職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌   作:地雷一等兵

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前回投稿が何時だっけ、なんて気にしてたら大変なことになってました。

では本編をどうぞ↓


第6話 大規模掃討作戦

 

 

 

「やぁやぁ、おはようさん。」

 

三雲修の隊務規定違反の翌朝、自称エリートの迅が鷹原隊の隊室を訪れた。

 

「おはようにゃ。」

 

「お前がここに来るなんて珍しいじゃねぇの。」

 

珍しく朝の隊室に全員揃っている鷹原隊のうち、鷹原と猫葉が迅に絡む。

 

「いや~鷹原さんとはあんまり時間が合わなくてね。まぁでも、鷹原さんにはこれから色々とやってもらわなきゃいけないから。あ、はいこれ、指令書。」

 

「お前のサイドエフェクトか?」

 

ぴらっと差し出された紙を受け取って、鷹原はそれに一通り目を通すと、隣の猫葉にもそれを見せる。

そして迅から離れて携帯を取り出すと、ある番号に電話を掛けた。

そして通話が始まるまでの時間に慧に話しかける。

 

「慧、今日は学校休んでくれ。学校にはオレからも連絡するから。──あ、もしもし蓮か? 今から隊室に来てくれ。 学校?あぁ、休んでくれ。一応オレからも学校には連絡しとく。」

 

そう言って二言三言言葉を交わして鷹原は通話を切る。

その横では学校に連絡を入れた慧がエプロンを着けていた。

 

 

 

「蓮川蓮、ただいま到着しました。」

 

「うし、揃ったな。」

 

蓮川が到着する頃には朝食を摂り終えた鷹原が牛乳瓶片手にソファに座り、モキュモキュと猫葉が炬燵で暖を取りながらサラダを食べていた。

 

「その前になんで呼ばれたのか説明ください。」

 

「そうだな。んじゃ、はい。」

 

蓮川の質問に鷹原は迅が持ってきた指令書を渡す。

それを受け取ってスススッと目を通した蓮川は書類を鷹原に返す。

 

「緊急招集…ですか? 何があったのですか?」

 

「知らん。けど迅の奴があんだけ余裕かましてるなら心配いらんよ。オレの勘もそう言ってる。」

 

“勘”そう鷹原が口にすると、慧と蓮川の緊張一辺倒だった雰囲気が幾分か緩む。

 

 

 

そして昼頃、事態は動いた。

迅が持ち帰ってきた新種のトリオン兵、見た目こそかなり小さく虫のようにも見えるそれが今までのイレギュラーゲートの原因らしかった。

 

隊室で待機していた鷹原達にも忍田から緊急出動の命令がかかり、一斉に動き出す。

ボーダーの正隊員どころか、訓練生のC級までも動員した大規模な作戦である。

 

 

 

 

「…これで何体目ですか?」

 

「…50から先は数えてない。」

 

「ニャァアアアアアアッ!! キリがないにゃ!!」

 

スコーピオンとレイガストでそれぞれ小型トリオン兵に止めを刺している鷹原と蓮川の横で、猫葉が発狂していた。

どれだけ仕留めてもわらわらと沸いて出てくる小型トリオン兵、その外見的な嫌悪感も相まって猫葉の我慢も限界に達しようとしていたのだ。

 

ブンブンと爪形に伸ばしたスコーピオンを振り回している猫葉は、心なしかお面までも怒っているように見える。

 

「フーッ!フーッ!」

 

「落ち着けよ…。」

 

「…猫さん…。」

 

猫葉が本当に猫だったら毛を全部逆立ててるだろうなと考えた蓮川は少し微笑ましいものを見るような目を猫葉に向ける。

 

「にゃ~、こうなったらトリオン兵も、ネイバーも、B級もA級も片っ端から刻んでってやるにゃ!誰彼構わず八つ当たりだにゃ!」

 

「おい、やめろバカ! また他のアタッカーにトラウマ植え付ける気か!?」

 

肩をいからせてずんずんと何処かに行こうとする猫葉を鷹原は首根っこを掴んで引き留める。

 

「離すにゃ!このままじゃストレスでおかしくなるにゃ!」

 

「おう、そのストレス発散の犠牲になるアタッカーのことも考えてやれ! あの夏の惨劇を忘れたのかよ!」

 

「関係ないにゃ~!!」

 

首根っこを掴まれながらじたばたともがく猫葉を見て、鷹原は絶対に離してはならないと悟った。

もしも今の猫葉を野に放ってしまったなら、確実に惨劇が起こると本能が察知したのだ。

 

「あの辻ちゃんの悲しみを背負った目を見ても同じことが言えんのか? ガチ泣きしてたんだぞ!!」

 

「そんなの知らないにゃ~! ぶにゃ~、ソロランク戦がしたいにゃ~。」

 

さっきまでもがいていたかと思えば今度はわんわんと泣き始めた。

ころころと子供のように感情を変える猫葉に鷹原はハァと溜め息を一つ吐いた。

 

「…お困りみたいですね。」

 

「那須と熊谷か。うん、困ってる。」

 

鷹原は猫葉の首根っこを掴んだまま声を掛けてきた後輩の方を向く。

そこには苦笑いを浮かべる那須と熊谷の二人がいた。

 

「にゃ~ソロランク戦~!」

 

「今は我慢しろ。」

 

「あ~、私でよければ後で相手になりますよ?」

 

「ホントかにゃ!?」

 

鷹原に首根っこを掴まれたままもがく猫葉を見かねて熊谷がそう切り出した。

すると猫葉はそれまでのくずりっぷりが嘘のようにピタッと泣き止み、熊谷の方を向く。

 

「ええ。もちろんこの任務が終わってからですけど。」

 

「いいにゃいいにゃ!約束だにゃ!そうと決まれば早速終わらせるにゃ!!」

 

大きな声で笑い声を上げながら、猫葉はレーダーを展開し駆け出した。その方向は偶然なのか狙ってなのか、件の小型トリオン兵が最も多い場所である。

そんな猫葉を追いかけるように鷹原と蓮川が駆け出した。

 

 

その後、悪鬼羅刹の如き活躍を見せた猫葉によってその一帯に潜んでいた小型トリオン兵を一掃したという。

 

 

 

 

そうしてこの特別大規模作戦開始から数時間後、もう日も沈み始めている頃になって、通信ですべての小型トリオン兵を討伐できた事を告げられ、参加していた隊員達は疲労から大きく息を溢した。

 

「にゃ~、やっと終ったにゃ。」

 

「だな…。あぁ…、これって特別手当とか出ないのか?」

 

「出るわけないにゃ。」

 

トリオン体から生身に戻った鷹原は隊室に戻るとペキペキと身体を鳴らしてストレッチする。

そして猫葉の言葉に“だよなぁ”と呟いて鷹原は溜め息を吐いた。

アレだけの量のトリオン兵を狩り尽くし、イレギュラーゲートの発生がなくなるように尽力したというのに手当てもないというのは、いくら社畜の彼でも堪えるというものだ。

 

まぁそんな事はパルクール狙撃兵や功名餓鬼には関係なく、二人はそそくさと隊室から出ていき、ソロランク戦をしに行った。その二人の後ろ姿に“薄情者ぉ…。”と呟いた鷹原は暫くするとゴソゴソと押し入れの中から大きな瓶を取り出し、ある人物たちに電話を掛ける。

 

 

その頃、鷹原隊のポイントゲッターを務めるパルクール狙撃兵と功名餓鬼はと言えば───

 

 

「ヒャッハー!だにゃっ!!」

 

「狙い…撃つッ!!」

 

たまたま来ていた隊員達に勝負を吹っ掛けていた。

猫葉は約束していた熊谷と、蓮川は手当たり次第に格上だろうが構わずに勝負を挑んでいる。

特に猫葉との勝負には上位アタッカー達がこぞって詰め掛け、入れ替わりながら勝負を続ける。

その試合風景はモニターにも映し出され、その場にいたC級達はおろか、B級隊員の目も釘付けにした。

 

「ニャッハッハーッ!!」

 

「この…ッ!!」

 

変態的な機動を続けながら猫葉は対戦相手の首を飛ばす。

ボーダーNo.4アタッカーとも互角に渡り合い、時には無慈悲に首を撥ね飛ばせるのが鷹原隊のエースアタッカー、猫葉澪である。

 

どうして鷹原と猫葉の二人しか戦闘要員のいなかった鷹原隊がB級3位、もっと言えば二宮隊、影浦隊が下りてくる前はB級1位を維持出来ていたのかと言えば、この猫葉による脅威的なポイント取得能力が大きいだろう。

隊員が3人に増えたとて、それは変わらない。依然として鷹原隊のエースはこの猫葉なのだ。

 

 

 

 

「おぅ、来たか。」

 

夜もそろそろ更けようかという時間に鷹原隊の隊室を訪れたのはボーダー隊員の成人組のメンバーであり、鷹原の飲み仲間達だ。

面子は開発部の雷蔵、諏訪隊の二人、加古と言う顔触れだ。

 

「木崎は来れないし、冬島さんも太刀川もいないし、二宮からは返信がない。しゃあないな。」

 

そう言って鷹原は人数分のお猪口を炬燵の植に並べ、中央に一升瓶を置く。

それに貼られてあるラベルを見た面々はニヤリと笑った。

 

 

 





この後どうなったのか…。

では次回でお会いしましょうノシ


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