職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌 作:地雷一等兵
と言うよりもプレゼンとレポートとテストが重なったのが悪いのですよ。
私は悪くねぇ‼
では本編をどうぞ↓
「三雲…修…にゃ?」
「あぁ、聞いたことないか?」
「ん~、記憶にないにゃ~。」
中学校にゲートが開いた日の夜、上層部への報告が終わった鷹原は隊室で猫葉に三雲のことを聞いた。
しかし返ってきた答えは知らないの一点張りである。
「訓練用トリガーでモールモッドを倒せるとか、ほんとにゃ?」
「状況とトリガー反応を見ればな。あの場には彼以外にボーダー隊員はいなかった。そんでもって切られたモールモッドからは彼のトリガーの反応しかなかったんだ。」
隊室の炬燵でのんびりと寝転がっている猫葉は鷹原の説明に唸る。
が、直ぐに猫葉は考えることをやめた。
「気にしてても仕方にゃいにゃ。今度試合すれば分かるにゃ。」
そう言って猫葉は炬燵の中に引っ込んでいった。
その猫葉のいつも通りな姿を見た鷹原は苦笑いを浮かべ、書類作業に戻った。
(…結局、木虎の言ってたアレはなんだったんだ?)
鷹原は書類と向き合いながら少し前の事を思い出す。
時は遡って夕方、三雲修がボーダー本部に向かおうとしていたとき、何故かそこには人だかりができておりその中心には嵐山隊の木虎藍がいた。
「三雲修くん、貴方をボーダー本部へ連行します。」
木虎のその言葉に若干周りがざわついたが木虎はそんなことを気にせず三雲と共にボーダー本部へと向かう。
その途中で着いてきた空閑少年と木虎藍とが言い争いを始める。
そんな二人の言い争いに隣でそれを見ていた三雲は冷や汗を浮かべていた。
「だいたい──」
橋に差し掛かって木虎が空閑少年に言い返そうとしたとき、けたたましい音を立てる警報と避難を促すアナウンスが周囲に響く。
そして川の上にゲートが開き、中から今まで見てきたどのトリオン兵よりも巨大な魚のような外見のトリオン兵が出現した。
「イ、イレギュラーゲート!?」
「こんな街中で!?」
突然現れたそれに木虎と三雲は驚愕の声を上げる。
しかし隣にいた空閑少年はさして驚いた様子はなく、宙に浮く巨大なトリオン兵を見上げていた。
そしてトリオン兵が現れて暫くするとゆっくりと宙に浮きながら移動していたそれは腹の部分から何かを投下し、下に落ちたそれは周囲の物を爆発で吹き飛ばしていく。
それを見た木虎と三雲の二人はマズイと思ったのかトリガーを起動してその爆撃しているトリオン兵のいる方へと走り出す。
三雲はそのまま木虎と別れて市街地へと走り、木虎はワイヤーガンを使って爆撃型の上に乗る。
爆撃の被害に遭った場所では建物が崩れ、中には瓦礫によって屋内に閉じ込められる人達もいる。
そのうちの一ヶ所ではまだ幼い子どもが瓦礫に閉じ込められた母親と一緒にいるとぐずっていた。
母親は子どもにここから早く離れるように言うが子どもはそれを泣きながら嫌だと言って聞かない。
その子どもの頭上、大きな瓦礫が落下してきた。子どもはそれに気づいていない。このままでは子どもが瓦礫の下敷きになってしまうというところに、白いジャージスタイルの少年が子どもを庇う形で瓦礫を背中に受ける。
誰であろう三雲修であった。
「怪我はない?」
「う、うん…。」
三雲は子どもに怪我がないことを確認すると直ぐ様母親が閉じ込められている場所の瓦礫を退かす。
そしてそこひいた人達が続々と外に出ると、他にも閉じ込められている人がいるとの話を聞いて直ぐにその方へ駆け出した。
「固いわね、けどこれくらいどうってことないわ!」
木虎はスコーピオンで切りつけ、爆撃型の装甲を剥がすと剥き出しになった内部へとハンドガンのトリオン弾を撃ち込んでいく。
『あー、あー、木虎ちゃん、聞こえる?』
「鷹原さん…。はい、聞こえてます。」
『一応駆けつけてはみたけど、どういう状況?』
通信で聞こえてきたのは鷹原の声だった。
本部への報告後、午後のシフトを果たすために街中に来ていたのだろう。
彼はそういう人間だと分かっている人からすれば簡単に予測できた。
「もうそろそろ落とせます。私は大丈夫ですので鷹原さんは市民の救助をお願いします。」
『オーケー! 任せたぜ。』
その声とともに通信は切れる。
木虎は通信中も止めなかった射撃を一層強め、爆撃型撃墜に拍車を掛ける。
そして暫くすると、背中から2列で柱のようなものが競り上がり、開いていた爆撃型の口が閉じる。
明らかに異常事態だと分かるそれに木虎は背中に乗ったまま周囲を見渡す。
よく見れば爆撃型はまだ被害を受けていない街の方に向かっていた。
「まさかこのまま街に落ちるつもり!?」
木虎は慌てた様子で片手にスコーピオンを出し、一番近い柱を切りつけるが、弾かれたように刃が通らない。
「固い!どんなトリオン濃度なのよ!」
何度も何度もスコーピオンで切りつけるも一向に傷が付く様子はない。
そうこうしているうちに爆撃型は街までもうすぐの場所まで迫っていた。
「止まれ、止まりなさい!」
切りつけ、銃弾を撃ち込んでいる木虎の頭に様々な感情が浮かぶ。
このままトリオン兵が落ちることへの不安。
街を守れなかったことへの責任。
大見得切って失敗する自分への呵責。
そして自分を信じて任せてくれた鷹原への申し訳なさ、様々な感情がない交ぜになる。
「お願い、止まって!!」
懇願にも似た木虎の叫びが響く。
その直後祈りが通じたのか、爆撃型はガクンという衝撃とともに空中で一瞬だけ動きを止め、次の瞬間には近くにある広い川に引き込まれるように落ちていった。
そして爆撃型が着水すると、メテオラの爆発が可愛く見えるほど大規模な爆発が起こり、川の水を吹き飛ばす。
「お疲れさん。さすが木虎だな、あんなデカいのを一人で落とすなんてよ。」
そう言って鷹原は川の中で茫然と立ち尽くし、水が滴っている木虎に手を伸ばす。
しかし木虎は鷹原の言葉に首を振った。
「…私の力だけではないと思います…。」
「…どういうことだ?」
妙に自信なさげにしている木虎の言葉に鷹原はスッと目を細める。
がそれよりも先にと木虎を川から引き上げて、土手を上りながら会話を続ける。
「最後、あのトリオン兵は自爆しようとしていました。私はそれをどうにもできなくて…。もうダメだと思ったとき、引っ張られたように川に落ちたんです。」
「…引っ張られた…か。」
木虎の証言に鷹原はふぅむと唸って顎に手を当てる。
がしかし、少しして心当たりが見つからないことを確信すると顎に当てていた手をぶらぶらと振る。
「ダーメだな。出来そうな奴が一人もいそうにない。」
頭の中にB級からA級の隊員全てを思い浮かべるもののあれだけ巨大なトリオン兵を引き寄せられるような隊員に心当たりがまるでなく、鷹原は諦める。
そうして川縁の道までやって来ると三雲が市民に囲まれているのが見えた。
それから鷹原と木虎は損害に対する補償云々の話を市民からされるのだがそれら全ての一切合切をボーダー上層部にぶん投げて三雲修を本部に連れていった。
「考えてもしゃあないな…。さて、書類あり、コーヒーよし、チョコレートよし。ラストスパートだな。」
デスクの上に置かれたいつもの物を確認した鷹原は再度ボールペンを手にとって作業を再開した。
──時間は少しだけ遡って夕方頃
「全員揃ったようだな、では始めよう。」
ボーダー本部にある会議室、そこでは総司令の城戸、本部長の忍田、開発室長の鬼怒田、メディア対策室長の根付、外務・営業部長の唐沢に加え、玉狛支部長の林藤が座っており、彼らと対峙するように呼び出された三雲修、そして自称実力派エリートの迅悠一がいた。
「それで、三雲くんの処分に関してだが──」
「そんなもんクビに決まっとろぉが!!」
「そうですよ、市民の方々にボーダーは緩いと思われても困りますからね。」
忍田の言葉を遮って鬼怒田が口を開いた。
その鬼怒田の怒声に根付が続く。がしかし、ボーダー本部最強の男はその程度で止まらない。
「しかしだな、三雲くんの行動は結果として市民の命を救っている!それに関しては嵐山隊や鷹原くんからの報告書を読んでいただければ分かる。有事の際にここまでの働きが出来る人材は貴重だ、クビではなく正隊員としてその実力を行使してもらうのが有意義だろう!」
「しかしですねぇ…。」
ダンッとテーブルの上に紙束を置いた忍田は根付と鬼怒田を一睨みする。その眼光に思わず二人は視線を逸らした。
その後、なんやかんやがあって三雲修の処分は迅悠一に一任されることとなる。
まさかこの一件、この出会いで自分達の仕事が増えることになるとはこの時鷹原隊の面々は予想にもしていなかったのである。
タイトル詐欺ですよ。今回の話は迅さんメインじゃなかったのです。
ま、その内スポットは当たりますよ。はい。
人物紹介
二条 慧
鷹原隊2代目のオペレーターを務める女子高生。
よく隊室で寝泊まりしている(生息している)鷹原と猫葉の世話をするのが主な仕事と化している。
書類仕事は鷹原が全部やっちゃうから他の仕事なんてあんまりないから仕方ない。
料理が得意でよく隊室のキッチンで料理をしている。もちろん某A級部隊の隊長のような独創性溢れたエキセントリックなものではない。
オペレートはしっかりこなせるCカップ。