世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百二十五話

迷宮の第三階層、晦冥ノ墓所と呼ばれるそこは文字通り墓場であり。多くの死者が眠っているのだろう場所。まぁ、眠らず元気に動き回り生者に襲い掛かってくるものがとても多いが。

 

 

さてそんな第三階層だが、そこの情報を集めた時点で心底嫌そうな表情を浮かべた人物が居るのだ。それがだれかといえば意外な事にローウェンだった。大抵の事は平然と熟す彼がなぜその様な事になったかといえば第三階層に出現するモンスターが関係している。

 

第三階層のモンスター。それは言ってしまえば死体である。より正確には骨であったり、意思を持った武器であったりと。言ってしまえばこれといった急所がない、物理的に動けなくなるまで破壊しなければいいけないモンスターがとても多いのだ。詰まり、戦うと必然的に弾丸の消費量も増えるのは必然で。

 

つまり、ローウェン的に第三階層はとても金を消費する場所と言う事だ。

 

「本当に嫌だなここは」

 

なんて愚痴を零しながら銃弾で眼前の弓を構える骨。ボーンアーチャーの腕を撃ち砕き攻撃を防ぐ。何時もならそのまま頭か心臓を撃ち抜いて止めを刺すのだが。相手は骨である。頭を撃っても止まらないし、そもそも心臓がない。

 

そう言う訳でこれ以上の攻撃は無駄と判断したローウェンは視線を別のモンスターへと向ける。では、腕の骨を撃ち砕かれたボーンアーチャーはどうするのかといえば。

 

メディックなのに粉砕するのが大得意なハインリヒの出番である。槌を振り上げ、一気に振り下ろす。それだけで、骨でしかない存在は物理的に動けない程に破壊された。

 

「…はぁ」

「随分動き回りますね今回は」

「じゃないと寧ろ面倒だからね。確実に止めを刺せるのが僕とレフィーヤしかいないし。で、レフィーヤは違和感の件があるんだから、僕が無理のない程度に動くしかないだろう?」

「無理をしてとは言わないんですね」

「当たり前だろう」

 

何を言っているんだといった様子のハインリヒに。まぁ、その通りだなと、燃えながら崩れ落ちていくモンスターを見ながらレフィーヤは思う。無理はしない。これ基本。

 

「それにしても薄暗いでござるな」

「不思議な迷宮の下層程じゃないけどな」

「あぁ、あそこほとんど光が届きませんでしたからね。真っ暗って訳では無かったですけど」

「そりゃ何も見えないって訳じゃなかったが戦い難い事に変わりなかっただろう」

「それを考えるとまだましでござるな」

 

言いながら見渡して頷くゴザルニ。というか所々とはいえ一応日の光が差し込んでいるこの場所と、それがない場所とを比べても仕方がない気がする。

 

「まぁ、暗い云々は抜きにしても気分のいい場所ではないわよね」

「墓だからな」

「骨とか普通に歩き回ってますからね」

 

この場所で気分が良いなんて言う人は性格があれな人か…あ、でもネクロマンサーという職業の人なら若しかしたらなんて思うレフィーヤ。まぁ、そういった職業だからこそ死者への敬意を忘れていないだろうし。気分が良いとは少し違うだろうけど。

 

そうなるとあれな人しか居ないだろうなと思いながら鞄に手を入れて布を取り出し、印術を行使する。そして生み出された、巨大というほどではないがそこそこの大きさの氷を地面から這い出てきた骨の剣士に叩き込む。

 

這い出てきた直後だった為か、反応することも出来ずに潰されて砕ける骨の剣士。そういえば、あれは外道の剣屍という名前のF.O.Eに分類されていたモンスターだったなと調べられた情報を思い出す。確か、酷く足が遅いとあった筈だと。

 

若しかしたら這い出た直後だったからではなく普通に避けられなかっただけかもしれないなとレフィーヤは外道の剣屍の死体…いや、もとより骨なのだからそれは正しくないかもしれないが。兎も角動かなくなったそれを見ながら思う。

 

「それにしてもこの階層は凄いですね。ローウェンさんを殺す気で来てますよ」

「俺だけなのかよ」

「だってそうでしょう?」

 

財布の中身的な意味で。間違いなく殺しに、そうでなくても致命傷を与えに来ている。

 

「否定したいけど否定できないなぁ。金なかったら最終的には戦えなくなるしな俺」

「と言う事はあれですか。ついにモンスターだけでなく迷宮そのものに対策されるほどの存在だと認識されたってことですか。流石ですね」

「誉め言葉ではないなそれ」

「勿論」

 

そもそもというか当然というか、遥か昔から存在しているわけで。もしも対策というものを施しているというならそれは、そうそれは。

 

「…リリさんの言ってたあれですかね?」

「判断できん事を訊くな。まぁ、仮にそうだとしら八つ当たりするだけだが」

「哀れにも寿命は後僅かですね」

 

そんなことを口にする。まぁ多分だけれど、歩き回ってる骨と同じような存在になってそうだし寿命というには少し違う気がする。

 

「なんにせよ。弾の無駄遣いにしかならないから止めに俺が動くことは殆ど無いからな」

「分かりました」

「任せてよ」

「あたしももう少し動けたらいいんだけどねぇ」

「コバック殿はローウェン殿以上に相性の善し悪しが出るでござるからなぁ」

「仕方ない事だとはわかってるんだけどねぇ…前から思ってたけど、武器を変えることも考えた方がいいかしら?」

「若し其の積りならしっかり話し合うからな?」

「それは当然ね」

 

そんな会話をしながら、変わらず彼らは迷宮を進んでいくのだった。

 

 

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