ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
人間の快進撃に沸いた会場は中々静まること無く、のび太は壇上を降りた途端に観客に囲まれ、矢継ぎ早に質問攻めを受けた。
どこから来たのか、弾幕を撃つのは本当に初めてだったのか、フランからどうやってスペルカードを継承したのか。
気が付けば、終了から一時間弱も経っていたところでジャイアンらと合流が出来た。
「おーーーい!!!!のび太ぁああああああああ!!!」
「こーこーろの友よおお!!! お前ならやってくれると信じていたぞ!!」
ジャイアンはのび太を見つけた途端、全速力で駆け寄り熱い抱擁を交わした。彼の目には大粒の涙が浮かんでいた。
鳩が豆鉄砲を撃たれた顔でのび太もジャイアンの背に手を回し、ハグをし返す。
ジャイアンに遅れて、のび太の下へドラえもん、しずか、スネ夫へ駆け寄る。ジャイアンの感嘆を聞いたスネ夫は囁く。
「うそばっかり・・・最初のび太をチームから外したくせに・・・」
「なにか言ったか?!」
「うっ!なんでもないよ・・・!」
ジャイアンの野性味溢れる眼光に思わず怯んだスネ夫は、口を慌てて閉じる。
全員が祝福ムードとなったところで、パチュリーが現れた。
「ふぅ・・・やっと落ち着いて話せるわね。」
「のび太、フランドール。優勝賞品の聖杯をあなた方へ贈呈します」
「と、言っても・・・聖杯には、私の魔力をつぎ込んである、だから、保管場所もちょっと特殊でね・・・この会場から少し飛んだ場所にあるわ・・・」
「さ、案内するから付いてきて」
パチュリーが宙を駆け抜け、それにのび太らが続く。
数分ほど飛行した所で、パチュリーが下降し始めた。
そこは、森だった。木々の間を面々が器用にすり抜けてゆくと、円状に開けた土地が姿を現し、その真ん中には六芒星のような紋章に包まれた華美な杯が浮いていた。
「おぉ・・・すっげぇー」
ジャイアンが呆気に取られている横で、パチュリーが手を魔法陣へ伸ばす。
「今、周りの魔法陣を解くわ」
次の瞬間、辺りがまばゆい光に包まれ、反射的に皆が目を閉じた。
そして、眩んだ瞳をゆっくりと開けると、パチュリーの手には聖杯があった。
「はい、どうぞ」
それを、のび太へと手渡される。
思いの外、それは重く、のび太はその場で少しよろめいてしまった。
「これで願いが叶えられる!」
「・・・そういえば」
「フラン、これは僕たち二人で取ったものだよ」
「フランの願いと僕の願い・・どっちを叶えるか・・・」
「そうだね・・・」
「フラン・・・聞いてなかったね、君の願いは・・・」
のび太の問いかけに対して、フランがゆっくりと目を瞑り、そう・・ね、と息を小さく吸い込んだ。
吸い込んだ息を吐きだすと同時に、言葉を発そうとした瞬間、パチュリーが遮った。
「ちょっと待って、実は・・・」
「「「「「ええっーーーーー?!」」」」」
パチュリーの告白に一同が目を丸くし、声を上げる。
「聖杯で願いが叶うなんてウソっぱちなのか?!」
ジャイアンが肩を震わせながらパチュリーを詰め寄る。
「僕たちは帰れないのーーー?!」
続けてスネ夫が目を滲ませる。
「まぁまぁ、慌てないで。」
「あなたたちが帰る方法はあるわ。博麗の巫女に頼めばすぐよ」
「彼女の神社が、この世界とあなたたちのいた世界の境界なの。」
「元の世界に戻す方法もきっと知ってるわ」
胸を撫で下ろし、のび太がその場に座りこむ。
「・・・よかったあ」
「・・・でも、なんで嘘までついてこんな大会を開いたんだい?」
「ごめんなさい、これは私の大切な人に頼まれたことなの」
それを聞いたしずかが疑問をぶつけた。
「私たちの願いは、まだ叶えられる範疇だったからよかったけど・・・」
「他の人が優勝してたどうするつもりだったの?」
「まぁ、結果優勝したのはあなた達でしょ?」
「起こってもいない、もしものことなんて知らないわ」
「な、なんてめちゃくちゃなんだ・・・・」
ドラえもんが顔に汗を流しながら引き笑いをする。
パチュリーが悪戯に笑うと、皆を誘導し始めた。
「さ、博麗の巫女のところへ行きましょう」
その後、一同はパチュリーに続き、博麗神社へと到着した。
すべて事情を霊夢に説明し、どうにかしてほしいとのび太が懇願する。
「・・・・・そういう事情で幻想入りしたのねぇ」
「にしても、幻想入りした原因っぽい、その勾玉はいったい・・・」
「あら、それ私のだわ」
「わー!!!びっくりしたぁ!宙に人が・・・・生えてる?!」
スネ夫の傍らに、宙を裂くような切れ目から上半身を出した金髪の女性が突然現れた。
「はぁ・・・またあんたの仕業?」
このあんた、とは八雲紫。幻想郷内でも屈指の力を持つ妖怪のことだ。
「そ。私の力をちょっとだけ入れた勾玉なんだけど・・・」
「どっかに落としたと思ったらそっちの世界にいっていたのね・・・。」
「どれどれ・・・・」
そう言うと、スネ夫の方へ手をかざした。
「ふぅ・・・今、力は吸いとったから、もうその勾玉で悲劇が起こることはないわよ」
やれやれ、といった呆れた表情で霊夢は紫を見つめる。
そして、そのままの表情で霊夢が口を開いた。
「あんたが起こした面倒なんだから、この子たち、元の世界に戻してちょうだい」
「はーい」
このペースだと、すぐさま元の世界へ戻されそうだ。
そう悟ったのび太が二人の会話に割って入った。
「ちょ、ちょっとまって!」
「フランとちょっと話がしたい!」
「大会でずっと一緒だったから・・・お礼を言いたくて!」
「・・・それは私のセリフかな、優勝できたし、楽しかったし」
「・・・フラン、僕・・・昔・・・色々とひどいことがあったの・・・聞いて・・・」
「だけど、そんなのは関係ないんだ・・・フランは僕の友達だよ!」
「・・・・心の友の友達っていうなら・・・・俺たちの友達でもあるな!」
「なっ!スネ夫!」
「うっ、うん!」
「フランちゃん、今度はこっちの世界にきて、一緒に遊びましょう!」
「みんな・・・」
「・・・今日、僕を助けてくれたフランはとても優しいし・・・きっとあと少しでお姉さんとの仲もよくなるよ!」
「またいつか、今度は戦いなんかじゃなくて、一緒に遊ぼう!」
「うん!!!!」
「ふふっ、私が定期的にこっちに連れてきてあげるわ」
「じゃ・・・そろそろ・・・」
紫がそういうと、のび太達の足元が急に割れ始めた。
「うわぁ!地面が裂けた?!」
「・・・フラン!!またね!ばいばーい!」
「ばいばーーーい!」
元の世界へと彼らは帰り、騒々しい彼らの一日が終わった。
その後、パチュリーは紅魔館へと帰り、大広間でレミリアと対峙していた。
「・・・今回は疲れたわ」
「レミィ、どう? ただの人間に敗れた感想は」
「・・・最悪ね」
「でも、のび太だけなら間違い無く、あなたに勝てなかったでしょうね」
「・・・・なにが言いたいのかしら」
「フランよ。」
「フランが、ただの人間と、力を合わせて、あなたを倒したの。」
「私には、フランがもう暴れるだなんて、見えないけど」
「・・・ふん・・・同じようなことを、あの人間に言われたわ。」
レミリアが玉座で頬杖をつき、ふて腐れていると、扉が開く音がした。
ゆっくりと入り口から玉座まで歩いてきた者はフランだ。
「・・・お姉さま」
「・・・フラン」
「勝手に・・・外界人を巻き込んで・・・お姉さまの願いまで邪魔して・・・」
「ごめんなさい・・・」
フランの言葉を聞いたレミリアは数秒、沈黙した後、玉座から立ちあがった。
「・・・久しぶりに」
「・・・え?」
「昔のように今日の朝は・・・」
「一緒に寝ましょうか」
「・・・うんっ!」
二人を見つめるパチュリーは、優しく微笑んだ。
場所は変わり、現代。
のび太の部屋の宙に出来た裂け目から一同が放りだされ、それぞれが尻もちをついた。
「いててて、戻し方が雑・・・って」
「のび太の家・・・・のび太の部屋だぁあああああ!」
「・・・帰ってこれたのね」
「久々にミーちゃんにあえるぅーん!」
「・・・本当に夢のような1日だったなぁ・・・」
「ん・・・?ポケットになにか・・・」
「あっ、レーヴァテインとカゴメカゴメのカード・・・」
「・・・疲れたし、怖かったし、二度とあんな思いはしたくないよ・・・。」
「でも・・・・新しい友達ができた・・・いい1日だったかな?」
紅魔館のとある一室にて
「こんな大がかりなことして・・・・あなたの願いは叶ったの?」
「どうだろうね?」
「ふふ、そのうれしそうな顔を見れば、分かったわ」
「にしても、願いが叶う力なんてない、偽物の聖杯を作らせて、聖杯戦争をして・・・」
「戦いを重ね、あなたは、昔のあなたとは違うところを見せつけた。」
「そして・・・元通りになろうとした。」
「幻想郷中を巻き込んだ、仲直り・・・か。ふふっ、正気の沙汰ではないわね、あなたも、わたしも」
「ほんと、パチェを巻き込んでごめんね。」
「いいのよ。事情を知る一部を除いて、のび太の〚外界に戻りたい〛って願いが聖杯によって叶った・・・っていう風に他所からは見えるし・・・」
「結果、この大会は良い落としどころにまとまったわね」
「・・・・それで? 久々に共に夜を迎えた感想はどうだった?」
「別に・・・やっぱりいつもどおりって感じかな」
「でも・・・・前よりも優しい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かも。」
「きっとのび太の言葉が、変えてくれたんだとおもう。」
「・・・そう」
「・・・のび太」
「ありがとう。」