ゴザルニの叔父であるセシャンを何故か街に居た…というか恐らくセシャンの事を探しに来ていたのだろうミルンルに押し付けたレフィーヤとゴザルニ。これ以上の面倒ごとはごめんだと早足でジェネッタの宿へと帰還した。
そしてそのままレフィーヤは部屋へと直行、適当に鞄を中の物が壊れないように気を付けつつ置き。ベットへと座り込む。
その直後に、扉を叩くことなくローウェンが部屋へと入ってきた。
「よ、戻ったか」
「私とゴザルニさんを置いて何処かに逃げたローウェンさんじゃないですか」
「面倒になりそうだったからな」
若干、棘のある言葉にしかし何でもないかのように平然と返すローウェンに少し機嫌悪げにレフィーヤは口にする。
「私も一緒に連れてってくれても良かったじゃないですか」
「ならあえて言うが、明らかに面倒に成るなと分かるのにゴザルニの横から動かなかったお前が悪い」
そう言われるとその通りだから言い返せない。もしも冒険中にそんなことになれば命を落としかねないわけで。
「まぁそれは良いとして…大丈夫か?」
「それはこれの事ですか?」
言いながら手を見せるように掲げるレフィーヤ。その包帯の巻かれた手を。
「咄嗟にとは言え守ったから見た目程痛みはありませんよ」
「そうか。で、原因はもう分かったのか? いつの間にか半裸に成ってたレフィーヤよ」
「それ言っちゃいますか??」
出来れば言わないでほしかったなと思いつつ考える。
実を言えば街に帰還した理由は巨象を倒した際の疲労を気にしてというだけでなく、またセシャンが居たからという訳でもない。レフィーヤの服が半分ほど消滅しており、また手が血まみれだったからだ。
先ほど言ったように、それほど痛みを感じていた訳では無かったため。ぱっと見、もう手が使い物になりませんと言われても可笑しくない様な惨状に目を向いたものだ。
半裸に成った事に関しては男性陣が一切反応していないことにどうなのだろうかと風が寒いという理由で服を着なおしたレフィーヤは今更ながら思うのだった。女性として終わっている? 今更だ。
さてそれは置いておいて原因だ。何故そうなったのかと考えればすぐ思いつく。
「やっぱり圧縮錬金術…を印術で再現したものでしょうよね」
「あぁ、あのずっと上手くいかなくて唸ってたやつだろう? 最近になってやっと形になったていう。一応、何回か試して見たから大丈夫だって言ってたよな?」
「そうなんですが。流石に大印術は試してませんでしたからね。若しかしたらとは思ってたから守れたんですけど」
「つまり耐えられずに破裂したと?」
「というよりは、圧縮した印術の威力に、術とそれを施した手袋が耐えられなかったのかもしれませんね」
だからと言って手袋は兎も角、服が綺麗に吹き飛んだのは何故なのかとは思う。そんな風になる様に守った訳ではないのに。そういえば服を作っておかないといけないなと思いつつ、ため息一つ。
「それなりに時間かけて作ったのがこれなら、あれを再現するのはもっと先の事ですね」
「あれ? あれって……あぁ、アーモロードの」
「はい。ゾディアックのエーテル圧縮の事です」
同じく錬金術と同じで圧縮しているのだが、錬金術の方は術を圧縮して言うのに対してエネルギーを圧縮している…らしい。そこまで詳しく学べた訳ではないが、それでもはっきりと言えるのは圧縮錬金術とは違い、術の規模は変わらず威力だけが高まるという点だ。
詰まり
「再現して暴発した際の被害は洒落にならないだろうな」
「錬金の方も想定より規模と威力が高かったですからね」
オリファントが巨大だったからこそ良かったが、そうでなければ間違いなく仲間を巻き込んでしまう威力だ。異常に術の速度も速かったし。まぁ、速度に関しては雷だったからというだけかもしれないが。
「取り合えず、暫くは使わない方がいいですよね」
「最低でも原因をしっかり理解したうえで対策を施してからでないとな」
威力自体は魅力的だがなと、ローウェンは言いながら。
「一応聞いておくが、違和感が原因か?」
「それは、多分ですけど違いますね。流石に強い違和感を感じる状態で使ったりしませんし」
「だよな」
そういえば結局、違和感が何なのか分からなかったなと思いつつ、何気なく手を動かし。
「あいった」
「おい、怪我してるんだから無理に動かすなよ」
「動かさない分には痛みが余りないのも考え物ですね。忘れちゃいますよ」
「なら思いっきり痛みを感じるようにしてやろうか?」
「結構です」
だろうなと言いつつ。それじゃあと部屋から出て行こうとするローウェンは、そういえばと振り返り。
「冒険はお前の怪我が治って問題なしなら再開するからな」
「あ、分かりました」
「という訳でサクッと治せよ」
「はーい」
なんか返事が伸びるようになったなと思いつつ扉を開けるローウェン。
「あら、ローウェンちゃんじゃない」
「おっと、用事があったからさっさと離れた故に面倒ごとに巻き込まれなかったコバックじゃないか」
「どういう事よ其れ」
丁度戻ってきたコバックと出くわす。ふざけたようにローウェンから口にされた言葉に首を傾げつつ、そうだったと呟きながらローウェンに言葉を向ける。
「評議会が用があるから来て欲しいみたいな事を言ってたわよ?」
「評議会が?」
「えぇ、なんでもあのおっきな象…確かオリファントだったわよね? それを倒したことに関してみたいよ」
「あぁ……まぁ、あの領域のモンスターを倒せば呼ばれもするわな。じゃあちょっと言ってくるか。金を毟り取りに」
「言い方」
欲望に忠実だなと、黒い笑みを浮かべるローウェンを見ながら思うレフィーヤ。暇だから自分もついていこうかななんて思う、のだが。
「あ、レフィーヤは残れよ。流石に怪我したばかりで余り動き回るのは良くない」
「そう思うなら今度からは面倒ごとの際に助けてくださいねぇ」
「善処しよう」
言って、それではと部屋から今度こそ出ていくローウェン。一気に静かになった部屋の中で。小さくため息を吐きながらベットに倒れこみ。
「……凄く信用できない言い方しましたねローウェンさんは」
其の積りはないなと思いながら、瞼を閉じた。