ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん   作:Remindre

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開花と決別

少女が紅魔館に住みつき始めてから半年ほどが経った頃、大広間で遊ぶフランと少女を見つめながらレミリアは物思いに耽っていた。

本当に、ここで彼女の一生を過ごさせて良いのか、ということである。

もちろん、レミリアとフランは彼女が嫌いだとかそういう感情は一切無いい。

ただ、彼女にも記憶が無いだけで、どこかに故郷というものがあり、そして彼女の帰りを待つ者がきっといる。

だから、彼女には自分の故郷を知り、帰るか、それとも紅魔館に残るかどうかという選択肢ぐらいはあってもいいだろう。

レミリアはそう考えていた。

 

「(あの子は、間違いなく人間。)」

「(人里の行方知らずの子供たちの掲示の中にはあの子らしき子はいなかった)」

「(と、なると私たちと同じく外界から来た人間か?)」

「(・・・もう一度、人里に紛れて情報を集めてみるか)」

 

「フラン、私はちょっと出るわ。おとなしく館にいるのよ」

 

「はーい」

 

「あなたもね」

 

「はーい」

 

二人は返事をした後、また遊び始める。

その光景を見て、レミリアは二人目の妹が出来たようだ。と小さく微笑みを浮かべながら大広間を後にした。

紅魔館から飛び立ち、人里へと向かったレミリアは、その後しばらく、独自のルートで情報収集を行った・・・が。

 

「(今回も特に収穫なし・・・か)」

 

今日はもうここまでにしよう。とレミリアが人里から出ていこうとした時、3人ほどの女が井戸端会議をしているのを見かけた。

こういう所に案外、有益な情報が転がっていることもある。そう考えたレミリアは少し聞き耳を立ててみることにした。

 

「最近、妖怪狩りをしている命知らずがいるらしいわよ」

 

「なにそれぇ・・・。大体、妖怪なんて狩ったって何の得にも・・・」

 

「だよねぇ・・・」

 

レミリアはこの会話を切り捨て、その場から歩を進めることにした。

 

「(妖怪狩り・・・か。」

 

レミリアの表情が少し強張る。

右腕を少し摩りながら、彼女はその場で目を瞑り幻想郷に来る前のことを少し思い返した。

だが、すぐ我に返り目を開けた。

 

「(・・・館へ帰ろう)」

 

その場から飛び立ち、二人の妹が待っている館へと向かう。

しばらく飛び立ち、紅魔館が視界に入ったきた辺りでレミリアは違和感を覚えた。

様子がおかしい。それは、紅魔館へ近づけば近づくほど、より確信へと変わってゆく。

そして門の前に降り立った時、彼女は愕然とした。

 

「・・・これは、一体!!!」

 

視界に広がっていたのは、窓が割れ、壁のいたる所が傷ついた紅魔館だった。

そして、その場は妙に静まり返っていた。

 

「フランと・・・あの子は無事なの・・・?!」

 

レミリアは両足に力を込めて、全速力で館の中へと入る。

この館を出てくる前、二人が遊んでいた大広間へ最短の道のりで進み、その部屋の扉を強く開いた

 

「フラン!!!」

 

扉を開くと同時に、突き刺すような視線がいくつもレミリアを向けられた。

その場には、男が10人程。そしてその奥には、衣服がボロボロになり、ひどく傷ついたフランが居た。

 

「お姉・・・さま」

 

フランは背に少女をかばい、男達と少女の間に居た。

男達は誰一人傷ついていない。レミリアは知っていた、フランは吸血鬼でありながら、並大抵の妖怪や人間より強大を力を秘めていながら、それを使えないことを。否・・・使わないことを。

 

「貴様ら・・・・一体、何の真似だ!!!」

 

レミリアの怒号が大広間に響き渡る。

すると、男の一人が歩みを進めてレミリアに顔を向けた。

 

「・・・俺の顔を覚えていないか?」

 

そう言った男の顔をレミリアが見つめる。

男の顔をはっきりと、レミリアが認識した瞬間、無意識にレミリアは右腕をさすった。

 

「貴様は・・・・!」

 

その男は、レミリアとフランにとって、二度と相まみえたくなかった存在。

レミリアとフランが幻想郷入りする前、彼女達を狩ろうとしていた存在・・・吸血鬼狩り一派の長だった。

彼女達姉妹は、幻想郷入りする前、外界でその一派に追われ、ひどく傷つけられた。その時、レミリアは右腕を銀の剣で切り裂かれていた。あの時の痛みが、レミリアの右手に蘇る。

銀は、彼女達吸血鬼の弱点。銀に触れるだけで焼けるような激痛が、それによって負った傷は通常のものと比べてひどく治りが遅い。

吸血鬼狩り一派は、彼女達の弱点を知り尽くしていた。

そして、レミリア達はこの頃若かった。殺しのプロフェッショナルの経験は人間と吸血鬼の身体能力の差を十二分に埋めていた。

 

「私を狩るために・・・わざわざこんな世界まで来たのか」

 

先ほどまでの叫びとは打って変わり、落ち着いた声でレミリアは問う。

すると、男は眉間に皺をよせ、口を開いた。

 

「こんなところまでお前なんかを追う気はなかったさ・・・」

「あの子を・・・お前らの下にいると知るまではな!」

 

あの子と呼び、指さしたのは、フランの背にいた少女だった。

少女は目を大きく開き、驚きの表情を浮かべていた。

 

「まさか・・・私の娘に手を出すとは」

「傷一つ無く、再会できたのは不幸中の幸いか・・・」

「ともかく・・・今回は、容赦せんぞ。お前を俺は殺す。」

 

無論、レミリア達はその少女を攫ってなどは居ない。

そして、吸血鬼一派に繋がりがある事も、知らなかった。

何の因果か、少女は幻想入りし、そのショックで記憶をすべて失い、レミリア達の下へとたどり着いてしまった。

ひどく縺れ合った運命に、レミリアは心をひどく震わせた。

 

「・・・さぁ、返してもらおうか」

 

男はレミリアに背を向け、フランと少女の方へとゆっくり近づく。

手には、あの時の剣を構えて。

 

「其処をどけ!忌まわしき吸血鬼め!」

 

「ひっ・・・」

 

「フラン!」

 

怯えて動けないフランを察して、振りかぶった剣よりも先にレミリアが動いた。

男とフランの間に体を入れ、フランを抱くようし、男に背を向けた。

一閃、レミリアの背、右肩から左脇腹に至り激痛が走る。

 

「・・・・・・・う・・・・・う」

 

「お姉・・・・・さ・・・ま」

 

既に満身創痍のフランが弱弱しい声で、前を見つめる。

フランを見つめ、大丈夫、大丈夫と小さく呟く。

 

「いい気味だ。」

「さぁ、終いだ」

 

次の瞬間、レミリアの激痛が胸へ。

先ほどの一撃が、まるで無くなったかのように、その痛みは全てをかき消した。

揺れる視界、朦朧とする意識。レミリアはその中で必死に言葉を紡ぐ。

 

「ウア・・・・ン・・・・いげ・・な・・・さ」

 

「・・・お姉様? ・・・・・おねえ・・・さま?」

 

貫かれた胸から噴き出す飛沫を顔に受けたフランの視界は紅い。

紅く染まった姉が、目の前で膝から崩れ落ちた。

 

「・・・・・・・」

 

そして、レミリアは沈黙する。

 

「お姉様が・・・お姉様が・・・・」

「あ・・・・あ・・・・・・・・・・」

「おねえさまおねえさまおねえさまおねえさまおねえさまおねえさまおねえさま」

「あ、あ、あ、あ、ああ、あああ、ああ、ああ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

酷く痛む体の節々。右腕、左腕、右脚、左脚・・・全てが動くことを確認。

四肢はまだくっ付いている、そんなことを思ったレミリアは、状況を全て思い出し、急いで上半身を起こした。

 

「私・・・生きてる・・・?」

 

無理やり起こしたせいで、胸が痛む。

貫かれた箇所は、何とか心臓の端っこの方だったようだ、と自分が生き永らえた理由を把握した。

そして左右に首をゆっくりと振り、静寂と血の匂いに包まれた大広間を見渡す。

 

「あいつら・・・は・・・・」

 

レミリアが後ろを向くと、そこには痛ましい光景が広がっていた。

 

「死んで・・る」

 

腕が無い者、頭が爆散しているもの。

その視界が頭の中に記憶されるだけで吐き気を催すような死体が其処ら中に広がっていた。

 

「フラン・・・フランとあの子は・・・どこ・・・ゲホッ!ゴホッ・・・フラ・・ン」

 

血反吐をまき散らし、視界が揺れるレミリアは首を左右に揺らし、何とか意識を保とうとする。

そして、玉座の方を見つめると床に座りこむ人影がぼんやりと見えた。

レミリアに背を向ける様に座り込むその背には見慣れた異形の羽が付いていた。

 

「あそこにいるのは・・・フラン! 生きて・・・いたのね!」

「いま・・・そっちに・・・いくわ」

 

足を引きずりながら、ゆっくりと玉座へ近づくレミリア。

近づいていくと、フランがすすり泣いているような、それとも何かを囁いているような声がする。

怖かったのだろう、姉が死んだと思ったのだろう。一刻も早く、寄り添ってやりたいが、言う事を聞かない体にレミリアはもどかしさを覚えた。

 

「・・・・い・・・・・さい・・・・・・・ご・・・・・・・さい」

 

近づく度にはっきりと聞こえる、フランは何かを囁いている。

そして背中越しでも震えている事が分かる。はやく、はやく抱きしめてやりたい、そう思ったレミリアはようやく、フランの背から片腕の距離に辿り着いた。

優しく、肩に手を置こう。そう思ったレミリアだったが、何かに気が付き、動きを止めた。

フランの囁きが、この距離ならはっきりと聞こえる。

 

「・・・なさい・・・ごめんなさい・・ごめんなさいごめんなさい」

 

「・・・フラン?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「フラン?!」

 

レミリアは両腕をフランの両肩に乗せ、体をこちらへと向かせる。

振り返ったフランが、何を思っていたのか。

 

レミリアは何も感じ取れなかった。

 

無・・・フランはただ、虚空を見つめ、ひたすらに涙を流していた。

 

そして、彼女は抱きかかえていた。

 

もう一人の妹の頭部を。

 

それは、それだけだった。

 

そう、それだけ。

 

その頭には何も付いていない。

 

もう一人の妹は、苦悶の表情を浮かべ、涙が頬を伝った跡が残った状態で、フランに抱きかかえられていた。

 

 

 

―――――――――

 

 

全てを聞いたのび太は、思わず口を片手で覆う。

そして、恐る恐るその先を聞いてしまう。

 

「それ・・・って」

 

「そう、フランお嬢様が殺してしまったのです。」

「フランお嬢様は、レミリアお嬢様が目の前で殺されたと思ったのをきっかけに」

「ご自身の体に秘めたる力を解放しました」

「その結果、自分で力を抑えこむことができず・・・」

「吸血鬼狩りの男に連れられていた少女は巻き添えに・・・・」

「それ以降、お嬢様は紅魔館の地下にフランお嬢様を495年もの間、幽閉しました」

 

「そんな・・・・フランはわざとやったわけじゃ・・・」

 

「お嬢様も、分かっています。」

「ただ、辛かったのでしょう」

「自分のもう一人の妹を殺した、実の妹を見るのが・・・」

「のび太様・・・・私からのお願いです。」

「どうか、フランお嬢様のお気持ちを察してあげてください。」

「実の姉に、495年もの間幽閉され、忌み嫌われていた絶望を、」

「自らの手で、自らの妹を殺めてしまった絶望を・・・」

 

 

 

 

 

上空で放ち続けていたレミリアのスペルカードは、終わりを迎えようとしていた。

 

「フラン!貴女はその力でもう何も壊さないで…永遠に地下で眠って居なさい!」

 

スペルカードの時間切れ間際、レミリアの弾幕は更に激化する。

鋭いナイフが、フランを襲う。

 

「お姉さま・・・私はずっと地下で・・・あの子のこと忘れたことないよ・・・」

「なのに、どうして・・・」

 

目頭が熱くなり、フランの視界が霞んでゆく。

次の瞬間、彼女の身体は無数の刃によって裂かれた。

 

「勝負あり……」

 

パチュリーの乾いた声で戦いは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

~決勝戦 途中経過~

第1試合 ○フラン(攻) vs ×咲夜(守)

第2試合 ×のび太(攻) vs ○レミリア(守)

第3試合 ○のび太(攻) vs ×咲夜(守)

第4試合 ×フラン(守) vs ○レミリア(攻)

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