芋虫だった。けれど普通の芋虫では無かった。普通のと言うには余りに巨大で、また強力過ぎるだろう。他のモンスターとは明らかに強さの領域が違うそのモンスターは、間違いなくF.O.E。並の冒険者ならば磨り潰せるだろう這い回る毒蟲と名付けられているそれは、ゆっくりと視線を自らを見ている彼等、ギルド・フロンティア一行へと向け。そして。
森の中に飛び込んだ。
「……は?」
想定外のF.O.Eの行動。思わずと言った様子で言葉が零れたのはレフィーヤだった。まぁ、まさかF.O.Eがその様な行動をするとは思わないだろうから仕方ないと言えば仕方ないのだが。F.O.Eとしてでは無く、唯のモンスターとして案が得れば、その行動の意味が直ぐ分かる。
「もしかして逃げたんですかね?」
「いや、隠れたって言った方が正しいだろうな。ほら、顔をだして覗き込んでるし」
「まぁ、慣れて無いからなのか全く隠れられてないけどね」
「ちょっと可愛いわね」
「そう…でござるか?」
「え? 可愛くないかしら?」
「よく分からんでござる」
なんて会話を、木の陰から覗き見ている這い回る毒蟲を見ながらして。如何しようかと視線を交わし。
「まぁ、襲って来ないなら放置で良いだろう。襲って来なければ」
「ですね。依頼でって時は別ですけど。態々疲れる為に戦うのは良くないですしね」
「と言う事で気にせず進むぞ」
おー、なんてローウェンの言葉に返しながら這い回る毒蟲の退いた道を歩いて行く。途中に居た他の奴にも同じような行動を取られながら。
そんな事が在った二階を経て三階へ。その階を少し進んだ所で、レフィーヤは気の抜けた声を零しながら言葉を口にする。
「あぁー……何というか、ここの迷宮に居るF.O.E。やっぱりと言いますかハイ・ラガードの世界樹に居たのとかなり違いますね」
「確かに、あそこのほど馬鹿では無いな。オーバーロードの城は除くが」
「あそこは桁外れでしたし…そもそもあれらって生物だったんですか?」
「いや、明らかに違うだろう」
「ですよね」
考えるまでも無いかとレフィーヤは思う。
「けどまぁ、確かに世界樹に居たF.O.Eに比べて此処の奴の方が生存本能と言うか、闘争心と言うかはしっかりしてるな。まさか行き成り隠れられるとは思ってなかったが、生物としては普通の事だしな」
「地味にF.O.Eに勝てない相手だって認識された事に関して一言」
「特に」
「そうですか」
「まぁ、敢えて言うなら賢いな、位のものだろうな。倒す為の手段を用意はしてたが戦わない事に越した事は無いし」
そのローウェンの言葉にそうですねとレフィーヤは頷いてみせる。確かに彼の言う通り、幾つか手段と言うかを用意している、が戦わない事に越した事は無いのは当然だろう。それに、用意した手段が本当に通用するか分からないし……そう考えると余裕が在るうちに戦って確かめるのも悪い事では無い様に思えてくる。
「で、ハイ・ラガードのF.O.Eみたいに色々と欠落している訳でも無いんですよね此処のF.O.Eは」
「だな」
「それなのに」
言いながら視線を向けて見るのはゴザルニによって丁度、首を刎ねられた三階に住まうF.O.E。確か猛る梟獣と名付けられていた筈のモンスターを見る。
「喧嘩売って来るんですね」
「寧ろそうだからこそだろうな。縄張り争いとそう変わらんし」
「あ、あぁ成程そういう事ですか」
其れなら行き成り正面から来たのも分かる。詰り其れが猛る梟獣と言うF.O.Eの生物としての特性と言う事なのだろう。しかし、と言う事はやはりあれなのだろうか。自分の領域が奪われかねないと危惧されたのか、ギルド・フロンティアは。F.O.E達に隠れられたり危惧されたりする領域なのかと、少し思う所は在る。
まぁ、ハイ・ラガードに付く前だったら盛大に落ち込んでいただろうなと如何でも良い事を思うレフィーヤだった。
「ん?」
「如何した?」
「あ、いえ少し違和感を感じただけなので」
正確に如何いう事なのかと説明できないのでそう言う他無い。其れを察したのか、そうかとローウェンは言って。きちんと止めが差せているかどうかの確認し、周囲を軽く見渡してから再び歩きだす。
本当に何なんだったんだろうかと、今も感じる視線のとは違う違和感に首を傾げ、考えようとして止めた。今は迷宮内。そんな場所で考え事をしながら進むなんて危険すぎると思ったからだ。
ふと視界の端に映り込んだ物に気が付く。
「あ、ありましたよゴーレム」
「まじか……本当だ」
「ローウェンさんよりも先に見つけてやりましたよ」
「初めて先に見付けられてしまった」
ぐわぁ、と胸を抑える様な仕草をするローウェンを見て、少しだけ嬉しく思うレフィーヤ。まぁ、だから何だと思いながら周囲を警戒しつつゴーレムへと近づき、大丈夫な事を確認してから軽く触れた。
直後、ゴーレムは倒れ込んだ。其れと同時になにかが動く音と振動が伝わってくる。
「…これで、あぁ近くに変化が無いって事は少し離れた場所ですかね? に道が出来た、と考えて良いんですよね」
「二階の時と同じならな」
「それにしても色々と大丈夫なのかしらね此れ。随分あれだけど」
「聞いた話を考えるに、可成り時間が経過してるようだからな。だから此処まであれな状態に成ってるんだろう」
先程、触れて簡単に倒れたゴーレム。実は世界樹を守る為に作られた結界らしい。コバックの言う通り、確かに触れるだけで良いのなら結界としては如何なのかと思うが。ローウェンの言う通りでもある。かなりの年月が経過してるのだ。劣化位はしているだろうと。
因みに、この触れれば良いと言う事に気が付いたのはレフィーヤである。正確には石板に書かれていたヒントと思わしき物を読み取ったのがレフィーヤなのだ。と言っても、途切れ途切れでしか分からなかったが。それでもゴーレム、幻、触れると重要な言葉が分かったので良かったと言うべきだろう。
「さて、じゃあ行くかね。ゴーレム探しながら」
「そうですね。あ、次も私が見付けちゃいますからね」
「言ったな? 良し本気出すか」
「止めて下さい、本気で探されたら先に見付けるとか無理ですからね」
本気出されたら勝負に成らない。此れは基本だ。それでもやる気なローウェンにレフィーヤは肩を落としながらそれでもと思いながら視線を巡らせながら先へと進む。
勿論、ローウェンより先に見付ける事は出来なかった。