ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
紅魔館から少し離れた場所にある森の中にパチュリーとあの少女がいた。
「私の魔力を最大限につかって、限りなく完璧に仕上げた・・」
「・・・これこそ、聖杯」
森の中、何重にも重なった魔法陣に囲まれ、宙に浮くその器は、神々しい雰囲気を醸し出していた。
少女は、金色に輝くそれをしばらく見つめる。
「じゃあ、これを使って、私は・・・願いを・・・・」
決意にも似た少女の言葉のあと、パチュリーがそっと彼女の肩に手を置いた。
「うまくいくよう、願っているわ」
「さて・・・と、私は皆を焚き付けるとしましょうか。」
森から飛び立ち、パチュリーは紅魔館へと戻っていった。
パチュリーが去ったあとも、じっと聖杯を見つめ続けた少女の胸中を知る者は、パチュリー以外にはいない。
「・・・・その話は本当なの? パチェ」
体の大きさに不釣り合いな玉座に深く腰をかけ、片ひじをついて頬を支えながら、パチュリーに問う。
彼女こそ、紅魔館の主、レミリア・スカーレット。
レミリアは、パチュリーから「聖杯」について話を聞いたところだった。
「過去の文献に基づいて、私なりに再現した聖杯を完成させたわ」
「・・・聖杯は魔法使いとしての私の集大成」
「だけど、願いごとが叶うなんて、そんなことには興味ないわ」
「私はただ、自分で作ったこの聖杯が本当に機能するかを見てみたい」
「ふふっ・・・・では私がその聖杯を手にし、願いを叶えてもよいということかしら?」
レミリアの不敵な笑みを浮かべながら言う。
この時、きっと彼女は頭の中で「どんな願いを叶えてやろうか」、そう思っていたに違いない。
しかし、次にパチュリーが放った言葉は、レミリアの期待には応えられない。
「いくらレミィとはいえ、私は私の自信作を容易く使ってほしくないわ」
驚きと、少しイラつきが混じった表情でレミリアがパチュリーを見ながら真意を聞きだそうとする。
「と・・・いうと?」
「・・・・聖杯戦争」
「文献には、聖杯を求めて、数々の戦いが行われたとも書いてあったわ」
「どうせなら、そこまでこだわってみたいわ」
「聖杯戦争に、勝った者に私は聖杯の効果を使ってほしい」
パチュリーの想いを聞き終えたレミリアが、組んでいた足をほどいた。
鮮やかな蒼色の髪を左手で耳に掛けながら口を開く。
「・・・・・とんでもない願いを持つ奴が優勝したら?」
「そうならないために、レミィが優勝すればよいでしょう?」
意表を突かれ、キョトンとした表情を浮かべたレミリア。
ただ、彼女の表情が笑みになるまで、そう時間はかからない。
「ククク・・・・・」
「咲夜!!!」
レミリアは玉座の傍らで立っていた彼女の召使、十六夜咲夜に言いつけた。
「聖杯戦争について至急セッティングを行いなさい!」
「パチュリーと相談の上、詳しいルールなどを詰めるのよ。」
「もちろん、私とあなたも出るわよ!!!」
「承知しました」
その時だった、大広間の入り口の方から、コツ・・・コツ・・・とヒールが地面と当たる音がしたのは。
等間隔で近づいてくるその足音の先には、金髪の少女がいた。
「・・・面白そうなこと話してるね。 お姉さま」
「フランドール・・・・・。」
「あなた、地下から出てきたの?」
怪訝そうな顔で実の妹を見つめるレミリア。
フランはついこの間まで、レミリアによって紅魔館の地下へと幽閉されていた。
今でこそ、ある程度の外出は許しているが、それはパチュリーや咲夜の進言があったから許したまでで、レミリア自身は快く思っていなかった。
周りが見る以上に、レミリアのフランドールに対する感情の溝は深いものだった。
「そう邪険にしないでよ」
「話はぜーんぶ聞こえてたよ。聖杯戦争・・・・面白そう。 私も出る」
一瞬の沈黙のあと
「・・・・好きになさい」
レミリアが冷たく言い放った。
1分にも満たない姉妹の会話はここで終わり、フランは大広間から出ていった。
その背中をレミリアは座したまま見つめ、この空間からフランが去ったことを確認すると。咲夜にもうひとつ、言いつけを放った。
「聖杯戦争のルール決めの際は私にも報告しなさい」
「・・・承知しました」