職業=ボーダー隊員な社畜と功名餓鬼、時々JKのボーダー生活日誌   作:地雷一等兵

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さて、いよいよランク戦です。
まだ玉狛第二(三雲隊)がいない時期のですが。

では本編をどうぞ↓


第8話 鷹原隊のランク戦

 

 

「さて…やっとだな。」

 

「はい!」

 

6月となり、今年もまた2度目のB級ランク戦が開催される事となった。

そして土曜日、B級ランク戦第二節の一試合目の組み合わせはと言うと……

 

B級2位影浦隊、3位鷹原隊、4位生駒隊の組み合わせとなった。

 

蓮川はランク戦を何度こなしても慣れないらしく、彼女の様子はどこか緊張しているようだ。

それでも緊張を押し殺し、みなぎるヤル気でシャドーボクシングを始めている。

 

「それじゃあ、ブリーフィングを始めるか。蓮もちょっと落ち着けな。」

 

昂りすぎて空回りしそうな蓮川を宥めてから鷹原は隊室の中央にある作戦会議用のテーブルに全員を集める。

 

「相手はカゲとタツの部隊、どっちも射程持ちが二人だ。カゲの所はユズルとゾエがカゲをサポートして点を取るスタイル。で、タツの部隊は四人いる長所を活かした連携で攻めてくるタイプだな。」

 

「どう動くにゃ?」

 

「……いつも通りだな。オレが楔役になるから、お前と蓮で点を取ってくれ。ただ蓮、無理はするなよ。」

 

「了解したにゃ~。」

 

「わ、分かりました! 全身全霊を尽くします!!」

 

鷹原の言葉に猫葉は嬉しそうに腕を振り、蓮川は畏まったように敬礼した。

 

 

 

「…やっぱタカさん所の狙撃手(スナイパー)、ヤバいな。え、ヤバない? まずあの機動力ヤバいやろ。」

 

「ヤバいっす。」

 

生駒隊の隊室ではメンバー5人が集まって、ランク戦前の最後のミーティングをしていた。主な話題と言えば、今回初めてランク戦に参加する鷹原隊の蓮川蓮についてである。

 

「個人戦の記録(ログ)とか全部見ましたけど、グラスホッパーで飛びながら撃つとか、隠岐でも出来ん芸当やんか。」

 

「そうですね、それでいてきっちり当てるんやからズルいわ。」

 

「それに加えてなんやタカさんも今回張り切っとるらしいやんか。前衛組はあんま突っ走らんときや。」

 

「それな。たった一人でゲリラ戦とかワケわからんわ。」

 

口々に鷹原隊の事を話題に出す生駒隊の面々だが、その鷹原隊よりも順位の上な影浦隊がいることも忘れてはいない。

この試合のマップ選択権を持つ彼らはそれも加味した上で戦術を練ってきた。

現1位と2位の二宮隊、影浦隊がA級にいた頃は鷹原隊と共にB級ツートップを死守してきた彼らの実力は確かなものである。

 

 

 

「頭ッからタカさんのところかよ、面倒だ。」

 

「こればっかりは仕方ないよ。」

 

影浦隊の隊室ではボサボサ頭の隊長影浦が個人戦の記録を映したモニターを見ながら画面の中の蓮川を見る。

そんな影浦の言葉を肯定するように影浦隊狙撃手の絵馬が頷いた。

 

「ホント、鷹原隊は嫌な相手だよねー。猫葉ちゃんと鷹原さんだけでも厄介なのに蓮川ちゃんもポイントを狙ってくるんだもん。」

 

「狙撃手の蓮川さんの実力は確かだよ。狙撃手としての基礎もしっかりしてるみたいだし。」

 

「どうでもいい。オレは猫ヤローと遊ぶだけだ。」

 

影浦はぶっきらぼうにそう答えると、北添や絵馬と顔を合わせることなく開始時間までソファに寝転がった。

 

 

 

 

「それではB級ランク戦初日昼の部、開始して行きたいと思います! 実況は(わたくし)武富桜子が、そして解説席には東隊隊長の東春秋さん、三輪隊の米屋隊員にお越しいただきました!」

 

「どもっす!」

 

「よろしく。」

 

桜子の紹介に解説席に座る二人が会場内に向けて挨拶をする。

東の解説、そしてB級上位の試合とあってか会場内にはちらほらとA級やソロランク上位の隊員の姿が見える。

 

「それでは解説のお二人にこの試合の見所を紹介して頂きたいと思います。」

 

「そうですね、まずは鷹原隊の鷹原が誰を押さえに行くか、じゃないでしょうか。」

 

「それはあるなー。オレの予想はイコさんだけど。」

 

解説二人の言葉に会場内にいる正隊員達は大きく頷く。

 

「鷹原ですが、生存能力だけならボーダーでもトップクラスです。鷹原隊はそれを活かして厄介な隊の隊員を鷹原が抑え、他の隊員がポイントを奪うと言う戦術を核として使ってきます。」

 

「タカさんに目を付けられたらその試合は自由に動けねぇからな。カゲさんは猫ッチを徹底的に狙うだろうし、マークに付くとしたらイコさんでしょ。」

 

「同感だな。」

 

米屋と東はそれぞれの見てきた経験則に当てはめてすらすらと予想を述べていく。その言葉に他の正隊員たちも思い当たる節があるのか、小さく首を縦に振る。

 

「なるほどぉ…。おっと、もう転送開始の時間となってしまいました! それではB級ランク戦初日昼の部、開始します!!」

 

桜子の言葉と同時に三隊のメンバーは一斉にマップへと転送された。

 

 

 

「ん…こりゃ市街地B…か。」

 

今回生駒隊が選んだマップは市街地B、路地や遮蔽物が多いため屋内外問わず入り組んだ作りになっている。

背の低い宅地だけでなくマンションや学校、ショッピングモールなど高い建物と低い建物が混在する地形であり、場所によっては射線が通りにくく、見通しも悪いマップだ。

狙撃手は随時場所を細かく移すことを要求されるマップでもある。

 

転送位置は各隊ともにバラバラとなっており、ここから合流もしくは各個撃破に分かれるだろう。

 

 

「さて、やりますか。」

 

マップ中央に転送された鷹原は周囲を確認するとスパイダーを起動した。

そして次々と建物や道路にスパイダーの鋼線を張り巡らせながら移動する。

 

 

『さぁ、各隊一斉に動き出す。まずはスナイパー3人と猫葉隊員がバックワームを起動! 生駒隊は合流を目指す模様。』

 

『人数で勝っているのが生駒隊の強みですからね。個人で動いて各個撃破されたんじゃ目も当てられません。』

 

『お、そろそろ来るぜ。』

 

展開を見守っていた米屋だったが、ある隊員が高所に登ったのを見て呟いた。その直後にバックワームを起動していない隊員達のいる方向へとトリオンの榴弾が撃ち落とされる。

 

 

「ちぃ! ゾエか!」

 

 

「アカンわ。」

 

 

「ホンマ腹立つこれ。」

 

 

「うひゃー?!」

 

 

メテオラを撃ち込まれた四人は苦々しげに弾の飛んできた方向を睨むが直ぐ様その場所から逃れるように走る。

メテオラによって家屋は壊れ、周囲には瓦礫が散乱していた。

 

 

「ゾエの野郎…、折角作ってた巣が半壊かよ。ネコ!」

 

「にゃにゃ、今向かってるにゃ。」

 

通信で鷹原は猫葉と連絡を取るが、その意図を先に組んでいた猫葉は言葉を先回りして行動に移していた。

頼もしすぎるエースの言葉に鷹原は猫葉との通信を切って自身の役割に切り替える。

 

(…砂の二人は身を隠して位置不明。ゾエはネコが狩りに行った。集合しようとしてるのが生駒隊の3人…。じゃあ浮いた一人がカゲだな。)

 

走りながらスパイダーの鋼線をばら蒔きレーダーを確認する鷹原は冷静に各個の動きを観察する。

転送されたマップ中央から東方向へと走る鷹原と、それを応用に合流位置をマップ中央付近に定めた生駒隊、そしてマップ北から砲撃を仕掛けてきた北添、そしてそれを仕留めに詰めるマップ北東の猫葉と、場が一気に動き出す。

 

 

そして開始から数分、最初のぶつかり合いが起こった。

 

「早いとこ逃げないと、誰が来るか分からないね。」

 

「そうだぞ、さっさと逃げて身を隠せ!」

 

レーダー頼りの爆撃を行った影浦隊の北添はバックワームを起動し、突撃銃型トリガー片手にマップの東方向へと走っていた。

マップ南東側にはチームメイトである絵馬が狙撃位置に張り込んでおり、その援護を貰うために中央を迂回して逃げ込もうとしているのである。

が、そんな北添に一人の死神が迫っていた。

 

「にゃにゃ…。」

 

猫葉はバックワームを身に纏い、音もなく北添へと忍び寄る。

狭い路地、家屋の陰を巧みに使い猫葉は北添の状態をつぶさに観察し、隙を伺う。

そして完全に北添の死角を取ると、潜んでいる物陰から飛び出して斬りかかった。

 

「その首、貰うにゃ!」

 

「うそ~ん…。」

 

死角から飛び出した猫葉による一撃は北添に避けることも許さずに首を撥ね飛ばした。

そして北添の戦闘体は活動限界を迎えベイルアウトする。

 

 

「やられた~! ユズル、気を付けてね、東側は猫葉ちゃんがいるよ。」

 

「了解。こっちは中央の援護に回るよ。」

 

ベイルアウトして隊室に戻された北添は直ぐ様マップ南東部に身を隠していた絵馬に忠告した。

 

 

 

『猫葉隊員による奇襲攻撃で先制点は鷹原隊!』

 

『見事に刺さった形ですね。』

 

『ありゃしゃあねぇな。完全な死角からだもんよ。』

 

猫葉の強襲、そしてポイント奪取にそれを初めて見たC級隊員達からどよめきが起こる。

 

『警戒はしてたんだろうけど、猫ッチの方が上手だったな、ありゃ。完全に緊張の緩んだ瞬間を狙われた、ああなったらそう簡単には反応できねぇな。』

 

『アレが鷹原隊の猫葉ですよ。鷹原隊が二人しかいなかった時でさえもA級に一番近かったと言われていた理由の1つです。』

 

冷静に分析していた二人の言葉に桜子は“なるほど”と頷いてから会場内のモニターに視線を移す。

そこには合流を終えた生駒隊とマップ東よりの中央で生駒隊を待ち構える鷹原、そしてその中央を迂回して北添がベイルアウトした地点を目指す影浦が見える。

 

『……始まりますね。』

 

『一人ゲリラ戦、ホンットにワケわからねぇ。』

 

 

 

「…止まれ。」

 

「あ~、スパイダーや。」

 

中央に辿り着いた生駒隊の3人は至るところに張り巡らされたスパイダーの鋼線を見て足を止める。

最早B級上位にとっては見慣れた光景でもあるそれを見て生駒と水上は頭を捻った。

 

「これ、無闇に突っ込んだらアカンやつやな。」

 

「スパイダー気にしながら走って抜けようもんならアイビスでドーンとか来そうやわ。」

 

「迂回して抜けてく方がええんとちゃいます?」

 

などと目の前のスパイダーの網を見ながら考えを纏めている内にある人物が飛来する。

 

「ロックオン…ッ!」

 

バックワームを翻しながらグラスホッパーで飛び回る蓮川だった。

蓮川は生駒隊とエンゲージするとバックワームを解除し、手にイーグレットを取り出す。

 

「来よった。」

 

「隠岐!」

 

「分かってますよ。今抑えに行きます。」

 

蓮川の飛来を認識した3人は即座に戦闘体勢に入る。

そして水上は通信で隠岐を呼び寄せると両手にトリオンキューブを出す。

 

「良い的だぜ!」

 

蓮川へ視線が集中しているとき、スパイダーエリアの中、水上の背後からアイビスの弾丸が放たれた。

ゴウという音を立てて迫り来る弾丸を水上はオーバーリアクションを取りながら回避し、飛んできた方向を見やる。そこにはエスクードの壁を背にしながらアイビスを構える鷹原が堂々と立っていた。

 

「タカさんも来たわ。」

 

「…ヤバいな。」

 

スパイダーの鋼線エリアを背負いながら前を蓮川、後ろに鷹原を抱えた生駒隊。

この試合は早くも混戦の気配を醸し出していた。

 

 

 





長くなるので次回に続きます。

では次回でお会いしましょうノシ


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