世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百二十二話

音が響き渡り土煙が舞う。

 

視界を遮るように広がるそれを見ながらレフィーヤは何があっても対応できるように距離を取りながら何時でも放てるように印術を準備して、土煙を睨むように見る。あるいは土煙を払うべきかとも思ったが、そこまで都合よくできはしないなと改める。

 

そう考えると風ってかなり便利だなと最近思い浮かべることが少なくなっていた憧れの人が頭を浮かび。

 

あれ、アイズさんの顔ってどんなのだっけなと思わず首を傾げてしまった。いや忘れた訳では無い、無いのだが確信が持てない。そういえばこっちに来てから結構な時間が経ったな他人事のように思う。世界規模の災厄も二回程退けてるし。そう考えると逆に憶えているのは凄い事ではないのだろうかと思ってしまったレフィーヤは。

 

晴れていく土煙を見て一瞬で思考が切り替わり意識を集中する。

 

少しすれば土埃は無くなり、見えたのは横たわり動かないヒポグリフ。しかしだからと言って倒せたと安堵したりはしない。死んだふりしているだけかもしれないからだ。故に、ローウェンは軽く目を細めながらゴザルニに確認するように言葉にし、分かったと頷きながら彼女は近づいていく。

 

ヒポグリフはローウェンが見ているなら自分はもう少し周囲に意識を向けようとハインリヒとコバックと一緒になって視線を巡らせる。

 

「あぁー…いってるでござるな。首が」

「まぁ、あれだけの高さから落ちればそうなるだろな。自重もあるし」

 

しばらくすればそうゴザルニが武器でヒポグリフの事を突きながら口にする。同意するように頷きながら言うローウェンとレフィーヤは全く同意見である。どれだけ強かろうと生き物なのだ。何も対策せずに高い所から落ちれば死ぬ。ローウェンが関節どころか急所も余さず撃ち抜いていたのだから余計だろう。

 

「ぬん。間違いなく事切れているでござるな」

 

その言葉に、少しだけ緊張を緩める。

 

「じゃあこれでミッション達成ですかね」

「だな、今回はほとんど俺の手柄だけどな」

「いや、ほぼ万全の君から手柄を奪うとか難しいからね?」

 

そう言いつつも出来ないとは口にしないハインリヒ。それに関してはレフィーヤは同じなのだが。

 

「其れは良いとして、取り合えず終わったから」

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

呼び止める声が響く。何事かと視線を向けるとリリが手を伸ばしながら駆けてきていた。

 

「あの、えっと。いきなりこんなこと言うのは申し訳ないんだけどそのお願いがあって」

「取り合えず落ち着け」

 

興奮気味のリリにローウェンは良いながら視線を後ろ、正確には今こちらに向かって駆けてくるソロルに向ける。

 

「で、こいつは何を言いたいんだ?」

「それは私がこれから!」

「いや、俺が話す。今のお前じゃあ真面に話せそうにないしな」

 

言いながら手で自分の後ろにリリを下がらせるソロル。そして彼女が語ったのは一つの呪いだった。

 

 

 

「あぁ、なんともまぁ…あれな話だな」

「全くだ」

 

呟かれたローウェンの言葉に、その通りだとソロルは頷く。それが少し気に入らなかったのか頬を膨らませて怒っていますと言いたげに腕を振るリリ。正直かわいいとレフィーヤは思った。

 

「しかし話を聞く限りその秘宝が至宝がかを盗んだ奴が第二階層の先、つまり第三階層に居るかもしれないから。もしもこれから進んで見かけたなら教えてほしい…って事だろう?」

「そう…でいいんだよな?」

「そう! お願いします!!」

 

これまでと同様に元気よく頭を下げるリリは、しかしレフィーヤには酷く焦燥しているように見えた。探していた存在を未だに見つけられていないからだろうか。もしもここで頷かなければ、いや例えそうだとしても。

 

「…どうしますか?」

「そうだなぁー」

 

視線をリリへと向けた後に、横目で確認するように四人を見る。同じようにレフィーヤも見て、皆同じように向けている視線を交らわせて、頷いた。

 

「そのくらいは良いと言っていいんだが、一つ問題がある」

「問題って?」

「その秘宝の不死者の指輪を盗んだ…クロウとかいうやつがどんな見た目なのか分からないという事だ」

 

其れでは、見かけたとしても判断できないのでどうしようもない。まさかそれっぽいもの全てを報告するんなんてことをするわけにもいかないのだから。

 

「だからと言ってこんなのです、って聞かされたところでそれって数百年どころじゃない昔から生きてる…生きてる? やつなんでしょ? 姿かたちが変わってても可笑しくはないよね」

「それは…その」

「まぁ、見つける手段がない訳では無いけど」

「?! 本当に!?」

「ここで嘘ついてもただの性悪だろう。良い性格だとは言わないけれども」

 

それは言う必要なかったのではないだろかとレフィーヤは思う。否定はしないけれども。

 

「そ、それってどういう?!」

「気配を追う」

「え……えっと、それで大丈夫なの?」

「居るなら分かる」

「えぇ…?」

 

一歩下がるリリ。確かに出来るだろうけど言ったら引かれると分かり切っているのになぜいうのか。面白いからであるとサムズアップするとローウェンも返してきた。心が通じ合ってる。

 

「と言う訳で…はおかしいかもしれないが聞き入れた。仲間も別に良いようだしな」

「訊いてないのに…いや、やめておこう。感謝する」

 

きっと意味がないと悟ったのか、言葉を言いかけただけに留めて感謝を口にするソロル。しかし話を聞く限りでは彼女はそこまで関係があるとは思えないが。いや、無粋だったかとレフィーヤは思う。

 

「さて、じゃあ…一応依頼になるのか。お、受けたことだし」

「ですね」

「早いに越したことはないでござるからな」

「そうね。まだ余裕あるし」

「反対はしないよ」

 

意気込むように言葉にするギルド・フロンティア一行。その様子にリリは目を輝かせて。

 

 

「帰るぞ」

「はーい」

「帰るの?!」

 

驚いたように言葉にするリリ。そんな彼女に対して何を言っているんだと言いたげに首を振る。確かに余裕はある。そこまで体力にしろ気力にしろ、道具関係も消耗していない。けれど、だ。忘れてはいけないことが一つある。

 

「先に進むのはミッション達成を報告してからだ」

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