世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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「…よく、此処が分かったものだな」
「少し調べて、考えてとすれば直ぐ分かる事だろう」
「そう言えるのは私達の様なごく少数なのだがな…それで、何の様だ?」
「あんたにようが在って来た訳じゃ無い」
「ならば」
「唯の墓参りだだ。此処なんだろう? 冒険者が終わった場所は?」
「…そうだ、な」
「ほら、花。正確な位置までは分からんからあんたが手向けてくれ」
「すまない」
「良いよ別に」

「改めて、感謝する。終わらせてくれたことを」
「気にするな。依頼をこなしただけだし。俺の目的を達成する為にも必要な事だっただけだ」
「目的?」
「そう、いやまさかとは思うが」

「俺が勝ちを譲られて、それで満足するとでも思ったのか?」

「いや、いいや。そんな難しい男では無いだろうおぬしは」
「簡単かね? いや簡単か」
「あぁ、簡単だとも。ただ己で為したいと思う事は分かり易過ぎる……しかし」

「まさかと思うが、私から容易く勝ちを奪えるとは思っていないだろうなローウェン」
「おいおい、なんで勝ちがあんたの所に在るみたいな言い方してるんだライシュッツ?」

「はっはっは」
「ふっふっふ」

「ならば証明してみせようか? 弾丸をぶち込んでな」
「風穴を開けられるのはあんたなのによく言うよ」

「此れ以上の言葉は」
「不要。しかし敢えて口にするならば」

「この勝負」
「勝つのは」


「あ た し で す !!」
「え、ちょクル―――――――」


その日、世界樹が揺れた。




第百二話

雲一つなく、綺麗な色を見せる空。其れを覆う様に堂々と聳える世界樹をレフィーヤは何をする訳でも無く、只々ボーっと眺めて居た。余りにも、暇だったから。

 

コバックとハインリヒは荷物を運んでおり、ローウェンは少し用事があると朝早くに出かけていったので居ない。こんなに暇になるなら、付いて行けばよかったかもしれないと。基本的に荷物が少ないレフィーヤは思いながら欠伸を一つ。

 

「…あぁー」

 

気の抜けた声が零れる。止めようとすれば止められるが、そんな気分でも無く只管口から垂れ流す。何か、する事でも無いだろうかと考えながら。そして。

 

「……もう一回くらい食べてこようかな」

 

と、言いながら思い出すの栗鼠の喫茶店で食べた料理。あの辛くて美味しい素晴らしき料理をもう一度と思い。いや、流石に其処まで空腹では無いし時間も無いかと思う。

 

ふと視界の端に映り込む人影。確認する様に視線を向ける。ハインリヒが荷物を持って向かってきたいた。彼は、座っているレフィーヤを見て驚いた様に言葉にする。

 

「まだここに居たんだ。一度、宿に戻ればいいのに」

「一応、荷物を見てなきゃですからね」

「それはそうだけど、態々君がする必要も無いんじゃないかな?」

「クルミさんが居るこの街で他人に頼むんですか?」

「ごめん、僕が間違ってた」

 

どうやらハインリヒはその場のノリで家屋を吹っ飛ばすような人物が街に滞在していると言う事を忘れて居た様だ。

 

と、そう言えばと疑問に思っていた事を問い掛ける様に口にする。

 

「そう言えばハインリヒさん。アルカディアってどんな場所ですか?」

「どんなって……あぁ、いやそうか。君は微妙に違うんだっけ。なら分からないのも無理は無いか」

 

そうだねと、荷物を置いてから考える仕草をして。

 

「変わらないかな」

「変わらないんですか?」

「そう、世界樹が在って、それを中心に人類は栄えている。尤もハイ・ラガードやアスラーガと違って世界樹に挑む事は禁止されてたけどね」

 

今は知らないけど。そう肩を竦め乍ら答えた。そして後はそうだねと言葉を続ける。

 

「遠い。とても遠い」

「とてもって…どの位ですか?」

「取り敢えず、厭きる程に海を眺める事ができるよ」

「あぁ、そうですか……流石に、其処までは嫌ですね」

「まぁ、其れでも最近はアーモロードでかなりいい船が行き交ってるらしいからね。僕の時よりは満喫せざるおえない時間も短く済むだろうね」

「アーモロード?」

「端的に言えば港町だよ。いや規模的に都、そう海の都と呼ぶに相応しいかな」

「海の都」

 

何とも魅力的な言葉が出てきたものだとレフィーヤは思う。

 

「…迷宮とかは?」

「幾つか海に沈んで居るのが見つかるらしいね。若しかしたら、処でなく確実に誰も見た事の無い遺跡が在るね」

「おぉ!!」

「其れを抜きにしても色んな土地から人が海を越えてやってくるからね。かなり面白い街だよ」

「それはぜひ探検しなければいけませんね」

 

そう決意するレフィーヤに、ハインリヒは笑みを浮かべ。

 

「あら、まだローウェンちゃんは居ないの?」

 

そう言いながらコバックが歩いていきた。

 

「あ、コバックさん。そうですね、ローウェンさんは…まだ来てませんね」

「朝出掛けたっ切りなの? 本当に何処に言ったのかしらね」

「ローウェンなら迷宮に向かったよ」

「は? え、如何いう事ですかそれ?」

「一体何の用があって一人で向かったのよそんな場所に」

「それは」

 

「唯の野暮用だ。気にする事じゃ無い」

 

答えようとしたハインリヒの言葉を遮る様に響く声。それがローウェンの物だと直ぐに気が付いたレフィーヤは声のする方へと視線を向ける。

 

「あ、ロー……あの、ローウェンさん」

「何だレフィーヤ?」

「なんでそんなにボロボロなんですか?」

「爺に喧嘩売ったらキチガイに乱入されて最終的に殴り合って来ただけだから気にするな」

「だけじゃないですよねそれ?!」

 

その言葉が誰を指しているのかを理解した故に。とんでもない大惨事しか想像できないレフィーヤは思わず驚き、悲鳴を堪え言葉にする。

 

「だけだよ、所詮おふざけだ。殺す気であっても死ぬような事態にはならん……まぁ、ちょっと迷宮の一角が吹っ飛んだけどな。主にキチガイの所為で」

「いや、それやっぱりだけじゃないですよ」

「だから良いんだよそんな事は…で、準備は?」

「出来てるわ。後はローウェンちゃんが来るだけって状態だったわよ」

「と言う事は結構待たせたって事か、悪いな」

「待ってたのは直ぐにやる事が終わってしまってたレフィーヤ位だけどね。僕とコバックは物が多いからさっきまで運んでたし」

「成程…一応、謝っておこうか?」

「良いですよそんなのは。此処で待ってたのは…まぁ、ローウェンさんの言うキチガイ対策で居ただけですし。暇だったの確かですけど勝手にした事ですから」

「そうか、ならそう言う事で」

 

ローウェンは、視線を動かして三人を見る。

 

「面倒な事に成る前にさっさと行くかね」

「そうしよう」

「でも良かったんですか本当に」

「レフィーヤちゃん、考えてみなさいよ。貴族になって平和に暮らすのと冒険を続けるの…どっちの方が良い?」

「あ、すみません。当然の事を訊いてしまいましたね」

「まぁ、冒険させてもらえたとしても面倒事である事に変わり無いからな。目指す場所が既に定まってるんだから此処に何時までも居る理由は無いだろう。ちゃんと挨拶もしてきたしな」

「詰りなんの憂いも無く、と言うやつですね」

「そういう事で、行くぞ」

 

言葉にし、視線を向けてくるローウェンにレフィーヤは大きく頷く。コバックも、ハインリヒとてそうだ。最早見るまでも無いだろう。そしてローウェンは楽しそうに笑みを浮かべて。

 

「目指すは新天地・アルカディアだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ僕的には帰郷なんだけどね」

「其れ言っちゃいけないだろうハインリヒよ」

「そう・・・・あ」

「如何したんですかコバックさん」

「またくだらない事でも思い付いたか?」

「いえ、唯」

「唯?」

 

「調査隊の褐色の子……名前訊き忘れたなぁーって」

 

『…あ』

 

何とも緩んでしまった空気の中で、彼等は旅立つ。新たなる冒険へと歩み出す。

 

其処に在るのだと証明された道の……その先を目指して。











深き底、ギンヌンガ遺跡で在った場所より至れるその場所。そこに一つの動く影が在る。

酷く淡い、朽ちかけの存在は光に誘われる様に歩を進める。そして光の元へとたどり着く。

それはただ静かに上を、空を眺めて。静かに崩れ落ちる。最早動く事の出来ないだろうそれは。

何かを言葉を口にしようとして失敗する。もはや、言葉を残す事も出来ないのかと悔やみ。

そして。

『良い、口にせずとも伝わる』

動く事の出来ないそれは、しかし驚きにその身を震わせる。

『これ口にする権利は無いと知っている。しかし、それでもこの言葉を送ろう』

嘗ての主、仲間。威厳あるその言葉は、都合の良い幻聴でしかないのかは分からない。

しかし、それでも。

『―――――――大儀であった』

黒の護り手と呼ばれた存在は……確かに救われたのだ。



それは遠き日か。それとも近き日か。分かりはしない。だが、しかし。

いつの日か、その光に照らされた深き底に人々が再び訪れたならば、見る事だろう。

嘗て、禍を封じていたその場所に。


二つの杯が……寄り添う様に、そこにある光景を。

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