ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
服や髪のいたる所が破れ、皮膚が露出していた顔や腕に無数の切り傷を負ったフランが疲弊しきった顔で、地面に着地する。
着地と同時に膝から力が抜けていくのを見て取れたのび太は慌てて彼女の前に駆け寄り、肩を支えた。
「・・・・・ごめん」
まさに満身創痍。力ない声が、のび太の心を強く揺さぶった。
先ほど、咲夜から聞いた彼女の過去のせいか、彼の言葉はいつもより力強い。
「最後の試合・・・僕は負けたくない」
明らかに声色や、様子が先ほどまでと異なるのび太にフランが目を丸くする。
「・・・えっ?」
「君のお姉さんに負けたくない、そう思ったんだ」
「だから・・・僕に行かせてくれ。」
「そ、そんな!無茶だよ、のび太じゃお姉さまを」
「フラン!君は今の戦いでボロボロだろう?!」
フランの困惑を、怒号にも似た声でのび太が制した。
のび太はフランを支えながら、強い眼差しでレミリアを見つめていた。
レミリアはバツが悪そうにフン、と小さく鼻で嗤った
一連の様子を静観していたパチュリーが、のび太の決心を見届けた後でレミリアに声をかけた。
「次も・・・レミィがいくのよね?」
「当然よ」
「そう・・・わかったわ」
「聖杯戦争 決勝戦・・・・第5試合、のび太vsレミリア」
「あらかじめ、決勝戦前に説明したとおり」
「第5試合では、攻め・守りの区別を無くし、敗北条件はどちらかのスペルカード時間切れあるいは被弾とするわ。」
「いいわね?」
パチュリーの目配せに、最後の戦いに臨む二人が小さく頷いた。
小さく息を吸い込み、パチュリーがそれを一気に吐き出す。
「はじめ!!!!」
互いに飛翔し、上空で視線を交じり合わせる。
昂るのび太の熱い眼差しを、あしらうが如く冷めた表情でレミリアは視線をぶつけた。
「正直、もう私の勝ちは決まっているようなもの。大人しくフランに任せておけばよかったものを・・・」
「これ以上、フランが傷つく所を見たくなかった」
「・・・吸血鬼の身体はあんたが思ってるよりも頑丈よ。あんな傷、すぐに治るわ」
「違う・・・違うんだよ」
のび太が拳を震わせながら強く握った。
そして、より滾った視線をレミリアへ飛ばす。
「フランが傷ついてるのは・・・心だ」
「体なんかじゃない、もっともっと大きな傷をフランは抱えているんだ!!」
「・・・私の出来の悪い妹に、ずいぶん入れ込んでくれているようね」
「出来の・・・悪い?」
「どうして・・・どうして、そんなひどいことを言えるんだ!!!」
「たった一人の!実の妹だろう!」
「力もまともに使えない、壊すことしか知らない悲しい子よ」
「そんなことはない!・・・君はずっとフランを地下に閉じ込めて・・・」
「それだけの力があるなら、フランを真正面から受け止めることだってできただろ?!」
いつもより饒舌で、そして力強く、のび太の言葉が、感情がレミリアへ向けられる。これには流石のレミリアも多少なりに面食らった部分があるようで、少し言葉を詰まらせた。
「・・・・貴女はなぜ、フランドールのためにそこまで怒れるの?」
「なんで・・・・って・・・フランは・・・・」
―「・・・ねぇ、ここで会ったのも何かの縁じゃない?どう・・・私と一緒に組んでみない?」―
―「私は、フランドール。フランって呼んで」―
―「よろしくね、のび太」―
フランとの会話が、のび太の脳裏に走った。
「フランドールは・・・僕の・・・」
―「・・・・ちょっとうらやましかったの、ああやって、いっぱいお友達がいるのが」―
─「私、お友達を・・・・・・・お友達、いないの」─
―「・・・じゃあ僕と・・・」―
「友達だからだ・・・」
のび太の言葉に、レミリアの片眉がやや反応し、ピクっと動いた。
「友達・・・」
「(・・・何故、あの時のこと、あの子のことを私は思いだしているのかしら・・・?)」
レミリアは目を瞑り、頭を左右に揺らし、蘇った忌まわしい過去を振り払った。
「・・・戯言はもういいわ!いくわよ!!!!」
言葉と同時に、レミリアが弾幕を展開させた。
中心が真っ赤に染まった大玉をムチのように撓らせながら射出。
大玉の合間には大玉の半分より少し小さい青い弾、さらにその弾の半分ほどの大きさ小玉があり、のび太を3重の弾幕がそれぞれ別々のスピードで襲った。
「のび太・・・」
姉の鋭い弾幕を受けているのび太を心配そうな瞳でフランが見つめる。
だが、次の瞬間に虚ろに開いていたその眼は、感嘆により大きく開いた。
のび太が、ぎこちないながらも弾幕を射出し小粒の弾を相殺。
そして、空いたスペースを器用に飛び回り大玉を避けていた。
「ふぅん・・・迎撃ぐらいはできるのね」
のび太の対応に特にこれといった感情の起伏はなく、レミリアは次の弾幕を展開させた。
レミリアは体を蝙蝠へと変身させて、米粒状の弾幕を乱射する。
彼女の変化に、驚きながらも猛スピードで襲う弾幕をしっかり見つめ、のび太は正面から飛んでくる弾幕は自身の弾で要領よく消し、斜め前方や左右から襲ってくるものは左右上下の飛行で避ける。
「くっ!」
のび太は左太もものあたりに違和感を覚えた。
弾幕を避けながらも、視線を一瞬だけそちらにやると、着ていた衣服が切られたように破れていた。だが、痛みは無いし、皮膚も傷ついていないようだ。パチュリーの静止もないことから、これは被弾とはカウントされない、とやや胸を撫で下ろしていると、レミリアが元の姿に戻っているのを確認した。
「くらえ!」
今まで、迎撃のための弾しか出していなかったのび太が、「人に当てるため」の弾をレミリア目がけて射出した。
だが、レミリアの目の前にのび太の弾が迫る、あと数センチで被弾という所でレミリアがまた姿を変えた。
「くそ~!」
悔しがるの束の間、姿を変えたレミリアは再び弾幕を撃ちこんでくる。
一番最初に展開させていた大玉を、先ほどよりも速くのび太を襲った。
だが、ただ早いだけではのび太は被弾しない。今日一日で「弾幕」というものに慣れてきた彼は、持ち前の飛行技術で弾幕を避けるスキルを非常に伸ばしていた。
レミリアの2種目の弾幕は、あまりに綺麗な規則性があり、のび太は用意にそれを避けていた。
「(・・・発射のタイミングは蝙蝠に変身している。今打っても当たらない・・・今は、とにかく避けるんだ!)」
そして規則正しく大玉が発射された瞬間、レミリアが元の姿に戻った。
その時をのび太は見逃さない。
右の人差し指で拳銃を模し、その先端からのび太が出せる最大速の弾丸を飛ばした。
「っ・・・!」
ライフルの弾丸のように、先端が鋭く尖った弾はレミリアの帽子を浅く裂いた。間一髪、レミリアは首を右に傾けて弾丸を避けた。
レミリアの頬を、一筋の冷や汗が走る。
そして、また彼女は蝙蝠へ姿を変えた。
今度は、のび太がいた位置に向かって、らせん状に炎を発射してきた。
だが、これはのび太にはあまりにも簡単すぎる弾幕だった。
自らがいた位置に発射されるのであれば、無駄に動かずに直前で少しずつ左右に動けば、弾幕はあまり広い範囲に拡散されず、楽に避けれられる。
のび太は、それを知っていた。
一進一退の戦い、決勝戦に相応しい緊張感に、観客席の魔理沙が息を飲む。
「・・・にしても、いつにも増して、とち狂ったようにぶっ放してるやがるんだぜ」
「・・・スペルカードルールに慣れていない人間ごときに」「何がそんなに熱くさせたんだぜ?」
さぁね、と適当な相槌を打つ霊夢を、流し目で見ながら、再び視線を上空へ向ける魔理沙。 頭の帽子に手をあて、視界が開けるようにやや上へ傾けた。
「・・・ま、この試合はレミリアの勝ちだな」
「レミリアのやつ、聖杯なんか手に入れたって、どーせロクな願いなんてもってないぜ、きっと。」
「まーた、幻想郷中紅くされたらたまったもんじゃないぜ・・・」
先ほど、軽い相槌だけ返した霊夢が戦況をじっと見つめ、魔理沙の言葉のあと、数秒間押し黙って後に口を開いた。
「・・・ちょっとだけ気になってることがあるのよね」
「・・・え?」
「今回の大会で、フランのお気に入りのスペルカードを見てないわ」
「もしかしたら、そのスペル・・・」
「ま、だとしても・・・ないか。」
魔理沙に困惑だけを与え、意味深な発言を終えた霊夢。
霊夢の中では整理がつき、もう語る事はない。魔理沙がなんだよ、と深く追うが口は閉じられたままだ。
そんな会話をしているうちに、戦況は大きな局面を迎えようとしていた。
「・・・これも避けるとはね」
蝙蝠になりながら、火の玉を放ち終わったレミリアが、元の姿に戻って一言ポツりと呟いた。
のび太はレミリアが実体化した隙を逃さず、的確に弾を放っていた。
だがもちろん、レミリアは呟きながらも体を捩じり、しっかりとのび太の弾を避けていた。
一方、のび太はその時、一つの確信を得ていた。
「(レミリア・・・君の一つだけの隙、見つけたよ)」
「(でも・・・僕がやろうとしていること、本当に僕にできるのか)」
「(いや・・・やるしか・・・やるしかないんだ)」
のび太の思慮していることなど気にもせず、レミリアはふぅ、とため息を吐いた。
そして、口角を吊り上げ、そっと呟いた。
「もう、終わりにしましょう。」
レミリアが目を閉じ、両手を下まで伸ばして肩幅程度に腕を広げた。
「『紅色の幻想郷』」
レミリアのスペルカードが発動した。
これは紛れもなく、レミリアの持つスペルカードの中でも最上級のカード。
赤い大玉が、レミリアを中心として円を描くように放出され、その軌跡上にはほとんどの隙間がなく小さな弾が浮かび上がる。
赤い大玉が円を描き終わると、第二波が発射され、第一派で残された小玉が動きだし、のび太の動きを制限した。
「おいおいおい・・・こんなの、私らだって避け切れないぜ。それこそ私のマスタースパークで弾幕を吹き飛ばすとかしないとな」
魔理沙が、レミリアのスペルカードを見た率直な感想を浮かべる。
と、同時に自らのスペルがあれば楽勝だけどな、という自慢を浮かべながらの感想だった。
その時、霊夢は、「そう、そうなのよ」と呟いてから続けた。
「これだけ密集した弾幕があれば、いっそのこと弾幕そのものを消してしまえば良い」
「そして、それが出来る、フランのスペルカードを、今日はまだ見てない」
「彼女の十八番ともいえる、あのスペルカード・・・」
「もし、あれが・・・のび太の手にわたって居れば・・・」
「いや・・・でも・・・」
「なにぶつぶつ呟いてるんだぜ?っておっ・・・と、もうそろそろ本当にやばそうだな」
上空で、かなり密集された弾幕をのび太が間一髪の連続で避け切っている。誰の目から見ても、被弾は間もないか、といった状況。
しかし、そんな中、のび太は耐えていた。
ただ、必死に避けているのではない、「耐えていた」のである。
「(まだ・・・まだだ・・・もう少し・・・もう少し)」
「負けるものか・・・・負けちゃいけないんだ・・・・負けない・・・!」
「今だっ!」
第3波目、紅色の弾丸が隙間なくのび太を包囲し、被弾させる本当の直前に、のび太が声を上げた
「禁忌『レーヴァテイン』」
のび太の手に真っ赤に燃えた大剣が宿る。
それを目いっぱいのび太は振り回した。
大剣に当たるレミリアの弾幕は、レーヴァテインに当たると弾けて消え、そこに煙だけを残した。
「やっぱり・・・のび太がコピーしていたのね」
「霊夢、お前、これのことをずっとブツブツ言ってたのか」
「そう、この弾幕を消せるスペル、フランのレーヴァテイン。」
「だけど・・・これは所詮弾幕を消すだけで、しかものび太の体力じゃせいぜい扱えても30秒ぐらいかしらね?実際に振るうとなると、パチュリーの魔力とは関係なく、術者の体力がモノを言うから・・・」
「で?博麗の巫女様はこの戦いをどう見るんだ?」
「・・・分からない。弾幕を消したところで、レミリアのスペルのほうがきっとのび太のレーヴァテインより長いわ」
「勝つためには、紅色の幻想郷にもうちょっと耐えて、レーヴァテインがあるうちに時間切れ・・・って方法かと思ったんだけど、やっぱりそんなにあのスペルは耐えきれないわよね」
霊夢と魔理沙が上空に引き続き視線を送り、戦いの行く末を見守る。
弾幕は、次々のレーヴァテインによって弾けて消える。
のび太が3振りもした頃だ、弾幕が弾けた時の煙が二人の間に立ちこんできた。互いの姿を若干認識できる程度だった。
「まだ・・・まだ・・・もう一振り・・・」
のび太は肩で息をしながら、慣れもしない大剣を握る。
まだ足りない、そう呟いて、額に汗を流しながら、レミリアの弾幕を避け続け、大剣を振るって悲鳴を上げている心肺を震わせる。
「この試合だけは・・・!負けないんだ・・・!」
「フランから貰った・・・この力で・・・勝つんだ!」
「いっけええええええええええ!」
振り絞った力を込めた一振りで弾幕を更に消し飛ばす。
そしてレーヴァテインの特徴でもある振り終わり後の小粒弾がレミリアを襲った。
小粒弾が、レーヴァテインと紅色の幻想郷が相殺されて舞い上がった煙のなか、進んでゆくのがうっすら見える。
のび太はその軌道を見て、レミリアの元に届きそうになった時、あの姿をもう一度目にした。
小粒弾は、レミリアに当たらない。蝙蝠に変身していて、レミリアは弾をすべて受け付けなくなっていた。
それがボンヤリと確認できた頃には、のび太の渾身の一振りで生じた煙が二人の包み込み、互いの姿を認識することは出来なくなっていた。
「(レーヴァテインもコピーしていた・・・とはね)」
「(弾幕が消されたとしても、彼の弾幕が私に届かなければ意味はない)」
「(それに・・・この煙の中、恰好の餌食じゃないの)」
レミリアは何波目とも分からぬ弾幕を射出しようと、姿を元に戻した。
そして、互いに見えぬ煙の中、勝利を確信した笑みを浮かべる
「楽しかったよ、人間。」
一方、のび太はその時、すべて狙い通りに事が進んだと思っていた。
この煙で、お互いの姿は認識できない。だから、レミリアにとって自分は何よりも狙いやすいこと。
この煙の中にレミリアのスペルを展開されればとても避けれたものではないぐらい分かっていた。
レミリアは、狙わなくてもいい。ただ、弾を展開させれば勝手に当たる、といった具合だ。
仮に、レーヴァテインで弾幕を相殺したとしても、それを振り回すのび太の体力が、レミリアのスペルカードより先に尽きると分かっていた。
詰み、一見はそう見える。
「(君はこの煙の中でまた弾幕を撃ってくる前に蝙蝠から元の姿に戻る)」
「(だけど・・・見つけた、君が攻撃の時にあまり動かないというクセを)」
「(これは大きな賭けでもあるけど・・・やるしかない)」
「(来たっ!!!!)」
煙の中、レミリアの大玉がこちらへ迫ってくる。
その瞬間。のび太はレーヴァテインを持つ手とは逆で一発の弾丸を放った。
「くらえ!」
のび太の叫びと共に、弾が走る。
次の瞬間、レミリアの右肩の付け根のあたりに激痛が走った。
「?! ・・・・っ何?!」
恐る恐る激痛の場所を見る、そこにはポッカリと半径5mmもない穴が開いていた。まるで、何かに撃ち抜かれたように。
「ま・・・・まさか・・・この煙の中・・・」
「くっ・・・!」
次の瞬間、煙が一気に晴れた。
のび太がレーヴァテインを空振りさせ、煙を風で吹き飛ばしていた。
そして、レミリアに指を指し、のび太が声を上げる。
「パチュリー!レミリアを見て!」
「こ、これは・・・レミィが被弾・・・してる?」
「しょ、勝負あり!」
状況も掴めぬまま、試合終了の宣言がパチュリーから下される。
痛む箇所を抑えながらレミリアが地上で戻る。
そして、のび太もフラフラになりながら地上へ降り立った。
会場は、静寂に包まれていた。
何が起こったのか、レミリアは負けたのか、結果すら把握できていなかった。
「何・・したのよ、あんた・・・」
レミリアが肩を抑えながら言う。
「あえて煙を出して、お互いが見えない状況にした」
「そして、君が撃ってくるのを待っていた」
「あの弾幕は、君を中心に弧を描くように大玉が来る」
「そして、君は、あのスペルカードの時、一つの波を打ち終えるまでは動かなかった」
「君は・・・攻撃の途中だったり後にはあまり動かないクセがあるのを、スペルカードを使う前から見ていた。」
「だ、だからって・・・あの煙の中、正確に私の位置を・・・」
「・・・・得意だから。」
「射的は、僕の得意分野だから」
「・・・それにね、今回は何より「見えない」ってことが重要だった」
「見えてたら、君は蝙蝠になって避けちゃうから・・・」
「それを、見えなくさせてくれたのは・・・フランのレーヴァテインのおかげ」
「これが、フランの力。僕に教えてくれた、フランの力なんだ」
「僕の射的が得意という長所最大源活かすために・・・フランの力が必要だった」
「フラン・・・! 勝ったよ!!」
フランの方を向き、のび太が優しく微笑む。
その時、両手で口を多いながらフランは若干涙ぐんでいた。
パチュリーが、マイクを手に取り改めて結果を告げる。
「・・・勝者、のび太。聖杯戦争、優勝はのび太チームよ!」
~決勝戦 結果~
第1試合 ○フラン(攻) vs ×咲夜(守)
第2試合 ×のび太(攻) vs ○レミリア(守)
第3試合 ○のび太(攻) vs ×咲夜(守)
第4試合 ×フラン(守) vs ○レミリア(攻)
第5試合 ○のび太 vs ×レミリア
優勝:のび太・フランチーム
この大会で一番の歓声が彼らを包み、祝福した。
長い長い一日が、終わろうとしていた。