ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
のび太の敗戦を受け、フランは考える。
「(次・・・私が出たとしたら、きっとお姉さまが出る)」
「(慎重に、考えなきゃ)」
「(・・・・)」
目を瞑って思慮に耽っていたフランがゆっくりと目を開け、のび太の肩に手を置く。
「・・・のび太、ごめん、もうちょっとだけ休みほしいかな」
「えぇ?!でも次はあっちに攻守の選択権が・・・」
「もしレミリアに攻められたら・・・休めるほど長く避けれるかわからないよ?!」
のび太は当然困惑した。
自分でやれるだけ、フランの休息時間を稼ぎ、もう役目は終わったと思っていたからだ。
慌ただしい様相の、のび太チームを見つめ、レミリアが笑った。
「ククク・・・情けない妹ねぇ」
「咲夜、次はあなたが行きなさい。」
「そして、守りでいいわ。」
「無駄に弾幕で体力を使わないで、あのしょっぱい攻撃を避ける方が楽よ」
「はっ・・・」
フランが、次は咲夜が来る。と分かった時、のび太の背後で、のび太にだけ聞こえる様に小声で語り始めた。
―――のび太、今度は私のスペルを使って
―――あとちょっと、あとちょっとだけ時間がほしいの
―――えっ?・・・わ、わかったよ
場の様子を見つめていたパチュリーが、次の戦いに向けた両チームの意向を確認をする。
「さ、内容は固まったかしら?」
「・・・僕が出るよ」
「私が・・・守りで出ます」
「わかったわ・・・第3試合、のび太(攻)vs咲夜(守)はじめっ!」
戦いが始まり、のび太と咲夜が宙に浮く。
空で互いに対峙し、のび太は胸の前で1枚のスペルカードを軽く握りしめ、目を瞑った。
「(フラン、君のスペルを・・・借りるよ!)」
「スペル発動!カゴメカゴメ!」
のび太のスペルカードが展開されると、会場の一部がざわつく。
霊夢と一緒に戦いを見ていた魔理沙はその一部だ。
「おっ、おい!あれは・・・・フランドールのスペル!」
驚きを隠せないのは、のび太陣営もだった。
スネ夫が口を「あ」の字に開いたまま、弾幕を見つめていた。
先ほどのレミリアとの戦いでのスペルカードを見ていた分、余計に圧巻される。
「の、のび太のやつ、いつの間にあんな打ち方を・・・」
続けてジャイアンも
「あの、のび太が信じられねぇ・・・」
のび太が展開したスペルカード「カゴメカゴメ」はフランドールのスペルカード。発動と同時に、咲夜の周囲を緑色の弾で囲む。
包囲するその弾幕のラインは、綺麗な立方体になっており、多少の隙間は出来ているものの、とても人が通れる大きさではない。
緑色の弾幕は、動くことなく静止していた。 咲夜は弾幕の立方体に閉じ込められた形になる。
弾の密度・展開精度、どれを取っても先ほどののび太から発動しているものとは思えないぐらい、高度な代物だ。
未だに驚愕の表情を浮かべている魔理沙へ霊夢が話しかけ始める。
「・・・のび太には、パチュリーの魔法入りのスペルカードが渡されてるのよ」
「たぶん、パチュリーの魔力が入っていて、それを使用して弾幕を展開させている。だから、のび太でもあの量の弾幕を展開できる」
「そして、きっとフランドールが自らのスペルカードをのび太にコピーさせたのね・・・」
戦いをステージ上で見つめるレミリアも多少の驚きはあっただろうが、それを表面に出すことはなかった。
「・・・・ふぅん。あの子が、他の人に自分の力を預けるとはね。」
「だから、どうした?」
対した問題ではない、自らの中で問題を完結させたレミリアは咲夜へ声を飛ばす。
「咲夜!よく見なさい!!」
「何回も見た、フランのスペルでしょう?!」
「むしろ、その子の力じゃ、そのスペルを100%使いきれないわ!」
「わかっています!」
レミリアと咲夜を聞いたフランは、どんな表情をしていただろうか。
図星だ、と額に汗を垂らすか。
それとも、のび太を蔑む姉に憤慨するか。
どれも違った。フランは、小さく微笑む。
「何を笑っているの・・・フラン?」
「私と同じスペル・・・それをただ渡すと思う?」
「咲夜を、お姉さまを、私の真似事スペルで倒せるなんて・・・そんな風に思っていないよ」
「あのスペルは・・・もう、のび太のスペルカードだよ!」
この時、のび太は緑色の弾幕で咲夜を囲んだ、次の弾幕を発射する準備に取り掛かっていた。そして、その頭の中には決勝戦に臨む前の風景が写し出されていた。
そう、フランから決勝戦に向けてスペルが必要だと言われ、目の前で彼女の技を見せてもらった時のことを。
――――――――――
「スペル発動!カゴメカゴメ!」
「す・・・すごい・・・・」
緑色の弾幕で敵を囲み、動きを制限した状態で大玉を射出。
わずかにしか避けるスペースが無い状態で大玉を避けるのは至難の業だ。
そして、避け切った後には、包囲していた緑の弾がランダムに動き出し、囲まれていた者は大玉と併せて、避けることに集中しなければならない。
大玉、動き出す緑色の弾を避けたかと思えば、その時にはまた、新しい弾に囲まれている。避けきるのには、なかなか神経を研ぎ澄ます必要があるスペルカードだ。
「これに、のび太なりのアイデアを組み合わせて、使ってみて」
「のび太・・・・ここまでこれたのはのび太のおかげ」
「次の試合、私は絶対負けたくない。だから、もう1戦だけ力を貸して。」
「・・・・うん。」
「・・・カゴメカゴメの、緑の弾幕は、網みたいになって配置されてるんだね」
「そうよ、これで敵の動きを制限したところを、大玉で直接狙うの」
「この網状の弾幕・・・僕のすきな遊びを応用してもっと難しくできないかなぁ」
「好きな遊び・・・?」
「うん・・・あやとりっていうんだけど・・・・」
――――――――――
緑の弾幕で立方体を作り、咲夜を囲んだのび太は大玉を射出した。
そして緑の弾幕がランダムに動きだす。と、同時に次に咲夜を囲む緑の弾幕が徐々に展開されていった。
咲夜は大玉を避けつつ、次に自らを囲むであろう緑弾の展開の様子を見つめていた。
そして、咲夜は気が付いた。
「(やはり・・・フランお嬢様でなければ、このスペルは使いこなせない!)」
「(1回目はフランお嬢様と同じように立方体で場を区切った・・・これだと、どこに避けても、制限されるスペースはほぼ一緒)」
「(だけど、2回目のこの緑色の弾の配置は・・・雑ね。まるで蜘蛛の巣のように網目を張っているだけ。その証拠にほら・・・!)」
咲夜が移動したのは、先ほどまで咲夜が閉じ込められていた位置と、のび太までの距離のちょうど中間地点あたりだった。
そして、そこは他に比べて弾の感覚が広い。ちょうど移動し終わった頃、咲夜の上下左右に緑色の弾幕が展開されるが、先ほどに比べるとあまりにも広かった。
「・・・・・わかってた。抜けるとすれば、そこだってこと!」
のび太が呟いた瞬間、両腕を胸の前に出して、それをゆっくりと左右に広げていった。
そう、まるであやとりの最後に技を解く時のように。
その瞬間、緑の弾幕が動き出す。動き出した弾幕を見つめ、咲夜が回避の体制を取ろうとするが、固まってしまった。
「避ける・・・隙間がない・・・・?」
ゆっくりと動く緑色の弾は徐々に弾同士の間隔を詰めながら咲夜がいる、弾幕の中心へと集まってきた。
「2度目の囲みは・・・大玉の射出をなくす代わりに、ある程度緑色の弾を自由に動かせるように力を使ったよ」
「そして、この緑球は・・・あやとりだ!」
のび太は、網状の緑球をあやとりに見立てた。
わざと、中心にわかりやすい大きな逃げ場を与える。
だが、緑色の弾幕をのび太の意思で動かし始めた時、すべての網が中心に集まるように弾幕を配置をしていた。
あやとりをほどく時、一度中心に紐が集まって最後には一つの輪になって戻るときのように。
ゆっくり、ゆっくりと弾幕が近づいてくるのを見て、咲夜はそっと呟いた。
「申し訳ありません。お嬢様」
次の瞬間、四方から迫りくる弾幕に被弾し、パチュリーが声を上げる。
「勝負あり!!!!」
またも、ただの人間の所業で会場が沸いた。
もちろん、その中にはジャイアン達の声も混ざっている。
「お・・・・おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「あの緑の弾幕の形、まるでのび太さんのあやとりみたいな形だったわ・・・」
「そうか!のび太くんが得意なあやとり・・・彼なら、どこに、どういうふうに隙間ができて、どこに人が逃げれるか・・・」
「あやとりで考えるとそこまでわかるんだ!」
「最後は、あやとりみたいに、弾幕の端を引っ張って、逃げ込んだスペースを潰したんだ・・・・」
スネ夫が呟く。
「ほんとはのび太って頭いいんじゃ・・・」
~決勝戦 途中経過~
第1試合 ○フラン(攻) vs ×咲夜(守)
第2試合 ×のび太(攻) vs ○レミリア(守)
第3試合 ○のび太(攻) vs ×咲夜(守)
メイド服のいたる所が敗れた咲夜が、主の下へと戻る。
「申し訳ありません・・・・」
「・・・・まだ2敗よ」
「ここから2戦、私が勝ち続ければ良いのよ」
レミリアの表情は先ほどまでの嘲るようなものとは対照的だった。
そして、その声は低く重い。
逆に、のび太がフランの下へ戻ると、満面の笑みでのび太をフランが迎えた。
「のび太!ばっちりだったよ!」
「うん!フランのおかげだよ!ありがとう!!」
「ううん、のび太のアイデアだよ!もうそれはのび太の立派なスペルカードだね!」
「・・・おかげで、私はもうばっちり休めたよ」
フランが目線をのび太から動かす。
その先に移るのは、真っ白なドレスに身を包んだ彼女。
「・・・・さて久々の姉妹喧嘩とでも行こうかしら?」
次の戦いは、フランとレミリアとなりそうだ。
のび太はそう感じ、同時に妙な胸騒ぎがした。
何かが起こってしまう・・・・・と。