世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百二十一話

ギルド・フロンティアが第二階層で二つほど行った事がある。一つは言わずとも分かるだろうが巨象オリファントの討伐。もう一つは稲妻リスの虐殺である。何方も極々一般的な冒険者ではとてもではないが行えないことだ。では、もしもそれを為したというのならば何が起こるのかと言えば。

 

「モンスターが全然現れませんね」

 

これである。要するに関わったらいけない存在として世界樹の迷宮の第二階層に住まうモンスター達に思われているという事だ。例外とするならば傷ついているからなのか興奮している個体とF.O.Eなのだが、前者は兎も角としてF.O.Eに関しては様子見と言う事なのか、視線を向けるのみで襲い掛かってくるようなことはない。

 

襲われないのは無駄な消耗をしなくて済むため良い事なのだが。

 

「逆に疲れるわね」

「そうですね」

 

精神的なという意味だ。クワガタを捕まえている時や崖の上で咲いている花を見つけた時。他にもハムスターを生け捕りにした時も、常に怯えるような気配を感じているのだ。若しかしたらと警戒を続けているからこそ良く分かり。結果的に先ほどの呟きに繋がったのだ。

 

「…そろそろ休むか?」

「さんせぇー」

「お腹すいたでござる」

「はいはい、すぐ準備するからまずは場所を探すところからね」

「にござるかぁー」

 

あぁー…なんて声を零しながら歩くゴザルニ。そういえば休むごとに何か食べてるなと思いつつ、ハインリヒが言ったように休める場所はないだろうかと進み。

 

「……ここは」

「まぁ、だろうな」

「運が良いのか悪いのか分からないでござるな」

「そうね」

 

見つけたのは扉。しかしその先には休む事のできる場所などないというのは彼らでなくともすぐわかる事だろう。痛い程の敵意と存在感を感じるのだから。

 

「流石にここでは休みたくないねぇ」

「オーバーロードの居る部屋の前でがっつり休んだ俺たちが言えたことじゃないけどな」

「其れはほら、襲い掛かってくる様子無かったですし。ここの、ヒポグリフは何時襲い掛かってくるかわかりませんし」

「警戒しながら休むのは普通の事でござるが。流石に限度があるでござるな」

「じゃあ一回戻るか?」

 

そのローウェンの言葉に、どうするかと一瞬考えて。いいやと首を振って否定する。

 

「無理が在るならともかく今はそうでもないですし。ローウェンさんも銃弾を殆ど消費して無い訳ですし」

「今だったらヒポグリフ蹂躙できるぞ」

「それは知ってます」

 

寧ろ出来ないと言われた方が驚く。銃弾が無くなったなら兎も角十全でそうなのだとしら端的に言って人生が終わるのでは無いのだろうか。まぁ、すでに一回それを乗り越えているわけだが。

 

「あれー?」

「…お前たちは」

 

そんな時だ。背後から声が響いたのは。誰か来たのだろうかと振り向くと、そこに見知った顔の冒険者が二人。ネクロマンサーのリリと、死神・・・ではなくリーパーのソロルが立ていた。

 

「奇遇…という訳でもないですかね」

 

同じ迷宮に挑んでいるのだから出会っても可笑しくはない。それでも割と多いのかもしれないが。

 

「そうだね。それにしても本当にあっという間にここまで来たね。あ、でもここから先は」

「其れに関しては大丈夫だぞ。評議会からミッションも受けてるしな」

「でござるな」

「ござ?!」

 

ゴザルニが一言口にすると、なぜか一歩下がるソロル。如何したのだろうかと少し考え、そういえば口調がうつっていたなと思い出す。そしてそんな彼女の様子に首を傾げながらもリリは彼らに向かって言葉を口にする。

 

「そういう事ならいいんだけど。でも気を付けてね? この先に居るのは本当に、ほんっっとうに強くて危ないモンスターなんだから」

「もっとも、それでも死ぬときは死ぬがな」

「平然と怖いこと言わないでよぉ!!」

 

ボソリと呟かれたローウェンの言葉に若干大げさに思える反応を返すリリ。その様子を見ながら、やぱりいじったらおもしろくなる人だなと。リリだけでなく、その少し前に立っているソロルを見ながらレフィーヤは思う。

 

「?! なんだ、今寒気が」

 

如何やらソロルは勘が鋭いようだ。だからと言って何かあるわけではないが。

 

「…まぁ、精々死なないように頑張るんだな」

「そうするとしよう」

 

油断する気も、慢心する気も皆無だけどねと心の中で思いながら。鞄の中に手を入れえ布を取り出す。それは何なのだろうかと疑問に思ったのかリリが興味深げに視線をレフィーヤに向ける。が、別に説明する必要もないだろうと無視して刻んだ印を優しくなぞり。

 

「レフィーヤ」

「分かってます」

 

ローウェンの言葉に印術を行使する。何かをする積りなのだと察したソロルはまさかと言った様子でリリを庇いつつ後ろに下がり。それを見ながら印術は放たれる。

 

真上から強襲せんと迫っていたモンスターに向かって。

 

「…え?」

「外しました」

 

驚いたように声を零すソロルに気を向ける事無く冷静に事実を口にしながら視線を空へと向ける。そこには歪な姿であるにもかかわらず、悠々と空を舞うモンスターの姿が。

 

「あれがヒポグリフですか」

 

奇襲を仕掛けてこようとするとは分かっているじゃないかと思いつつ、様子を見るように旋回するヒポグリフを見て小さく呟いた。

 

「すごく運が悪いですね」

 

そんなレフィーヤの言葉は銃声によって掻き消される。音にして一回にしか聞こえないそれは、しかしヒポグリフの全ての翼を正確に打ち抜く。なんか数が前よりも増えている。

 

突然の事にバランスを崩しながら落ちていくヒポグリフの全身を、銃弾が容赦なく撃ちぬいた。

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