世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百十話

ゴーレムを探して行ったり来たり、あちらへこちらへ。進んで見たり戻ってみたり。そんな面倒な事だが、しかしそれを楽しみながら繰り返して漸く四階へと続く階段を見つけ出したギルド・フロンティア。

 

彼等は今、街に帰還していた。

 

どうしてかと言うと、評議会から三階まで到達したら一回戻って来て欲しいと言われていたからだ。だから三階に到達した時点で帰っても良かったのだが。まぁでも、どうせ来たのだからいける所まで行こうぜ!!

 

なんてノリで三階の地図を完成させてから帰還したのだ。そんな感じで出来た三階までの完璧な地図を評議会に提出。何故かドン引きされたりはしたが。それでも優秀だと判断されたからか、あるミッションを請ける事が出来たので。

 

「あぁ、ベットが心地良い」

 

借りているジェネッタの宿の一室でレフィーヤはだらけていた。何故、直ぐに迷宮に向かわないのか。理由は簡単だ。単純に休めるのに休まずに向かうなんて馬鹿のする事だからだ。幾ら定期的に休憩を入れていると言っても迷宮内でしっかり休む事は出来ない。結果、僅かでも疲れが溜まっていくのは当然だ。

 

だから街に戻ったら最低でも二日は休む。此れはギルド・フロンティアの決まりの様な物だ。まぁ、緊急時はその限りでは無いが。

 

気の抜けた声を零しながら、視線を椅子に座りながら本を読んでいるゴザルニへと向ける。

 

「…ゴザルニさんって本読むんですね」

「で、ござるな。割と好きな方でござるな。しかし何故その様な事を言ったでござる?」

「いえ、なんか読まなそうだなと。というか読め無さそうだと思ってました」

「酷い言い様でござるな…え、拙者の事をそう思ってたのでござるか?」

「正直言って」

「本当に酷いでござるな?! これでも親とかと比べても拙者の方が頭が良いのでござるよ」

「ゴザルニさんが?」

「にござる」

「……それって」

「あ、言わなくていいでござる。拙者の家の者は頭が非常にあれだという事は理解しているのでござる」

「またそれですか…因みにですけど、どんな感じなんですか?」

「どんなと言われるとそうでござるな」

 

と、問い掛けるレフィーヤに彼女は少し考えるような仕草をしてから言葉を口にした。

 

「世界樹の迷宮に挑んで何も出来ずに帰るような者達でござる」

「帰ったって。え? 帰った?」

「にござる」

「若しかしてあれが分からなかったんですか?」

 

あれ、とは結界の要となるゴーレムの事だ。ヒントとなる文字が読めなかったにしても冒険者ならば分かる程にあからさまなゴーレムが在ったのに。其れなのに分からなかったというのかと。

 

いや其れとも単純にモンスターに勝てなかったのかとレフィーヤは思う。と、そんな彼女の思った事を察したのか静かに首を振るゴザルニ。

 

「二階へと続く階段を見つけられずに迷って気が付いたら街に居たそうでござる」

「いやなんでそんな事に?」

「曰く、前に進めば上に行けると思った。だから道とか関係なしに直進して、結果迷子に成ってそして街に戻っていたそうでござる」

「それ、寧ろよく戻れましたね」

「何でも布の導きが在ったとか何とか」

「布…え、布?」

「にござる。話を聞いても動く布に導かれたから助かったとしか言わなかったでござるな。まぁ、普通に全身を覆うタイプの服を着た冒険者に助けられたのでござろうな」

「あぁ、確かに在り得そうですね」

 

そう言う冒険者は普通にいるし。まぁ、ぱっと見てどの様な役目を果たせるのか分かり難いから余り進められる様な事では無いが……昔はそうでは無かったのかもしれな。可笑しな事では無いのは確かだ。

 

「因み、まだ迷宮攻略を諦めてはいないそうでござる。今度はちゃんと登ると言ってたでござるよ」

「へぇ……何処をですか」

「木」

「だと思いましたよ」

 

本当に思った通りだった。悪い方に。

 

「あぁ、何と言うか。あれですね」

「まぁ、先程の話を聞けばそう思うでござろうな。実際そうでござるし。拙者が色々と教わって育ったからこうして本を読めているだけでござるからな。そう考えると本が読めないと思われても仕方が無いでござるな」

「え、教わった?」

「にござる。拙者の家と交流がある人達の中に勉強を教えてくれた人が居た。其れだけの事でござる」

「あぁ、成程」

 

言いながら頷くレフィーヤは、しみじみと呟かれたゴザルニの言葉を耳にした。

 

「今でも思い出せるでござるな。本の読み方を教えて欲しいと言ったら号泣された時の事を」

「号泣?! なんでですか?」

「なんでも、教えて欲しいなんて事を言う子が居た事に感動して思わず涙を流してしまったそうでござる」

「おぉ……え、もうそういう?」

「にござる」

「何というか…大丈夫なんですか?」

「基本的に、強いから生きていくのは大丈夫なんでござるよ。他の人達も手助けしてくれるでござるし。あれでござるが、本当に…あれでござるが」

 

深く、そして重い溜息を吐くゴザルニ。そんな彼女を見ながらふとレフィーヤは思う。

 

そんな人たちの中でも割と真面だったゴザルニは、多分振り回されたのだろうと。何と無く、アルカディアを出た理由を察し、出た先でミカエと言う人物の捕まったのかと涙が零れそうになるのを何とか堪えて。

 

「苦労、してるんですね」

「そう言ってくれるだけでもうれしいでござるよ」

 

そう、ゴザルニは笑顔を浮かべた。とても儚い笑顔を。

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