってボーダー本部に向かう。
「おはよーさん。」
「おはようだにゃ!」
隊室では既にいた猫葉がもきゅもきゅとリンゴサラダを頬張っていた。
一口大にカットされたリンゴをフォークで刺して口に運んでいる。もちろんその時もお面は外していない。
食べる時にはお面を口元から離して顎とお面の間に出来た隙間からフォークを入れてリンゴを食べていく。
もちろん年中袖を余らせた服を来ている猫葉に料理が出来るわけはない。
鷹原が隊室に入ってから少しして、奥に備えられているキッチンから慧が顔を出した。
学校の制服の上からシンプルなエプロンを巻いた彼女は鷹原の顔を見ると“おはようございます”と挨拶してまたキッチンに引っ込んでいく。
そして暫くしてからトタタタとエプロンを外した慧が駆ける。
「すいません、学校に行ってきます!」
「おう、行ってこい。」
「また放課後に会おうにゃ~。」
慌てた様子で隊室から出ていった慧を見送った二人はふぅと一息入れる。
そして猫葉が残りのリンゴサラダを食べ終えて立ち上がる。
「にゃにゃ~、ごちそうさまにゃ。」
「うっし、出撃だ。」
「にゃ~!」
腹ごしらえもおわった二人は意気揚々と仕事場まで歩いて行った。
「待たせたな。」
「にゃにゃ~!」
警戒区域の一角に着いた二人は既にそこで待機していた人物達に声を掛ける。
「来た来た!」
「お疲れさまです!」
そこにいたのはB級部隊、柿崎隊の3人であった。
挨拶を交わしていると柿崎隊のオペレーターの宇井からも通信が入る。
『おはようございます、鷹原さん、猫葉さん。』
「あい、おはよう。ごめんね宇井ちゃん、うちのオペレートまで任せちゃって。」
『大丈夫ですよ、慧さんの分まで任せてください。』
通信越しに笑う宇井に鷹原は“ええ子やぁ”と感心の声を漏らした。
そも、なぜこの場に鷹原隊の蓮川とオペレーターの慧が不在かと言うと、それが鷹原隊の方針だからという理由だ。
多くのボーダーの隊員達は学生であり、学校に通いながらボーダー隊員としての業務を行う。基本的に彼らはボーダー提携学校に通い、防衛任務があるなら学校を早退・公欠、遅刻が認められる。
がしかし、社畜と功名餓鬼はそれを良しとしなかった。
“学生なら学生としての務めを果たしなさい。それに学生の時にしか得られない物もあるんだから“とまだ学生の蓮川と慧に言い渡し、平日朝から昼までの防衛任務に基本的には参加させないようにしたのだ。もちろん、非常事態やランク戦などの例外はあるが。
故に鷹原隊のJK二人組の防衛任務は放課後の夕方と土日に限られている。
そのため、オペレーター不在の平日昼間の防衛任務の際はこうして合同で任務にあたる部隊のオペレーターに頼むことになるのである。
『…来ます。誘導誤差0.76!』
暫しの雑談を交わしていると、オペレーターの宇井がアラートを鳴らす。
するとその直後に黒い穴が空間に開き、その中から大量のトリオン兵が現れる。
「来たにゃ来たにゃ!手柄だにゃ!!」
「モールモッド、バムスターの存在を確認!交戦を開始する。」
トリオン兵を視認した鷹原と猫葉は即座に戦闘態勢に入る。鷹原はアイビスを取り出す。そして猫葉は左右の袖から猫の爪のようにそれぞれ3本のブレードが飛び出した。
「柿崎!そっちは任せた!」
「オッケーです!」
鷹原隊と柿崎隊はそれぞれトリオン兵の群れにあたる為に左右に別れる。
「ネコ!フォローはしてやるから好きに突っ込め!」
「言われなくてもだにゃ!」
アイビスでバムスターの頭を吹っ飛ばしながら鷹原は指示を出す。その指示に猫葉はいつものように笑いながらモールモッドの群れに突っ込んでいく。
「ニャハッ!にゃっはらにゃ~!」
目の前にいるモールモッドが爪を振り下ろすと、猫葉はそれをひらりと避け、左の爪スコーピオンでモールモッドの眼に3本の傷を与えて活動を停止させ、返す刀で後ろにいたモールモッドを右手のブレードで縦に切り裂いた。
そして着地と同時にその切り裂いたモールモッドを踏み台にして飛び込み、飛び込み先にいたモールモッドを切り裂く。
「ニャッハッハ! その首置いてくにゃ!」
『…モールモッドに、首…?』
通信で猫葉の言葉を聞いていた宇井が首を傾げた。
「討ち漏らしか?らしくねぇぞ。」
猫葉よりも後ろでバムスターにアイビスを撃ち込んでいた鷹原のもとにモールモッドが駆け、明らかにその爪は鷹原を狙っていた。
しかし、その爪は鷹原に届かない。
モールモッドが鷹原に襲い掛かる直前に地面から迫り出してその体をかち上げ、自由を奪う。
そして鷹原はすかさず剥き出しの眼にアイビスの銃口を突き付ける。
「長い銃身にはこういう使い道もあるんだぜ!」
言うが早いか鷹原はアイビスの引き鉄を引いて止めを刺した。
そして衝撃でモールモッドの体がずり落ちるとエスクードの上に乗って砲撃を再開する。
『反応なし、終わりました。』
付近に沸いて出るトリオン兵を一掃すると宇井がそう通達した。
すると鷹原は武装を解除して近くの瓦礫に座り込んだ。
「おけ、じゃあ回収班を呼んでくれ。それと、今回はありがとう、オレらのオペレートは誰もやりたがらないからさぁ。」
『あはは、確かに大変でしたけど…、まぁ、嫌じゃないですよ。』
自虐気味に呟く鷹原の言葉に宇井は小さく笑いながら返す。その最中、猫葉は柿崎の背中に乗ったり、巴の背中に抱きついたりしていた。
「ニャハハハハハ、ザキさんの背中は落ち着くにゃ~。」
「お、おい、降りろ!」
「じゃあ、コタにゃんの背中で我慢するにゃ!」
「うわっ、ちょっと猫葉センパイ!?」
柿崎に注意された猫葉はそのままピョンと巴の背中に跳び移る。
跳び移られた巴は──猫葉が軽いことと、巴がトリオン体であるために体勢を崩すことはないが──その隊服に埋もれていた小山を押し当てられて軽く戸惑っていた。
ボーダー隊員と言ってもやはり男の子である。色々と巴の思春期少年のアレがアレしてしまいそうになる直前に鷹原が猫葉の首根っこを掴んで引き剥がす。
「さっさと帰るぞ。まだ午後の防衛任務が残ってんだ。」
「そうだったにゃ~。お昼ご飯は何にしようかにゃ~。」
首根っこを捕まれてぷらーんぷらんしながら連れてかれていく猫葉とそれを持っていく鷹原達を見送った柿崎隊の巴と照屋は呆気にとられていた。
「…本職は防衛任務だって公言するだけありますね、やっぱり…。チームランク戦とはまた、違ったプレッシャーというか…。」
「………。」
照屋の感想に“まぁそうだな”と曖昧に柿崎は返す。
そうして帰路に着く柿崎隊であったが、その日巴は終始無言であった。
午前の鷹原隊の戦果は実に柿崎隊の2倍であったという。
「いただきます。」
「いただきますにゃ。」
ところ変わってボーダー本部の食堂では鷹原と猫葉が昼食を摂っていた。
鷹原の選んだのは日替り定食、今日は生姜焼きのようだ。もちろんその横には牛乳瓶。当たり前のように置かれている。これで本日3瓶目である。
猫葉チョイスは焼き魚定食である。余り袖で器用に箸を握り、細かな小骨もしっかり取り除いて食べていく。もちろんお面は着けたままだ。
「ふにゃ!」
ご飯の最中、猫葉が何かを察知したかのように跳ねてテーブルの下に隠れた。
すると暫くして加古隊隊長の加古望が鷹原達のテーブルに来た。
「どうも鷹原さん。澪ちゃんを探してるんですけど。」
相も変わらずセレブ感溢れるオーラを放つ彼女の質問にテーブル下の猫葉はビクビク震える。
「どしたの加古ちゃん。ネコならいないよ。」
「そう…、新しい炒飯のレシピが思い浮かんだから試食してもらおうと思ってたのに…。」
「そ、そうか…。今さっき堤を見掛けたから、そっちに行ったらどうだ?」
「そうですね。ありがとうございました。お食事中お邪魔してごめんない。それじゃまた任務の時に。」
モデルのように整った体と綺麗な長髪を翻して加古は去っていく。鷹原はこれから犠牲になるであろう堤に心の中で合掌しつつ、加古の背中を見送った。
そして完全に加古が見えなくなったことを確認した鷹原が足元を爪先で軽く2回叩いた。
「…もう行ったぞ。」
「ふにゃ、助かったにゃ…。」
震える声でお礼を述べながら猫葉はテーブルの下から這い出てくる。
猫葉はかつて加古望の創作炒飯の外れレシピ、通称“加古炒飯”の餌食となった一人である。因みにその時のレシピは「イカ刺しイチゴジャム炒飯」である。
それ以来猫葉は加古の気配に対して敏感であり、特に新しい炒飯を思い付いた時の気配が分かるらしく、その反応は戦闘時と同等かそれ以上の反応を見せるようになった。
曰く、「死の気配が近付いてくるにゃ」らしい。
『昼間いなかった分はちゃんと取り返します!』
「同じくです!」
昼間の任務もしっかりこなし、今は夕方…どちらかというと晩に近い時間帯。学生組の蓮川と慧が合流した鷹原隊はまたもや防衛任務に出ていた。
鷹原と猫葉は今日3度目の防衛任務である。
今回も同じように開いたゲートに突っ込んではトリオン兵をフルボッコにしていく。
「ネコ!右に流れたモールモッド全部お前に任せる! 蓮、お前は奥のバムスターの群れをやれ。オレはバンダーをやる!」
「了解にゃ!」
「了解です!」
鷹原の指示によって3人はその場から急いで行動を開始する。
猫葉はいつものように左右から爪スコーピオンを生やしモールモッドの群れの中を駆け抜けていく。
そして彼女の通った後では複数のモールモッド達が眼からトリオンを吹き出して活動を止める。
「決めます!」
グラスホッパーを巧みに駆使して高度を保ちながらバムスターの装甲を撃ち抜いて眼に止めを刺していた蓮川は残りが1体であることを確認すると、イーグレットをしまう。
そしてその残りの1体に視線を向けた次の瞬間、数十メートルは離れていた蓮川とバムスターの距離はなくなっていた。
「そこです!」
蓮川が右手に握ったスコーピオンでバムスターの眼を切り裂いた。
バムスターは切り裂かれた傷から夥しい量のトリオンを噴出し、その巨体を崩した。
「蓮ナーイス!」
横目で蓮川の行動を見守っていた鷹原が最後の1体に止めを刺した。
周りにはこれでもかと言うほどのトリオン兵の残骸が横たわっている。
「ニャハハハハハ、一杯倒せたにゃ!これで懐も暖まるにゃ~。」
「ろくに金使わん奴が何言ってんだ。」
「使わないんじゃないにゃ!必要な時に備えてるだけにゃ。」
鷹原の言葉に猫葉は右手の袖をブンブンと回して抗議する。そんな彼女のジェスチャーに鷹原は“はいはい…。”と受け流すことにした。
そうやって二人が会話を交わしていると、建物と建物の間を使って軽やかに蓮川が跳んできた。
「お疲れさまです。」
「おう、お疲れさん。スコーピオンの扱いも上手くなったな。」
「ありがとうございます!これも師匠の歌川さんのお陰です!」
鷹原に誉められた蓮川はビシッと敬礼する。
そんな彼女を見て猫葉は小さく笑う。
「これなら6月のランク戦が楽しみだにゃ!今度こそカゲにゃんに勝ってみせるにゃ!」
「はい!私も2回目のシーズンなので、前回よりももっと活躍します!」
「ま、そうだな。そろそろ万年3位部隊からは卒業したいところだ。その為にも蓮、お前に働いてもらうからな。前シーズンは最後の2試合しか出さなかったが、今回からはフルで出てもらう。」
「お任せください!この蓮川蓮、粉骨砕身、全弾命中、一撃必殺の覚悟でやらせていただきます!」
「頼もしい限りだにゃ!」
張り切って笑顔を見せる蓮川の背中に猫葉が飛び乗る。蓮川は慣れているのか猫葉を背負ったままピョンピョン跳び跳ねる。
「もちろん、慧にも頑張ってもらうぞ。」
『はい!私も頑張りますよー!』
通信越しで顔は見えないが、彼女の声は弾んでいた。
彼女もまた、ランク戦を楽しみにしているのだろう。
そうやって軽い雑談を交わしながら時間を潰し、交代の時間まで彼ら鷹原隊は警戒区域内の担当区画を巡回した。
夜になれば鷹原が学生の蓮川と慧を家まで送り届け、猫葉はまだ本部でランク戦をしている正隊員に勝負を吹っ掛けていく。
二人を送ってきた鷹原が隊室で書類仕事に取り掛かると、ランク戦を終えて帰って来た猫葉が炬燵に入ってすやすやと寝息をたてる。
コレがいつもの鷹原隊の光景である。
人物紹介
鷹原啓
…隊員達からはヒロさん、タカさん、鷹原などと呼ばれている。好きなものは牛乳と防衛任務で、よくA級の風間が任務やトレーニング終わりに鷹原隊の隊室に来ては鷹原と牛乳を飲む姿が目撃されている。
これからはちょくちょく後書きか前書きに人物の紹介を挟んでいきたいと思います。
この作品だけの設定とかもたぶん盛り込まれる予定なので。
ではまた次回にお会いしましょう。ノシ