ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん   作:Remindre

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見込み違い

フランがその場から消え、青く輝く大玉がひとつその場に現れた。

その大玉は、霊夢に向かってゆっくりと動きだす。

大玉の軌跡に沿って、同じ色で3分の1ぐらいの大きさの弾が四方に飛散し始めた。

 

「ちっ、この弾幕は厄介だぜ。時間が経てば経つほど、追尾の大玉とその軌跡に生まれる小玉が逃げ場を潰す。」

「そして四方から、相手を包むように極小の弾幕が襲ってくるんだ・・。」

 

魔理沙は頭に手を当て、被っていた黒い帽子を深くかぶり直しながら呟く。

のび太は口をポカンと大きく開け、弾幕を避ける上空の霊夢を見上げていた。

霊夢は、自らを追尾してくる大玉をうまく誘導し退路を断たれぬように上空を飛び回る。

 

「このスペル、私からはなーんにも撃てないから退屈なのよね」

 

淡々と避け続ける霊夢。大玉の跡に打ち出される小玉が会場上空を覆い尽くしたころ、今度は霊夢を包むように赤、青、緑、黄色の順で小玉が射出され始めた。

 

「あの人・・・ほんとうに楽そうに避けるなぁ・・・」

 

唖然とするのび太を余所に、軽く欠伸を交えながら霊夢は飛行を続けた。

気が付けば、最初に彼女を襲った青色の弾は消えており、4色の包囲弾が短い感覚で射出する。

激化する包囲弾は、このスペルの終わりが近いことも示していた。

のび太が拳を軽く握り、自らの手ににじむ汗を感じた。

 

「・・・・・・・・・・あら? おしまいかしら?」

 

弾がすべて消え、フランが霊夢の真正面に姿を現した

パチュリーがマイクを握り、この一戦の結末を告げた。

 

「勝者! 博麗 霊夢!!」

「現在、のび太チーム、霊夢チーム 共に1勝」

「勝負は3戦目に続くわ」 

 

フラン・霊夢ともに降下し、ステージ上で両チームのメンバーが顔を見合わせた。

魔理沙は人差し指で帽子を少し上げ、微笑みながらのび太を見つめる。

 

「フランはこの勝負で、もう2回出ている・・・・」

「出番だぜ、大将!」

 

帽子に当てていた指をまっすぐとのび太へ向ける魔理沙。

その微笑みは勝利を確信したものだった。

のび太は、再び強く拳を握り、喉を鳴らしながらツバを飲んだ。

 

「ごめんね・・・のび太。あとはお願い!」

 

のび太の腰のあたりをポン、と軽くたたくフラン。

う、うん・・・と力弱く返事をするのび太、彼の表情は見るに耐えないほど怯えていた。

 

「よし!!!次こそ私が・・・「ダメ」」

 

のび太の方へ一歩踏み出そうとした魔理沙を片手で抑える霊夢。

 

「あの子も私がやるわ」

 

ムスっと顔をしかめる魔理沙を余所に、のび太の前へと霊夢は歩み寄った。

よろしくね。一言発した顔に笑顔は無い。

 

「(・・・・予選を見ていたけど、彼の玉の命中率はひどく良いわ。)」

「(スピードはなくても、あれだけ正確に狙われると苦しいわね・・・)」

「(そしてなにより、パチュリーが渡していたスペルカード・・・)」

「(ちゃーんと私も見てたわよ・・・。あれは何があるか分からない・・・だから・・・・)」

「パチュリー、私の攻めでいくわ」

 

思慮を終え、霊夢はパチュリーに自らの攻めを宣言する。

小さく頷いたパチュリーは口元にマイクを持っていく。

 

「・・・準決勝、第3試合 のび太(守)vs霊夢(攻) はじめ!」

 

対峙するお互いがそのまま空へと上昇し、宙で向かい合う。

一枚の札を手に取り、霊夢が表情を変えて臨戦態勢へと移る。

 

 

「スペル発動!封魔陣」

 

無数の赤い札がのび太を襲う。

霊夢の周りから真っすぐに射出された札は、それぞれ、弧を描くように動きを変え、のび太へと向かってくる。

射出される札のあと、霊夢を中心に円を描くように小玉が射出される。ただし、それは2~3秒のあいだ円を描いたまま静止していた。

第一波として射出される札は規則正しいルートを通り、のび太へと向かってきていた。のび太はその流れを読みつつ、何とか必死に避ける。

 

「さすがにこんなに分かりやすい札には被弾しないわよね。だけど・・・」

 

霊夢の周りに静止していた小玉が若干発光し、様子が変わる。

次の瞬間、鋭い棘のような弾へと小玉が変貌し、ゆっくりとのび太へと向かっていった。

 

「どう?規則正しい札と、ゆっくりと後からくる第2波は?」

「あなたは空を飛ぶのも、その変な機械に任せっきりで慣れてな・・・・・」

 

霊夢が何かを言いかけた所で口を止めた。

のび太の様子を見て、目をいつもよりすこし大きく開いた霊夢。

その表情は驚きそのものだった。

霊夢のアテは、外れた。変則的な弾が襲えば、満足に飛ぶことも出来ないのび太はすぐに被弾するだろうと思っていた。

しかし、のび太は空の上で弾に恐怖しながらも、しっかりと飛行をコントロールし、弾幕を避け続けていた。

そのころ、観客席では様子を見ていたドラえもん達がのび太の飛行を見ながら各々、応援に励んでいた。

 

「のび太さん、すごい・・・」

 

「考えてみれば、僕らの中で、一番タケコプター使ってるの、のび太だもんな・・・」

 

「いけーーー!のび太―!!!!」

 

一方、話題の本人はというと、霊夢が驚愕している様子など見る余裕もなく、ただ必死に目の前の弾幕を認識し、避け続けていた。

 

「のび太!弾幕の量に惑わされないで!」

「高速でやってくる札は規則正しい軌道を描いている。それを見極めつつ、第2派の低速弾の間を通るの!」

 

「うっ!うん!わかったよ!!!」

 

「こんな手こずるとは・・・」

「(次試合を見据えて、スペルを出し惜しみしたのが裏目に出たわね・・・!!!)」

 

「おいおいおいおい! 霊夢ぅー!!!」

 

「うわわわわ!!!」

 

「あいつ・・・テンパってるくせにヒョイヒョイ避けやがるぜ・・・」

 

危なっかしい避け方ではあるが、被弾はせずに避け続けるのび太。

霊夢の表情も次第に歪みだす。

そして・・・一息。

 

「・・・っ・・・はぁ・・・」

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

 

落胆のため息、極度の緊張から荒くなる呼吸。対照的な二人の吐息は勝負の終わりを告げた。

 

「のび太、被弾なし!」

「合計2-1でのび太チーム勝利!決勝進出よ!!!!」

 

博麗の巫女が油断をしていたとはいえ、負けた。

その事実だけで、会場が沸くには十分すぎた。

 

「うおおおおおおお!!!心の友よおおおおお!!!!」

 

ジャイアンの叫びを筆頭に、歓声が止まらない。

観客の視線の先は、幻想郷で名の知れた人間でも、妖怪でもない。

ただ、この世界にたまたま迷い込んだ人間。野比のび太には有り余るほどの拍手が送られた。

歓声と拍手が鳴りやまぬまま、両チームはステージから降壇した。

のび太達は、ドラえもんたちの元へと戻っていくやいなや友人たちは沸き立っていた。

 

「すごいじゃないか!のび太くん!!!」

 

ドラえもんらの喜びを余所に、フランの表情が固まった。

フランの視線の先にいたのは、彼女の姉レミリア、そしてその従者咲夜だった。

 

「ククク・・・外界人と苦し紛れにチームを組んだと思ったら・・・」

「まさか決勝まで上がってくるとはね」

 

「お姉さま、次の試合はよろしくね」

 

「白々しいわよ、フラン」

「聖杯を手にして、あなたは何を願うの?」

「今まで、ありとあらゆるものを壊すことしかできなかった、あなたの願いって?」

 

その言葉が引っかかり、思わずのび太が呟いた。

 

「破壊・・・?」

 

「お姉さま・・・私はね・・・・」

 

何かを言いかけようとしたフランを遮るようにレミリアが言う。

 

「・・・・ふん、まぁいいわ。」 

「あなたの願いは次の試合で潰えるんだから・・・」

 

それだけを言い残し、レミリアと咲夜は去っていった。

さっきまでの勝利への喜びムードは消え失せ、次の決勝であたる相手の雰囲気に一同は飲み込まれてなっていた。

 

「おい・・・なんだよあいつ。ムカつくぜ・・・。」

 

「・・・のび太くん。 あと1勝で帰れるんだ!絶対に負けちゃだめだよ!」

 

「うん!」

 

フランは黙ったまま、のび太の腕を掴んだ。

 

「のび太、ちょっとこっちに来て」

 

皆から離れた場所で歩みを止め、フランがのび太を見る。

 

「いよいよ決勝だね。次の競技はあらかじめ決められてるって・・・」

 

「うん。司会の人が言っていたね、またスペルカード戦でしょ?」

 

「そう、そして次はきっと、のび太の弾幕も必要・・・避けるだけじゃどうにもならないと思う。」

「・・・さっきパチュリーから渡されたスペルカード」

「そこに、私のスペルを真似てコピーすることも可能だと思うの」

「だから、私のスペルを2枚を授けるね」

「スペル発動!!!」

 

―――――――――

 

 

フランのスペルカードを目の前で見せられたのび太の目は点になっていた。

これを扱う・・・、そう考えていた時、うれしさよりも困惑の方が勝っていたからだ。

 

「これに、のび太なりのアイデアを組み合わせて、使ってみて」

「のび太・・・・ここまでこれたのはのび太のおかげ」

「次の試合、私は絶対負けたくない。だから、もう1戦だけ力を貸して。」

 

「・・・・うん。」

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