氷姫の操觚者   作:ユキシア

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経路

『オズの魔法使い』――――東の魔女であるアウグスタを倒した。

ラヴィニアを救いたいという一心で禁手(バランス・ブレイカー)に至り、氷姫と共にアウグスタを倒した影斗は神器(セイクリッド・ギア)を解除する。

荒れ吹雪いていた吹雪や雪雲は消え、氷姫も消えるように姿を消した。

「おい、おい……………」

「……………うぅん……………」

呼び掛けに反応があったことに安堵する。

「影斗!!」

「幾瀬、それにお前等まで……………」

戦いが終えて駆け付けてきた鳶雄達。

「良かった……………二人共無事で……………」

誰もが二人の無事に喜び、安堵するなかで影斗は小さく息を吐く。

「大袈裟だ。別に大したことはなかった」

その言葉に鳶雄達は苦笑する。全身の至る所に傷があるくせによくもまぁ強がれる、と。

きっと今も立っているだけで精一杯なのに、それでもラヴィニアを心配そうに見つめている。

言えば本人は否定するだろうから言わないではおくが。

『おい、お前ら。喜ぶのもいいが誰か、アウグスタの紫炎を早く確保しろ。それは―――主を渡り歩くセイクリッド・ギアでな。見逃すな』

「渡り歩く?」

初めて聞く情報に皆が眉をひそめていると―――。アウグスタがいた場所に見覚えのあるゴシック調の衣装を着た少女―――ヴァルブルガ。彼女の手には紫色の火が灯っていた。

『―――――――っ!』

その光景に一息吐いていた面々は驚くしかない。

ヴァルブルガはイタズラな笑みを見せて行った。

「んふふ♪ この炎はあげないわよん! 回収回収ってね!」

言うなり、ヴァルブルガは素早く去って行く途中、一度振り返る。

「いずれは私の彼氏さんにしてみせますわん! 楽しみにししてねん♪」

影斗に向けて情熱的な言葉を残して完全に姿を消す。

『くっ、手の速いことだ。仕方ない。バラキエルと合流後、すぐに撤収しろ。あとのことはこちらでどうにかする。五大宗家と一悶着あるのは面倒だからな』

アザゼルの命令を聞き、鳶雄たちは携帯電話でバラキエルと連絡を取り付ける。

撤収状況になったとき、古閑だけは自身のセイクリッド・ギアと共に森の奥へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

山間の村から戻ってきて十日が過ぎた。

影斗は傷の具合や体力、精神力、魔法力の消耗が激しい為にグリゴリの医療施設に入院している。

調子を取り戻して、あと数日で退院できる。

検査を終えて病室に戻ると、アザゼルがいた。

「どうだ、調子は?」

「ほぼ問題はない」

病室の椅子に座っていたアザゼルに簡潔にそう返す。

「そうか。それとお前さんの検査のついでに神器(セイクリッド・ギア)のことについてわかったことがある。お前の禁手(バランス・ブレイカー)は通常の禁手(バランス・ブレイカー)と異なる亜種だと判明した」

「亜種……………? 禁手(バランス・ブレイカー)にはいくつか種類があるのか?」

「本来、禁手(バランス・ブレイカー)に至った場合、能力が向上する能力増大(スケールアップ)だが、その担い手、時代によって禁手(バランス・ブレイカー)は変化する」

神器(セイクリッド・ギア)は所有者の想いに応える。

その想いが強ければ強いほどに、神器はそれに応え、進化するもの。

「確かにお前の神器(セイクリッド・ギア)は強い。直接的な戦闘力は弱くても、事象と運命を自在に操るその能力は脅威だ。それでも神滅具(ロンギヌス)には及ばない。あれは文字通り、神をも滅ぼせる代物だ」

語るアザゼルの言葉は重い。

神滅具(ロンギヌス)がいかに恐ろしい代物なのかその言葉と表情で悟るほどに。

「だが、お前さんはその神滅具(ロンギヌス)をも操った。それについて調べてわかったことがある。まず、お前と魔女っ子には見えない経路(パス)が繋がれていた」

経路(パス)……………?」

訝しむ影斗にああ、と返答する。

「お前の神器(セイクリッド・ギア)は他人の運命までも書き換えることができると言われているが、誰でもというわけでもないのはお前も知っているだろう?」

「ああ、運命を書き換えられるのは法典に記されている奴等だけだ」

影斗の法典は顔も知らない誰かの運命までも変えることは出来ない。

その法典に記されている自身と一部の者だけ。

「恐らくは法典に記された者たちとお前とで経路(パス)が繋がり、お前さんは経路(パス)が繋がれた者の運命を書き換えられる。そこで俺はこう推測した」

アザゼルは人差し指を指す。

「その経路(パス)が一定領域に入ると、お前さんは記されている者―――幾瀬鳶雄たちの神器(セイクリッド・ギア)を操ることができるのではないかと、な。魔女っ子と幾瀬鳶雄たちとでは経路(パス)に大きな差があったのがその証拠だ」

その言葉に目を見開きながらも影斗は尋ねる。

「つまり、俺の禁手(バランス・ブレイカー)は幾瀬たちの力も使えるのか?」

「可能性はあるな。ただ、氷姫で知っていると思うが、法典に記された内容通りにしか動かせれないようだが……………」

アザゼルは顎に手を当てながらこう言う。

「『氷姫の操觚者』。あの時のお前を例えるのならそれだ」

――――操觚。詩文を作る。文筆に従事する意味を指す。

「ルビを振れば……………『氷姫の操觚者(ディマイズ・プリィマ)』でどうだ?」

「興味ねぇ」

したり顔で中二病のようなことを告げるアザゼルを冷たく一蹴する。

そんな冷たい態度をする影斗にアザゼルはやれやれと息を吐く、と不意にその顔が真剣になる。

「気を付けろ。お前の神器(セイクリッド・ギア)は仮にも神滅具(ロンギヌス)をも操った異例の力だ。その力がどのように作用するかはお前次第だ」

「………………………………」

その忠告に静かに頷いて応答する。

しかし、目下の目標は決まった。まずは禁手(バランス・ブレイカー)のことについてよく知り、それを使いこなせれるようになること。

「影斗、検査から戻ってる!?」

「新井君!!」

病室に飛び込んで来たのは夏梅と詩求子の二人は酷く慌てている様子だった。

「ラヴィニアが目を覚ましたわ」

その吉報を聞いて内心で安堵する影斗は「そうか」とだけ答えると、二人に両腕を掴まれ、拘束されてしまう。

「ラヴィニアが影斗に会いたがってるのよ!」

「だから行こう!」

「………………………行くから離せ」

ずるずると引きずられていく影斗のその姿をアザゼルは苦笑しながら見ていた。

 

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