世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百十三話

アイオリスへと帰還したギルド・フロンティア一行は評議会にゴーレムの退け、結界を解くことに成功したと報告しこれを持ってミッション達成。

 

突然ではあるがレフィーヤには趣味がある。いやあると言うよりはできたと言うべきか。趣味と言えるほど担ったのはつい最近の事なのだから。

 

さて、その趣味とはなんであるのか。刺繍である。と言っても唯の刺繍ではなくある印術を縫い込むのだが、先程もいったように最近は必要だからと言う事以外の理由で其を行うようになっているのだ。

 

「…うーん」

 

確認するように布を広げて見る。

 

「まだ分かり易すぎますかね」

 

言いながらさて何処に手を加えるかと考える。目立つ、と言うのは印術の事だ。発動するだけならば別に目立とうがそうでなかろうが関係ないのだが、何処まで目立たせること無く、しかし発動事態には問題なく出来るかということにレフィーヤは凝っているのだ。自分でも無駄なことだなと思いながらも、暇なときはついついやってしまう。

 

そんな彼女のいる部屋のドアを叩く音が響く。誰が訪ねて来たのだろうかと少し考えて、あぁもしかしたらと辺りを付けつつドアを開く。

 

「や、レフィーヤ。今は大丈夫かな」

 

ドアの前に立っていたのはハインリヒだった。何故、彼が。何ようで訪ねてきたのかは、分かっている。

 

「大丈夫ですよ。と言うか大丈夫じゃなかったら頼んだりしませんよ」

「それもそうか。なら、って訳じゃないけど、はいこれ。頼まれてた物だよ」

「おぉ、ありがとうございます」

 

差し出された物を感謝の言葉を口にしながら受けとるレフィーヤ。そう、ハインリヒが訪ねてきた、と言うのは正しいかは分からないが。レフィーヤの元に来たのは出掛けようとしていたハインリヒに彼女が次いでに買ってきてほしいものがあると頼んでいたからだ。

 

自分で買いにいっても良かったのだが、何処に良いものが売っているのか分からないレフィーヤは知っているハインリヒに頼んだ方が良いと判断したからだ。

 

「じゃあちょっと失礼して」

 

そう言いながら買ってきてもらった物を確認するために取り出して、広げる。それは布。何の為に使うのかは、分かりきっている事だろう。しかし、その布を見て、頼んだレフィーヤは意外そうと言うべきか、単純に驚いていると言っても言い表情を浮かべた。

 

「あれ、なんか想像よりも良いの買ってきましたね」

 

そう、彼女の言う通り。ハインリヒが買ってきたそれは、先程まで彼女が印術を施していた布よりも品質が数段上の物なのだ。はっきり言って此処まで言い布である必要はない。雑に扱っても破れない程度の強度が在れば其で良かったのだが。そう思いながら視線をハインリヒへと向けると。

 

「丁度良いのがそれしかなかったんだよ」

「あぁ成程。でもお金は大丈夫でしたか?」

 

と、渡したお金では間違いなく足りなかっただろうなと思いつつレフィーヤは問いかけると。彼はフッと笑みを浮かべて。

 

「大丈夫、足りなかったけど足りるようにしたから」

「あぁー…それってつまり」

「値切った」

「やっぱり」

 

かなりの金額やられたのだろうなと心の中で冥福を祈りつつ、まぁ其れはそれとして良い布が手に入ってご満悦なレフィーヤ。さて、どの印術を施そうかなと考えて。でもと一瞬、脳裏に過る。

 

「戦闘用に使うのはちょっと勿体ない気もしますね」

「じゃあ使わないとか? それならそれでも僕は良いけど、そうしたら予備を作る為の布はどうする? 何だったらまた僕が行ってきても良いけど?」

「流石にそれは申し訳ないですよ。これはこれで少し試してみたいことが在りますし、それ用に使わせてもらいます」

 

試すと言うのは、印術であると分かりにくく施してみる事だ。今の所はこれといった意味があるわけではないが、まぁ損なことはどうでも良いだろう。所詮は趣味なのだから

 

「なら予備のはどうするんだい?」

「あぁー…そうですね。本当の意味で消耗品として割り切るならかなりあれな布でも良いんですけど」

「それはやめておいた方がいいよ。冒険用の物を妥協はしちゃいけない」

「ですよね」

 

全くもってその通りだ。適当な物を使用した物がいざという時に使えなければ酷い目にあう、等と言う処ではなく命に関わる。其れならばやはりこれを使うべきかと視線を向けて。でも、先程言った様にこれを使って試してみたいレフィーヤは悩み。

 

「……やっぱり違うの買いに行った方がいいですかね?」

「そうだね」

「じゃあ行ってきますね」

「一緒に行こうか?」

「さっきも言いましたけど流石に申し訳ないですよそれは」

「でも僕が一緒なら値引き出来るよ」

「あぁ、それは」

 

ハインリヒの言葉に、脳裏を過ぎるのはローウェンの姿。想像でしかない彼はしかし、サムズアップしながらこう言った。安くすむなら其れで良し、と。

 

「想像の中のローウェンさんが安ければ良いって言ったのでお願いします」

「あぁ、確かにローウェンなら言うね。間違いなく」

「正直、想像するまでも無かったかもしれませんね」

「全くだ」

「と、じゃあ直ぐに出掛ける準備しちゃいますね」

「なら食堂で待ってるよ」

「分かりました」

 

それじゃ、と部屋を出るハインリヒを見送り。レフィーヤもサッと片付けた後に必要なものを持って部屋を出た。

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