東方系色伝   作:偏頭痛

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初投稿です。


1話――姉妹

 気が付いたら目の前にゆかりんが居た。それも物凄く可愛い美少女で。最初は自分の目を疑ってしまった。けれど、金色に輝く長髪をしていて、紫色のドレスを召して、胡散臭いながらも魅了される笑みを浮かべているのだ。何処からどう見てもゆかりんにしか見えない。すると、あちらも私に気が付いたようで、近づいてきた。

 

 ……ふ、ふつくしい。歩いてくる様がまさに淑女のそれで、カリスマオーラをこれでもかと言わんばかりに放っている。また、彼女から溢れる力はとても禍々しく、徐々に息苦しくなっているのを感じ取れる。というか、実際に息が出来ていなかった。

 

 

 

 ――私は何時の間にか、ゆかりんに首を絞められていた。

 

 

 

 「貴女、私に化けるとは良い度胸してるのね? 覚悟はよろしくて?」

 

 「くっ、くる、しぃ」

 

 

 

 今、化けるって言ったけど、どういう事だろうか。いや、よくよく考えてみると、今のこの状況は色々と可笑しい。

 

 

 

 

 

 ――夢の中な筈なのに何故、物凄い痛みを感じるの?

 

 ――あの華奢な体で、一体どうやったらこんな力を出せるの?

 

 ――何故、私はこんなにも落ち着いて思考に耽っていられるの?

 

 

 

 

 

 「……気が変わったわ」

 

 「うっ、け、けほっ」

 

 「貴女に化けれる程の力を感じないし、そもそも化け狸や狐の類でもないでしょうし」

 

 

 

 だったら首なんか絞めないでもらえますか。……なんて言える訳も無く。ここは取り敢えず、穏便に事を済ませたい。

 

 

 

 「あ、ありがとう、紫」

 

 「訂正、どうして私の名前を?」

 

 「……あ、ち、違うん――」

 

 「少し痛い目見ないと駄目なようね?」

 

 

 

 は、話が全然通じない。さっきの首を絞めたのは痛い目には入らないんですか? ……そういえば、凄く今更な疑問だけど。初対面な相手の筈なのに、どうして私は名前を知ってたんだろう。それも、さも当たり前のように呼んだのだけど。

 

 

 

 「……どうにも調子が狂うわね。貴女には危機感ってものがないのかしら?」

 

 「寧ろ親近感すら覚えます」

 

 「うーん。貴女、ひょっとして生まれたての妖怪なのかしら?」

 

 

 

 

 

 ――え、妖怪?

 

 

 

 

 

 こんな意味の判らない夢を見る前は、確か人間だった筈なのだけれど。どうにも記憶が曖昧になっているようだ。もしかしたら、今が夢から覚めた現実で、人間だった頃の事が夢だったりするのかもしれない。夢か現か……本当、私の身に何が起きてるのかさっぱりだ。

 

 

 

 「……桃」

 

 「もも?」

 

 「そう、貴女の名前、八雲桃。今日から私の妹になりなさい」

 

 「……はい?」

 

 

 

 

 

/**/

 

 

 

 

 

 どうやら私は本当に妖怪だったみたいだ。ゆか……じゃなくてお姉様と同じ能力を持っているから。それに、私の容姿は何故かお姉様と瓜二つ。服の色が同じだったら、それこそ見分けがつかない位に。

 

 ただ、私の方が少し幼い朗らかな声だったり、身長が少し低かったりするので、完全に判らなくなるという事はない。これでお姉様が私を妹にしようとしたのが納得出来る。……のかな?

 

 

 

 それで、私達が扱える能力とは『境界を操る程度の能力』。お姉様もまだ大それた事は出来ないみたいだけれど、基本的に出来ない事はないらしい。

 

 普段は専ら移動手段に使ったり、物置みたいに使ったりしている。手を翳して意識すると、目の前に異質な空間へ続く入口が現れる。お姉様はこれを『スキマ』と呼んでいるので、名乗る時は自分の事をスキマ妖怪と言っているみたい。

 

 

 

 ――つまり、私はスキマ妖怪の第二号になったという訳だ。

 

 

 

 「ねー、お姉様。何処に向かってるの?」

 

 「んー、良く判らないわ」

 

 「え、適当なの?」

 

 「そうよ」

 

 

 

 お姉様って見た感じだと凄く頭良さそうに見えるんだけど、実際はそうでもなかったりする。何というか、何処か抜けてる感じ。

 

 ……はぁ、ちゃんとした目的地がある訳じゃないから、文句なんかは言わないけれど。お姉様の雰囲気からするに、迷っているのは確定的に明らか。それに、さっきから同じ所をぐるぐる回らされてる様な気がする。だからこんな不気味な森には入りたくないって言ったのに。

 

 

 

 「お姉様、迷ったでしょ?」

 

 「そ、そんなことないわ」

 

 「嘘、明らかに動揺してる」

 

 「……し、仕方ないじゃないっ! こんなに迷う森だとは思わなかったんだもの」

 

 

 

 実はお姉様も生まれてから間もないみたいで、でもかれこれ五年程は生きているらしい。五年と聞いて、私は吸血鬼姉妹と似ているなぁと思った。

 

 ……ん、吸血鬼姉妹って何? うーん、さっきから私の頭の中を、意味の判らない単語が飛び交っている。

 

 

 

 「お姉様、此処絶対に危ないよ。早くスキマで戻ろう?」

 

 「駄目なの」

 

 「何が? 早くしないと――」

 

 「スキマが使えないのよ」

 

 「……え?」

 

 

 

 

 

/**/

 

 

 

 

 

 「ねー、お姉様。お腹空いた」

 

 「私だってお腹空いてるの。我慢なさい」

 

 「……はぁ、だから止めようって言ったのに」

 

 

 

 森の中を彷徨っていたら、急に何かに閉じ込められたみたい。この小さな空間では、私達の能力を使った移動が出来ない。スキマで脱出しようと試みたのだけれど、何故か元の場所に戻される。よって、此処から出る事が出来ずにかれこれ一週間くらい立ち往生している。

 

 幸い、スキマを開く事だけは出来たので、保存して置いたものを食べられたから良かったけど。それも直ぐに尽きて、今は絶賛絶食中である。……はぁ。

 

 

 

 「おい、なんか引っ掛かってるぞ」

 「こんな処に女子?」

 「結界解けないから誰か『長』を呼んで来い」

 

 

 

 どうも、見知らぬ集団が近づいているのに気が付かなかったみたいだ。お腹が空いてると、こうまで集中力が落ちるとは。元から無かったとか言ってはいけない。

 

 それで、引っ掛かったと言うからには、あの人間達が何かをしたのは間違いない。結界がどうたらとか言ってたけど、凄く懐かしい響きのする言葉だ。初めて聞いた筈なのに。

 

 私達はこれから一体どうなるのだろうか。思わずお姉様の方を見る。……目が合った。血は繋がっていない筈なのに、考える事は同じみたいだ。可笑しくて少し笑いそうになったのを堪える。

 

 

 

 「……お姉様」

 

 「今は無事を祈るしかないわ」

 

 「私、殺されたらずっとお姉様を怨むから」

 

 「……」

 

 「君達、すまなかったね。大事はないかね?」

 

 「ほえ?」

 「え?」

 

 

 

 何時の間にか、私達を覆っていた空間が無くなっていた。新鮮な空気を吸うと、外に出られたという実感が湧く。

 

 今話しかけてきた老人が『長』という人だろうか。いや、人というよりは妖怪に近い気がするけど。謝ってくるとは予想外だった。私達は恰好のエサ、だった筈なんだけどね。

 

 

 

 「えっと? 殺したりとかはしないの?」

 

 「そんな事はせんよ。と言っても、簡単には信用してはくれまいか。儂はこの先にある小さな里を護っているだけじゃ」

 

 「その為の罠だったという訳ね」

 

 「如何にも。そこでお嬢さん方、もし宛がないのなら儂らの里に来ないかね? 里は全てを在るがままに受け容れてくれる」

 

 

 

 

 

 ……吃驚だよ。どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 いや、有難い申し出だけどね。ただ、罠という可能性もある。この森の中には似たような結界とやらがまだまだ沢山あるはず。油断しているところを狙って……なんて事も考えられる。或いは、里に着いた時に何かされるかもしれない。

 

 

 

 「そちらの元気なお嬢さんはどうにも信用しとらんようじゃな。もし仮に儂らが本当に殺そうとするならば、もう既にしとるとは思わんか?」

 

 「まあ、確かに。でも私達は妖怪だよ?」

 

 「だから言ったじゃろ。里は全てを受け容れると。命に種族はないんじゃよ。そう思うじゃろ、お前達」

 

 「そうっすね」

 「俺は何処までも長について行くぜ」

 「これから楽しくなりそうだな」

 

 

 

 

 

 ……物凄く能天気な回答に、ずっと悩んでいた私が馬鹿らしく見える。

 

 

 

 

 

 「分かったわ。今日から妹共々、お世話になるわ」

 

 「そうか、ではついて来ると良い。そこで皆に紹介しよう」




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