世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百六話

風に揺れる葉の音、水の投げれる音。其れが何とも心地よいその場所はアルカディアの世界樹。その迷宮の第一階層、鎮守の樹海と呼ばれる場所だ。

 

モンスターも現れる危険な場所で、同時に多くの冒険者を受け入れてきただろうその階層を彼等は、ギルド・フロンティアはなんかその場の勢いで新たに仲間としたゴザルニと共に歩き進んでいた。ミッションと成っている地図を書きながら。

 

「それにしてもお前の師匠は何か…あれだったな」

「それでも普段はもう少し真面なのでござるがな。精々素振りしてると自分から当たりに突っ込んでくる位でござるし」

「………そうか」

「如何いう訳か、あんな風に人切り紛いに成る事が在るのでござるよ。まぁ、ローウェン殿達がしたようにボコボコにされると落ち着くのでござるが」

「お前其れ」

「あ、別に分かっても言わなくても良いでござるよ? 拙者、出来る限り考えない様にしているだけでござる故」

 

詰り現実逃避。いや自分の事を守っているだけかとレフィーヤは前を歩く二人を見ながら思う。泥道を足を寄られる事無く平然と歩いて行く二人を。

 

「…なんで普通に歩けてるんですかね?」

「レフィーヤちゃん如何したの? やっぱり辛い?」

「あ、いえそういう訳では無いですよ。この程度で疲れたりはしませんよ」

 

後ろから心配する様に声を掛けるコバックにそう返しながら、前の二人の様に歩けないレフィーヤはせっせと泥道を凍らせて歩いて行く。

 

「そう言えばコバックさんは兎も角ハインリヒさんはあの二人みたいに歩けないんですか?」

「一応歩けるけど二人みたいにずっとは無理かなぁ。もし何かあったら薬類が全部だめに成っちゃうから出来れば避けたいし」

「あぁ、まぁその通りですね」

 

当然蓋はしてあるのだが。若しもと考えれば当然の事だなとレフィーヤは思いながらどんどん進んで行く二人を追い掛けるように少し急ぎ気味に凍らせていく。

 

 

そして後にその光景を見た衛視は。平然と泥道の上を歩くとんでも人間とかなりの範囲を凍らせたのに平然としてる少女が居たと語ったそうな。

 

 

さて、そんな事を衛視に思われていたとしても如何でも良い彼等は其の儘何事も無く時々現れるモンスターを処理して難なく求められた物の一つである世界樹の根を確保した。

 

「此れであとは、地図書き上げて土を手に入れれば良いのか」

「ですね」

「随分と簡単でござるな」

「お前はやらなかったのか?」

「ござるな。そもそもさっさとまた旅に出る積りでござったし。師匠に出くわしてからは暴走一歩手前状態の師匠を止めるので手一杯でござったし」

「あぁ、その…お疲れ」

「その言葉が心に染みるでござるな」

「ミッション終わったら何か作ってあげようか?」

「まことにござるか?! それなら」

「カレーをお願いします」

「分かったカレーだねってレフィーヤ?」

「私、とても、辛い、食べたい、です」

「何で片言? いやでも」

「カレー…いいでござるな!! 久しぶりにあのスパイスの効いた料理が食べたいでござる」

「え、そう? なら作るけど」

「やったぁーでござる」

「シャァアッ!!」

「なんでレフィーヤの方が喜んでるんだよ」

 

其れはもう、辛い物が食べられるからに決まっているだろうと視線で訴えかける。何故言葉にしないのかと言えば何と無くである。問題なく伝わるのだからそれでも良いだろう。

 

と、其の時コバックが何かに気が付く。

 

「あら、あれ何かしら?」

「何が?」

 

あれ、と言いながら指差した方を見ると何か光る物が見える。其れが何であるのかはレフィーヤには分からない。

 

「銅貨だなあれ」

 

まぁ、レフィーヤには分からなくてもローウェンには分かる様だが。相変わらず目が良いなと思うレフィーヤだった。

 

「で、それ如何しますか?」

「銅貨ねぇ…山都銅貨かな? 今でも使われてる奴……ゴザルニ、今でも使われてる?」

「使われてるでござるな」

「と言う事で使われてる銅貨だね。正直、拾う必要は無いと思うけど」

「馬鹿お前、金は必要に決まってるだろ。当然拾う」

「のはいいですけど。なんか居ますよね。亀が」

「居るな亀が」

 

まぁ、大した事では無いと気にする事無く銅貨を拾いに向かうローウェン。そんな彼に気が付いたのか亀がゆっくりと顔を上げて。拾おうと伸ばされた彼の手に向かって首を伸ばし噛みつく。

 

その瞬間、伸びてきた亀の頭部を開いている手で掴むことによって止め、銅貨を拾うと手を放し戻ってきた。

 

「やったぜ」

「容赦ないですね、亀相手に」

「容赦しまくりだろ。撃ち抜いてないし」

「それもそうですね」

 

なんて言いながら再び地図を書く為に歩きだす一行。そんな彼等を、唖然と首を伸ばしたまま固まる亀は見つめていたと言う。

 

その少しの後の事。やたらと手ごわい亀に冒険者が出くわす様になったが蛇足である。その亀が其れでも何故か悔し気であった事もまた同じ。

 

 

「お、あそこか」

 

暫く歩いた後。突き当りと言える場所で、掘り返された跡がある場所を発見したローウェン。

 

「と言う事はあそこから土を採取すればそれでミッション達成と言う事でござるか」

「そういう事だな。そう言う事でさっさと土を採取するぞゴザルニ」

「了解でござる」

 

ローウェンの言葉に、頷きながらハインリヒに木の実を手果たしたゴザルニは彼と一緒に掘り返された跡の在る場所まで歩いて行く。

 

二人とも武器を構えながら。そして。

 

「ほい」

「よいしょ」

 

地面に向かって刀を突き刺し、銃弾を放つ。どうしてそんな事をするのか等とは聞かない。そこにモンスターが潜んでいたのだと分かっていたから。

 

しっかりと仕留めた事を確認してから軽く辺りを見渡して、ローウェンは土を袋に詰めた。

 

「…良し、戻るか」

「はーい」

 

なんなくミッション達成となりましたとさ。まぁ、街に帰って報告するまではそうでは無いのだけれども。と言っても急いでる訳でも無いので、ゆっくりと歩いて帰っていくギルド・フロンティア一行であった。










街に向かって帰還する為に歩いて行く五人の背中を眺める人影が一つ。

その影はたいして疲れている様子の無い冒険者たちの背中を見ながら。

ふむと呟きながら頷いた。
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