ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん   作:Remindre

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序章「聖杯」

ほの暗い図書館で、ロウソクの灯りだけを頼りに2人で1つの本を読む少女がいた。

自らの体には大きすぎる本を、1ページ1ページゆっくりと捲りながら、そっと呟く。

 

「膨大な魔力を以ってして、好きな願いが1つだけ手に入る聖杯・・・」

「その昔、聖杯に選ばれた者達が願いを求め戦った、聖杯戦争・・・」

「お互いを傷つけあってまで、叶えたかった願いは何なのかしらね」

 

本を捲る少女はパチュリー・ノーレッジ、悪魔の住む館「紅魔館」の頭脳ともいえる魔法使いだ。

その傍らでパチュリーの言葉を聞き、儚げな表情を浮かべながら、もう一人の少女が口を開けた。

 

「何でも願いが叶う・・・・そんなことが本当にあるの?」

「じゃあ・・・聖杯を手に入れれば、私の願いも・・・」

 

二人しか居ない図書館で、灯りの蝋がジリジリと溶けてゆく音だけが、静かに響いていた・・・。

 

 

 

 

 

「の~び~太~! いい加減、俺は我慢の限界だ!」

「今日の試合もお前のエラー、三振、その他もろもろのせいで5対65の惨敗だ!!!」

 

剛田武、通称ジャイアン。

今日も彼の怒号が、河川敷の野球場に大きくこだました。

 

「そうだぞ!のび太一人のせいで大惨敗だ!」

 

ジャイアンの太鼓持ち、スネ夫がジャイアンの怒りに同調して叱責する。

この叱責の対象になっているのはもちろん・・・・。

 

「そ、そんなぁ・・・・」

 

力無い声を出した、野比のび太。 彼だった。

 

「そんなにのび太さんばっかり攻めないでも・・・・」

 

草野球の応援に駆けつけた、紅一点の源しずかがジャイアンとスネ夫をなだめる。

だが、ジャイアンの怒りは止まらない。

 

「しずちゃんは黙っていてくれ!これは男同士の問題なんだ!」

 

足で地面をドンドンと叩きながら、鼻息を荒くする。

ジャイアンは、鋭い目線をのび太から、隣にいる男へと向けた。

 

「スネ夫!お前も三振してたよな?!」

 

「そ・・・それは、でっ、でも、プロ野球だって打率3割いけばいい方じゃないか・・・」

 

「つべこべ言うんじゃねぇ!俺のチームは打席ではとにかく打つ!」

 

「俺が言うんだ! そうだろ?!」 

 

ジャイアンの怒りが、彼の体をより大きく見せる。

逆に、彼の怒りを目の当たりにした、のび太とスネ夫の体はみるみるうちに縮んでいくようにみえた。

 

「・・・ていうか、なんだそのネックレス!」

 

今のジャイアンはどんな些細な事でも、怒りの対象となる。

そんな状態の彼にとって、スネ夫の首元にぶら下がっているそれは、目障り以外の何物でもなかった。

 

 

「あ、これかい?これは僕のおじさんがハワイに行ってきた時に買ってきたもので綺麗な勾玉がなんともいえず・・・・」

 

「うるさい!そんなもんつけてるから打てないんだ!」

 

一向に収まる気配のないジャイアンの怒号に、ますますスネ夫が肩を震わせ、体を小さくする。

ふーーーーっ、と長い溜息を付いたジャイアン。少し落ち着いたような素振りを見せつつ、

 

「このチームの状況をみて、俺は心に決めたことがある!」

 

そう宣言した。

 

「な・・・なんだい?」

 

やっと落ち着いたように見えるジャイアンの機嫌を損なわないよう、恐る恐るのび太が聞いた。

 

「のび太、お前を徹底的に練習で痛めつけて、立派な野球少年に俺が育てあげる!」

「それじゃぁ、いつもと同じで、ひたすらメッタうちにされるだけじゃないかぁ・・・」

「ちがう!痛めつけるのは今のお前じゃない!」

 

なにやらとんでもないことになりそうだ。不安げな表情を浮かべるのび太をよそに、ジャイアンの力説が続く。

 

「今ここにいるのび太には何をやってもだめだ!」 

「のび太はもうポンコツとして完成されている!これからの成長は見込めない!」

「そこで、だ! タイムマシンを使って過去に行くぞ!」

 

えぇ?! と思わずのび太が口を大きく開けた。

なにを言っているんだ、そんな表情をしていたのはスネ夫だけではなく、しずかもだった。

 

「過去に行って、まだ野球をはじめたての、のび太にみっちり教え込むんだ!」

「そして、このポンコツが完成する前に、野球少年としてのレールを敷きなおす!」

 

あまりにも突拍子が無いジャイアンの提案に、諦めも交えながら

 

「めちゃくちゃだよ・・・・結局、いためつけられるんじゃないか・・・」

 

肩を深く落とし、のび太が言った。

 

「つべこべいうな!そうと決まったら、のび太の家にいくぞ!!!」

 

バットを空に掲げ、ジャイアンが歩き出す。

止めても無駄、のび太はこれまでのジャイアンとの付き合いで分かっていた。

これ以上の反論はせず、のび太は3人を連れて帰路につくことにした・・・。

 

 

「・・・というわけなんだ」

 

「相変わらずジャイアンは無茶を言うなぁ!!」

 

のび太は、自分の部屋で彼の相棒であるドラえもんに事のいきさつを説明した。ドラえもんもやれやれ・・・といった表情を浮かべる。

 

「ねぇ、ドラえもん、お願いだよぉ、何かひみつ道具で・・・」

 

いつもの泣きつきだ。さすがに同情を覚えたドラえもんは、ポケットに手を入れようとしたが・・・・

 

「それはダメ!」

 

と、手を元の位置に戻し、のび太に諭し始めた。

 

「ひとりの男として、道具に頼らず運動ぐらい軽くこなしてみせろ!」

 

「そ、そんなぁ・・・・」

 

そこで、突然のび太の部屋のふすまが勢い良く開く。

 

「話はまとまったか?」

 

開いたふすまの先には、のび太に外で待たされていたはずのジャイアンら3人がいた。

どうせ、ひみつ道具を出して助けてもらおうとゴネている。そんなことはジャイアンも、のび太との長い付き合いでお見通しだった。

 

「さっさとタイムマシンで過去にいくぞ!」

 

ジャイアンがのび太の学習机の引き出しに手をかけた。

 

「あっ!勝手にタイムマシンを触るな!」

「・・・もう引っ込みがつかない感じだね」

「のび太くん、諦めよう・・・」

 

勝手に引き出しを開けられたドラえもんも、諦めモード。

こうなったジャイアンは引かないからだ。

 

「うぅ、過去の僕がイビられるのをただ見ていなきゃいけないのか・・・」

 

虚しすぎる言葉を最後に、のび太達は、引き出しの中への入っていった。

乗り込んだ先で、ぐねぐねと歪んだオーロラのような周りを見たスネ夫は、何回みても不思議だなぁと口をポカーンと開けていた。

そんなスネ夫をよそに、ドラえもんは着々と発射準備を行う。

 

「のび太くんが野球を始めたのは・・・このぐらいかな」

 

ポチポチとボタンで行先を設定した後、赤い大きなボタンを勢いよく押す。

 

「しゅっぱ~~つ!」

 

「ドンドン行けーーー!!!」

 

ジャイアンの号令をよそに、のび太は相変わらず陰鬱な気分だった。

しばらく進むと、しずかの目にあるものが移りこんだ。

 

「・・・・・・・・・あら? スネ夫さんの胸元が・・・」

 

先ほど、ジャイアンからいらぬ反感を買ったネックレスだ。

しずかの言葉を聞いたのび太が、スネ夫を見て驚きながら、

 

「あっ!!! スネ夫の勾玉のネックレスが光ってる!!!」

 

と叫んだ。

 

「そんなもん捨てちまえ!!」

 

ジャイアンの反感は未だに収まっていない。

でも、これは僕のおじさんがハワイで買ったものだ・・・とジャイアンに小さく反論したところで、のび太とは違う叫びが聞こえた。

 

「あーーーっ!!!」

「なんてことだ!タイムマシンの動きがおかしい!!!!」 

「設定したよりもどんどん過去に向かっている!!」

 

ドラえもんだった。向かっている時空を示すメーター針が、高速でどんどん回っている。ドラえもんの様子や、メーターの挙動から明らかに何か緊急事態だと悟った一同は、慌てはじめる。

すると、それに反応したように、スネ夫のネックレスもまた新しい表情を見せた。

 

「わぁーっっ!ネックレスが点滅しはじめた!!!!!」

 

「きゃっ!タイムマシンの揺れが強くなってきたわ!!」

 

「おい!ドラえもんどうなってるんだ!どうにかしろ!!!」

 

「むちゃ言うな!!」

 

ネックレスの点灯を皮切りに、どんどんと混乱が深まる。

 

「あーっ!どんどん時代が・・・平安・・・奈良・・・縄文・・・古代まで!」

 

「うわーーーーーーーーん!ママーーーー!!!」

 

「とりあえずそのネックレスうっとおしいから捨てろ!!!」

 

「光がどんどん強く・・・・・・・!!!うっ、うわーーーーーー!!!!!」

 

のび太の叫びと共に、スネ夫のネックレスの光に包まれたタイムマシンはどこかへと消えていった・・・。

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