SCP財団Lobotomy支部   作:セキシキ

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明けましておめでとうございます。更新頻度は遅いですが、本年も宜しくお願いいたします。

さて、今回は前話に書いた大鳥くんのTale、もとい最終観測です。本家のtaleあまり読んだことないので、ちゃんと書けているか不安ではありますが。


tale-Lo 救済者の休日

某年某月某日。その日のエージェント███(通称エージェントX)の担当業務は、職員たちが"大鳥"という渾名で呼ぶ、大きな鳥型のオブジェクトと遊ぶというものだった。

 

字面だけを見れば微笑ましくもあるが、残念なことにこのオブジェクト、SCP-040-Loは幾度も収容違反を起こし何十人もの職員をあの世と病院送りにしたScipである。そのような恐ろしい存在を相手に娯楽行為を行うのがどれだけ職員達に精神的重圧を与えてきたかは、推して知るべしといったところだろう。

 

とは言え、Xは財団に勤務して数年で多くのオブジェクトを担当した言わばプロフェッショナルであり、SCP-040-Loの担当になって既にから何度も娯楽業務を遂行している。他の職員が恐れおののく作業も、彼にとっては最早日常の一部なのだ。

 

それに、SCP-040-Loは周囲を燃やしたり職員を食べたり胞子を出したりするわけではなく、ただそこにいるだけだ。機嫌を損なわなければ、薄気味悪い化け物と相対するだけですむ分、他のScipより遥かにマシと言えるだろう。

 

『時間です、X。SCP-040-Loの収容室へ向かって下さい』

 

無線から流れるオペレータの無機質な音声に従って、Xは幾つかの玩具を手に収容室へと足を向ける。目的地に到着するまでの道すがらで、支給されている骨振動式の小型無線機と防護スーツを慣れた手つきで装着していく。単純に遊ぶだけなら無用なこれらも、SCP-040-Loとの娯楽業務では時に生命線となる。他のオブジェクトが脱走した連絡を受けたり、SCP-040-Loの攻撃を一撃でも防いでくれたり、これらの装備で命拾いした人間は数多い。まあ、必要としないのが一番理想的ではあるが、万が一は何時でも起こりうるものなのである。

 

さて。ちょうどお気に入りのロングコートを纏ったところで収容室に到着した。二度ほど深呼吸をしてから、懐よりレベル2と記されたセキュリティカードを取り出し、扉脇にあるリーダーにタッチする。瞬きする間もなく扉は音を立てて開き、その奥から、件の鳥が姿を見せる。

 

「……行くか」

 

意識を切り替えて、Xは扉の向こう側へと踏み入れる。勿論、後ろ手で扉を閉めておくのも忘れてはならない。手に持っていた玩具を詰めたバッグを一旦床に下ろし、"仕事"を開始する。

 

『ヒトマルサンゼロ、SCP-040-Loの娯楽作業を開始する』

『了解ですX。どうかご武運を』

 

「よう、SCP-040-Lo。久し振りだな!」

 

出来るだけ明るく声をかける。当然、反応はない。このオブジェクトは会話することが出来ないからだ。その代わりに、じぃっとこちらを見続けている。

 

2mは優に超え、3mにも届かんばかりの巨体に真っ黒な全身に浮かぶ幾多の黄色い眼達。鳥の癖に一枚も羽を持たず、翼の代わりに生えている細い一本の前腕とそこに保持されたランタン。相も変わらず不気味と評するしかない化け物の姿がそこにあった。

 

その不気味さから、精神が弱いものが見ると軽くパニックになるらしい。まあ、あまり長くは拝みたくないのは心の底から同意できるが。

 

とはいえ、このまま見つめ合っても始まらない。Xは床に置いたバッグからボールを取り出し、不敵に笑って言った。

 

「おい、サッカーしようぜ」

 

 

このあとめちゃくちゃサッカーした。

 

 

『20分経過、業務を終了して下さい、X』

 

無線機から淡々と響いたアナウンスを聞いて遊びの手(というか足だが)を止める。時間の経過が早いことに少し驚きながらも、業務を果たすためSCP-040-Loに終了を告げる。大鳥は一瞬その巨体を硬直させると、Xから目を身体ごと背ける。何故か、まるで拗ねているみたいだ、とXは思った。

 

いや、そんなはずがないだろう。SCP-040-Loはその独善から多くの命を奪った化け物だ。怪物には人の理屈は通じない、故にこそ、彼は怪物足りえるのだ。

 

Xがそそくさと玩具を片付け、扉へと向かおうとした時だった。

 

 

ォォォオオオオオオオオオンンンッッ!!!

 

 

収容室内で低い轟音が響いたのだ。一瞬風鳴りかとも思ったが違う。まるで、怪物が嘶いたような―――

 

「ッッ!!」

 

其処まで気づいて、即座に後ろを振り向いた。そこには先程までの大人しさなどどこにもない、大口を開け吠えるSCP-040-Lo(怪物)の姿。そのままゆっくりと、Xの方へと歩みよってくる。

 

元々娯楽業務を行っていたせいで互いの距離がかなり近かった。あと数歩で、彼はXの元に辿り着くだろう。逃げようにもScip-040-Loには他者を催眠させるランタンがある。真後ろにある扉から逃げ出したとて、直ぐに部屋の中へ呼び戻されてしまうだろう。防護スーツもあまり長くは保たない。

 

せめてもの抵抗をと、Xは腰に装備した電磁警棒を手に取る。SCP-040-LoはそんなXの眼前まで辿り着き―――一瞥しただけで、そのまま扉のほうへと向かっていった。

 

「……殺さ、ないのか……?」

 

自身を見逃した大鳥の行動に呆気にとられ茫然とすること暫し。俺の耳を早鐘のようにオペレーターの焦った声が叩く。

 

『……ッ……クス……X!』

 

ハッと意識を呼び戻し、慌てて応答する。

 

「こ、こちらX、何かあったのか?」

『フゥ、やっと出ましたね。死んだのではないかと焦りました』

「す、すまん。それより……」

『他のオブジェクトの収容違反が発生しました。恐らく其方も反応が有るのでは、と連絡したのですが……」

 

成る程、SCP-040-Loが急に吠えたのはそれを探知したためか、と納得する。

 

「機嫌損ねたのかとあせったぜ……」

『当該オブジェクトは?』

「元気なもんだ。今はドアをノックするので忙しいみたいだが」

 

扉のほうにチラリと見ると、そこには扉を嘴で強打しているSCP-040-Loの姿。ドアの拉げ具合から、おそらく一分以内には破壊されるだろう。だが……。

 

『既にアルファ-5が待機済みです。プロトコル254に従い自己防御を行って下さい』

「了解、行動を開始する。流石、仕事が早いな……」

 

オペレーターの指示を受け、Xは収容室の隅へと駆ける。その先にある端末にパスコードを入力してロックを解除する。

 

ピピッ、という電子音と共に、四本の油圧シリンダーに支えて壁の一部が迫り出してくる。Xはその裏のウェポンラックから急いで防弾盾を引っ張り出し自身の前で構えた。

 

それとまったく同時に、轟音と共に扉が破壊された。大鳥は多くの職員を殺そう(すくおう)と、収容室から一歩足を踏み出し――――

 

「目標視認!全員斉射ァ!」

 

―――幾多の銃弾が、彼を襲った。

 

数十の銃から放たれる幾千幾万もの弾丸が大鳥を撃ち抜いていく。防弾盾の後ろで流れ弾に当たらないよう身を縮めているXからは見えはしないが、その光景は容易に想像出来る。火薬が炸裂する音が、鉛が空気を裂く音が、肉を引きちぎる音が、Xの脳裏に凄惨な光景を幻視させた。

 

およそ一分、破裂音と風切り音は鳴り続け、残響を残してピタリと止んだ。カツリ、カツリと地面を踏む音が聞こえる。

 

「もう大丈夫ですよ、X」

 

盾の向こうから聞こえる男の声。その言葉に安堵を覚えつつ、盾を放り出して立ち上がる。

 

「助かった、ありがとうカノン」

「いえ、これも仕事ですから」

 

カノン。それが機動部隊アルファ-5"森の番人"の部隊長である彼の名だった。財団の保有する特記戦力たる機動部隊の長に選ばれるほどに優秀な人物であり、また隊を率いるに十分な人望と信頼を兼ね備えている。Xとはよく現場で顔を合わせており、最早胸を張って友人と口に出来るような仲になっていた。

 

「しかし、あなたは毎度毎度面倒事に巻き込まれる。転属願いを出しては?」

「そんな事してもまた別の厄介事に巻き込まれるだけだから無駄だと思うんだ」

 

二人が和やかに話している奥では、部隊員が動けなくなった大鳥に縄を括り付け、収容室へと引きずりこんでいる。その様子を盗み見たXは、自らの行為を直ぐに後悔した。

 

そこには、全身が銃創でズタズタにされ夥しい量の血を流した大鳥が引きずられている姿があった。体中を覆い尽くさんばかりであった黄色い眼の群れはそのほとんどが閉じられ、ランタンを手にしていた一本の腕は力なく垂れ下がるばかり。

 

例え世にも恐ろしい化け物であっても、これほどまでに痛めつけられた姿を目の当たりにすれば、

 

「……大丈夫ですか、X?」

 

内心が態度に出ていたのだろう、カノンが心配そうに此方を覗きこんできた。

 

大丈夫だ、と軽く手を振って問題ないとアピールするが、カノンにはXの内心がわかっているのか更に続ける。

 

「X、あなたはオブジェクトに対して心を傾け過ぎています。彼等はそういった物(・・・・・・)なのですから。事案002-Gを忘れたのですか?」

「……」

 

その言葉に、彼女(・・)を思い出し、Xは言葉を詰まらせる。あの事件のことを考えるとどうしても、あの寂しくも焦がれるような願いが脳裏を過ぎってしまう。これこそがカノンの言っていたことなのだと解っていたとしても。

 

そうこうしている間に作業を完了させた部隊員達は、収容室から撤収を始めていた。カノンの元にも、部隊の一人が状況が終了した旨を報告しているようだ。

 

「X、我々は撤収します。あなたは所定のプロトコルに従い、追加で20分間業務を行って下さい。事態が再発生した場合は、我々が再度出動します」

「了解した。そうならないよう、微力を尽くすよ」

 

互いに敬礼を交わし、背中を向けて歩き出す。カノンは出口(そと)へ、そしてXは大鳥の元(なか)へと。

 

収容室に残ったのは数々の弾痕と、疲れたように歩くX、そしてボロ雑巾のように打ち捨てられている大鳥だけだった。

 

そうして歩みを進め、XはSCP-040-Loの元へと辿り着く。Xを優に上回っていたその巨体も、今や力なく地面に横たわる黒い塊のようになり、Xを見つめる瞳も、片手で数えきれるほどになってしまっていた。

 

 

"怪物とは、誰のことだったのでしょうか"

 

 

ふと、Xの脳裏に昔話の一節が過ぎる。怪物から皆を守るために殺し尽くした(怪物になった)、一羽の大きな鳥の化物語。

 

羽を全て引き毟って灯火を作り、翼を捨てて腕にランタンを携え、昼も夜もなく怪物を探すため目を開き続けた。自らの独善に従って、皆の命ではなく魂を救うために。

 

気がつくと、Xの掌は大鳥の身体をゆっくりと撫でていた。鳥とは思えないその感触に思わず寒気が走ったが、それよりも自身の行動に、つい先ほど忠告されたことを無意識的に破っている事実に衝撃を受け思わず大鳥から手を離してしまった。

 

自らの無防備さに思わず戦慄しながらも大鳥の方へ恐る恐る視線を移すと、黄色の瞳と交錯する。それは自身の身体に触れるという自殺行為にも似た行いをした人間に対する好奇心を感じさせる視線だった。

 

ふと、大鳥の身体が揺れていることに気付いた。よく見れば、ろくに動かない身体を左右に小さく揺らしているようだった。まるで、もっと撫でてとねだる子供のように。

 

その様子に、今度は自らの意志でゆっくりと手を近づけていく。制止を喚く無線機をポケットに突っ込み、ついに大鳥の身体に掌が触れる。そのまま丁寧に、労るように巨体を撫でていく。

 

大鳥はXへの視線を外すと、その瞳に虚空を映し出す。そうして徐々に、一つまた一つと開いていた瞳を瞼で覆っていく。残った目を気持ちよさそうに細めたのを最後に、大鳥は全ての目を閉じ、規則的な寝息を立て始めた。

 

「……寝ちゃったのか」

 

大鳥を撫で続けながら、Xは小さく呟く。幾多の命を奪った化け物とは思えないその姿に思わず苦笑する。これではまるで、どこにでもいる人懐っこいただの鳥のようではないか、と。

 

もちろんそんなことはなく、大鳥が世にも恐ろしい化け物であることに変わりはない。犯した罪は消えることなく、踏みにじられた生命たちは彼を決して許しはしないけれど。

 

 

せめてこの一時だけは、救済者に安息の有らんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




"怪物はいなくなりました。そして、この永久の灯火もいつか消えるでしょう。ゆっくりと、ぼんやりと…"'
- Angela

撫でて撫でておねだりする大鳥きゅん可愛い(一時的発狂)

というわけで、SCP-040-Lo"大鳥"の最終観測でした。いやあやっと書き終わった、これで心おきなく本家のSCP書けるぅ!

あと、しつこいようですが、書いて欲しいアブノーマリティがあったら、感想欄に書いて下さい!ぶっちゃけ次書くの特に決まってないです!そろそろSCPらしく、要注意団体て絡めたいなぁ

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