世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百十二話

扉を抜けた先。其処に広場があり、しかし評議会の言っていたゴーレムの群れは見当たらない。何処かに行っているのだろうかと視線を巡らせながらレフィーヤは思っていると、不意に音が響く。何事かと音の方へと視線を向ければ。

 

小さなゴーレムがゴザルニに串刺しにされていた。

 

「え、如何いう事ですかそれ?」

「急に動き出したので吃驚して反射的に貫いてしまったのでござる」

 

そう言いながら、よいしょと小さなゴーレムを両断して軽く刀を揺らすゴザルニ。というか石で出来ている筈のゴーレムを何で平然と斬っているのだろうかと今更ながらレフィーヤは思いながらもすぐさま振り払う。

 

そこら中から小さなゴーレムが集まり始めたからだ。

 

「…結構多いわね」

 

コバックの言う通り。一体何処に居たんだと疑問に思う程のゴーレムが眼前の広場に集まっている。そして何を思ったのか重なり合い始めたのだ。いや違う、重なっているというよりも合体していると言った方が正しいかも知れないが。

 

「まぁ、気にする程の事では無いですね」

 

そう言葉にするが速いか否か、淀みなく取り出した印を刻んだ布を輝かせて術を発動する。それは何時もの氷塊。それを何時もの様に集まるゴーレムへ向かって落とす。

 

迫る氷塊に、驚いた様に視線を向けるゴーレム達は慌てて散開するも遅いと言わんばかりに押し潰し重い音を響かせながら広場を揺らす。しかしそれを見たレフィーヤは思わず舌打ちを零す。想定よりも潰せた数が少なかったからだ。やはり氷塊は便利だが気付かれやすいのが難点だなと思いながら氷槍を生み出して放つ。

 

流石に不意を突いた先程と違い、けれど慌ただしく体を動かして回避するゴーレム達。けれど当たらないのは想定の内。放った目的は先程行おうとしていた合体の様な物を防ぐ事なのだから。

 

小さなゴーレム達が離れてしまって居る事に気が付き、慌てて近づこうと動くゴーレムをローウェンが的確に撃ち抜いて行く。しかし、いや、やはりと言うべきか浅い。動きを止める事は出来ても其れ以上には成っていない様だ。

 

其れを見てやはりかと呟きながら二発同時に撃ちこんで仕留めていくローウェン。そんな彼の放つ弾丸、自分に当たる等と思う事無くゴザルニは踏み込み、蹈鞴を踏んでいたゴーレムを容赦なく両断してく。

 

「なんか変ですね」

 

蹂躙と言っても過言では無い一方的な展開。正直言って冒険者の道を阻むほどの存在である様にレフィーヤは思えなかった。或は先程合体しようとしていた事を考えるに、其れを許してしまったからなのだろうかと思いながら。

 

 

突然、背筋に走る悪寒。

 

 

それに逆らう事無く前に向かって飛んだ。直後だ、先程まで居た場所から酷く重い何かが叩き付けられる音が響き揺れば届いたのは。

 

慌てず、しかし急いで体制を立て直し視線を向けると、其処に居たのは余りにも歪な物体だった。下半身しかない石像、いやゴーレムが地面から足を引き抜いていた。所々に小さなゴーレムを思わせる部分がある事から、きっとあれが合体した際の姿なのだろうと思い、上半身も在るのだろうな警戒しつつも再び踏み潰さんと接近してくる其れを見る。

 

さて如何したものかと思考を巡らせながらサッと視線を向けて他の四人を見る。ハインリヒは距離を取りしかし何時でも援護が出来る位置に居る。ローウェンも同じく。ゴザルニは前にで小さなゴーレムの相手をしている。そしてコバックはと言えば。

 

「良し」

 

小さく呟き、すべき行動を定める。其れは回避では無く攻撃。敢えて動く事無く見せ付ける様に鞄から布を取り出す。それを見て…見て? なのかは分からないがさらに力強く地面を蹴り。

 

足を滑らせて転倒した。

 

偶然の事では無い。レフィーヤが地面を綺麗に凍らせたから起こった事だ。まぁそれでもあそこまで綺麗に転ぶとは思ってなかったなと思うレフィーヤ。

 

を、覆う様に影が差す。視線を向けると、恐らくゴーレムの上半身と思われる物が両腕を振り上げていた。こんな大きな物が何処から来たのだろうかと、目の前の光景を見ながら考える彼女に向かって振り下ろされた。

 

両腕を弾丸撃ち抜き勢いを殺し、コバックが滑り込む様にレフィーヤの前に出てその一撃を逸らす。

 

「っと、少し遅れちゃったわね。ごめんなさい」

「いえ、大丈夫です」

 

避ける準備も防ぐ準備も万全だったのでと小さく呟くレフィーヤに、コバックは笑みを浮かべながら体制を崩しているゴーレムの上半身に思いっきり盾を叩きつける。凍った地面の上に居るゴーレムを、だ。

 

結果は言わずともといった所か。これまた綺麗に氷の上を滑るゴーレム。さらに駄目押しだとレフィーヤの氷槍を叩き込まれ加速して、立ち上がろうとしていた下半身と衝突する。

 

「あっ」

 

思わずレフィーヤの口から声が零れる。目の前の光景にやってしまったかもしれないと思ったからだ。

 

ゴーレムの上と下とが合わさる。それでも歪であると言わざるその体を、ゴーレムは動かす。何かされる前に動くべきかと一瞬考えて。

 

「大丈夫だぞ」

 

そう、最後の小さなゴーレムを撃ち抜いたローウェンが言葉にする。何が大丈夫なのか、それは眼前の光景が示している。

 

「ゴザルニは氷の上でも普通に動ける」

「ローウェン殿もでござるがな。何はともあれ」

 

何かをする積りなのか光を放ち始めたゴーレムが声のする後ろへと振り返る。そして見る事に成ったのは酷く滑りやすい氷の上を疾走するゴザルニの姿。彼女は其の儘力強く跳び上がり。

 

「斬り捨て御免」

 

上と下とが合わさったゴーレムを左右に両断した。

 

 

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