ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
「う・・・・・うぅ」
のび太は痛む体をゆっくりと起こし、額のあたりにずれていたメガネを目まで戻す。
周りの見慣れない風景に呆然としながら朦朧としていた意識をはっきりとさせていった。
そこは、湖が近くにある林の中だった。
何が起こったのか・・・・ゆっくりと頭の中を整理して考える。
タイムマシンに乗っていたら、スネ夫のネックレスが光って、設定していた行先よりもはるかに古代に・・・・そこまで考え、のび太はハッとし、もう一度周りを見渡した。
さっきは遠くをぼんやりと見つめたが、今度は自分の足元、自分の近くを。
周りには、のび太以外の4人がまだ意識を戻さずに倒れていた。
そして、傍らにはもう使えそうにないタイムマシンもあった。
「みんな!起きて!!」
のび太の声に、4人が徐々に目を覚ます。
最初に体を起こしたジャイアンが、のび太と同じように、首を左右におもむろに回しながら、周囲を確認した。
「ここは・・・どこかの湖・・・?」
続けて体を起こした、スネ夫を周りを見る。
「見た事ない草がいっぱい生えてる・・・・」
「いったいここはどこで・・・いまは何年なんだよぉ・・・」
次の瞬間、ひどく弱った声をスネ夫の声をかき消すように、幼い声が響いた。
「人間だ!!!!」
のび太が声のした方に急いで体を向け、声を上げる。
「だれ?!」
視線の先にいたのは、二人の小さな女の子。
年にすると大体5歳~6歳ぐらいであろうか。
声をあげた少女は、青色の大きなリボンを頭につけて、青色のワンピースを着ていて、瞳や髪の毛まで青い少女だった。
背後から見知らぬ者に、いきなり大声を上げることからも分かるが、表情や腕・足の細かい動きが、落ち着きの無い活発な女の子であることを表現していた。
だと思えば、もう一方の女の子はというと、青い女の子の背に体を隠しながらのび太達を伺っており、少し怯えている様子だった。
緑色の髪の毛に、黄色のリボンをしており、こちらもまた非常に幼い少女のように見える。
「あたいは氷の妖精、そしてこの湖でさいきょーのチルノ様だ!!」
両腕を腰にあて、鼻を高くしながら自己紹介をするチルノ。
色々と聞きたいことが、のび太一行はあったと思うが、最初に口を開いたのはジャイアンだった。
「氷の・・・妖精?なんだそりゃ?」
「でも、言われてみれば・・・急に少し寒くなった気が・・・」
おどおどした緑髪の少女がチルノの耳元で囁く
「チ、チルノちゃん・・・あんまり人間を刺激しちゃ・・・」
「大丈夫だよ!大ちゃんは後ろに下がっていて」
怯えている「大ちゃん」と呼ばれる女の子を見て、少し強気になったスネ夫が食ってかかった。
「ば~かばかしい!妖精なんて本当にいるかよ!」
「あっ!バカにしたな! これでもくらえ!」
チルノが右手を前に出し、掌から氷柱のような氷の塊を射出した。
その塊は何故か、スネ夫ではなく、その後ろにいたドラえもんへ一直線に向かっていた。
「いたーい!!!」
カンっという、高い音が響いてドラえもんがその場に転がった。
ゴロゴロと痛い痛いといいながらドラえもんがのび太達の足元を移動する。
「氷の弾幕を撃ったのに凍らない?!こいつ、つよい!」
「あわわわわ、チルノちゃん、いきなり撃っちゃだめだよぉ!」
大ちゃんの声を聞き、のび太が慌てて釈明をはじめた
「そ、そうだよ!まってくれよ!」
「僕たちは君たちに何もしない!」
「・・・・ほんと?」
「でも、なんでこんなところにいるんだ!あやしい!」
さっきまで強気だったスネ夫も、ドラえもんが撃たれたのを見て、やはり弱気になっていた。
「ぼくたちもいきなりここに飛ばされたんだよぉ!」
その言葉を聞き、緑髪の少女は、のび太達の様子をじっと見つめはじめる。
「・・・ぜんぜん見た事ないお洋服・・・」
「もしかして、外界から・・・」
そんな少女をよそに、ドラえもんがやっと落ち着いたようで、立ち上がって氷の塊が当たった頭をさすり始めた。
「氷の塊いたかった・・・・」
「ガーゼ、ガーゼ・・・」
ガーゼを探すため、四次元ポケットに手を突っ込み、ゴソゴソとお目当ての物を探す。だが、やはりすぐにカーゼは出てこない。
スモールライト、どこでもドア、もしもボックス・・・・ありとあらゆるひみつ道具をどんどんその辺りへ散らしてゆく。
その様子を見たチルノは、やはり
「なんだそれ!!!!!」
といった反応である。
そして、スネ夫はなぜか我が物顔で解説を始めた
「ドラえもんは、ポケットからありとあらゆるものが出せるんだぞ!!!・・・・って、どこでもドアを使えばいいんじゃないか!」
スネ夫は、希望に満ちた表情で、地面に転がっていたどこでもドアを起こし、自宅を頭に浮かべながらドアを開いた・・・しかし・・・
「・・・。」
ドアを開けた先は、そのまま湖の風景だった。
うわーーーと!どこでもドアを勢い良く閉めるスネ夫。
ドラえもんはそんなことは知らないといった風に、頭をまださすっていた。
「うう・・・ガーゼが探せない・・・・そうだ!痛みが忘れる為にどら焼きでも食べよう!」
なぜかドラ焼きはすぐに出てくるドラえもん。
のび太やジャイアンは、ドラ焼きを頬張る彼を見て、あぁ・・またかといった具合に若干呆れていた。
当然、ドラ焼きにもチルノは
「なんだそれ!!!!!」
という具合だった。
「あげないよ!これは僕のものだ!」
大好物のドラ焼きは譲らない。これもいつも通りのドラえもんだ。
一方のチルノは目をキラキラと輝かせており、これを見ていたのび太がひらめいた。
「なぁ、ドラえもん、ドラ焼きをちょっとあげなよ!」
「くれるのか?!」
「うん! その代わり、ここのことを教えて!」
「えー・・・僕のドラ焼き・・・」
話がうまくまとまりそうな所で水を差す、ドラえもんに、ジャイアンの制裁が下る。
「つべこべ言わずによこせ!」
鋭い拳骨が、ドラえもんを襲った。
「いたい! 氷があたったところをまた殴らないで!」
「わかったよ・・・ちょっとだけだぞ!」
ドラえもんが食べていたドラ焼きをちぎり、チルノへと差し出した。
チルノはそれを更に半分にし、大ちゃんへと渡した。
「これ気に入った!これなんていう?」
明るい表情を見せたチルノを見て、のび太の頬も上がる。
「どら焼きだよ!」
「前に人里で人間が食べてるのを見たことあったかも・・・!」
優位になったと思ったとたん、この男はまた高圧的になる。
そう、スネ夫だ。
「さぁ!どら焼きを食べたんだ!ここのことを教えてくれよ!!!」
若干口に残っていたドラ焼きを急いで飲み込み、緑髪の少女がのび太達を見ながら、話を始めた。
「そ、そうですね・・・」
「まず・・私は大妖精と言います。そして・・・ここは、幻想郷という場所です」
聞きなれない地名に、しずかが「幻想郷?」とオウム返しをしてしまう。
「・・・確証はありませんが、多分皆さんは幻想郷とは別の世界からこっちに紛れこんでしまったのかな・・・と思います。」
「この世界には人間も、ちょっとだけ暮らしてます。」
「でも、その人達は、この幻想郷で生まれ、幻想郷で育った人たちだから、あなた達とはちょっと違います。」
「その人たちのほかに、幻想郷の外からこうやって、ときどき人間が入ってくることもあって・・・それを私たちは幻想入り、と呼んでいます。」
「もとの世界に戻る方法は・・・?」
ツバを飲み込みつつ、ジャイアンが恐る恐る聞くと
「ごめんなさい・・・そこまでは」
「うわーーーん!!ママーーー!」
「・・・・・・あっ!!!」
うろたえるスネ夫を余所に、大妖精が思い出したことを続ける。
「ちょうど、これから’聖杯戦争’というものが始まるんです・・・」
「聖杯戦争?ぶっそうな名前だなあ」
戦争という単語に腰が引けるのび太に、大妖精が続けて説明をした。
「戦争といっても、ちゃんとルール決めをしたうえで競うらしいですよ」
「どんな内容で、なにを行うかはわからないんですが・・・・」
「ただ一つ決まっているのが、優勝したときの景品です」
「景品は聖杯と言われる大きな器だそうです」
「そしてこれは、魔法の力でどんな願いでも一つだけ叶えると言われています。」
「もし・・・その聖杯を手に入れることができれば・・・」
「もとの世界に帰れるってことか!!!」
「待ってよジャイアン、妖精とかに交じって、その戦争とやらで僕たちが優勝できるわけないだろ!」
「景品の内容と日時ぐらいしか、大会の運営は教えてくれませんでした・・・」
「幻想郷全土に大々的に周知しているイベントなので、死人が出るようなことはないと思いますが・・・」
「だとよ!どのみち、ここにいてもどうしようもねぇんだ!参加してみようぜ!」
大妖精の話を聞き、すっかり乗り気となったジャイアンとは対照的にのび太・スネ夫だった。
「会場はあっち、あたいらもこれから行くんだ! 一緒に行こう!」
チルノが宙に浮き、会場と指さした方角へ飛んでいく。
「あっ、チルノちゃん!人間は空は飛べないんだよ!」
「ドラちゃん、タケコプター」
ポケットをゴソゴソと漁り、人数分を手に取って、いつもの口調でドラえもんが言う。
「タケコプター」
受け取ったスネ夫がすぐに頭につけ、またも得意げに解説を始める。
「へへっ!どうだい?これで僕たち空を飛べるんだぞ!」
「なんだそれ!!!!」
「さぁ、早く会場へ行こうぜ!」
はしゃぐチルノをあしらうように誘導するようジャイアンは促す。
「そうだ!!レッツゴー!!」
もちろん彼女は促されたらすぐにノった。
猛スピードで飛び立ち、ジャイアン達がそれに続く。
当然、のび太はそんな急に反応は出来ず・・・
「あっ、待ってよ!みんな!」
「うわっ!ぬかるみが!」
「うぅ・・・・みんな行っちゃった・・・」
ぬかるみに足を滑らせ転倒。
皆行ってしまった・・・と軽く落ち込んでいると、
「大丈夫ですか?起きれますか?」
「手を貸します、掴んで起きてください」
大妖精が待っていてくれた。
差し出された手を握り、のび太はお礼を言った。
「ありがとう! んっ・・・?」
手を握った際、のび太は大妖精の小指に光り輝く指輪を見つけた。
「きれいな指輪だね、こっちの世界のものみたいだよ!」
「これは最近、外界からしょっちゅう入ってくるんですよ。」
「たしか・・・ピンキーリングっていったかな?」
「チルノちゃんもつけていて、これはひみ「おおーーーぃ!」」
大妖精の声をかき消す、叫びが上空からこだました。
その声の主はジャイアンだ。
「なにやってんだ! 早くいくぞーー!!!」
「わわっ! わかったよー!!!」
のび太と大妖精も宙に浮き、聖杯戦争会場へと飛び立ったのだった・・・。