ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん   作:Remindre

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軋轢と過去

吸血鬼姉妹の視線が壇上で交錯する。

次の試合をフランが制すれば、優勝。

この一試合は、優勝をかけた重要な試合。

だが、のび太はフランの表情を見て、それ以上に何か想う所があるように見えていた。

また、レミリアのフランに対する嫌悪感。それも今日の会話の中からひしひしと感じ取っていた。

フランはパチュリーを間に挟み、レミリアを対峙し次試合の展望を想像する。

 

「(色々考えた・・けど、きっと私のスペルは見切られる)」

「(・・・なら)」

「この試合、守りでいくわ」

 

「・・・ふん」

 

フランの選択に対し、レミリアは驚いた表情を垣間見せたが、すぐに毅然とした態度へと戻り、鼻で嗤った。

パチュリーはフランの意思を確認したところで口元へマイクを持っていく。

 

「決勝戦第4戦、フラン(守)vsレミリア(攻) はじめ!」

 

開戦と同時に二人は宙へと舞う。

そしてある程度の高度で互いが止まった所ですかさずレミリアがスペルカードを発動した。

 

「獄符『千本の針の山』」

 

レミリアを中心に、細長い針のような弾幕が真っすぐと射出されると同時に、弧を描きながら鋭いナイフが後を追ってフランを襲う。

この弾幕の密度は、のび太から今日の大会で見た中で間違いなく一番の密度だった。

霊夢と魔理沙は観客席で息を飲みながら、その弾幕を見つめていた。

 

「霊夢・・・・あのスペル・・・」

 

「えぇ・・・そうね。いくら聖杯というどでかい餌がぶら下がっているからといって、こんな大会で使うようなものじゃないわ」

 

レミリアと今まで対峙したことがある二人は、感じていた。

弾幕の中に秘めたる、レミリアの激情・・・フランに対する憎悪を。

そして、それはのび太も感じていた。

当然、弾幕を目の当たりにしたフランも同じだ。

自分のスペルカードは避けられてしまう、ならば私が同じようにレミリアのスペルカードを避け切って勝つ。その思惑は、レミリアの鋭利な感情で揺らぎつつあった。

 

「フラン、あなたは力も禄に扱えない未熟な存在」

「そして、あなたの実力に見合わない強大な能力は危険そのもの」

「何故、此処へ出てきた? 何故、あなたは・・・・!!!!」

「全て・・・・あなたが壊してしまった!」

 

声を張り、目を吊り上げ、血管を額へ浮かばせ、弾幕を加速させる。

レミリアのフランに対する怒号は、彼女を怯ませるのに十分すぎた。

この時、のび太の視界にふっ、と嫌なビジョンが浮かんだ。

フランが、負ける。それも、圧倒的な差で・・・。

のび太は渇ききった口内に残ったわずかな唾液を、喉を鳴らしながら飲み込む。

すると意識の外から、突然、のび太を呼ぶ声がした。

 

「のび太様・・・お話ししたいことが」

 

そこに居たのは、対戦相手のもう一人のメンバーである十六夜咲夜だった。

突然の接近にのび太が思わず狼狽えた返事をするが、咲夜はそのまま続けた。

 

「妹様・・・・フランお嬢様は、知ってのとおりレミリアお嬢様の妹君です」

 

「聞いたよ・・・でも、なんでレミリアはあんなにフランのことを・・・」

 

「そう、レミリアお嬢様はフランお嬢様をひどく嫌っている・・・」

「でも、昔は、本当に仲睦まじい姉妹だったと・・・私は聞いています」

 

咲夜の表情は、先ほどまでの瀟洒なものではなく、どこか悲しみを帯びたものに変わっていた。

 

「昔は・・・?」

 

「えぇ・・・・」

「全てはあることが原因と・・・聞いています」

「それは今から500年ほど前のお話・・・・・・」

 

 

―――――――――

 

大きな湖のほとり、二人の少女は日傘を差しながら、そこから見える風景をゆっくりと見渡していた。

片方の少女は、白いドレスに同色のナイトキャップのような帽子を被っており、帽子から僅かにはみ出る、鮮やかな青髪はやや内巻きのクセが付いていた。瞳は紅く、肌は透き通るような白さだった。

もう片方の少女は、赤いドレスに白色のナイトキャップ、髪は金髪、瞳は紅く、肌も一方の少女と同じぐらい白かった。

そこに佇む少女達は、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットだった。

 

「ここが・・・幻想郷」

 

湖からの風に髪を揺らしながら、レミリアは遠くを見つめていた。

 

「お姉さま・・・ここなら安全なの・・・?」

 

フランは憔悴しきった声でレミリアの袖を小さく摘まむ。

レミリアはフランを安心させようと、頬笑みながら、袖を摘まむ手を握った。

 

「えぇ、きっとね。あそこにいたような・・・。」

「私たちを苦しめた忌々しい連中はきっとここにはいないわ」

「ここで、2人で生きていきましょう」

 

「うん・・・」

 

2人の吸血鬼はこの後、湖に浮かぶ島に居住を始めた。

これが、彼女達の幻想郷入りであった。

 

 

 

彼女達が幻想郷に紅魔館という自らの居所を作ってからしばらく経った後のこと。

レミリアは大広間の自ら専用の玉座に座り、頬杖を突きながら、小さなため息を吐いた。

 

「この屋敷ができてからというもの・・・なかなか退屈ねぇ」

 

すると、そんな声を聞いていたかのように大広間の入り口が勢いよく開く。

その先にはフランが居て、猛烈な速度で入り口から玉座まで駆け抜けた。

 

「お姉さま!お姉さま!」

 

「どうしたの?そんなに騒がしくして・・・・って?」

「誰? その子」

 

レミリアは、フランの背にもたれていた人間を見つけた。

その人間の見た目は、見た目だけだとレミリアたちといくつも変わらない幼さの少女だった。

 

「知らない!けど、庭に倒れていたの!!」

 

「ふぅ~ん・・・。食べてもいいけど・・・」

 

「だめ!」

 

「はいはい・・・わかったわよ。」

 

この時、レミリアは少女を大切そうに扱うフランを見て、わずかに微笑んだ。

微笑んだのは、フランの優しさに触れたからだった。

 

「(この子は・・・・本当に吸血鬼なのか、と時々思っちゃうわね)」

「(人間を見ても食べようとしないし、血も欲さない)」

 

「さて・・・じゃあ、別の部屋にでも寝かせて安静にさせましょうか」

 

「うん!」

 

レミリアとフランは、少女を空いている部屋へ運び、ベッドで寝かせた。

少女に目立った外傷は無く、呼吸もしっかりとしていた。

フランは少女のベッドの傍でずっと少女の様子を見つめており、レミリアはそっと部屋から出て大広間へと戻った。

しばらくし、フランも睡魔に襲われ、ベッドの傍らの椅子に腰かけた状態で上半身だけをベッドに倒れこまれせ、眠りについた。

そして、そこから次の夜だった。

 

「ん・・・・」

 

「!!! あっ、起きた!」

 

少女が上半身を起こした際、フランもその動きに反応し目を覚ました。

意識を取り戻した少女が見慣れない光景に目を丸くしていたところ、フランは優しく声をかけた。

 

「大丈夫?どこも痛くない?」

 

「う・・・うん・・・」

 

「私はフランドール・スカーレット。フランって呼んでね!ここは、紅魔館で、私たちのお屋敷なの!あ!私たちっていうのはね、私のお姉さまもここに住んでいて、お姉さまの名前はレミリアって言ってこのお屋敷の主で―――」

 

 

 

 

「そう・・・目を覚ましたの。」

 

目を覚ました少女を連れて、フランは大広間のレミリアへと報告に来ていた。

少女は一つ一つが見慣れないことであること、状況の整理もままならない状態で連れてこられたことから、おどおどとしてフランの陰に隠れていた。

 

「・・・ねぇ?陰に隠れていないで、顔をこちらに見せて頂戴。」

「大丈夫、何もしないから。」

 

「うん・・・」

 

少女はフランの後ろから横に移動する。

レミリアは少女を見つめ、萎縮させないよう、優しく微笑みながらいくつかの質問をした。

 

「あなたの名前は?」

 

「・・・わからない」

 

「・・・そう。じゃあ、あなたはここの外で倒れていたの?」

 

「・・・それも」

 

「わからない、か。」

「・・・自分の住んでいたところは?」

 

少女は首を横に振る。

わからない。自分で自分のことがわからないといったことに不安を覚えたのか、少女の表情に陰りが見え始める。

フランはそれを感じ、レミリアの問いに割って入った。

 

「あのね、この子、一切の記憶が無いみたいなの」

「でも、ぜったいに悪い子じゃないと思う!」

「だから・・・その・・・」

 

フランの言いたいことは、十二分にレミリアに伝わっていた。

だから、レミリアはフランが言う前に口を開いた。

 

「いいわよ。ここに住んでも。ただし、その子が住みたい、っていうならね」

 

次の瞬間、フランが数回飛び上がり、満面の笑みを見せた。

そして、少女の方に顔を向け、両手を掴んだ。

 

「ね?お姉さまはああ言ってる!どうする?」

 

「・・・ほんとにいいの?」

 

「えぇ。気にすることは無いわ」

 

「じゃあ・・・ここにいる・・・!」

 

「わーい!よろしくね!!!お姉さま!だいすき!」

 

少女の両手を上下に揺らしたかと思えば、玉座に座るレミリアへと飛びかかるフラン。

レミリアはそれを受け止め、微笑み、頭を撫でながらフランを抱きしめた。

こうして、彼女達に新たな家族が増えた。

この、微笑ましい生活はいつまでも続くと、この時レミリアは信じて疑っていなかった。

 

 

 

そう、この時は。

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