ドラえもん のび太の博麗大結界くんと聖杯くん 作:Remindre
フランのスペルカードを参考に、パチュリーの魔力入りスペルカードへ、自分なりのスペルを思い描く。
ふぅ、というため息。しかし、のび太の顔は満ち足りるような満足げな表情を浮かべていた。
それを見守っていたフランも、優しく微笑み、のび太の右腕を掴んだ。
「そろそろ、決勝だよ。ステージへ戻ろ!」
フランに引っ張られ、のび太は足をもたつかせながらも飛行体制へと移った。
そして、最後の戦いとなる舞台へ再び上がる。
「聖杯戦争もいよいよ決勝戦よ。」
「決勝だっていうのに、身内ばっかりで少し心ぐるしいわね・・・」
二言目はマイクを通さずに、パチュリーが小さく呟いた。
「決勝戦のレギュレーションはこんな感じよ」
パチュリーが手で視線をモニターへと誘導させると、そこには決勝戦のルールが記載されていた。
【スペルカードルール対戦 5本勝負(3本先取)】
・1本勝負毎に互いのチームから1名ずつ戦う者を選出。
・1人が出場できるのは3本まで。
・敵チームの両メンバーと戦うようメンバー選出すること。
(3試合で3本先取した場合はこの限りではない。)
・1本の勝負で、どちらか一方が攻め、もう一方が守りとする。
・攻めは、スペルカードを1枚発動する。
・守りは、弾幕による迎撃・弾幕無力化などを禁じ、避けることに専念すること。
・敗北条件は攻めはスペルカードの時間切れ。守りは被弾とする。
・1本目はコイントスで攻守を決める。
・2本目以降は、前の勝負で勝利したチームが攻守を選択できる。
・5本目のみ、攻守の制限を無くし互いに弾幕の展開・スペルカードの発動を可とする。
・5本目の敗北条件は、どちらかのスペルカード時間切れあるいは被弾とする。
のび太はモニターを凝視し、ルールを頭に叩き込む。
準決勝とほぼ変わらない内容。ただ、5本目のみ、この幻想郷で行われているスペルカードルールに忠実に基づいた内容だという補足を聞き、緊張が走った。
互いに撃ち合いを行う・・・できれば5本目はフランに任せたい。のび太は心の中でそう思っていた。
「咲夜、まずはあなたが行きなさい」
「承知しました」
レミリアの指示に忠実に従う咲夜が一本目の勝負に出ることとなった。
対して、のび太チームはフランが歩を1つ前に進めた。
「のび太、今回も最初は私がいくわ」
「フランお嬢様、どうかお手柔らかに。」
「・・・お互いにね。」
1本目の選手が互いに出たところで、パチュリーがその間に入り、コインを手でいじりながら、互いの選手へ目配せをする。
フランはその目配せを感じ、表と一言呟くと、咲夜はそれを了承する意味を込めて小さく頷いた。
パチュリーがコインを親指で宙へと弾く。綺麗な放物線を描いたそれは、重力に従って徐々に降下してゆく。地面に落ちたコインの面のうち、天を仰いだのは、表だった。
「私の攻めでいくわ」
「決勝戦、1回戦 フラン(攻)vs咲夜(守) はじめっ!!!」
パチュリーの宣言と同時にフランが動く。
「スペル発動!フォーオブアカインド!!!」
のび太にとって、信じられない光景がそこに広がる。
フランがスペル発動の次の瞬間、4人に増えていたのだ。
外見はそれぞれフランそのもので、同じ服を着た誰かが化けて出ている、という訳でない。
「1人のフランお嬢様ですら手を焼くのに、いきなりこのスペルですか・・・!」
「ほら!もっともっと遊ぼうよ!!!」
互いに宙へと浮き、4人のフランはそれぞれ弾幕を展開させる。
20メートルほどの距離を取り、咲夜は弾幕を見極め、避けてゆく。
顔を上げて、その様子をじっと見つめるのび太。その傍らに歩みを進める者が一人いた。
「ねぇ・・・」
「レ、レミリア・・・!」
「ふふっ、そんなにオドオドしなくてもいいわ。殺さないわよ。」
いたずらに口角を上げる表情は、彼女の外見には似合わないほど、どこか妖しさを秘めていた。
その表情のまま、レミリアはのび太の横で一緒に戦いを見上げながら語り始めた。
「あなたは、あの子をどこまで知っているの・・・?」
「どこまで・・・・?」
何も知らない、といったのび太の表情を見て、レミリアは一層笑みを強めた。それは、楽しいとか嬉しいとか、そういった感情ではもちろんなく、無知なのび太を嘲笑う表情だ。
「あの子の恐ろしい力・・・よ」
「ありとあらゆるものを破壊する能力、それがフランドールの力。」
「この会場の人間を5分もしないで皆殺しにするぐらい、造作もないわ。」
「そして、一番恐ろしいのは・・・あの子がその力を完全にコントロールできないこと」
「だから、大切なものも壊れてしまうの」
「そう・・・・・・・私の大切なものも・・・」
さっきまでの妖しい笑いが曇り、悲しげな目となるレミリア。
話の内容と、その表情を見たのび太は思わず、「えっ?」とまた呆けてしまう。
すると、レミリアはまた妖しい笑いへと表情を戻した。
「・・・・やっぱり咲夜には荷が重すぎたかしら?」
「そこまで!!!」
レミリアの語りかけに夢中になっていた間に、勝負は決していた。
どうやら、4人のフランが咲夜に弾幕を当てることを成功させたようだ。
被弾した箇所の右肩を抑えながら、咲夜が宙より降下してくる。
そしてレミリアの元へ、俯きながら歩いてきた。
「お嬢様・・・申し訳ありません」
「いいわ、次は私が出るわ」
咲夜の後を追って降下してきたフランが、次に出ると言ったレミリアを見つめ、張り詰め表情へ変わる。
「お姉さま・・・・」
その表情を見たのび太が、咄嗟に口を開いた。
「フラン・・・ここは僕に行かせてほしい」
「・・・えっ?」
何故、そんなことを口走ったのか、それはのび太自身も分からない。
レミリアとのさっきの会話、フランを陥れるような発言がのび太の何かを動かしたのかも知れない。
のび太は、言ってしまったという表情を出しかけたが、慌てて、自分がなぜそう思ったのかを説明し始めた。
「ひ、ひどく疲れているように見えるよ!」
「君のお姉さんだ・・・勝てそうにはないけど・・・」
「フランが勝ってくれたおかげで、攻守の選択権は僕にある」
「攻めを選択し、僕が長く攻めて、次の試合に向けて、君を休ませることぐらいなら僕にも・・・・」
もちろん、フランはあの程度で疲れてはいない。
取って付けたような理由で、それはフランも分かっていた。
が、攻守の選択権があるということ、そして被弾する恐れの無い、安全な攻めという選択ができることからフランはのび太が行くことを了承した。
「・・・わかった。お願いするね」
「任せて!」
のび太とフランが軽くハイタッチを交わし、ステージの中央へのび太が進む。
「・・・・・あら?」
「あなたが出てくるとはね。・・・ククク、まぁいいわ」
「・・・僕の攻めで行くよ」
対峙し合った二人。のび太の言葉を聞いたパチュリーが戦いの開始を告げると同時にのび太が上空へ飛び立った。
そして、頭の中で状況を見つめ、次に自分が取るべき行動を整理する。
「(フランを休ませるために・・・さっきコピーしたスペルとは別の・・・よりスペルの時間が長い、僕オリジナルのでいく!)」
「スペル発動!のび太スターー!!!!」
そう宣言し、発動したのび太の弾幕は、3列ほどの弾幕。
いや、幕という表現で正しいのか分からないくらい間が空いたものだった。
それを見たレミリアが、呆れながらのび太へ叫ぶ。
「湖の雑魚妖精の方がまだ良い弾をうつわよ!」
二人の戦いを見つめていた観客席のジャイアンは額に手を当てて、大きなため息を吐いた。
「のび太・・・・お前・・・・」
もちろん、ジャイアンだけではない。ドラえもん、スネ夫、しずか・・・全員の表情は曇りだ。
「スターって・・・はぁ」
「大丈夫かしら・・・」
単純に左右に体を傾けるだけで避けれる弾幕。
これでもかというほど、退屈な表情、それに欠伸をしながらレミリアは言い放つ。
「退屈な弾幕ね。パチェーーーー?!私から撃っちゃだめーー?」
「絶対にダメ」
「(いいんだ、これで・・・少しでも!! 少しでも長く!)」
観客含め、すべての嘲笑を余所に、のび太は自分の思惑通りに事を進める。
そして、この戦いでの彼の役目は完結した。
「・・・・はぁっ、はぁっ」
「そこまで!!! 勝者、レミリア!」
「ククク、アップにもならなかったわね」
~決勝戦 途中経過~
第1試合 ○フラン(攻) vs ×咲夜(守)
第2試合 ×のび太(攻) vs ○レミリア(守)