PHANTASY STAR ONLINE2 ~星屑たちの意志~   作:一之瀬魅影

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プロローグ~対話~

「娘のみかげがアークス適正試験に合格した」

 

 

  マーケティング調査報告のため、私は一旦本社に戻っている。

  報告を終え、データファイルの整理をしていると社長が声をかけてきた。軽く世間話をしているとこう切り出されたのだ。 

 

 

「近々、士官学校への入学も決まったよ」

 

 

「それは、おめでとうございます」 

 

 

「本当なら無断で試験を受けおって、と父親なら激昂(げっこう)するべきなのだろうが……」

 

 

  社長は深い溜息を吐き、私に背を向けた。会議室の窓から市街地の景色を眺め始める。

 正直、この話を聞いても別段驚きはしなかった。

 私は執事として社長のお嬢様を長年見守っている。幼少期から天真爛漫(てんしんらんまん)で向こう見ずな彼女の事だ。そういう事もやりかねないと知っていた。

 

 

「……心中、お察しします」 

 

 

  アークスは未知の惑星を調査し、ダーカーと呼ばれる謎の生命体の殲滅(せんめつ)を目的とする組織だ。

 常に危険な任務に従事することになる。

 心配するのが親ごころと言うものなのだろう。

 

 

「全く、困ったものだよ。妻も知らせを聞いてカンカンだ」 

 

 

「どうされるのですか?」 

 

 

「決まったものは仕方ない。今さら取り消すのも(はばか)られる」 

 

 

 私は社長の妙な諦めの良さを疑問に思った。 

 

 

「よろしいのですか?」 

 

 

「あぁ、これで良いのだと思う。色々考えたが、あの子を社長の令譲という鳥籠の中に閉じ込めているより、危険でも外の世界へ飛び立たせてやりたい。そう思ったんだ」

 

 

 こちらに振り替えった社長と目が合う。 

 その表情は晴れ晴れとしていて慈愛に満ちていた。 

 

 

「そこで頼みなんだが、あの子を守ってやってほしい。きっとあの子の事だ。一人で突っ走ってしまうだろうからね」 

 

 

「勿論です。これまでも、これからも彼女は私のお嬢様ですよ」 

 

 

「……これまで君には色んな頼みを聞いてもらった。本当に感謝しているよ」 

 

 

「勿体なきお言葉」 

 

 

 私が軽く会釈すると、社長は困ったように眉をしかめる。 

 

 

「そろそろ、君も鳥籠の中から出たらどうだね?」 

 

 

「はて、何の事でしょうか?」 

 

 

「君は優秀だ。頼み事を完璧に、忠実に、実行してくれた。だが、それは会社の利益のためだ。ワシが君を助け、その恩に縛り続けている、ワシのせいだ……ワシは、君の意志を尊重したいのだよ」 

 

 

「……成る程。それでは、お嬢様を守るという頼みも断っても良いのですね?」 

 

 

 それを聞いた社長は、愉快そうに声を上げて笑った。 

 

 

「はぁー、失敬失敬。こりゃ一本取られたわい。まぁ、そうだな。それが君の意思なら、な。男に二言はない」 

 

 

「フッ、冗談ですよ。慎んで、お受けいたしましょう。私もあのおてんばお嬢様の事は心配ですから」 

 

 

「そう言ってくれると助かるよ。だが、娘を守ってくれと頼んだが、ずっとではない。君の判断でやめてしまってもかまわん。アークスを続けるも良し。会社に貢献したいというのなら、喜んで受け入れよう。何かしたい事があるのならばそれも良い。好きに生きろ。答えが出たら聞かせてくれ」

 

 

 社長は私の背中を軽く叩き、静かに会議室から去っていった。

 

 

「……好きに生きろ、か」

 

 

 そんな事、考えた事もなかった。

 社長は捨て子の私を息子も同然で育ててくれた恩人である。あの人にずっと付いていくものだと思っていた。

 だが、鳥籠は開かれた。これからどうしていくべきなのか……。

 そんな自分の身の振り方を考えていると、ふと頭の中でお嬢様の笑顔が浮かぶ。

 最初は社長の命令でやっていた執事業だったが、いつしか妹のような情を感じるようになっていた。

 そして、先程の社長との対話。自分の発言。

 

 

(勿論です。これまでも、これからも彼女は私のお嬢様ですよ)

 

 

(―私もあのおてんばお嬢様の事は心配ですから)

 

 

 これは本音だった。

 きっと社長の頼みがなかったとしても私は彼女を守っていただろう。

自分の考えの整理はつく。

 データファイルの整理も終わり、アークスシップロビーへ帰還しようとした。

 すると突然、騒々しい警報音と共に緊急のアナウンスが流れ始めた。

 

 

『市街地にダーカー侵入。市民に避難指示が発令されました! 速やかにシェルターへの避難を。アークスは直ちに現地へ向かい、敵の殲滅にあたってください!』

 

 

「やれやれ、また市街地襲来ですか」

 

 

 素早くきびすを返し、会議室を出る。

 案の定、オフィスで慌てふためく社員たちが目に入った。それらを冷静に避難誘導する社長の姿も。

 

 

「会社は見ての通りだ。君はお仲間に合流するのだろう? ここはワシに任せて、早く行きたまえ」

 

 

 私はコクりと頷くと逃げ惑う人の波をするりと避けながら、戦渦へと飛び出した。




まず、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。お疲れ様でした。

改めてはじめまして、一之瀬魅影です。
普段はゲームばかりしています。
自分の使っているキャラの妄想が溢れてきたので小説としてしたためていこうと思い、こちらに投稿させて頂きました。
飽き性な性分ですが、頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。
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